#オークマ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、オークマ株式会社 の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オークマってどんな会社?
工作機械と制御装置を自社開発する「機電情知」融合の技術力が特徴の総合工作機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1898年に大隈麺機商会として創業し製麺機を製造、1904年より工作機械の製造を開始しました。1949年に株式を上場し、1963年には自社製NC装置「OSP」を開発しました。1991年にオークマへ商号変更し、2013年には本社新工場(DS1)を建設する等、生産体制を強化しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は4,071名、単体従業員数は2,318名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第3位には事業会社である日本生命保険相互会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 19.47% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 11.74% |
| 日本生命保険相互会社 | 7.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は家城淳氏が務めています。社外取締役比率は26.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 家城淳 | 代表取締役社長 | 1985年入社。技術本部長、FAシステム本部長などを歴任し、2018年取締役副社長を経て2019年6月より現職。 |
| 領木正人 | 取締役副社長執行役員 | 1974年入社。FAシステム本部長、製造本部長などを歴任。2021年6月より現職。 |
| 堀江親 | 取締役専務執行役員 | 1983年入社。経理・企画部長、管理本部長などを歴任。2025年1月より現職。 |
| 山本武司 | 取締役常務執行役員 | 1982年入社。海外本部長などを経て、Okuma America Corporation取締役会長等を兼務。2021年7月より現職。 |
| 千田治光 | 取締役常務執行役員 | 1987年入社。技術本部長、研究開発部長などを歴任。2022年6月より現職。 |
| 幸村欣也 | 取締役常務執行役員 | 1990年入社。製造本部長、調達本部長などを歴任。2023年11月より現職。 |
| 旭泰博 | 取締役執行役員 | 1982年入社。大隈机床(上海)有限公司董事総経理、営業本部名古屋支店長などを歴任。2022年7月より現職。 |
社外取締役は、森脇俊道(神戸大学名誉教授)、竹中裕紀(イビデン相談役)、井上尚司(弁護士)、浅井紀子(中京大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア・パシフィック」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
同社および国内関係会社が担当し、NC旋盤、マシニングセンタ、複合加工機、NC研削盤等の工作機械の製造・販売およびアフターサービスを行っています。また、独自開発のNC装置(数値制御装置)を搭載した製品展開が特徴です。
製品の販売代金や保守サービス料が主な収益源です。運営は主に同社が行い、部品加工等はオークマ興産、機械設計は大隈技研、板金部品製造はオークマスチールテクノ、販売は日本精機商会などの連結子会社が担っています。
■(2) 米州
米国およびブラジルを中心とした地域において、工作機械の販売およびアフターサービスを展開しています。現地の製造業向けに、同社製品の供給とサポートを行っています。
製品の販売代金やサービス料が収益源です。運営は、米国のOkuma America CorporationやブラジルのOkuma Latino Americana Comércio Ltda.などの連結子会社が行っています。
■(3) 欧州
ドイツを中心とした欧州全域において、工作機械の販売およびアフターサービスを行っています。各国の現地法人が連携し、欧州市場での顧客対応を強化しています。
製品の販売代金やサービス料が収益源です。運営は、ドイツのOkuma Europe GmbHやOkuma Deutschland GmbH、ベネルクス、オーストリアなどの連結子会社が行っています。
■(4) アジア・パシフィック
中国、台湾、オーストラリア、タイなどのアジア・太平洋地域において、工作機械の製造・販売およびアフターサービスを行っています。中国や台湾には製造拠点も有しています。
製品の販売代金やサービス料が収益源です。運営は、北一大隈(北京)机床有限公司、大同大隈股份有限公司、大隈(常州)机床有限公司などの連結子会社が製造・販売を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2023年3月期から2024年3月期にかけて売上高は2,200億円台で推移していましたが、2025年3月期は国内外での設備投資需要の様子見姿勢などが影響し、減収減益となりました。利益率は前期の11%台から7%台へと低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,234億円 | 1,728億円 | 2,276億円 | 2,280億円 | 2,068億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 156億円 | 264億円 | 256億円 | 155億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 9.0% | 11.6% | 11.2% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 116億円 | 192億円 | 194億円 | 96億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると売上高の減少に伴い、各段階利益が縮小しています。売上総利益率は微減にとどまりましたが、販管費の増加などにより営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,280億円 | 2,068億円 |
| 売上総利益 | 744億円 | 656億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.7% | 31.7% |
| 営業利益 | 254億円 | 147億円 |
| 営業利益率(%) | 11.1% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬、給料及び手当が158億円(構成比31%)、運賃荷造費が119億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで減収減益となりました。日本は顧客の様子見により減収、米州は中堅・中小事業者の投資先送り等で減収となりました。欧州は主要国の景気後退等の影響を受け、アジア・パシフィックも中国の不動産不況等の影響で低調に推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,000億円 | 961億円 | 151億円 | 92億円 | 9.6% |
| 米州 | 706億円 | 631億円 | 54億円 | 30億円 | 4.8% |
| 欧州 | 413億円 | 338億円 | 30億円 | 10億円 | 3.0% |
| アジア・パシフィック | 160億円 | 139億円 | 14億円 | 10億円 | 6.9% |
| 連結(合計) | 2,280億円 | 2,068億円 | 254億円 | 147億円 | 7.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金を返済しつつ、投資も自己資金の範囲内で行っている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 178億円 |
| 投資CF | -126億円 | -153億円 |
| 財務CF | -107億円 | -35億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ことを存在意義(Purpose)としています。企業理念として、統合一貫した「ものづくりサービス」を通して世界中の顧客の価値創造に貢献し、共に歩むすべての人々の幸せを実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
機械と電気(制御)、情報、知識創造を融合させた「機電情知」の融合技術を基盤としています。工作機械だけでなく制御装置も自社開発し、ものづくりをトータルで支援・提供するという「トータルレスポンシビリティ」の思想を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期ビジョンの達成に向け、2025年度を最終年度とする「中期経営計画2025」を推進しています。2030年度には連結売上高3,000億円、営業利益率15%以上を目指しています。
* 連結売上高2,500億円(2025年度目標)
* 連結営業利益率13~15%(同上)
* ROE・ROIC 10%以上(同上)
■(4) 成長戦略と重点施策
「ものづくりDXソリューション」の展開を基本戦略とし、スマートマシンや自動化、脱炭素化ソリューションの提供を強化します。また、海外売上高比率70%以上の「グローバル70」達成を目指し、成長産業や強みのある産業をカバーすることで中長期的な成長を図ります。
* 連結売上高2,300億円(2025年度予想)
* 連結営業利益率9.6%(同上)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ものづくり」から「コトづくり」への変革に向け、「人づくり」を重視しています。新人事制度の導入により、発揮能力や成果への適切な評価、成長課題の明確化、「知・経験の多様化」を促進し、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.9歳 | 17.0年 | 6,888,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 76.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用数(92人)、キャリア採用数(64人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 工作機械の主要消費地域の経済状況
連結売上高に占める海外比率が高く、日本、米州、欧州、中国を含むアジアなどの主要消費地域の経済状況や設備投資需要の変動が、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(2) カントリーリスク
中国や台湾での製造、および世界各地での販売・サービス展開において、政情不安や法規制の予期せぬ変更などが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 為替、金利及び株価の変動リスク
グローバル展開に伴う外貨建て取引の為替変動、有利子負債にかかる金利上昇、保有株式の価格変動などが、同社の財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 資材の調達リスク
自然災害や疫病、需要増加などにより、工作機械の部品やユニットの調達が困難になった場合、生産活動が滞り、業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。