※本記事は、株式会社ツガミ の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ツガミってどんな会社?
自動旋盤などの工作機械メーカーです。中国市場に強みを持ち、高精度・高速・高剛性の製品を提供しています。
■(1) 会社概要
1937年に新潟県長岡市で津上製作所として設立され、1949年に東京・大阪・新潟各証券取引所に上場しました。1982年に現在の社名へ変更し、ブランドの浸透を図っています。2003年には中国・浙江省に製造子会社を設立して中国事業を本格化させ、2017年にはその中国子会社が香港証券取引所メインボード市場へ上場を果たすなど、海外展開を積極的に進めてきました。
現在の従業員数は連結3,433名、単体500名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う信託銀行(信託口)であり、第2位も同様に資産管理を行う銀行(信託口)です。第3位には地方銀行が名を連ねており、特定の創業家などではなく、機関投資家や金融機関が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 14.49% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.44% |
| 株式会社第四北越銀行 | 4.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は渡部昇弘氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡部昇弘 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。海外統括部次長、インド子会社出向を経て、国内営業部門統括などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 松下真実 | 代表取締役 | 2010年同社入社。海外統括部長、海外事業統括部長などを歴任し、海外部門を牽引。2024年6月より現職。 |
| 米山賢司 | 代表取締役 | 1988年北越銀行(現第四北越銀行)入行。同社管理部付顧問、常勤監査役などを経て、管理部門を担当。2024年10月より現職。 |
| 唐東雷 | 取締役顧問 兼 津上精密機床(中國)有限公司業務執行董事 Chairman&CEO | 2005年同社入社。中国事業担当として現地子会社の総経理等を歴任し、中国事業の拡大に貢献。2022年4月より現職。 |
社外取締役は、久保健(元三井住友カード社長)、木村裕(元第四銀行リスク統括部長)、竹内芳美(中部大学理事長)、安達健祐(元経済産業事務次官)、半場秀(島田法律事務所パートナー)、山宮道代(田辺総合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「インド」「韓国」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
自動旋盤、研削盤、マシニングセンタ、転造盤等の工作機械の製造および販売を行っています。顧客は主に金属加工を行う製造業であり、自動車部品、IT機器部品、医療機器部品などの加工に使用されています。
製品の製造および販売による対価を収益源としています。運営は主に同社が行っており、部品や製品の一部については中国子会社から仕入れています。国内のマザー工場としての役割も担い、研究開発も主導しています。
■(2) 中国
日本と同様に工作機械の製造および販売を行っています。同社グループの最大市場であり、現地での生産体制を確立しています。また、工作機械用の鋳物の製造も行っています。
製品および鋳物の販売による対価を収益源としています。運営は主に津上精密机床(浙江)有限公司、浙江品川精密機械有限公司、安徽津上精密机床有限公司が行っており、一部製品は同社へ供給しています。
■(3) インド
インド市場向けに工作機械の製造および販売を行っています。成長が期待される市場において、現地の需要に合わせた製品展開を行っています。
製品の販売による対価を収益源としています。運営は主にTSUGAMI PRECISION ENGINEERING INDIA PRIVATE LIMITEDが行っています。
■(4) 韓国
韓国市場における同社製品の販売、保守、修理サービスを行っています。
製品販売およびアフターサービスによる対価を収益源としています。運営は主にTSUGAMI KOREA CO.,LTD.が行っています。
■(5) その他
欧州や東南アジア(タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム)等において、同社製品の販売、保守、修理サービスを行っています。
製品販売およびサービス提供による対価を収益源としています。運営はTSUGAMI EUROPE GmbHや各国の現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は600億円台から1,000億円超へと拡大傾向にあります。特に当期は売上収益が過去最高を記録しました。税引前利益も売上の伸長に伴い増加しており、利益率も20%前後と高い水準を維持しています。当期利益についても増加基調にあり、収益性の高さがうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 617億円 | 932億円 | 950億円 | 839億円 | 1,074億円 |
| 税引前利益 | 95億円 | 188億円 | 165億円 | 138億円 | 237億円 |
| 利益率(%) | 15.3% | 20.2% | 17.3% | 16.4% | 22.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 49億円 | 95億円 | 77億円 | 54億円 | 109億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約28%から約34%へと改善しました。営業利益率は約16%から約22%へと上昇しており、増収効果により収益性が大きく向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 839億円 | 1,074億円 |
