※本記事は、日立建機株式会社 の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 日立建機ってどんな会社?
建設機械・運搬機械の製造・販売・サービスをグローバルに展開する、世界有数の建設機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1955年に日立建設機械サービスとして設立され、1970年に製造部門と販売部門が合併し日立建機が設立されました。1989年に東京証券取引所市場第一部に指定されています。2017年にはオーストラリアのBradken Pty Limited等を子会社化し、2022年にはHCJIホールディングスと資本提携契約を締結しました。
連結従業員数は26,101名、単体従業員数は5,991名です。筆頭株主は資本提携先であるHCJIホールディングスで、第2位はブランド使用許諾契約等を締結している日立製作所、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HCJIホールディングス | 25.99% |
| 日立製作所 | 25.42% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性25名、女性2名の計27名で構成され、女性役員比率は7.4%です。代表者は代表執行役執行役社長COOの先崎正文氏です。取締役会における社外取締役比率は70.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平野 耕太郎 | 代表執行役執行役会長CEO | 1981年同社入社。生産・調達本部副本部長等を経て2017年代表執行役執行役社長。2023年4月より現職。 |
| 先崎 正文 | 代表執行役執行役社長COO | 1991年同社入社。ロシア・CIS事業部長、執行役営業本部長、経営戦略本部長等を経て2023年4月より現職。 |
| 梶田 勇輔 | 代表執行役執行役副社長 | 1987年同社入社。コンストラクションビジネスユニット長、代表執行役等を経て2025年5月より現職。 |
| 塩嶋 慶一郎 | 取締役 | 1988年同社入社。財務本部長、執行役常務等を経て2021年6月より現職。 |
社外取締役は、伊藤正明(元クラレ社長・会長)、岡俊子(元アビームM&Aコンサルティング社長)、奥原一成(元富士重工業副社長)、菊池きよみ(TMI総合法律事務所弁護士)、Joseph P.Schmelzeis,Jr.(元駐日米国大使館首席補佐官)、藤澤健(日立製作所社会ビジネスユニットCOO)、馬上英実(日本産業パートナーズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設機械ビジネス」および「スペシャライズド・パーツ・サービスビジネス」事業を展開しています。
■建設機械ビジネス
油圧ショベル、超大型油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械製品の製造・販売および、これらに関連する部品・サービスの販売を行っています。建設機械に関連する一連のトータルライフサイクルを提供することを主たる目的としています。
収益は、建設機械の製品本体や部品の販売代金、およびメンテナンス等のサービス料から構成されています。運営は、同社および日立建機日本、日立建機(ヨーロッパ)N.V.、日立建機(中国)有限公司などの連結子会社が行っています。
■スペシャライズド・パーツ・サービスビジネス
建設機械ビジネスセグメントに含まれないマイニング設備および機械のアフターセールスにおける部品開発、製造、販売およびサービスソリューションの提供を行っています。鉱業およびインフラ産業向けのソリューション提供を主たる目的としています。
収益は、マイニング設備等の部品販売やサービスソリューションの提供対価から得ています。運営は主に、Bradken Pty LimitedおよびH-E Parts International LLCなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2024年3月期にかけて売上収益は増加傾向にありましたが、2025年3月期は微減となりました。利益面では、2024年3月期に高い利益水準を達成しましたが、2025年3月期は減益となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 8,133億円 | 10,250億円 | 12,649億円 | 14,059億円 | 13,713億円 |
| 税引前利益 | 256億円 | 1,109億円 | 1,150億円 | 1,605億円 | 1,342億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | 10.8% | 9.1% | 11.4% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 103億円 | 758億円 | 702億円 | 933億円 | 814億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上収益および各利益段階で減少が見られます。売上総利益率は31%前後を維持していますが、営業利益率は前期の11.6%から11.3%へとわずかに低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14,059億円 | 13,713億円 |
| 売上総利益 | 4,352億円 | 4,286億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.0% | 31.3% |
| 営業利益 | 1,627億円 | 1,547億円 |
