オークマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オークマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オークマは東証プライムおよび名証プレミア市場に上場する世界有数の総合工作機械メーカーです。NC旋盤やマシニングセンタ等の製造・販売をグローバルに展開しています。直近の業績では国内外における航空・防衛関連等の需要を確実に取り込み、売上高は2,359億円と過去最高を更新し、増収増益の堅調なトレンドです。


※本記事は、オークマ株式会社 の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オークマってどんな会社?


同社は、工作機械を制御する数値制御装置を自社開発する強みを活かし、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1898年に製麺機械の製造販売で創業し、1904年に工作機械の製造を開始しました。1949年に株式を上場し、1991年に社名をオークマへ変更しています。その後、海外拠点や現地法人を次々と設立し、近年は愛知県江南市や岐阜県可児市等の工場再開発を通じて、高度な自動化ソリューションの提供体制を強化しています。

従業員数は連結で4,101名、単体で2,396名を擁しています。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行となっており、第2位および第3位の株主も同様に信託業務を担う金融機関や保険会社が名を連ねています。機関投資家を中心とした安定的な資本構成を背景に、グローバルな事業運営を推進しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.98%
日本カストディ銀行(信託口) 9.94%
日本生命保険相互会社(常任代理人日本マスタートラスト信託銀行) 7.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長は家城淳氏が務めています。社外取締役の比率は約30.8%となっています。

氏名 役職 主な経歴
家城淳 代表取締役社長人づくり革新担当 1985年入社。技術本部長、FAシステム本部長等を歴任し、2018年に取締役副社長に就任。2019年より現職。
堀江親 取締役専務執行役員兼情報システム本部、管理本部、経営企画部、人事部、経済安全保障室、内部監査室、全社ISMS室、安全保障輸出管理室担当 1983年入社。経理・企画部長、管理本部長兼人事部長等を歴任し、2021年より取締役専務執行役員管理本部長。2025年より現職。
山本武司 取締役常務執行役員海外本部担当兼Okuma America Corporation取締役会長兼Okuma Europe GmbH取締役会長兼中国営業本部管掌 1982年入社。海外本部長、欧米営業本部長等を歴任。Okuma AmericaやEuropeの会長も兼務し、2021年より現職。
千田治光 取締役常務執行役員技術本部長兼品質保証本部、FAシステム本部、MR部、ESG推進室、スマートマニュファクチャリングプロジェクト担当 1987年入社。技術本部長兼研究開発部長等を経て、品質保証本部などを担当。2025年より現職。
幸村欣也 取締役常務執行役員製造本部長兼サービス本部長兼大同大隈股份有限公司董事長兼調達本部、北一大隈(北京)机床有限公司担当 1990年入社。製造本部長、物流統括部長、調達本部長等を歴任。2025年よりサービス本部長も兼務し現職。


社外取締役は、森脇俊道(神戸大学名誉教授)、竹中裕紀(イビデン相談役)、三和裕美子(明治大学商学部専任教授)、堀西良美(堀西経営法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア・パシフィック」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


同社および国内の子会社が、NC旋盤やマシニングセンタ、複合加工機などの工作機械の製造・販売を手掛けています。航空機や防衛関連、一般産業機械など、幅広い産業に向けた高精度な生産設備を提供し、国内市場の開拓を進めています。

工作機械や保守部品の販売代金、アフターサービス料金が主な収益源です。製造はオークマをはじめオークマ興産やオークマスチールテクノが担い、販売や保守は日本精機商会などの各子会社が国内の顧客ネットワークを通じてサービスを展開しています。

(2) 米州


北米から南米に至る地域において、工作機械の販売と顧客へのアフターサービスを提供しています。米国では航空宇宙・防衛、エネルギー関連などの重厚長大産業に向けた需要を取り込み、中堅・中小企業に対しても高度な自動化ソリューションを提案しています。

販売代理店や直接販売による製品販売代金と、メンテナンスや部品供給等のサービス収入が収益の柱です。運営は米国を拠点とするOkuma America Corporationやブラジルを拠点とするOkuma Latino Americanaが主体となって行っています。

(3) 欧州


ヨーロッパ全域において、多種多様な産業向けに工作機械の販売およびアフターサポートを展開しています。自動車産業や輸出産業の動向に対応しつつ、近年は航空機や防衛関連向けの設備投資ニーズを的確に捉え、工程集約型機械の提案を強化しています。

顧客からの工作機械の購入代金と、継続的な保守サービスや部品交換によるサービス収入が収益源となります。事業運営はOkuma Europe GmbHをはじめ、ドイツ、ベネルクス、オーストリアの各現地法人がそれぞれの地域に密着して行っています。

(4) アジア・パシフィック


中国、台湾、タイ、オーストラリア等で工作機械の製造・販売およびアフターサービスを展開しています。中国では半導体製造装置や風力発電、EV向けなどの旺盛な設備投資需要を背景に、大型案件の受注獲得と自動化ニーズへの対応を進めています。

