ミネベアミツミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミネベアミツミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するミネベアミツミは、ベアリング等の精密機械部品からモーター、半導体、自動車部品まで幅広い製品を展開する総合精密部品メーカーです。直近の業績は、データセンター向け需要や自動車部品等の販売が堅調に推移し、増収増益を達成。積極的なM&Aによる事業拡大も推進しています。


※本記事は、ミネベアミツミの有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ミネベアミツミってどんな会社?


ベアリングなどの超精密機械加工技術を核に、モーターや半導体等を組み合わせた「相合」部品を展開する企業です。

(1) 会社概要


1951年に日本初のミニチュアベアリング専門メーカーとして設立され、1961年に株式を上場しました。その後、海外生産拠点の拡大やM&Aを積極的に行い、2017年にミツミ電機と経営統合し現在の社名へ変更。近年もユーシン、エイブリック、ホンダロックなどを子会社化し、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結81,383名、単体4,946名の大規模なグローバル組織です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には元社長の提唱で設立された公益財団法人の高橋産業経済研究財団が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.28%
日本カストディ銀行(信託口) 7.95%
公益財団法人高橋産業経済研究財団 3.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役 会長 CEOは貝沼由久氏が務めています。社外取締役の比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
貝沼由久 代表取締役 会長 CEO 1988年同社入社。取締役法務担当、欧米地域営業本部長等を経て、2009年に代表取締役社長執行役員に就任。2023年より現職。
森部茂 代表取締役 副会長 1980年ミツミ電機入社。同社開発本部長、営業本部長等を経て2002年代表取締役社長に就任。2017年より同社代表取締役副会長として現職。
岩屋良造 取締役 副社長執行役員 特命担当 1981年同社入社。電子機器事業本部長、ミツミ事業本部長等を歴任。ユーシン事業本部長等を経て、2025年より現職。
水間聡 取締役 専務執行役員 プレシジョンテクノロジーズ事業本部長 1986年同社入社。ボールベアリング事業部長等を経て、プレシジョンテクノロジーズ事業本部長に就任。2023年より現職。
鈴木克敏 取締役 常務執行役員 技術本部長 1986年同社入社。技術執行役などを経て技術本部長に就任。相合活動推進本部長等も兼任し、2023年より現職。
吉田勝彦 取締役 社長執行役員 COO & CFO 東京本部長 1984年同社入社。経営管理本部長、東京本部長等を経て、2023年より取締役社長執行役員COO&CFOに就任し現職。
松岡卓 取締役(非業務執行) 啓愛社の取締役や副社長執行役員などを歴任し、2005年に同社社外取締役に就任。2024年より同社取締役(非業務執行)として現職。


社外取締役は、宮崎裕子(長島・大野・常松法律事務所 顧問・指名・報酬委員会委員長)、松村敦子(東京国際大学 名誉教授)、芳賀裕子(芳賀経営コンサルティング事務所 代表)、片瀬裕文(日本I-Pulse 代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プレシジョンテクノロジーズ事業」、「モーター・ライティング&センシング事業」、「セミコンダクタ&エレクトロニクス事業」、「アクセスソリューションズ事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) プレシジョンテクノロジーズ事業


ボールベアリング、ロッドエンドベアリング、HDD用ピボットアッセンブリー等のメカニカルパーツや航空機用ねじを展開しています。主力製品のボールベアリングは、データセンター向けのサーバーや航空機向けの旺盛な需要に対応しています。

製品の製造・販売を通じて顧客から対価を受け取ります。運営は同社のほか、タイ、中国、カンボジア等の海外生産子会社や、欧米に所在する販売子会社がグローバルに担っています。

(2) モーター・ライティング&センシング事業


電子デバイス(液晶用バックライト等)、HDD用スピンドルモーター、センシングデバイス(計測機器)、各種モーター(ステッピング、DC、ファン、車載用等)を提供しています。スマートフォンや自動車、家電、産業機器など多様な市場に向けた製品群を有しています。

モーターなどの製品販売代金を収益の柱としています。運営は同社を中心に、タイ、中国、マレーシア、スロバキアなどに展開する生産子会社と各地域の販売子会社が連携して行っています。

(3) セミコンダクタ&エレクトロニクス事業


半導体デバイス、光デバイス、機構部品および電源部品の開発・製造・販売を行っています。リチウムイオン電池向け保護ICや車載・産業機器向けアナログIC、スマートフォンのカメラ用アクチュエータなど、高付加価値デバイスを顧客に提供しています。

製品の提供による売上が主な収益源です。同社のほか、ミツミ電機、エイブリック、ミネベアパワーデバイスといった専門技術を持つ子会社がそれぞれの強みを活かして運営を担っています。

(4) アクセスソリューションズ事業


キーセット、ドアラッチ、ドアハンドルなどの自動車部品のほか、産業機器用部品を展開しています。自動車メーカーに対して、商品価値の向上や次世代のユーザーアクセス環境の実現に貢献する部品を提供しています。

自動車メーカー等への製品販売により収益を得ています。運営は主にユーシンやミネベア アクセスソリューションズなどの子会社が担当し、グローバルでの量産プロジェクトを推進しています。

