※本記事は、株式会社豊田自動織機 の有価証券報告書(第147期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月9日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 豊田自動織機ってどんな会社?
トヨタグループの源流企業であり、フォークリフト等の産業車両、自動車部品、繊維機械をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1926年に豊田佐吉発明の自動織機製造のため設立。1933年に自動車部を設置し、後のトヨタ自動車として分離独立させました。1956年にフォークリフトの製造を開始し、産業車両事業へ進出。2001年に現社名へ変更しました。近年は欧米の物流システム企業を買収し、物流ソリューション事業を拡大しています。
連結従業員数は79,454人、単体では14,506人です。筆頭株主は同社の自動車事業の主要販売先でもあるトヨタ自動車で、第2位は信託銀行、第3位はトヨタグループのトヨタ不動産です。なお、2025年6月にトヨタ不動産による公開買付けおよび同社の非公開化(上場廃止)の方針が公表されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 24.59% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.53% |
| トヨタ不動産 | 5.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役取締役社長は伊藤浩一氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 浩一 | 代表取締役取締役社長 | 1986年丸紅入社。1998年同社入社。常務役員、経営役員を経て2023年6月より現職。 |
| 寺師 茂樹 | 代表取締役取締役会長 | 1980年トヨタ自動車工業入社。同社取締役副社長、Executive Fellowを経て2024年6月より現職。 |
| 大西 朗 | 取締役 | 1981年同社入社。取締役社長、取締役副会長を経て2024年6月より現職。 |
| 熊倉 和生 | 取締役 | 1985年トヨタ自動車入社。同社調達本部長を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、隅修三(元東京海上日動火災保険取締役会長)、半田純一(マネジメント・ウィズダム・パートナーズ・ジャパン代表取締役社長)、清水季子(元日本銀行理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車」「産業車両」「繊維機械」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車
車両、エンジン、カーエアコン用コンプレッサー、電子機器、電池等の開発・製造を行っています。主要な顧客はトヨタ自動車などの自動車メーカーです。
収益は、完成車メーカー等への製品販売から得ています。運営は主に豊田自動織機が行うほか、ミシガン オートモーティブ コンプレッサー株式会社などの子会社が製造・販売を担っています。
■(2) 産業車両
フォークリフトトラック、ウェアハウス用機器、自動倉庫などの物流ソリューション製品の製造・販売および保守サービスを提供しています。グローバルに展開し、幅広い顧客基盤を持ちます。
収益は、製品の販売に加え、保守契約や物流ソリューションの工事契約から得ています。運営は同社のほか、トヨタ マテリアル ハンドリング ヨーロッパ株式会社やカスケード株式会社などのグループ会社が行っています。
■(3) 繊維機械
織機、紡機、糸品質測定機器、綿花格付機器などの製造・販売を行っています。繊維産業が盛んなアジア地域などを主要市場としています。
収益は、国内外の販売店や顧客への製品販売から得ています。運営は主に同社が行うほか、ウースター テクノロジーズ株式会社などの子会社が事業を展開しています。
■(4) その他
上記セグメントに含まれない事業として、主に陸上運送サービスなどを展開しています。
収益は、顧客への運送サービスの提供などから得ています。運営は主に大興運輸株式会社などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりに増加しており、2025年3月期には4兆円を突破しました。利益面でも、原材料価格高騰等の影響を受けつつも、販売価格への転嫁や円安効果などにより、当期利益は増加傾向にあり、増収増益基調を維持しています。
| 項目 | 2021年3月 | 2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | 2025年3月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 21,183億円 | 27,052億円 | 33,799億円 | 38,332億円 | 40,850億円 |
| 営業利益 | 1,182億円 | 1,591億円 | 1,699億円 | 2,004億円 | 2,217億円 |
| 営業利益率 | 5.6% | 5.9% | 5.0% | 5.2% | 5.4% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 1,367 | 1,803 | 1,929 | 2,288 | 2,623 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で増加し、売上総利益も増加しましたが、利益率は横ばいから微減傾向です。販売費及び一般管理費の増加がありつつも、その他の収益・費用の改善や金融収益の増加等が寄与し、営業利益は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 38,332億円 | 40,850億円 |
| 売上総利益 | 9,011億円 | 9,516億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.5% | 23.3% |
