オイレス工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オイレス工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のオイルレスベアリング総合メーカー。軸受機器、構造機器、建築機器の製造販売を主要事業としています。当連結会計年度の業績は、売上高が629億円と前期比で増収を確保したものの、原材料価格の高騰などが利益を圧迫し、経常利益は57億円の減益となりました。


※本記事は、オイレス工業株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オイレス工業ってどんな会社?


オイルレスベアリング(無給油軸受)の総合メーカーとして、軸受機器、構造機器、建築機器の3事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1939年に川崎宗造が「日本オイルレスベアリング研究所」を創設し、1952年に株式会社として設立されました。1987年には免震装置「オイレスLRB」の製造販売を開始し、日本初の免震構造ビルを開設しています。1997年に東京証券取引所市場第一部に指定され、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

同社グループの従業員数は連結2,030名、単体785名です。大株主については、筆頭株主は東京中小企業投資育成、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はみずほ銀行となっています。

氏名 持株比率
東京中小企業投資育成 9.43%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.06%
みずほ銀行 3.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長には飯田 昌弥氏が就任しており、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
飯田 昌弥 代表取締役社長社長執行役員 1979年同社入社。生産事業部副事業部長、企画管理本部長等を歴任。2016年常務執行役員を経て、2017年6月より現職。
田邊 和治 取締役 1986年同社入社。オイレスECO代表取締役社長、免制震事業部長等を歴任。2021年常務執行役員軸受事業部長を経て、2016年6月より現職。
宮崎 聡 取締役 2013年同社入社。経理部長、企画管理本部長等を歴任。2021年常務執行役員免制震事業部長を経て、2018年6月より現職。
坂入 良和 取締役執行役員企画管理本部長企画領域統括企画管理本部経営企画部長 1989年同社入社。Oiles India Private Limited社長、経営企画部長等を歴任。2022年上席執行役員を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、大村 康二(元三井化学副社長執行役員)、宮川 理加(元ケイラインロジスティックス取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「軸受機器」「構造機器」「建築機器」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

軸受機器


オイルレスベアリング(無給油軸受)などの軸受製品を製造販売しています。顧客は自動車業界や一般産業機械業界など多岐にわたり、環境負荷低減や製品の高性能化に貢献しています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、同社が開発・製造・販売を行うほか、海外市場ではOiles America Corporationや上海自潤軸承有限公司などの連結子会社が製造販売を行っています。

構造機器


橋梁用支承や建築用免震・制震装置などの構造機器を製造販売しています。地震などの災害から建物や社会インフラを守る製品を提供し、安心・安全な社会基盤の整備に貢献しています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、同社が開発・製造・販売を行い、株式会社免震エンジニアリングが設計・保守業務などを担当しています。

建築機器


ウィンドウオペレーター(排煙・換気用窓開閉装置)や住宅用機器などを製造販売しています。火災時の排煙や日常の換気をサポートし、建物の快適性と安全性を高める製品を提供しています。

収益は、製品の販売に加え、工事や保守サービスの対価として顧客から受け取ります。運営は、主に連結子会社のオイレスECO株式会社が行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、伝導機器類などの仕入販売を行っています。

収益は、商品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、オイレス西日本販売株式会社およびオイレス東日本販売株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円前後で推移しており、第71期以降は回復傾向にあります。一方で経常利益は変動があり、当期は原材料価格の高騰などの影響を受け、増収ながら減益となりました。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 614億円 602億円 530億円 599億円 629億円
経常利益 52億円 51億円 38億円 65億円 57億円
利益率(%) 8.6% 8.4% 7.1% 10.9% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 24億円 33億円 42億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価率の上昇などにより売上総利益は減少しました。販管費も増加した結果、営業利益は前期と比較して減少しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 599億円 629億円
売上総利益 202億円 199億円
売上総利益率(%) 33.8% 31.7%
営業利益 59億円 51億円
営業利益率(%) 9.8% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が61億円(構成比41%)、その他が17億円(同11%)を占めています。売上原価は430億円で、売上高に対する構成比は68%です。

