アイシン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイシン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場するトヨタグループの大手自動車部品メーカーです。パワートレインや走行安全システム等の自動車部品、エナジーソリューション製品をグローバルに展開しています。2025年3月期の業績は、売上収益は微減でしたが、営業利益や当期利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社アイシン の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. アイシンってどんな会社?


自動車部品やエナジーソリューション製品の開発・製造・販売を行う、トヨタグループの中核サプライヤーです。

(1) 会社概要


1949年に愛知工業として設立され、1965年に新川工業と合併してアイシン精機となりました。1969年にはアイシン・ワーナー(後のアイシン・エィ・ダブリュ)を設立し、AT(自動変速機)分野に進出しました。2021年にアイシン・エィ・ダブリュを吸収合併し、現在の商号へ変更して経営統合を果たしました。

連結従業員数は114,449名、単体では34,384名が在籍しています。筆頭株主は創業に関わるトヨタ自動車であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に信託銀行です。トヨタグループの一員として、強固な資本関係と事業基盤を有しています。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 21.35%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.77%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は吉田守孝氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田 守孝 取締役社長代表取締役 1980年トヨタ自動車工業入社。同社副社長、豊田中央研究所会長等を経て、2021年6月より現職。
伊藤 慎太郎 取締役代表取締役 1983年アイシン精機入社。同社専務役員、執行役員等を経て、2021年6月より現職。
山本 義久 取締役 1989年アイシン・エィ・ダブリュ入社。同社専務役員、アイシン副社長執行役員等を経て、2022年6月より現職。
西川 昌宏 取締役 1984年アイシン精機入社。同社専務役員、取締役、執行役員等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、濵田道代(名古屋大学名誉教授)、新誠一(電気通信大学名誉教授)、小林耕士(トヨタ自動車番頭・ExecutiveFellow)、星野次彦(東急不動産ホールディングス社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「北米」、「欧州」、「中国」、「アセアン・インド」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


パワートレイン、走行安全、車体、LBS(位置情報活用サービス)などの自動車部品およびエナジーソリューション関連製品の製造・販売を行う最大セグメントです。電動化ユニットやブレーキシステム、コージェネレーションシステムなど幅広い製品を取り扱っています。

収益は主に自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はアイシンを中心に、アイシン高丘、アイシン化工、アドヴィックスなどの国内グループ会社が担っています。

(2) 北米


米国を中心に、パワートレイン関連や走行安全関連、車体関連などの自動車部品の製造・販売を行っています。現地自動車メーカーのニーズに対応した生産体制を構築しています。

収益は北米地域の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は統括会社のアイシン・ホールディングス・オブ・アメリカのもと、アイシン・ワールド・コープ・オブ・アメリカなどの現地法人が行っています。

(3) 欧州


欧州地域において、パワートレイン関連や走行安全関連などの自動車部品の製造・販売を行っています。環境規制の厳しい欧州市場向けに、電動化対応製品などを展開しています。

収益は欧州地域の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はアイシン・ヨーロッパなどの現地法人が行っています。

(4) 中国


中国地域において、オートマチックトランスミッションや車体部品などの自動車部品の製造・販売を行っています。急速に変化する中国市場において、現地メーカー向けの供給も拡大しています。

収益は中国地域の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はアイシン(中国)投資などの現地法人が行っています。

(5) アセアン・インド


タイ、インドネシア、インドなどを中心に、トランスミッションやエンジン部品などの自動車部品の製造・販売を行っています。成長市場における需要を取り込んでいます。

収益はアセアン・インド地域の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はアイシン・アジア・パシフィックなどの現地法人が行っています。

