※本記事は、平田機工株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 平田機工ってどんな会社?
自動車や半導体向けの自動化・省人化生産システムを提供するグローバルエンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1951年に産業車両の製造・販売を目的に平田車輌工業として設立され、1964年に工場内生産設備分野に参入しました。1974年の合併を経て現在の平田機工へと商号変更し、米国やアジア、欧州へ海外展開を加速させました。2006年のジャスダック上場を経て、現在はプライム市場に上場しています。
現在の従業員数は連結で1,984名、単体で1,225名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には事業会社であるSMCが名を連ねています。また、経営陣や社員持株会も株主となっており、国内外の多数の子会社とともにグローバルなサポート体制を構築して事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.99% |
| SMC | 4.85% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は前田繁氏が務めています。取締役12名のうち6名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前田繁 | 代表取締役社長 | 1979年同社入社。事業本部第一システム部長、事業本部長などを経て、2023年に取締役専務執行役員に就任。2024年取締役副社長執行役員を経て、2026年4月より現職。 |
| 平田雄一郎 | 代表取締役会長 | 1989年同社入社。取締役第一事業部長、取締役副社長などを経て、2007年海外事業本部長兼技術本部長に就任。2011年より代表取締役社長を務め、2026年4月より現職。 |
| 小﨑勝 | 取締役常務執行役員グループ事業本部長 兼 ビジネスディベロップメントセンター担当 | 1986年同社入社。海外子会社社長やグローバル事業本部長を歴任。2023年より取締役常務執行役員を務め、2026年4月より現職。 |
| 二宮秀樹 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1990年同社入社。管理本部法務部長、執行役員管理本部長などを歴任し、2023年取締役執行役員に就任。2026年4月より現職。 |
| 平川武則 | 取締役常務執行役員事業本部長 兼 第三ビジネスユニット長 | 1982年同社入社。開発本部第一開発部長、デバイスセンターロボット部長などを歴任。2025年取締役執行役員を経て、2026年4月より現職。 |
| 大塚直哉 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年肥後銀行入行。同行監査部長などを経て、2021年百花園代表取締役に就任。2023年同社顧問を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、小川暁(和幸製作所社長)、上田亮子(SBI大学院大学教授)、多田隈建二郎(大阪大学大学院教授)、今村憲(奧野総合法律事務所パートナー)、遠藤恭彦(元みずほ証券常務執行役員)、岡部麻子(岡部麻子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車関連」、「半導体関連」、「その他自動省力機器」および「その他」事業を展開しています。
■自動車関連
自動車および同部品メーカー向けに、エンジン、トランスミッション、車載用電子部品、電気自動車(EV)関連などの自動組立ラインを中心とした生産システムの製造および販売を行っています。電気自動車向けや内燃機関向けの生産設備において、顧客の多様なニーズに応える生産システムを提供しています。
事業の収益源は、自動車メーカーや部品メーカーからの生産システムの販売代金およびエンジニアリング費用です。事業の運営は主に平田機工が主体となって行い、国内外の連結子会社とも連携してワールドワイドな販売活動とサポート体制を構築しています。
■半導体関連
半導体製造工程で使用されるウェーハ搬送装置の製造および販売を行っています。主な製品として、ウェーハを各種処理装置に取り込むロードポート、ウェーハ搬送ロボット、およびそれらを統合したEFEM(Equipment Front End Module)などを提供しています。
収益源は、半導体メーカーや製造装置メーカーからのコンポーネント製品およびEFEMなどの販売代金です。当事業の運営は主に平田機工が行っており、中国やマレーシアなどの海外生産拠点における生産能力の拡充も進めています。
■その他自動省力機器
有機ELディスプレイの製造工程で使用される蒸着装置や、ストッカー・搬送装置などの物流関連機器のほか、タイヤ関連生産設備、医療・理化学機器などの自動省力機器の製造および販売を行っています。
収益源は、各産業の顧客企業からの製造装置や関連機器の販売代金です。日本国内における製造は平田機工が主体となり、連結子会社のタイヘイテクノスに一部製造業務を、ヒラタフィールドエンジニアリングに保守サービスを委託して運営しています。
■その他
同社の報告セグメントに含まれないその他の事業分野として、連結子会社が展開する太陽光発電関連事業や、ポイント・顧客管理システム関連事業などを行っています。
収益源は、太陽光発電による売電収入やシステム関連サービスの提供に対する利用料などです。事業の運営は主に連結子会社であるトリニティなどが主体となって展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の連結業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで持続的な成長を遂げています。電気自動車(EV)や半導体関連の旺盛な設備投資需要を背景に受注を拡大し、利益率も改善傾向にあります。事業規模の拡大と高収益体質への転換が着実に進展していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 671億円 | 784億円 | 828億円 | 885億円 | 949億円 |
