日本トムソン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本トムソン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。針状ころ軸受および直動案内機器等を中心とする機械部品の製造・販売を行う。2025年3月期は、エレクトロニクス関連需要が増加したものの、欧州・中国市況の低迷等により減収、営業利益は前期比約50%減の減益となった。


※本記事は、日本トムソン株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本トムソンってどんな会社?

針状ころ軸受(ニードルベアリング)と直動案内機器を主力とする機械要素部品メーカーです。独自技術を強みとし、産業機械等の発展を支えています。

(1) 会社概要

1950年に設立し、軸受等の販売を開始しました。1959年にはニードルベアリングの生産を開始し、1963年に現在の社名へ変更しました。1968年に東証一部へ上場し、1978年には直動案内機器「リニアウェイ」を開発・販売開始しました。2017年には中国の軸受製造・販売会社を子会社化しています。

連結従業員数は2,366名、単体では1,024名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は取引先で構成される日本トムソン取引先持株会、第3位は機関投資家の日本生命保険相互会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.03%
日本トムソン取引先持株会 8.29%
日本生命保険相互会社 6.05%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長は宮地茂樹氏、代表取締役社長は細野幹人氏です。取締役(監査等委員を含む)11名のうち社外取締役は7名で、比率は約64%です。

氏名 役職 主な経歴
宮地茂樹 代表取締役取締役会長 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行を経て同社入社。経営企画部長、常務取締役、代表取締役社長を歴任し、2025年4月より現職。
細野幹人 代表取締役取締役社長 1990年同社入社。人事総務部長、執行役員経営企画部長などを経て、2025年4月より現職。
秀島信也 取締役副会長 ヤマハ発動機取締役常務執行役員などを経て、2019年同社社外取締役就任。専務取締役を経て2025年6月より現職。
西村修 取締役 2000年同社入社。生産企画部長、執行役員経営企画部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、武井洋一(明哲綜合法律事務所パートナー)、齊藤聡(産業能率大学経営学部教授)、野田篤子(グロッセ・ジャパン代表取締役CEO)、松本展広(元三菱東京UFJ銀行執行役員)、那須健人(ブレークモア法律事務所パートナー)、林田和久(公認会計士)、佐伯里香(ユーシステム代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「軸受等」および「諸機械部品」の製造・販売事業を展開しています。

**(1) 軸受等**
針状ころ軸受(ニードルベアリング)および直動案内機器等を製造・販売しています。これらは産業機械やエレクトロニクス関連機器等の重要機械要素として使用されています。
製品の販売対価を収益源としています。運営は日本トムソンおよび国内外の連結子会社が行っています。

**(2) 諸機械部品**
軸受等以外の各種機械部品の製造・販売を行っています。顧客は幅広い業種の機械メーカー等です。
製品の販売対価を収益源としています。運営は日本トムソンおよび連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあり、直近では544億円となっています。利益面では、2023年3月期に高い利益率を記録しましたが、その後は減益基調にあり、直近の経常利益率は3.4%まで低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 443億円 623億円 683億円 550億円 544億円
経常利益 2億円 75億円 105億円 45億円 18億円
利益率(%) 0.5% 12.0% 15.4% 8.2% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -13億円 9億円 73億円 27億円 10億円

(2) 損益計算書

売上高は微減となり、売上原価率の上昇等により売上総利益率は低下しました。営業利益は前期比で約半減しており、利益率も2.9%となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 550億円 544億円
売上総利益 180億円 171億円
売上総利益率(%) 32.7% 31.5%
営業利益 32億円 16億円
営業利益率(%) 5.7% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が64億円(構成比41.3%)、福利厚生費が12億円(同7.4%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力の軸受等は、エレクトロニクス関連機器向けが増加したものの、市販や工作機械向け等が減少し微減収となりました。諸機械部品も前期の大口案件の影響等により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
軸受等 485億円 480億円
諸機械部品 66億円 64億円
連結(合計) 550億円 544億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -25億円 64億円
投資CF -53億円 -34億円
財務CF 76億円 9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「社会に貢献する技術開発型企業」を経営理念として掲げています。また、ブランドである「IKO」には、革新的で(Innovation)、高度な技術に立脚し(Know-how)、創造性に富む(Originality)という意味が込められており、これらに基づく企業活動を通じて持続的成長と社会の持続可能性の両立を目指しています。

(2) 企業文化

「行動憲章」や「IKOグループマテリアリティ」を全役職員が共有すべき価値観・行動指針としています。誠実で真面目な社風を強みとしており、社会や顧客からの信頼関係構築を重視しています。また、国籍・性別・年齢を問わず価値を認め合い、変革を求める人材集団となるような風土醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標

2024年4月から3年間の「IKO中期経営計画2026 Connect for Growth ~I・K・Oでつなぐ、革新の未来~」を始動しています。長期ビジョン「IKO VISION 2030」の実現に向けた成長性の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

「強い領域」の集中的な強化による収益力と効率性の向上、および「グローバル体制」の再構築による成長性の向上を基本方針としています。販売面ではソリューション提供やグローバルでの認知度向上、製品開発ではオープンイノベーション推進や新領域開発、生産面では工程改善・自動化やグローバル調達、最適地生産を進めています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人材開発」「適材配置」「多様性」を戦略の三本柱としています。「経験に勝る育成は無し」を理念にOJTを中心とした育成を行うほか、次世代リーダーやDX人材の育成にも注力しています。また、多様性確保のため女性採用の強化や育児支援などを推進し、エンゲージメント向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 16.1年 6,648,821円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.6%
男女賃金差異(正規雇用) 80.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(14.5%)、女性監督職比率(13.2%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動

特定産業分野(エレクトロニクス関連機器、工作機械等)への売上比率が高いため、これらの分野における急激な需要縮小や、主要市場(日本、北米、欧州、アジア)の景気後退が、経営成績および財政状態に悪影響をおよぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動

北米、欧州、アジア等へ製品販売を行っており、海外連結子会社の財務諸表換算も含め、為替相場の変動リスクがあります。為替予約等でヘッジしていますが、リスクを完全に排除することはできず、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外におけるカントリーリスク

海外市場での事業比率が高まっているため、各国の法律・規制の変更、政治・経済の混乱等が事業活動に影響をおよぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。