指定された構成とルールに従い、株式会社小森コーポレーションの有価証券報告書(第79期)に基づいた企業分析記事を作成しました。
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小森コーポレーション転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社小森コーポレーション の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小森コーポレーションってどんな会社?
創業100年を超える老舗印刷機械メーカーです。「感動企業の実現」を掲げ、高品質な印刷システムとサービスを世界中に提供しています。
■(1) 会社概要
1923年に小森機械製作所として創業し、1946年に株式会社として設立されました。1984年に東京証券取引所市場第一部に指定され、現在はプライム市場に上場しています。2001年に東芝機械株式会社よりオフセット輪転印刷機事業を譲受し事業を拡大。2020年にはドイツのMBOグループを買収し、印刷後加工機事業を強化しました。2024年には米国Bernal社の事業を譲受し、パッケージ印刷市場への対応を進めています。
連結従業員数は2,625名、単体では1,074名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社で、第2位は資産管理を行うNORTHERN TRUST CO.、第3位は取引先持株会となっており、機関投資家や関係者による安定的な保有が見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 12.63% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE USL NON-TREATY CLIENTS ACCOUNT(常任代理人 香港上海銀行東京支店カストディ業務部) | 5.51% |
| 小森コーポレーション取引先持株会 | 4.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)は持田訓氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 持田 訓 | 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO) | 1975年同社入社。経営企画室長、海外営業本部長等を歴任。2014年代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)を経て、2019年6月より現職。 |
| 小森善治 | 取締役名誉会長 | 1962年同社入社。1993年代表取締役社長、2009年代表取締役会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)等を歴任。2025年6月より現職。 |
| 松野浩一 | 取締役兼常務執行役員オフセット事業本部長 | 1985年同社入社。つくばプラント長、管理本部長等を歴任。2024年4月より現職。 |
| 橋本 巌 | 取締役兼常務執行役員兼最高財務責任者(CFO)グローバル経営管理統括本部長兼管理本部長 | 1981年久保田鉄工入社。2019年同社入社。管理本部長を経て、2024年7月より現職。 |
社外取締役は、丸山俊郎(元国立印刷局理事)、山田浩二(元小松製作所常務執行役員)、林貴子(三井住友カード常務執行役員)、尼子晋二(元クボタマテリアルズカナダ社長)、大塚雅広(元みずほフィナンシャルグループ執行役専務)、山口留美(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「北米」、「欧州」、「中華圏」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
同社グループ製品の大部分を生産し、国内および中南米、中華圏の一部を除くアジア、海外証券印刷機の販売を行っています。
製品の販売代金や保守サービス料が主な収益源です。運営は主に同社が行い、小型印刷機械等の仕入販売には株式会社小森マシナリー、印刷機械等の製造販売には株式会社セリアコーポレーション等が関わっています。
■(2) 北米
主にアメリカ合衆国において、同社グループが製造する印刷機械の販売を行っています。
現地の顧客に対する製品販売およびサービス提供による対価が収益となります。運営は連結子会社であるKomori America Corporationが担当しています。
■(3) 欧州
西欧、東欧、中東地域での販売に加え、紙器印刷機械や印刷後加工機の製造販売を行っています。
製品販売およびサービス提供が収益源です。運営はKomori International(Europe) B.V.等の販売子会社のほか、製造販売を行うKomori-Chambon S.A.S.グループやMBO Postpress Solutions GmbHグループが担っています。
■(4) 中華圏
中国の一部、香港、台湾地域での販売および一部の印刷機械・関連装置の製造販売を行っています。
現地顧客への製品販売等が収益源です。運営は販売を担当する小森香港有限公司グループや小森台湾股份有限公司、製造販売を行う小森机械(南通)有限公司が行っています。
■(5) その他
報告セグメントに含まれない地域、主にアセアン地域やインドにおける印刷機械の販売およびサービス支援を行っています。
顧客からの製品代金やサービス料が収益となります。運営はKomori Southeast Asia Pte. Ltd.、Komori Malaysia Sdn. Bhd.、Komori India Private Limitedが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第75期から第79期にかけて増加傾向にあります。特に第76期以降は収益認識に関する会計基準の適用もありつつ、売上規模が拡大しています。利益面では、第75期は損失を計上しましたが、その後は回復し、安定して黒字を確保しています。当期は売上高、経常利益ともに過去5期間で最高水準となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 718億円 | 876億円 | 979億円 | 1,043億円 | 1,110億円 |
| 経常利益 | -11億円 | 34億円 | 66億円 | 68億円 | 76億円 |
| 利益率(%) | -1.6% | 3.9% | 6.8% | 6.5% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1億円 | 45億円 | 77億円 | 61億円 | 79億円 |
■(2) 損益計算書
当期は前期と比較して増収増益となりました。売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率も改善しています。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果により営業利益率は上昇し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,043億円 | 1,110億円 |
