小森コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小森コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する小森コーポレーションは、創業100年を超える印刷機械の製造販売を主力とする企業です。パッケージ印刷や高付加価値印刷向け設備の需要が堅調に推移したことで直近の業績は増収増益を達成しており、デジタル印刷機などの成長事業を通じた収益基盤の強化を推進しています。


※本記事は、株式会社小森コーポレーションの有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小森コーポレーションってどんな会社?


印刷機械の製造販売をグローバルに展開し、国内外で高いシェアを誇る老舗メーカーです。

(1) 会社概要


1923年に創業し、1946年に会社設立しました。1984年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、1990年に現社名に変更しています。2001年の事業譲受や2020年のドイツMBOグループ買収などを通じて印刷関連事業の領域を拡大し、2025年には監査等委員会設置会社への移行を実施しました。

従業員数は連結で2,622名、単体で1,098名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には取引先で構成される持株会が名を連ねており、取引先との強固な資本関係を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.93%
小森コーポレーション取引先持株会 4.55%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 4.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)は持田訓氏が務めており、社外取締役比率は60.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
持田訓 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO) 1975年4月同社入社。海外営業本部長や経営企画室長等を歴任し、2014年6月代表取締役社長に就任。2019年6月より現職。
小森善治 取締役名誉会長 1962年4月同社入社。1993年4月代表取締役社長、2014年6月代表取締役会長兼最高経営責任者等を歴任し、2025年6月より現職。
松野浩一 取締役兼専務執行役員社長補佐兼DPS事業本部長 1985年4月同社入社。つくば工場長や管理本部長等を歴任し、2014年6月取締役就任。2026年2月より現職。
橋本巌 取締役兼常務執行役員兼最高財務責任者(CFO)グローバル経営管理統括本部長 1981年4月久保田鉄工入社。2019年4月同社入社。管理本部長等を歴任し、2022年6月取締役就任。2026年2月より現職。


社外取締役は、丸山俊郎(元独立行政法人国立印刷局理事)、山田浩二(元小松製作所常務執行役員)、林貴子(三井住友カード常務執行役員)、尼子晋二(元クボタマテリアルズカナダCorp.社長)、大塚雅広(元みずほ信用保証代表取締役社長)、山口留美(山口留美公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「中華圏」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本


国内、中南米、および一部のアジア向けに印刷機械などの製造販売やサービスを提供しています。主力のオフセット印刷機械をはじめとする各種製品を取り扱い、保守などのサポートを通じて収益を獲得しています。

運営は主に小森コーポレーションが行っており、小型印刷機械の供給や関連サービスの提供については小森マシナリーや小森興産などから仕入れています。また、セリアコーポレーションが各種資機材の製造販売を担っています。

北米


主としてアメリカ合衆国の顧客に対して、印刷機械の販売や関連サービスを提供しています。現地の印刷会社などから製品の販売代金や修理・保守サービス料を受け取る収益モデルとなっています。

運営は、アメリカ地域の重要販売拠点として設立されたKomori America Corporationが担当しており、同社が製造した製品を現地で包括的に展開しています。

欧州


西欧、東欧、中東地域において印刷機械の販売を行うとともに、紙器印刷機械や印刷後加工機の製造販売も展開しています。多様な市場ニーズに対応し、製品販売やサービス提供を通じて収益を得ています。

運営はKomori International(Europe) B.V.グループが担当するほか、紙器印刷機械の製造販売をKomori-Chambon S.A.S.グループが、印刷後加工機をMBO Postpress Solutions GmbHグループが担っています。

中華圏


中国、香港、台湾の市場において、印刷機械および関連装置の製造・販売・サービスを展開しています。巨大なアジア市場の需要を取り込み、設備の販売と継続的な保守による収益モデルを構築しています。

販売活動は小森香港有限公司、小森(深圳)印刷技術有限公司、および小森台湾股份有限公司が担当しています。また、現地での製造拠点の役割を小森机械(南通)有限公司が担っています。

その他


報告セグメントに含まれないアジア新興国などの地域を対象に、印刷機械の販売およびサービスの支援を行っています。市場の成長に合わせて設備を供給し、事業活動を拡大しています。

運営は、アセアン地域で活動するKomori Southeast Asia Pte. Ltd.およびKomori Malaysia Sdn. Bhd.、インド市場を担当するKomori India Private Limitedなどの現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間を通じて売上高は右肩上がりで成長を続けており、特に直近では1,000億円の大台を突破しています。経常利益も売上の増加に伴って着実に拡大しており、利益率も3%台から9%台へと大幅な改善傾向を示しています。