| 売上総利益 | 237億円 | 364億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.2% | 33.9% |
| 営業利益 | 131億円 | 233億円 |
| 営業利益率(%) | 15.6% | 21.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が62億円(構成比44%)、研究開発費が31億円(同22%)を占めています。積極的に人材や技術開発への投資を行っていることが読み取れます。
■(3) セグメント収益
全セグメントで黒字を確保していた前期に対し、当期はインド等で損失が発生していますが、主力の中国事業が大幅な増収増益となり全体を牽引しました。日本は減収となりましたが黒字転換しています。中国市場の好調さがグループ全体の業績拡大に大きく寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 310億円 | 294億円 | -10億円 | 2億円 | 0.8% |
| 中国 | 634億円 | 905億円 | 126億円 | 224億円 | 24.7% |
| インド | 53億円 | 47億円 | -1億円 | -3億円 | -6.6% |
| 韓国 | 18億円 | 16億円 | 0.5億円 | 0.5億円 | 3.1% |
| その他 | 7億円 | 5億円 | -0.4億円 | -0.4億円 | -6.9% |
| 調整額 | -183億円 | -192億円 | 3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 839億円 | 1,074億円 | 119億円 | 221億円 | 20.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来培ってきた精密技術を基礎とし、市場ニーズを先取りして新しい価値を創造することで社会に貢献することを基本方針としています。「高精度」「高速」「高剛性」という顧客の要望に合致した製品を提供することで、長期的な成長を持続させることを目指しています。
■(2) 企業文化
顧客満足度の向上を常に目指し、顧客に信頼される経営に全力で取り組む姿勢を重視しています。また、企業グループとしての総合力を高めるため、関係会社を含めた営業・生産・管理体制の強化と高効率経営を推進し、環境への配慮やサステナビリティ経営の強化にも積極的に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な視点で、アジア市場への体制強化や効率的な経営を目指しています。具体的な数値目標としての記載はありませんが、持続的な成長に向けた課題解決に取り組む方針を示しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
環境・省エネ対応が求められる自動車向け部品や、IT・医療分野など、今後成長が期待される分野へ新製品を投入することに注力しています。また、中国・東南アジア・インドなどの成長地域における生産・販売・アフターサービス体制をさらに強化し、グローバルでの事業拡大を図る戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
有能な人材確保のため、新卒採用に加え、即戦力となる中途採用も積極的に行い、多様な環境で活躍できる人材育成を目指しています。年齢、性別、国籍等に関係なく能力を発揮できる職場環境の構築に取り組み、女性活躍推進や健康経営にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 19.2年 | 6,935,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 7.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 61.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性労働者(正社員)の割合(0%)、管理職に占める中途採用者の割合(20.8%)、管理職に占める外国人の割合(0.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動による影響
工作機械業界は景気変動の影響を受けやすいため、予期せぬ市場規模の縮小が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社グループは高効率経営や固定費削減に努めていますが、急激な変化には注意が必要です。
■(2) 原材料価格の変動による影響
主要原材料である鋳物や鋼材などの価格は、為替相場や国際的な需給状況の影響を受けます。これら原材料価格の上昇が発生した場合、生産コストが増加し、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 為替変動による影響
海外売上比率が高まっており、輸出は原則円建てであるものの、急激な円高は価格引き下げ圧力となります。特に中国子会社のウェイトが高いため、人民元の為替レート変動が業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外での事業活動による影響
中国やインドで製造・販売を行い、その他多くの国で事業を展開しています。これらの国における政情不安や法規制の変更などが生じた場合、事業活動が制限され、業績に影響を与える可能性があります。



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