※本記事は、株式会社宇野澤組鐵工所 の有価証券報告書(第133期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 宇野澤組鐵工所ってどんな会社?
創業120年を超える老舗メーカーで、産業用ポンプや送風機の製造販売と、渋谷区恵比寿などでの不動産賃貸を両輪としています。
■(1) 会社概要
1899年に創業し、1933年に株式会社として設立されました。1962年に東証二部へ上場し、1984年には不動産事業を開始して多角化を進めています。2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行し、2024年には名証メイン市場への重複上場を果たしました。
同社の従業員数は169名です。大株主構成は、筆頭株主は創業家関連の資産管理会社であるウノザワコーポレーション、第2位は個人株主の大田昭彦氏、第3位は公益財団法人樫の芽会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ウノザワコーポレーション | 33.98% |
| 大田 昭彦 | 12.22% |
| (公財)樫の芽会 | 9.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は樋口勉氏が務めています。取締役5名のうち社外取締役は1名で、比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宇野澤 虎 雄 | 代表取締役会長 | 1963年興国人絹パルプ入社、1968年同社入社。1986年代表取締役社長を経て、2016年より現職。 |
| 樋 口 勉 | 代表取締役社長兼技術部兼品質保証部兼製造部兼資材部担当 | 1976年同社入社。技術部長、常務取締役などを経て、2016年より現職。 |
| 澤 田 正 伸 | 常務取締役営業部長兼カスタマーサービス部長 | 1997年同社入社。大阪営業所長、営業部長を経て、2025年より現職。 |
| 髙 木 貴 温 | 取締役管理本部長兼総務部長兼財務部長 | 1989年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2019年同社入社、総務部長を経て2020年より現職。 |
| 井 上 俊 弘 | 取締役 | 1983年日本ゼオン入社。同社執行役員ラテックス事業部長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、井上俊弘(元日本ゼオン執行役員ラテックス事業部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「製造事業」および「不動産事業」を展開しています。
■(1) 製造事業
真空ポンプ、送風機・圧縮機、輸送装置などの風水力機械の製造販売を行っています。顧客は石油化学、医薬品、食品、半導体など多岐にわたる産業分野です。製品の販売に加え、修理や部品販売などのアフターサービスも提供しています。
収益は、製品の販売代金および修理・部品販売による対価を顧客から受け取ることで得ています。運営は同社が行っています。
■(2) 不動産事業
東京都渋谷区恵比寿や大田区下丸子などで、オフィスビルや駐車場の賃貸を行っています。安定的な収益源として同社の経営基盤を支える役割を担っています。
収益は、テナントや駐車場利用者からの賃貸料および管理料収入です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円台から50億円台で推移しており、2024年3月期には55億円まで伸長しました。経常利益は2億円台から6億円台へと順調に拡大し、利益率も5%台から12%台へと大幅に改善しています。直近の2025年3月期は減収減益となりましたが、高い利益水準を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40億円 | 44億円 | 51億円 | 55億円 | 50億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 2.7億円 | 4.7億円 | 6.5億円 | 6.2億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 6.1% | 9.2% | 11.8% | 12.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 | 1.6億円 | 3.5億円 | 4.2億円 | 4.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 50億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.4% | 24.0% |
| 営業利益 | 6.4億円 | 5.9億円 |
| 営業利益率(%) | 11.5% | 12.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.6億円(構成比26%)、荷造運搬費が0.8億円(同13%)を占めています。売上原価においては、材料費が19億円(構成比52%)、労務費が12億円(同31%)となっています。
■(3) セグメント収益
製造事業は半導体製造装置向けなどの需要減により減収減益となりましたが、黒字を確保しています。不動産事業は安定的に推移し、増益となりました。利益率では不動産事業が圧倒的に高く、全社利益の大半を稼ぎ出す構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 製造事業 | 49億円 | 43億円 | 1.7億円 | 1.1億円 | 2.5% |
| 不動産事業 | 6.4億円 | 6.5億円 | 4.7億円 | 4.8億円 | 74.9% |
| 連結(合計) | 55億円 | 50億円 | 6.4億円 | 5.9億円 | 12.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
宇野澤組鐵工所は、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業活動の基盤を強化しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益や売上債権・契約資産の減少が主な要因となり、前事業年度を上回る資金増加を達成しました。一方、投資活動では、有形固定資産の取得により資金が減少しました。財務活動では、長期借入れと返済、配当金の支払いが行われ、資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.5億円 | 7.6億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | -2.6億円 |
| 財務CF | -1.8億円 | -1.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ブロワ・真空ポンプのプロフェッショナルとしてお客様信頼度No.1の企業」を目指すビジョンを掲げています。社会を支える様々な産業の生産に不可欠な製品を製造し、信頼される製品を通じて持続可能な社会の創造に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
「働き甲斐のある職場の実現」を重視しています。具体的には、新工場を含めた職場環境の改善や、従業員のモチベーション向上と生産性向上を図るための評価制度・報酬制度の見直しに取り組むなど、従業員が能力を発揮しやすい環境づくりを推進する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
「新たな営業戦略の推進」と「生産能力の増強」を重点課題とし、経営理念の実現および安定的に利益が出せる製造事業の構築を目指しています。特に、2027年の新機械加工棟、2028年の新組立棟の竣工を計画的に進めることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は、付加価値の高いブロワ・真空ポンプおよび修理サービスの拡販と、生産能力の増強に注力します。具体的には、特種仕様の大型ブロワや顧客プロセスに応じたソリューションの提供、大型加工設備の改修、多能工化の推進などに取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
製造事業の安定的な黒字化実現のため、多能工化の推進による作業者能力の向上や、通年採用による将来も含めた必要人材の確保など、人的資本への投資を行う方針です。また、中途採用者による多様性の確保や外部研修等による教育の実施にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.8歳 | 18.3年 | 6,071,915円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員における中途採用者の比率(62.7%)、管理職における中途採用者の比率(57.1%)、管理職候補者の外部研修受講率(87.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境および製品特性について
同社製品は日本、アジア、欧州、米州等に供給されており、各地域の経済状況や需要変化の影響を受けます。また、生産部門や研究開発部門で使用される装置等に設置されるため、企業の設備投資動向の影響を強く受けます。これに対し、特定の国・地域に偏らない営業活動や、付加価値の高い製品・サービスの拡販を進めています。
■(2) 原材料等の調達リスク
製品の主材料である鋳物や、モーター等の電気・電子部品について、原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱により、調達価格の上昇や安定調達に支障をきたす可能性があります。特に国内鋳物業者数の減少はリスク要因です。対策として、海外を含めた調達先の多様化を図っています。
■(3) 人材の確保と育成に係るリスク
プロフェッショナル人材の育成に注力していますが、従業員の高齢化や技術・技能の継承、事業拡大のための人材確保に課題が生じた場合、業績に影響が出る可能性があります。新規採用による人材確保や、働きがいのある職場づくりを通じて、人材の確保・育成に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。