(5) その他の事業


ソフトウェアの設計、開発、システム運用および自社製機械の製造・販売を行っています。ソフトウェア技術を通じて、グループ全体の製品競争力強化にも貢献しています。

ソフトウェア開発や自社製機械の提供による対価を収益としています。事業の運営は、主にミネベア ソフトウェアソリューションズが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で一貫して成長を続け、1兆1,241億円から1兆6,644億円へと力強く拡大しています。税引前利益も一時的な踊り場を経て直近では過去最高水準の1,338億円を記録し、利益率も8.0%まで回復するなど、M&Aを含めた事業拡大と収益性の向上が着実に進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 11,241億円 12,922億円 14,021億円 15,227億円 16,644億円
税引前利益 908億円 921億円 755億円 826億円 1,338億円
利益率(%) 8.1% 7.1% 5.4% 5.4% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 689億円 732億円 540億円 595億円 990億円

(2) 損益計算書


売上高は1兆5,227億円から1兆6,644億円へと増収を達成し、営業利益も945億円から1,040億円へと着実に拡大しています。営業利益率は6.2%を維持しており、世界的な事業規模の拡大と安定した収益確保のバランスを保ちながら経営を行っていることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 15,227億円 16,644億円
売上総利益 565億円 647億円
売上総利益率(%) 3.7% 3.9%
営業利益 945億円 1,040億円
営業利益率(%) 6.2% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が127億円(構成比22%)、業務委託費が95億円(同16%)、研究開発費が70億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のプレシジョンテクノロジーズ事業はデータセンター向けサーバーや航空機向けの需要が牽引して増収増益でした。モーター・ライティング&センシング事業やセミコンダクタ&エレクトロニクス事業も好調に推移し、全報告セグメントで増益を達成して業績を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
プレシジョンテクノロジーズ事業 2,557億円 2,812億円 557億円 622億円 22.1%
モーター・ライティング&センシング事業 4,269億円 4,565億円 254億円 269億円 5.9%
セミコンダクタ&エレクトロニクス事業 5,084億円 5,903億円 196億円 267億円 4.5%
アクセスソリューションズ事業 3,281億円 3,322億円 159億円 171億円 5.1%
その他の事業 35億円 42億円 -12億円 -27億円 -63.2%
調整額 - - -209億円 -263億円 -
連結(合計) 15,227億円 16,644億円 945億円 1,040億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,337億円 949億円
投資CF -1,258億円 -828億円
財務CF 640億円 -161億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「より良き品を、より早く、より多く、より安く、より賢くつくることで持続可能かつ地球にやさしく豊かな社会の実現に貢献する」を経営理念に、「世界を動かす、なくてはならない会社」をビジョンとして掲げています。持続可能性を重視し、地球と社会の豊かな発展に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


社是である「五つの心得」(従業員が誇りを持てる会社、お客様の信頼、株主の期待、地域社会の歓迎、国際社会の発展への貢献)の実践を重視しています。また、あらゆるリソースを掛け合わせて新たな価値を創造する独自の「相合(そうごう)」を基盤に、常識を超えた違いを生み出す文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期を目標達成年とする中長期的な経営計画を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 売上高2.5兆円
* 営業利益2,500億円

(4) 成長戦略と重点施策


「コア事業『8本槍』の強化と相合によるシナジー創出」を基本戦略としています。最先端技術への対応やAI・DXの製造現場への導入による生産性向上を進めるとともに、M&Aやアライアンスを積極的に展開し、事業の拡大と地球環境課題の解決を両立させる盤石な基盤構築に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を中長期的な企業価値向上の最重要ドライバーと位置づけています。「自発的に行動して成果を創出する人材集団」への変革を目指し、将来の経営を担うコア人材の計画的な発掘・育成、現場のプロフェッショナル育成、そして成果に基づく公正な人事制度の導入など、能力を最大限発揮できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.0歳 15.9年 7,853,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用) 80.2%
男女賃金差異(パート・有期) 79.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(8.0%)、グローバル全体の持続可能なエンゲージメントスコア(86)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外展開に潜在する地政学・社会的リスク

同社グループは世界各国に多数の生産・営業拠点を有しており、予期しない法令等の変更、テロや社会的混乱といったカントリーリスクに直面する可能性があります。これに対し、危機管理マニュアルの整備や、緊急事態でも供給責任を果たせるよう分散した生産拠点の構築を進めています。

(2) 急激な市場環境の変化と低価格競争

主力のPC・情報通信機器、自動車部品、航空機部品市場は国内外で競争が激しく、急激な需要縮小や低価格製品との競合が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は付加価値の高い「オンリーワン」の製品づくりに注力し、市場での競争力維持に努めています。

(3) サプライチェーンにおける調達・物流網の寸断

部品等の調達や物流を外部のパートナーに委託しているため、地政学上の有事やパンデミック、パートナーの被災等により供給が途絶えるリスクがあります。これに対して、調達先の分散や輸送ルートの多様化を図り、安定的なサプライチェーンの確保に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ミネベアミツミの転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

ミネベアミツミの2026年3月期2Q決算は、上半期売上高が過去最高を更新し、通期業績予想を1兆5,500億円へ上方修正。「なぜ今ミネベアミツミなのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を、新会社「ミネベアリニアモーション」の始動やロボット市場への参入戦略から整理します。


【面接対策】ミネベアミツミの中途採用面接では何を聞かれるのか

機械加工品と電子機器の両輪で事業を展開するミネベアミツミへの転職。中途採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、一緒に仕事をする仲間として多角的に評価されるので、事前にしっかり対策しておきましょう。