小森コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小森コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小森コーポレーションは、東京証券取引所プライム市場に上場する印刷機械メーカーです。主力のオフセット印刷機のほか、証券印刷機やデジタル印刷機などの製造販売をグローバルに展開しています。直近の連結業績では、パッケージ印刷等の設備需要が堅調に推移し、増収増益を達成するなど好調なトレンドを維持しています。


※本記事は、株式会社小森コーポレーションの有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小森コーポレーションってどんな会社?


印刷機械の製造販売を主力とし、世界各国に製品やサービスを提供するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1946年に小森印刷機械製作所として設立され、1983年に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌年には第一部へ指定されました。1990年に現在の小森コーポレーションへ商号を変更しています。近年は2024年に米国のロータリーダイツールメーカーの事業を譲受するなど、継続的な事業拡大を図っています。

筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先持株会となっています。従業員数は連結で2,622名、単体で1,098名です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.93%
小森コーポレーション取引先持株会 4.55%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 4.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)を持田訓氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
持田訓 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO) 1975年入社。海外営業本部長、経営企画室長等を歴任。2006年代表取締役専務兼最高執行責任者(COO)を経て、2019年より現職。
小森善治 取締役名誉会長 1962年入社。営業本部長等を経て1993年代表取締役社長に就任。最高経営責任者(CEO)や取締役会長を歴任し、2025年より現職。
松野浩一 取締役兼専務執行役員社長補佐兼DPS事業本部長 1985年入社。工場長や管理本部長等を歴任。2024年取締役兼常務執行役員オフセット事業本部長を経て、2026年より現職。
橋本巌 取締役兼常務執行役員兼最高財務責任者(CFO)グローバル経営管理統括本部長 1981年久保田鉄工入社。2019年小森コーポレーション入社。管理本部長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、丸山俊郎(元独立行政法人国立印刷局理事)、山田浩二(元小松製作所執行役員)、林貴子(三井住友カード常務執行役員)、尼子晋二(元クボタ理事)、大塚雅広(元みずほ信用保証代表取締役社長)、山口留美(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「中華圏」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


同社グループの製品の大部分を生産し、国内、中南米、および一部のアジアや海外証券印刷機の販売を行っています。印刷機械その他印刷資機材の製造、仕入、販売も手掛けています。
運営は主に小森コーポレーションや、小森マシナリー、セリアコーポレーションが行っています。顧客から印刷機械等の販売代金を受け取る収益モデルです。

(2) 北米


主としてアメリカ合衆国における印刷機械の販売や関連サービスを提供しており、現地の顧客ニーズに応じた営業活動を展開しています。
運営は米国子会社であるKomori America Corporationが主に行っています。同社が製造する印刷機械を販売し、対価を得る収益モデルです。

(3) 欧州


主として西欧、東欧、中東地域での印刷機械の販売が含まれます。また、紙器印刷機械や印刷後加工機の製造販売も当該地域で幅広く行っています。
運営はKomori International(Europe) B.V.やKomori-Chambon S.A.S.グループなどが展開しています。製品販売や関連サービスの提供により収益を獲得しています。

(4) 中華圏


主として中国、香港、台湾での印刷機械の販売を行っています。また、現地における印刷機械および関連装置の製造も手掛けています。
運営は小森香港、小森(深圳)印刷技術、小森台湾、および製造を担う小森机械(南通)などが担っています。製品販売を通じて収益を得るモデルです。

(5) その他


報告セグメントに含まれない地域として、主としてアセアン地域やインドにおける印刷機械の販売およびサービスの支援を展開しています。
運営はKomori Southeast Asia Pte. Ltd.やKomori India Private Limitedなどが行っています。新興国を中心とした製品販売とサービス提供が収益源です。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高・経常利益ともに概ね右肩上がりの成長トレンドを描いています。特に直近の事業年度では、パッケージ印刷を中心とした堅調な設備需要を捉えたことや円安などの影響もあり、利益率も大きく向上して安定した収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 876億円 979億円 1043億円 1111億円 1186億円
経常利益 34億円 66億円 68億円 76億円 107億円
利益率(%) 3.9% 6.8% 6.5% 6.9% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 77億円 61億円 79億円 81億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率も改善傾向にあり、高付加価値製品の販売増や価格転嫁の進展が収益力の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1111億円 1186億円
売上総利益 395億円 437億円
売上総利益率(%) 35.6% 36.8%
営業利益 71億円 94億円
営業利益率(%) 6.4% 7.9%

