椿本チエイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

椿本チエイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

椿本チエインは東京証券取引所プライム市場に上場し、チェーン、モーションコントロール、モビリティ、マテハン事業を展開する企業です。直近の業績は、米国等での販売増により増収を達成したものの、一時的な費用計上で営業減益となりました。一方、最終利益は負ののれん計上により増益となっています。


※本記事は、株式会社椿本チエインの有価証券報告書(第116期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 椿本チエインってどんな会社?


チェーンやモビリティ、マテハンシステムの製造・販売をグローバルに展開する機械メーカーです。

(1) 会社概要


1917年に初代社長が個人経営として創業し、1949年に大阪・東京証券取引所に株式上場しました。1970年に現在の社名である椿本チエインに変更し、事業部門の拡充を続けてきました。2026年には大同工業および同社子会社を株式交換によって連結子会社化し、事業基盤のさらなる強化を図っています。

現在の同社グループは、連結で12,228名、単体で3,126名の従業員を擁する体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社の太陽生命保険、第3位は従業員の持株共栄会となっており、安定した株主構成を維持しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.77%
太陽生命保険 8.78%
椿本チエイン持株共栄会 4.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長最高経営責任者の古世憲二氏と、代表取締役社長最高執行責任者の木村隆利氏が代表を務めています。取締役6名のうち、社外取締役は3名で比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
古世憲二 代表取締役取締役会長最高経営責任者 1977年同社入社。チェーン製造事業部生産技術部長、チェーン事業統括等を経て、2021年に取締役社長兼最高執行責任者に就任。2022年より現職。
木村隆利 代表取締役取締役社長最高執行責任者 1983年同社入社。チェーン事業部営業統括海外部長、マテハン事業統括等を経て、2021年に取締役に就任。2022年より現職。
宮地正樹 取締役 1984年同社入社。自動車部品事業部グローバル製造統括兼埼玉工場長などを経て、2021年にモビリティ事業統括に就任。2022年より現職。


社外取締役は、安藤圭一(元三井住友銀行代表取締役兼副頭取執行役員)、北山久恵(元有限責任あずさ監査法人専務役員)、谷所敬(元日立造船代表取締役会長兼CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「チェーン」「モーションコントロール」「モビリティ」「マテハン」および「その他」事業を展開しています。

チェーン

同社グループは、ドライブチェーン、コンベヤチェーン、ケーブル・ホース支持案内装置などの製品を提供しています。各種産業の製造設備や搬送設備を持つ企業が主な顧客となります。
収益は、これらのチェーン関連製品の販売対価として受け取ります。運営は同社のほか、大同工業やツバキ山久チエインなどがグローバルに展開しています。

モーションコントロール

減速機、直線作動機、軸継手、クラッチ、電気式制御機器などのトルク伝達商品群やユニット商品を提供しています。FA(ファクトリーオートメーション)化を進める製造業などが主な顧客です。
収益は、モーションコントロール関連製品の販売対価として受け取ります。運営は同社や大同工業、椿本スプロケットなどの各グループ会社が行っています。

モビリティ

エンジン用タイミングチェーンシステムや二輪車用部品、車載用クラッチなどのモビリティ関連製品を提供しています。国内外の自動車メーカーや二輪車メーカーが主な顧客となります。
収益は、これらタイミングチェーンシステムや二輪車用部品などの販売対価として得ています。運営は同社や大同工業、椿本鋳工などが国内外で展開しています。

マテハン

物流業界、ライフサイエンス分野、自動車業界などに向けた搬送・仕分け・保管システムや粉粒体搬送コンベヤなどを提供しています。自動化や省力化を求める幅広い業界の企業が顧客です。
収益は、これらマテハンシステムおよび関連機器の販売や請負工事の対価として受け取ります。運営は同社や大同工業、椿本バルクシステムなどが担っています。

その他

ビルメンテナンス、保険代理業、福祉機器、鋼材、新規事業、植物栽培設備など、報告セグメントに含まれない多様な事業を展開しています。
収益は、これら付随サービスや製品の提供対価として受け取ります。運営はツバキサポートセンターや新星工業などのグループ各社がそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面では経常利益が安定して推移する中、当期利益も一時的な費用の影響等による変動はあるものの、着実に成長を続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,159億円 2,516億円 2,668億円 2,792億円 2,959億円
経常利益 200億円 210億円 235億円 253億円 248億円
利益率(%) 9.3% 8.3% 8.8% 9.1% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 97億円 118億円 102億円 164億円 210億円