| 営業利益率(%) | 11.6% | 11.3% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が284億円(構成比約10%)、研究開発費が282億円(同約10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設機械ビジネスは、北米・欧州などでの物量減少や成長投資の増加等により減収減益となりました。一方、スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスは、事業買収の影響等もあり増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設機械ビジネス | 12,823億円 | 12,440億円 | 1,483億円 | 1,406億円 | 11.3% |
| スペシャライズド・パーツ・サービスビジネス | 1,299億円 | 1,356億円 | 143億円 | 141億円 | 10.4% |
| 調整額 | -63億円 | -84億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 14,059億円 | 13,713億円 | 1,627億円 | 1,547億円 | 11.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 730億円 | 1,439億円 |
| 投資CF | -390億円 | -528億円 |
| 財務CF | -89億円 | -854億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「豊かな大地、豊かな街を未来へ 安全で持続可能な社会の実現に貢献します」というビジョンを掲げています。「お客さまの課題をともに解決する、身近で頼りになるパートナー」として、革新的な製品・サービス・ソリューションを協創し、新たな価値を創造し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
全従業員がグループ共通の行動規範であるスピリット「Challenge Customer Communication」の下で行動することを重視しています。お客さまの期待に応え、事業競争力とグループ経営力の強化を追求し、持続可能な社会の構築と事業成長の実現を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2023年を初年度とする中期経営計画「BUILDING THE FUTURE 2025 未来を創れ」を推進しており、2025年度までに着実な成長と成果を目指しています。2025年度の目標達成に向けて全社一丸となって取り組んでおり、CO2削減やダイバーシティなどのESG項目についても計画に沿って進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供」を柱に、真のソリューションプロバイダーを目指しています。具体的には、ニューコンセプト「LANDCROS」の展開や、「Open Source & Technology Partnerships」戦略による技術・製品開発を推進しています。また、米州事業の拡大として中南米の事業基盤強化や、マイニングおよびSPS事業の収益拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画において「人・企業力の強化」を経営戦略の柱の一つとし、経営戦略と人財戦略の連動を明確にしています。「組織健康度の向上」と「生産性の向上」を人財KGIとして設定し、各種施策の強化に取り組んでいます。また、デジタル人財の育成に注力し、自己変革プログラムやデジタルリテラシー研修などを通じて、全社員のスキル向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.4歳 | 15.5年 | 7,743,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 78.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 83.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変動
事業の需要はインフラ整備等の公共投資や資源開発等の民間設備投資に大きく影響されます。各地域の急激な経済変動や地政学的変動により需要が下振れし、工場操業度の低下や在庫の過不足、競合激化による売価下落などが生じ、収益が悪化するリスクがあります。これに対し、需要動向や市況の変化に応じた生産対応や適正在庫の管理を行っています。
■(2) 為替相場の変動
グローバルに事業展開しているため、外国通貨建ての売上や原材料調達コスト、在外連結子会社の財務諸表の円貨換算額が為替変動の影響を受けます。通常、円高は財政状態や経営成績にマイナスの影響を及ぼします。現地生産や先物為替予約等によりリスク軽減を図っていますが、完全に回避することは困難であり、悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金融市場の変動
有利子負債を有しているため、市場金利の上昇により支払利息が増加し、利益が減少するリスクがあります。また、年金資産に関しても、市場性のある証券の公正価値や金利等の変動が財政状態や経営成績に悪影響を与えるリスクがあります。これらに対し、固定金利調達による金利変動リスクの軽減や、年金資産の運用状況の監視を行っています。
■(4) 生産・調達・関税等
製品原価に占める部品・資材の割合が大きく、素材市況の変動影響を受けます。原材料価格の高騰は製造原価を上昇させ、部品・資材の品薄は生産効率の低下を招く可能性があります。また、関税や物流費の上昇も収益に悪影響を与えるリスクがあります。これに対し、原価低減活動や生産性向上、適正な販売価格の確保、代替品への切り替えなどで対応しています。



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