| 営業利益 | 2,004億円 | 2,217億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 5.4% |
■(3) セグメント収益
自動車事業は、欧米市場の低迷があったものの、エンジンや電動コンプレッサーの増加により増収増益となりました。産業車両事業は、値上げ効果や為替影響により増収を確保しました。一方、繊維機械事業はアジア市場の低迷により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車 | 11,195億円 | 11,798億円 | 182億円 | 451億円 | 3.8% |
| 産業車両 | 25,896億円 | 27,895億円 | 1,656億円 | 1,667億円 | 6.0% |
| 繊維機械 | 936億円 | 802億円 | 81億円 | 25億円 | 3.1% |
| その他 | 897億円 | 939億円 | 88億円 | 77億円 | 8.2% |
| 調整額 | -592億円 | -583億円 | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 38,332億円 | 40,850億円 | 2,004億円 | 2,217億円 | 5.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は「健全型」です。営業活動で得た資金を、設備投資や借入金の返済、自己株式の取得などに充当しており、財務基盤の健全性を維持しながら成長投資と株主還元を行っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4,436億円 | 1,716億円 |
| 投資CF | 479億円 | -434億円 |
| 財務CF | -2,095億円 | -1,987億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「住みよい地球と豊かな社会づくり」に取り組み、「クリーンで安全な優れた品質の商品」を提供することを基本理念としています。「公明正大」「社会貢献」「環境保全、品質第一」「顧客優先、技術革新」「全員参加」を掲げ、誠実な企業活動を実践しています。
■(2) 企業文化
「豊田綱領」を社是とし、創業者豊田佐吉の精神を受け継いでいます。現地現物やカイゼンといったトヨタ生産方式の思想が根底にあり、労使相互信頼と自己責任を基本に、一人ひとりの個性と能力を伸ばし、チームワークで総合力を発揮する「全員参加」の風土を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「2030年ビジョン」を掲げ、持続可能な社会への貢献と持続的な成長を目指しています。具体的な数値目標として、2030年度までに電動化・自動化の研究開発費比率70%以上、周辺領域や新事業領域の売上高1兆円超などを設定しています。また、CO2排出量削減などの非財務目標も定めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
物流ソリューション事業を軸に、モビリティ関連のものづくりと結びついた総合力の発揮や次世代R&Dへの挑戦を掲げています。特に電動化、自動運転技術の進展に対応し、環境性能に優れた製品や物流自動化技術の開発・販売拡大に注力しています。また、エンジン認証問題を受け、「風土」「しくみ」「組織/体制」の3つの改革による再発防止と、法規遵守・コンプライアンスの徹底による経営基盤の再構築を最優先課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員を最も大切な経営資本と位置づけ、経営人材の育成、専門性・活躍領域の拡大、多様な人材の活躍推進、活躍を後押しする環境整備を戦略の柱としています。グローバルリーダーの育成や、性別・国籍等を問わない多様性の尊重、フレックスタイム制度や在宅勤務などの柔軟な働き方の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 18.3年 | 8,422,325円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.2% |
| 男性育児休業取得率 | 63.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.68%)、有給休暇取得率(94%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンプライアンスリスク
国内外の法令遵守を経営の最重要課題としていますが、エンジン認証問題のような不正事案が発生した場合、社会的信用の失墜やブランドイメージの毀損、補償・訴訟関連費用の発生などにより、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主要な販売先への依存
車両およびエンジンなどの製品を主にトヨタ自動車に販売しており、売上高の約1割を占めています。同社は当社の筆頭株主でもあり、トヨタ自動車の自動車販売動向や生産計画の変動が、同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 災害や停電などによる影響
生産拠点の多くが東海地震の防災対策強化地域を含む中部地区に集中しています。大規模な地震や風水害などの自然災害、停電などが発生した場合、生産・納入活動の遅延や停止により、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 国際的な活動に潜在するリスク
グローバルに事業を展開しているため、各国の政治・経済情勢の変化、予期せぬ法規制の変更、テロ、戦争、感染症の流行などの社会的混乱、為替変動などが、事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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