(2) 損益計算書


直近の損益構成を確認すると、売上高は増加し売上総利益も拡大していますが、販管費等の増加により営業利益は減益となりました。売上総利益率は約30%を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,792億円 2,959億円
売上総利益 822億円 873億円
売上総利益率(%) 29.4% 29.5%
営業利益 229億円 216億円
営業利益率(%) 8.2% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が218億円(構成比33.2%)、荷造運送費が70億円(同10.6%)を占めています。売上原価は2,086億円で、売上高に対する構成比は70.5%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、全ての事業で増収を達成しています。特にモビリティ事業はハイブリッド車向け需要の拡大により大幅な増益を牽引しました。一方、チェーンやマテハン事業は経済環境の影響等で減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
チェーン 943億円 998億円 156億円 154億円 15.4%
モーションコントロール 229億円 240億円 8億円 10億円 4.2%
モビリティ 912億円 974億円 83億円 100億円 10.3%
マテハン 681億円 706億円 12億円 10億円 1.4%
その他 27億円 41億円 -8億円 -12億円 -28.9%
調整額 -億円 -億円 -22億円 -46億円 -%
連結(合計) 2,792億円 2,959億円 229億円 216億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー・パターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 213億円 319億円
投資CF -118億円 -90億円
財務CF -217億円 -202億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.5%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、つばきグループ共通の企業理念・行動指針である「TSUBAKI SPIRIT」を制定しています。社会的使命として「動かすことに進化をもたらし、社会の期待を超えていきます。」を掲げ、モノづくりにこだわり、その枠を超えたソリューションの提供を通じて真に社会が求める価値を提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


創業の精神である「和を以て貴しと為す」を大切にし、人を何より尊重し、常に力を合わせ、妥協せず切磋琢磨して互いに理解し合うことを行動の基本としています。技術を磨き続ける「モノづくり」へのこだわりとともに、多様な意見や価値観の尊重がイノベーションと持続的成長を生み出す風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2030」において、持続的な成長と収益力の向上を目指す以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:4,500億円以上
* 営業利益率:10%以上
* ROE:10%以上
* 配当性向:35%以上を基準とする

(4) 成長戦略と重点施策


「長期ビジョン2030」の実現に向け、既存事業における収益力を高め、新規ビジネスの事業化を加速させることで持続的成長を目指します。また、チェーンとモーションコントロールを統合した「パワートランスミッション事業」でのシナジー創出や、モビリティ事業でのグローバル生産最適化、マテハン事業でのエンジニアリング力強化などを重点的に推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材が最大の経営基盤」という認識のもと、従業員の成長につながる育成と活躍支援を行っています。職種を問わず体系的・計画的な育成機会を提供し、技術者向けの「テクノスクール」など専門教育も充実させています。多様な人材が能力を最大限発揮できるよう、ダイバーシティ推進や働き方改革による柔軟な環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.5歳 16.5年 6,988,832円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 41.1%
男女賃金差異(全労働者) 61.5%
男女賃金差異(正規雇用) 80.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 26.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人社員数(31人)、有給休暇取得率(78.0%)、産休・育休後の復帰率(98.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境変動のリスク

同社グループがターゲットとする市場において、景気の下ぶれによる設備投資の減少や、最大顧客である自動車業界における急激な需要変動や構造変化(内燃機関搭載自動車の生産台数減少など)があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 気候変動に関するリスク

カーボンニュートラル達成に向けた取り組みを強化していますが、気候変動や環境規制への対応が遅れた場合、事業機会の損失や調達コストの上昇が見込まれます。また、自然災害の激甚化により事業活動の継続が困難になるリスクがあります。

(3) サプライチェーンに関するリスク

サプライチェーンがグローバルに広がっているため、各国での政治的・経済的な要因による混乱や、サプライヤー個別の事由で部品調達が困難になった場合、製品の生産減少や遅延などが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 品質に関するリスク

モノづくり企業として品質管理を徹底していますが、製品の不具合による重大な事故、リコール、クレームや品質不正等が発生した場合、ブランドイメージの悪化や補償費用の増加が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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