※本記事は、株式会社アイチコーポレーション の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイチコーポレーションってどんな会社?
高所作業車や穴掘建柱車など、電力・通信・建設工事の現場に不可欠な機械化車両を製造・販売する企業です。
■(1) 会社概要
1962年に名古屋市で設立され、1970年に現在の本店所在地である埼玉県上尾市に工場を設置しました。1988年には東証・名証の一部銘柄に指定され、1992年に現在の社名へ変更しています。2003年に豊田自動織機の子会社となりましたが、2025年3月に伊藤忠商事と資本業務提携契約を締結し、新たな成長を目指しています。
連結従業員数は1,026名、単体では956名体制です。2025年3月31日時点の筆頭株主は事業会社である豊田自動織機で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。なお、同社は2025年5月に自己株式の公開買付けを実施しており、これに伴い豊田自動織機は親会社ではなくなりました。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊田自動織機 | 54.35% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.94% |
| NDS | 2.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長社長執行役員は山岸俊哉氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山岸 俊哉 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年豊田自動織機製作所(現 豊田自動織機)入社。同社執行役員、常務役員等を経て、2020年6月より現職。 |
| 中澤 俊一 | 取締役常務執行役員 | 1990年同社入社。研究開発部長、商品開発部長、常務役員技術開発本部長、コーポレート本部長等を経て、2025年4月より全社統括。 |
| 小島 多重子 | 取締役(監査等委員) | 1987年豊田自動織機製作所(現 豊田自動織機)入社。同社コーポレート・センター監査部長、法務部長等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、高月重廣(元EY新日本有限責任監査法人代表社員)、東上清(元あいおいニッセイ同和損害保険常務執行役員)、川西拓人(のぞみ総合法律事務所パートナー)、酒井宗二(丸紅理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「特装車」「部品・修理」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 特装車
電力・電気・通信工事用の穴掘建柱車や高所作業車、建設・荷役用の高所作業車、スキッドステアローダー等の製造・販売を行っています。インフラ工事を行う電力会社、通信会社、建設会社やレンタル会社などが主な顧客です。
製品の販売代金を主な収益源としています。製造は同社および中国の浙江愛知工程機械有限公司、杭州愛知工程車輌有限公司が行い、販売は同社および浙江愛知工程機械有限公司、AICHI NZ LIMITED、杭州愛知工程車輌有限公司等が担当しています。一部の高所作業車は豊田自動織機へOEM供給を行っています。
■(2) 部品・修理
納入した特装車の部品販売や、修理・点検等のアフターサービスを提供しています。国内および海外で展開しており、製品のライフサイクルを通じたサポートを行っています。
部品代金および修理・メンテナンス料を収益源としています。運営は主に同社が行い、海外では浙江愛知工程機械有限公司、AICHI NZ LIMITED、杭州愛知工程車輌有限公司がそれぞれの地域で部品販売やサービス提供を行っています。
■(3) その他
高所作業車等の操作や安全に関する研修事業などを行っています。また、中古車の販売も含まれます。
研修受講料や中古車販売代金を収益源としています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は530億円から600億円前後で推移しています。直近の2025年3月期は、特装車の販売増やサービス事業の伸長により増収となりました。利益面でも、コスト削減活動等が奏功し、経常利益、当期純利益ともに前期を上回り、高い利益率を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 593億円 | 566億円 | 607億円 | 531億円 | 593億円 |
| 経常利益 | 77億円 | 77億円 | 80億円 | 70億円 | 82億円 |
| 利益率(%) | 13.0% | 13.7% | 13.2% | 13.2% | 13.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 55億円 | 51億円 | 64億円 | 47億円 | 68億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も前期の11.9%から12.5%へと改善しており、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費は若干増加しましたが、増収効果が上回りました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 531億円 | 593億円 |
| 売上総利益 | 118億円 | 131億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 22.0% |