| 売上総利益 | 346億円 | 395億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.2% | 35.6% |
| 営業利益 | 49億円 | 71億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賃金手当が86億円(構成比27%)、販売出荷費が42億円(同13%)、研究開発費が40億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントおよびその他地域において売上高が増加しました。特に日本セグメントは増収により利益が大幅に伸長しました。欧州セグメントは増収ながら展示会費用等の増加により損失となりました。その他地域はサプライチェーン見直しの恩恵等で大幅な増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 507億円 | 553億円 | 44億円 | 70億円 | 12.7% |
| 北米 | 117億円 | 93億円 | 8億円 | 0.1億円 | 0.1% |
| 欧州 | 228億円 | 247億円 | -2億円 | -8億円 | -3.1% |
| 中華圏 | 147億円 | 143億円 | -2億円 | 3億円 | 1.8% |
| その他 | 44億円 | 57億円 | 3億円 | 4億円 | 7.2% |
| 調整額 | - | 18億円 | -2億円 | 2億円 | 10.3% |
| 連結(合計) | 1,043億円 | 1,110億円 | 49億円 | 71億円 | 6.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行いつつ、株主還元も実施している「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -81億円 | 170億円 |
| 投資CF | 5億円 | -48億円 |
| 財務CF | -49億円 | -43億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創業以来の「品質と信頼を至上とするものづくりの原点」にこだわり、印刷機械メーカーとして社会に貢献することを基本方針としています。顧客、株主、取引先、地域社会、社員とその家族など、全てのステークホルダーの信頼と期待に応え、共存共栄を図ることを行動指針としています。
■(2) 企業文化
同社では、「感動=Beyond Expectations」をスローガンとして掲げ、国内外のグループ社員に共有されています。「感動創造活動」を通じて「感動企業の実現」を目指し、顧客の期待を超える価値を提供することで、企業としての社会的責任と使命を全うしようとする文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「KOMORI 2030」に基づき、サステナブルな経営体質への変革を目指しています。第7次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)では、「成長投資」と「収益確保」のバランスを重視し、最終年度の経営目標として以下の数値を掲げています。
* 営業利益率:7.0%以上
* ROE:6.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオの転換に向け、基盤事業であるオフセット事業と証券印刷事業では付加価値強化による収益力向上を図ります。成長事業であるDPS(デジタル印刷システム)事業とPE(プリンテッドエレクトロニクス)事業では技術基盤を強化し、2桁成長を目指します。また、経営基盤強化として、要素技術開発への投資拡大やグローバル人材の活用を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な「資本」と位置づけ、「K-Work」と称する働き方改革を推進しています。働きやすい職場環境の整備、意欲と能力を高める人事・教育制度による人財マネジメントの強化、そしてダイバーシティの推進を三本柱としています。特にグローバル人材の育成や女性キャリア形成支援に注力し、多様な人材が活躍できる組織風土の醸成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 18.5年 | 7,131,666円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全) | 72.5% |
| 男女賃金差異(正規) | -% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
※同社は正社員及び非正規雇用の従業員を含めて算出しているため、正規・非正規の区分ごとの記載はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性教育訓練受講者(40人以上)、年次有給休暇取得率(70%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) オフセット印刷市場の縮小
電子媒体の普及により、出版・商業印刷分野でのオフセット印刷機の需要が減少しています。今後、新興国を含め世界的に電子化が進展し需要がさらに縮小した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、成長が見込まれるパッケージ印刷市場への対応強化や、ROIを重視した製品戦略による競争力向上を図っています。
■(2) 欧米現地法人の収益力弱体化
欧米市場では商業印刷向け需要の減少により、現地法人の収益力が低下するリスクがあります。印刷会社のコスト競争力強化ニーズに対し、省力化やスキルレス化を実現するソリューション(KP-Connectやデジタル印刷機)の提案を行い、リカーリングインカムの拡大や資材・機材販売の強化を通じて収益構造の最適化を目指しています。
■(3) 海外事業に伴うカントリーリスク
海外売上比率が高いため、各国の政治・経済情勢の変動、テロ、戦争、自然災害、感染症等の影響を受ける可能性があります。特に米国の関税措置や輸出入規制の強化は調達・販売活動に影響を及ぼすリスクがあります。全社的な対応方針の策定や定期的な情報収集・リスク評価を通じて、影響の最小化に努めています。
■(4) サプライチェーンリスク
原材料・エネルギー価格の高騰や物流費の上昇が調達コストを押し上げ、収益性を圧迫する可能性があります。また、少子高齢化による取引先の廃業等で安定調達が困難になるリスクもあります。これに対し、調達先の見直しや分散、在庫管理の適正化、新規サプライヤーの開拓等を進め、供給の安定化とコスト影響の抑制に取り組んでいます。



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