項目 第76期 第77期 第78期 第79期 第80期
売上高 876億円 979億円 1,043億円 1,111億円 1,186億円
経常利益 34億円 66億円 68億円 76億円 107億円
利益率(%) 3.9% 6.8% 6.5% 6.9% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 77億円 61億円 79億円 81億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて売上総利益率も改善しており、増収効果がしっかりと利益に結びついています。営業利益率は6%台から約8%へと良化しており、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 第79期 第80期
売上高 1,111億円 1,186億円
売上総利益 395億円 437億円
売上総利益率(%) 35.6% 36.8%
営業利益 71億円 94億円
営業利益率(%) 6.4% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賃金手当が92億円(構成比27%)、販売出荷費が50億円(同15%)、研究開発費が46億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本市場の売上は横ばいで推移していますが、北米および欧州市場で設備需要が回復し大きく伸長しました。一方、中華圏は市況の停滞により減収となっていますが、アジア・中南米などのその他地域が堅調に成長して全体を牽引しました。

区分 売上(第79期) 売上(第80期)
日本 553億円 553億円
北米 93億円 127億円
欧州 247億円 282億円
中華圏 143億円 117億円
その他 57億円 69億円
調整額 18億円 39億円
連結(合計) 1,111億円 1,186億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 第79期 第80期
営業CF 170億円 35億円
投資CF -48億円 -29億円
財務CF -43億円 -61億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「感動企業の実現」を経営の基本理念として掲げています。創業以来の「品質と信頼を至上とするものづくりの原点」にこだわり、顧客、社員、取引先などのすべてのステークホルダーに「感動=Beyond Expectations」を届けることで、企業としての社会的責任や使命を全うすることを目指しています。

(2) 企業文化


社会や環境の変化に柔軟に対応しながら、持続的な発展可能な社会の創造に貢献する文化が根付いています。株主や顧客をはじめとする関係者との共存共栄を図り、知覚品質管理などを通じて「顧客視点」に立った製品・サービスを提供し続ける姿勢を重視して事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


第7次中期経営計画(2027年3月期まで)では、サステナブルな経営体質の構築に向けた事業変革と経営基盤強化に取り組んでおり、成長投資と収益確保のバランスをとることを目標としています。

* 営業利益率:7.0%以上
* ROE:6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


オフセット印刷機事業では、パッケージ印刷分野を重点市場と位置付け、高付加価値仕様を通じた収益性向上を図っています。同時に、デジタル印刷機(DPS)事業のリカーリング型ビジネスの確立や、プリンテッドエレクトロニクス(PE)事業のオープンイノベーションによる技術開発を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を持続的な成長を支える重要な無形資産と位置付け、事業戦略と連動した人材の確保・育成・活用を推進しています。グローバル人材やデジタル人材の育成、社内公募による適材適所の配置を進めるとともに、柔軟な働き方の実現や健康経営を通じて、従業員一人ひとりが自律的に活躍できる環境整備を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第80期 42.9歳 18.0年 7,406,383円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) オフセット印刷市場の縮小


電子媒体の浸透により商業印刷の需要が縮小傾向にあり、主力であるオフセット印刷機の売上に影響を及ぼす可能性があります。同社はパッケージ印刷市場への対応強化や、デジタル印刷事業への展開を通じて収益源の多角化を図っています。

(2) 海外事業に伴うカントリーリスク


海外売上高比率が高いため、地政学リスク、通商政策の変更、各国の関税措置などが業績に悪影響を与える可能性があります。同社は市場調査によるリスク評価や、調達・生産体制のグローバルな最適化によって影響の最小化に努めています。

(3) サプライチェーンの変動


原材料や物流費の高止まり、地政学リスクによる部品の供給不安が発生した場合、生産遅延やコスト上昇を招くリスクがあります。同社は調達先の分散や在庫管理の見直し、設計の工夫を通じて供給体制の安定化に取り組んでいます。

(4) DPS事業の市場浸透遅延


成長事業であるデジタル印刷(DPS)事業において、市場の立ち上がりや顧客の投資動向が想定を下回った場合、計画通りの収益が確保できないリスクがあります。同社は独自技術を搭載した次世代機の市場投入を通じて競争力強化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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