(3) セグメント収益


欧州や北米市場が大幅な増収を牽引する一方、中華圏は景気減速の影響を受けて減収となりました。利益面では日本市場が大きく貢献しており、欧州での紙器印刷機械製造等への投資等による損失をカバーしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 553億円 553億円 70億円 96億円 17.4%
北米 93億円 127億円 0.1億円 6億円 4.9%
欧州 247億円 282億円 -8億円 -19億円 -6.8%
中華圏 143億円 117億円 3億円 1億円 1.1%
その他 57億円 69億円 4億円 5億円 7.1%
連結(合計) 1111億円 1186億円 71億円 94億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入返済を行いながら投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.0%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 170億円 35億円
投資CF -48億円 -29億円
財務CF -43億円 -61億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営理念として「感動企業の実現」を掲げています。これは、プリントテクノロジーを通じて社会文化を支えることにより、すべてのステークホルダーに対して常に満足と「感動 = Beyond Expectations(期待を超えること)」をお届けすることを目指すものです。1923年の創業以来、品質と信頼を至上とするものづくりの原点にこだわり続け、企業としての社会的責任や使命を全うしていくことを存在理由としています。

(2) 企業文化


同社は、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えるとともに、「共存共栄を図ること」を行動指針として活動しています。国内外で共感を持ってグループ社員に迎え入れられてきた「感動 = Beyond Expectations」を合言葉に、顧客視点に立った知覚品質管理や、社員の働き方改革、協力企業との共創など、ステークホルダーに感動をもたらす「感動創造活動」を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期ビジョン「KOMORI 2030」に沿って段階的にROE(自己資本利益率)の向上を図っています。現在は第7次中期経営計画を推進しており、「成長投資」と「収益確保」のバランスを取りながら、サステナブルな経営体質の構築を目指しています。最終年度における定量的な経営目標は以下の通りです。

・営業利益率:7.0%以上
・ROE:6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、事業ポートフォリオの転換と経営基盤の強化を成長戦略に掲げています。オフセット印刷機事業では、パッケージ印刷分野を重点市場と位置付け、高付加価値仕様を通じて収益性向上を図ります。また、DPS事業やプリンテッドエレクトロニクス(PE)事業などの成長事業においては、新製品の拡販やパートナー企業とのオープンイノベーションを通じて技術開発を加速し、事業の多角化と持続的な競争力強化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人的資本を企業価値向上の重要な基盤と位置付けています。事業戦略と連動した人材の確保・育成・活用を進め、特にグローバル人材やDX・AI人材の育成、多様な人材の活躍促進に注力しています。また、従業員が自律的に業務を遂行し組織目標に貢献できる状態を目指し、エンゲージメントの向上や「小森流働き方改革(K-Work)」を通じた柔軟な働き方の実現、健康経営の推進など、働きやすい環境整備を一体的に行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.9歳 18.0年 7,406,383円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.7%
男女賃金差異(正規労働者) -
男女賃金差異(非正規労働者) -

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) オフセット印刷市場の縮小


電子媒体の普及に伴い、出版や商業印刷向けのオフセット印刷機の需要が縮小するリスクがあります。同社は主力分野をパッケージ印刷市場へシフトし、競争力向上や差別化商品の市場投入を進めています。

(2) 海外事業に伴うカントリーリスク


海外売上高比率が高いため、各国の通商政策の変更や関税措置、地政学的な緊張の高まりが調達コストや販売活動に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は市場調査によるリスク評価や調達先の分散により影響の最小化に努めています。

(3) 成長事業の拡大停滞


デジタル印刷機(DPS事業)やプリンテッドエレクトロニクス(PE)事業といった成長分野において、市場変化や競合状況により想定した事業拡大ができないリスクがあります。同社は市場調査の徹底や産学連携等により技術開発を推進しています。

(4) 為替レート変動リスク


主要な海外市場との取引における主要通貨がドルやユーロであり、為替の急激な変動が収益に影響を与えます。同社は海外調達比率の向上や一部製品の海外生産への移管、先物為替予約の活用などでリスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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