| 営業利益 | 63億円 | 74億円 |
| 営業利益率(%) | 11.9% | 12.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が22億円(構成比39%)、荷造及び発送費が7億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の特装車セグメントは、電力業界向けの売上が増加したことなどにより増収増益となりました。部品・修理セグメントも修理売上の増加により増収増益を確保しています。その他セグメントは微減収微減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特装車 | 402億円 | 460億円 | 75億円 | 86億円 | 18.7% |
| 部品・修理 | 123億円 | 127億円 | 41億円 | 44億円 | 34.7% |
| その他 | 6億円 | 6億円 | 1億円 | 1億円 | 17.7% |
| 調整額 | -24億円 | -28億円 | -54億円 | -57億円 | - |
| 連結(合計) | 531億円 | 593億円 | 63億円 | 74億円 | 12.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アイチコーポレーションは、営業活動によるキャッシュ・フローが堅調に増加し、事業活動を通じて安定的に資金を生み出しています。投資活動では、預け金の純減や固定資産の取得により資金を使用しましたが、これは将来の成長に向けた戦略的な投資と考えられます。財務活動では、自己株式の取得により資金が減少しましたが、これは株主還元や資本構成の最適化を意図した動きと推察されます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 71億円 | 99億円 |
| 投資CF | 328億円 | -20億円 |
| 財務CF | -36億円 | -31億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「作業環境創造企業」としての経営の基本方針に基づき、経済の発展と豊かな社会づくりに貢献することを目指しています。顧客にとって欠かせないパートナーであり続けるために、株主還元の向上、サプライチェーンとの連携強化、地域社会への貢献に努力し、社員の成長と雇用の安定を経営の根幹に据えています。
■(2) 企業文化
社会の一員として地域に根差し、共に発展できる活動を推進することを重視しています。また、社員一人ひとりが自己成長を感じられる職場づくりを目指し、品質管理教育や技能向上競技会、TPS(トヨタ生産方式)教育などの人材投資を積極的に行う文化があります。法令遵守と内部統制の充実にも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期事業経営計画において、以下の数値目標を掲げています。
* 2027年度:売上高765億円、営業利益125億円、ROE10%
* 2029年度:売上高830億円、営業利益140億円、ROE10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
新たに筆頭株主となる伊藤忠商事と連携し、メンテナンスリース事業への進出や中古車ビジネスによる収益拡大、伊藤忠グループのネットワークを活用した海外市場への売上拡大を目指します。また、CO2排出ゼロを目指した新工場の建設や既存工場の再編による生産性向上、環境・安全に配慮した商品の拡販に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「腕、智恵、心を継続的に高めるしくみづくり」により、社員一人ひとりが自己成長を感じられる職場の実現を目指しています。品質管理教育、技能向上競技会・技能検定、TPS教育・自主研活動などへの積極的な人材投資を行うとともに、多様な人材が活躍できるダイバーシティ&インクルージョンの実現を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.9歳 | 19.3年 | 6,568,000円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 53.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(11.0%)、障がい者従業員比率(2.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 販売に関するリスク
国内シェアが高い高所作業車等を主力としていますが、特装車両メーカー等との競合により市場シェアや販売価格が変動する可能性があります。また、大口需要先である電気・通信工事やレンタル業界の需要動向に業績が左右される傾向があります。
■(2) 製造に関するリスク
原材料や部品の価格高騰、調達難により製造原価が上昇する可能性があります。販売価格への転嫁が困難な場合や、サプライチェーンの停滞による生産縮小が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、大規模なリコール等の品質問題が発生した場合もリスク要因となります。
■(3) 外部経営環境に関するリスク
日本、アジア、オセアニア、ヨーロッパ等で国際的に事業を展開しているため、各国の政治情勢、経済状況、税制、貿易政策の変動や、為替相場の変動により、業績に影響が及ぶ可能性があります。特に輸出を中心とした外貨建取引における為替リスクには注意が必要です。



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