(3) セグメント収益


軸受機器事業は増収を確保し、利益も微増となりました。建築機器事業は新築向けが好調で増収増益となりましたが、構造機器事業は大型物件の減少などが響き減収減益となりました。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
軸受機器 403億円 439億円 30億円 30億円 6.9%
構造機器 123億円 114億円 25億円 15億円 13.3%
建築機器 58億円 61億円 3億円 5億円 7.9%
その他 15億円 15億円 0.3億円 0.5億円 3.0%
調整額 -億円 -億円 -0.0億円 0.0億円 -%
連結(合計) 599億円 629億円 59億円 51億円 8.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 59億円 80億円
投資CF -31億円 -22億円
財務CF -34億円 -41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「オイルレスベアリングの総合メーカーとして世界のリーダーとなり、技術で社会に貢献する」という経営理念を掲げています。創業者の思いである「技術で社会に貢献する」を普遍的な価値観とし、環境負荷低減や安心・安全の提供を通じて社会課題の解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「摩擦」「摩耗」「潤滑」にかかわるトライボロジー技術と、ダンピング(振動制御)技術の2つのコア技術を探求し続けることを重視しています。「ダントツ」の性能を持つ独自の材料開発や、顧客の課題を革新的に解決する製品開発に挑戦し続けることで、市場創造企業としての地位を確立しようとする文化があります。

(3) 経営計画・目標


2021年度を起点とする中期経営計画(2021年度~2023年度)において、グローバル経営の推進や選択と集中による経営資源の有効活用を方針として掲げています。

* 売上高営業利益率:15%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、経営理念の実現に向け、各事業において「選択と集中」による収益構造の構築と成長市場への取り組み強化を推進しています。特に軸受機器では半導体や再生可能エネルギー、EV化対応などの成長市場を、構造機器ではインフラ老朽化対策を、建築機器では換気ニーズ対応やリニューアル獲得を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「従業員は会社の大切な財産」と考え、人権尊重、ダイバーシティ推進、人材育成、適正な労働慣行や健康経営の推進に取り組んでいます。多様な人材が能力を発揮できる環境整備や、後継者育成のための投資を積極的に行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 44.6歳 17.9年 7,768,988円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.1%
男女賃金差異(正規雇用) 74.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した正規雇用労働者に占める女性労働者の割合(28.1%)、正規雇用労働者の男女の勤続年数の差異(男性19.6年、女性15.4年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済・金融市場動向に関するリスク


製品需要は世界の景気動向に影響を受けます。特に、原材料価格の高騰や調達リスク、為替レートの変動は、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同社はサプライチェーンの見直しや価格転嫁、現地調達化などで対応を進めていますが、急激な変動には注意が必要です。

(2) 事業戦略及び戦略に関わる外部環境に関するリスク


海外売上高比率が高いため、各国の政治・経済情勢の変化や地政学リスクの影響を受ける可能性があります。また、自動車産業向けの売上依存度が高く、CASE等の産業構造変化や需要変動が業績に影響を与える可能性があります。価格競争の激化や知的財産権に関するリスクも存在します。

(3) 業務運営に関するリスク


製品に重大な欠陥が生じた場合、社会的信用の低下や多額の補償費用が発生する可能性があります。また、環境規制への対応不足や人材確保の困難、情報セキュリティ事故なども、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。特に気候変動への対応は、サプライチェーンからの排除リスクにもつながる重要課題と認識しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

オイレス工業の転職研究 2026年3月期中間期決算に見るキャリア機会

オイレス工業の2026年3月期中間決算は、一般軸受の好調により増収を確保。設備不具合による通期予想修正はあるものの、インド第2工場の着工や国内拠点の刷新など、2030年ビジョンに向けた攻めの投資を継続しています。摩擦・摩耗・振動技術を軸に、成長市場へ挑む専門人材の活躍フィールドを最新戦略から整理します。