現地での工作機械の製造・販売を通じた製品売上と、技術サポート等のサービス収入が主な収益源です。運営は北一大隈(北京)机床有限公司や大同大隈股份有限公司、大隈(常州)机床有限公司などの現地子会社が各地域の事業を牽引しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期分の業績をみると、売上高は一時的な増減があるものの、直近では過去最高を更新するなど総じて拡大傾向にあります。利益面では原材料価格や輸送コストの高止まり等の影響を受けて利益率が低下する局面も見られますが、高付加価値製品の拡販や価格転嫁の推進により、安定的な黒字を継続しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1728億円 2276億円 2280億円 2068億円 2359億円
経常利益 16億円 264億円 256億円 155億円 164億円
利益率(%) 9.0% 11.6% 11.2% 7.5% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 78億円 185億円 146億円 93億円 95億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益は拡大していますが、売上総利益率はやや低下しています。一方で、生産効率の向上やコスト削減の取り組みにより営業利益は増加しており、販売費及び一般管理費の対売上高比率も低下するなど、事業基盤の効率化による収益力強化が進んでいることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2068億円 2359億円
売上総利益 656億円 693億円
売上総利益率(%) 31.7% 29.4%
営業利益 147億円 155億円
営業利益率(%) 7.1% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が169億円(構成比31%)、運賃荷造費が128億円(同24%)を占めています。売上原価は1,666億円で、売上高に対する売上原価率は71%となっています。

(3) セグメント収益


日本市場の売上高が全体の約5割を占めており、米州やアジア・パシフィックとともに増収を達成しています。重厚長大産業や航空防衛関連での大型案件の獲得が寄与しており、グローバルな需要を的確に取り込んでいることが売上の伸びに繋がっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 961億円 1174億円
米州 631億円 685億円
欧州 338億円 344億円
アジア・パシフィック 139億円 157億円
連結(合計) 2068億円 2359億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 178億円 238億円
投資CF -153億円 -292億円
財務CF -35億円 29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ことを存在意義(Purpose)として掲げています。また、「総合一貫した“ものづくりサービス”を通して、世界中のお客様の価値創造に貢献することで、オークマと共に歩むすべての人々の幸せを実現する」ことを企業理念(Vision)に定めています。

(2) 企業文化


同社は、私たちが大切にしたい価値観(Value)として「ともに創る ともに喜ぶ」を掲げています。お客様のバリューチェーンの一員として、ともに新たな価値を創出する「コトづくり」に取り組んでおり、世界有数の総合工作機械メーカーとして培ってきた技術力や現場力を強みとして価値提供を行う文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030年までのビジョンとして、世界の製造業における社会課題を解決する企業を目指しています。中期経営計画2028では、ROICや営業利益率の向上を通じた資本効率と収益力の強化を推進し、ROEを最重要指標と位置付けた上で、2028年度に向けた具体的な数値目標を設定して経営基盤の強化を図っています。

・売上高:2,700億円
・営業利益率:11%以上
・ROE:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画2028において「顧客起点の価値創造」と「事業基盤の改革」を方針としています。労働力不足や製造現場の高度化を成長機会と捉え、重厚長大産業を中心に5軸制御マシニングセンタ等の高付加価値製品やAI・自動化ソリューションの拡販を進めるとともに、コスト構造改革による収益性向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人づくり」を重要課題とし、人材戦略を経営戦略の実現を支える基盤と位置付けています。専門性の高度化に加え、分野横断的な構想力を持つ次世代の経営人材の育成に注力しており、人事制度の改定を通じて能力と成果の適切な評価や、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.8歳 15.6年 7,023,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 87.2%
男女賃金差異(全労働者) 67.7%
男女賃金差異(正規雇用) 67.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用女性割合(29.1%)、キャリア採用割合(35.6%)、出産・育児休暇復職率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カントリーリスクと通商政策の変動

米国を中心とした関税措置や貿易政策の予期せぬ変更が事業に影響を与える可能性があります。また、中国や台湾での製造、グローバルでの販売活動において、政情悪化や法規制の変更が生じた場合、収益性の低下やサプライチェーンの再編を余儀なくされるリスクが存在します。

(2) 為替・金利・原材料価格の変動

海外売上高比率が高いため、外貨建て取引や投資が為替変動の影響を受けます。さらに、工作機械の主要原材料である鋳物や鋼材の価格高騰、海上運賃の上昇がコストアップ要因となるほか、金利上昇による支払利息の増加が同社の財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報システム・情報セキュリティ

業務のデジタル化が進む中、サイバー攻撃やシステム障害等により情報システムに支障が生じるリスクがあります。過去に海外子会社でランサムウェア感染が発生した事例もあり、安全な環境の再構築や再発防止策を講じていますが、万一の情報漏洩等の発生は事業活動に深刻な影響を及ぼす懸念があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

オークマの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

オークマの2026年3月期3Q決算は、大型EVや航空宇宙向け需要の取り込みにより、売上高11.8%増と順調に推移。次世代物流拠点「オークマ PDC」の稼働や江南工場への巨額投資など、ものづくりDXを加速させる同社の戦略を整理し、エンジニアやグローバル人材が活躍できるフィールドを解説します。