(6) その他


上記報告セグメントに含まれない地域(南米等)での自動車部品事業や、フェムト秒ファイバーレーザー、住宅リフォーム、建設土木事業などを行っています。

収益は各事業における製品・サービスの販売から得ています。運営はアイシン・オートモーティブ(ブラジル)やアイシン開発などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は過去5期間において増加傾向にありましたが、直近では横ばいとなっています。一方、税引前利益や当期利益は変動が見られるものの、直近期は増益となり、利益率は改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 35,258億円 39,174億円 44,028億円 49,096億円 48,961億円
税引前利益 1,675億円 2,200億円 737億円 1,499億円 1,734億円
利益率(%) 4.8% 5.6% 1.7% 3.1% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,056億円 1,419億円 377億円 908億円 1,076億円

(2) 損益計算書


売上収益は微減しましたが、売上原価の減少等により売上総利益は増加し、営業利益率は改善しています。円安効果や企業体質改善努力が利益を押し上げました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 49,096億円 48,961億円
売上総利益 5,507億円 5,635億円
売上総利益率(%) 11.2% 11.5%
営業利益 1,434億円 2,029億円
営業利益率(%) 2.9% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,404億円(構成比37%)、運賃及び荷造費が588億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上減少ながら増益、北米セグメントは増収増益となりました。欧州および中国セグメントは売上・利益ともに減少しました。アセアン・インドは増収増益と好調でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 31,953億円 31,393億円 626億円 737億円 2.3%
北米 10,005億円 10,869億円 -252億円 293億円 2.7%
欧州 3,759億円 2,959億円 775億円 44億円 1.5%
中国 6,353億円 6,189億円 365億円 324億円 5.2%
アセアン・インド 5,001億円 5,302億円 562億円 594億円 11.2%
その他 426億円 379億円 47億円 35億円 9.3%
調整額 -84,016億円 -81,313億円 9億円 3億円 -
連結(合計) 49,096億円 48,961億円 1,434億円 2,029億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4,997億円 3,399億円
投資CF -932億円 -1,469億円
財務CF -2,117億円 -2,702億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を経営理念として掲げています。移動に自由と喜びを、未来地球に美しさを運び続けることを使命とし、持続可能な社会の実現と企業価値向上の好循環を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「サステナビリティ経営」を推進し、「自然との共生、持続可能な未来への貢献」「世界中の人々に移動の自由を提供」「多様な人材の活躍と人生の充実」という3つのマテリアリティ(重要課題)を設定しています。これらを通じて中長期的な価値創造を強化する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2030年度の経営目標として以下の数値を掲げています。

* 売上収益:5.5〜6.0兆円
* 営業利益率:8%
* ROIC(投下資本利益率):13%

(4) 成長戦略と重点施策


2030年の目標達成に向けて、電動化・知能化といった成長領域への経営資源シフトを加速します。また、オートマチックトランスミッション等のフルラインアップ戦略による収益拡大を軸に、事業ポートフォリオの変革を進めます。さらに、事業資産の圧縮や政策保有株式の売却などのバランスシート改革により創出したキャッシュを、成長投資と株主還元に投入します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロ人材の活躍・成長」「チャレンジの促進」「グループ総合力の強化」を重点に、人的資本の拡充を推進しています。人事制度改定による主体性の喚起や、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を通じて、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。特に女性やシニアの活躍、グローバルでの人材確保・育成を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 16.9年 7,377,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 62.8%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規雇用) 70.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、働きがい(3.3ポイント)、休業度数率(0.25)、重大災害件数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況


同社グループの製品の多くは自動車関連であり、主要市場である日本、北米、欧州、中国等の経済・景気動向の影響を受けます。これら市場における自動車需要の縮小は、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動


海外売上比率が高いため、為替レートの変動が業績に影響を与えます。現地通貨建て項目の円換算額の変動や、輸出取引における円高進行は、製品の価格競争力低下などを通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金融市況の変動


株式市況の低迷による保有株式の価値変動や、金利変動による資金調達コストの増減が業績に影響を与える可能性があります。また、年金資産の運用環境悪化により確定給付制度債務が増加するリスクもあります。

(4) 原材料や部品の調達


製品製造に必要な原材料や部品を外部から調達しており、市況高騰や供給元の被災、地政学リスク等により調達難や価格上昇が生じた場合、生産活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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