※本記事は、株式会社アイチコーポレーションの有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アイチコーポレーションってどんな会社?
同社は電力や通信インフラの構築を支える特装車の製造・販売を手掛けるメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1962年2月に特殊自動車等の製作および売買を目的として設立されました。1988年に東証および名証の市場第一部銘柄に指定され、1992年に現在のアイチコーポレーションへ社名を変更しています。2003年に豊田自動織機の子会社となりましたが、その後の資本政策を経て2025年5月には伊藤忠商事および豊田自動織機の持分法適用関連会社となりました。
現在の従業員数はグループ全体で1,012名、単体で940名となっています。筆頭株主は事業会社の伊藤忠商事で、第2位は事業会社の豊田自動織機です。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤忠商事 | 27.28% |
| 豊田自動織機 | 21.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長社長執行役員は中澤俊一氏が務めており、全役員のうち約57%が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中澤俊一 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1990年4月同社入社。研究開発部長、常務役員技術開発本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 石井智 | 取締役常務執行役員 | 1988年4月同社入社。ライフサイクルサポート部長、経営企画部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 水野陽二郎 | 取締役(監査等委員) | 2010年6月豊田自動織機執行役員。同社取締役副社長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、高月重廣(EY新日本監査法人代表社員)、東上清(あいおいニッセイ同和損保常務)、酒井宗二(丸紅執行役員中部支社長)、小西めぐみ(公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「特装車」「部品・修理」および「その他」事業を展開しています。
■特装車
電力・通信・一般建設土木業界などを顧客とし、工事作業の機械化・省力化・安全化に貢献する穴掘建柱車、高所作業車、スキッドステアローダーなどの製造および新車販売を行っています。
収益源は特装車両の販売代金です。国内の製造および販売は同社が担い、海外では中国の浙江愛知工程機械有限公司やニュージーランドのAICHI NZ LIMITEDなどの子会社がそれぞれ製造・販売を展開しています。
■部品・修理
販売した高所作業車などの安定稼働を支えるため、修理やメンテナンス、車検などのアフターサービスを提供するとともに、交換用の部品販売を行っています。
収益源は顧客からの修理代金や部品の販売代金です。また、長期のメンテナンス契約による継続的な収益基盤も構築しています。事業の運営は同社および国内外の子会社が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、特装車等の中古車販売や教育・研修事業などを展開しています。
収益源は中古車の販売代金や高所作業車などに関する研修の受講料です。これらの事業は主に同社が運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、需要の変動や原材料価格の高騰といった外部環境の影響を受けつつも、売上高はおおむね500億円台後半から600億円規模で推移しています。経常利益率も継続して13%台という高い水準を維持しており、安定した収益力を保っていることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 566億円 | 607億円 | 531億円 | 593億円 | 596億円 |
| 経常利益 | 77億円 | 80億円 | 70億円 | 82億円 | 82億円 |
| 利益率(%) | 13.7% | 13.2% | 13.2% | 13.9% | 13.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 51億円 | 64億円 | 47億円 | 68億円 | 63億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の微増に加えて、生産性向上と原価低減活動の継続的な取り組みにより売上総利益と営業利益がいずれも増加しています。利益率も前年をわずかに上回る水準で推移しており、堅調なコスト管理が行われていることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 593億円 | 596億円 |
| 売上総利益 | 131億円 | 132億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.0% | 22.1% |
| 営業利益 | 74億円 | 75億円 |
| 営業利益率(%) | 12.5% | 12.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が21億円(構成比36%)、荷造及び発送費が7億円(同12%)を占めています。また、売上原価は464億円で、売上高に対する構成比は78%となっています。
■(3) セグメント収益
特装車セグメントは電力業界向けの需要減により減収となりましたが、部品・修理セグメントはワンストップサービスの展開や車検業務の積極的な取り込みが奏功し、大幅な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 特装車 | 460億円 | 447億円 |
| 部品・修理 | 127億円 | 141億円 |
| その他 | 6億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 593億円 | 596億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金をもとに投資を行い、さらに株主還元等を実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。手元資金で事業活動と還元を賄える優良な状態と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 99億円 | 8億円 |
| 投資CF | -20億円 | -37億円 |
| 財務CF | -31億円 | -174億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「作業環境創造企業」を事業目標に掲げ、世の中になくてはならない企業へと発展することを目指しています。社会インフラの維持や発展に貢献するとともに、顧客が抱える作業現場の課題解決を通じて、地球環境の保全と安心安全な作業現場の実現に寄与することを使命として経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は「お客さまからいただいた期待を価値に換え成長する」という価値観を大切にしています。事業活動を通じて豊かな社会づくりに貢献することを基本とし、株主や顧客、取引先、地域社会、従業員など、多様なステークホルダーとの間で良好な関係を築き上げることを経営において重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期事業経営計画を策定し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。株主還元については、配当性向60%以上を基準とするなど安定的な向上を基本方針として掲げています。
* 2029年度の売上高:850億円
* 2029年度の営業利益:115億円
* M&A・設備投資:50億円
* 2029年度のROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、国内事業において商品差別化によるバリューチェーンの価値向上を図るとともに、生産性の向上とサービス力の強化により収益基盤を強固なものとする戦略を推進しています。また、海外事業においては、伊藤忠商事のネットワークを活用した欧州での流通経路強化や、現地代理店との連携による東南アジアでの市場開拓を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を中長期的な企業価値向上を実現するための最重要基盤の一つと位置付けています。人的資本への戦略的な投資を通じて事業戦略を遂行し、人材力と組織力(従業員エンゲージメント)の向上に注力しています。また、従業員の主体的な成長と組織への参画意識を高めるため、資格取得意欲の向上や前向きな企業風土の醸成にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.4歳 | 19.9年 | 6,912,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.9% |
| 男性育児休業取得率 | 55.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 51.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者女性比率目標(30.0%)、障がい者雇用率(2.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客需要の変動と価格競争激化
高所作業車の売上は、大口需要先である電気・通信工事およびレンタル業界への依存度が高く、また特装車両メーカーとの価格競争が激化しています。そのため、競合による市場シェアの変動や販売価格の下落、需要先の設備投資動向の変化が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の高騰や調達難リスク
同社の製品は多数の仕入先から原材料や部品を調達して製造されています。原油などの輸入原材料の供給制約や急激な価格高騰、グローバルサプライチェーンの停滞による調達難が発生し、製造原価の上昇分を販売価格に十分に転嫁できない場合、同社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 製品の品質に係るリスク
インフラ工事に活用される同社製品は、作業の安全に直結するため高い品質が求められます。万全な品質管理体制を敷いていますが、大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような予期せぬ不具合が発生した場合、多額の対応費用が生じるとともに社会的信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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