| 経常利益 | 43億円 | 58億円 | 63億円 | 69億円 | 84億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 7.4% | 7.6% | 7.8% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 35億円 | 27億円 | 50億円 | 52億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加えて、適正な価格設定や生産習熟度の向上により売上総利益率が改善しています。さらに、営業利益率も上昇しており、販売管理費の増加を吸収して高い増益を達成するなど、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 885億円 | 949億円 |
| 売上総利益 | 190億円 | 208億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.5% | 21.9% |
| 営業利益 | 69億円 | 83億円 |
| 営業利益率(%) | 7.8% | 8.8% |
販売費及び一般管理費(合計125億円)のうち、給料及び賞与が49億円(構成比39.1%)と最も大きな割合を占め、次いで研究開発費が16億円(同12.5%)となっています。売上原価(合計741億円)については、材料費や製造経費などが含まれており、売上高に対する売上原価の比率は78.1%となっています。
■(3) セグメント収益
主力である自動車関連は、エンジンや車載用電子部品関連の受注が寄与し、底堅い推移を見せています。半導体関連は生成AI関連の旺盛な需要を取り込み、売上が大きく伸長して全社の成長を牽引しました。一方、その他自動省力機器はフラットパネルディスプレイ関連設備が堅調に推移したものの、前年同期と比べ微減となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車関連 | 431億円 | 435億円 |
| 半導体関連 | 302億円 | 361億円 |
| その他自動省力機器 | 131億円 | 126億円 |
| その他 | 21億円 | 27億円 |
| 連結(合計) | 885億円 | 949億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であるといえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 94億円 | 165億円 |
| 投資CF | -20億円 | -38億円 |
| 財務CF | -56億円 | -130億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業の精神である「我々は勇敢に技術革新を追求し 人格を養い能力を高め社会の発展に寄与する」という綱領に基づき、時代に応じた技術革新への挑戦を続けています。さらに、長期的な経営方針として「人技幸献(Hirataに関わるすべての人を幸福にするとともに、社会に技術で貢献する)」というスローガンを掲げ、お客様の次世代製品に対応した設備革新と持続的な社会の発展への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
新しい技術への挑戦と革新を続けることで時代の変化に対応し、世界中での仕事を通じて個人の見聞を広げ、能力を高め、世界で競争できる能力を高めるという文化が根付いています。また、「人技幸献」に示される通り、技術は人があってこそ存在し、働く社員の幸せがあってこそ会社が存在するという、人間尊重の精神を重視しています。透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行える企業風土の醸成にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画(2025-2027年度)において、高利益体質の実現とビジネス領域の拡大を図り、持続的・安定的な利益創出を目指しています。成長投資および株主還元とのバランスを踏まえつつ、財務健全性の維持や資本効率の向上に向けた取り組みを進めています。具体的な数値目標として以下を掲げています。
* 売上高年平均成長率(CAGR)6~8%
* 営業利益 100億円以上
* ROE 9.3%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は成長戦略の柱として、5つの重点施策を掲げています。具体的には、旺盛な需要が見込まれる半導体関連事業での生産拠点拡充、自動車分野など受注生産ビジネスの収益性強化、DX推進などによる収益基盤の強化に取り組んでいます。また、独自の技術資産を活かした量産ビジネスの拡大や、バッテリーや制御盤などの新規ビジネスの事業部化を推進し、新たな成長ドライバーの創出と持続的な企業価値の向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人技幸献」のスローガンのもと、従業員一人ひとりが専門性や個性を最大限に活かして挑戦できる人材育成を目指しています。階層別や技術専門研修の充実、ジョブローテーションの活性化、自己啓発支援を通じて持続的な成長を支援しています。また、多様な人材が働きがいと誇りを持てる評価・報酬制度の構築や、時間外労働の削減など健康経営の推進により、ワークライフバランスの実現に向けた社内環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 15.9年 | 7,355,847円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | 68.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 42.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージしている人の割合(14.0%)、障がい者雇用率(2.3%)、労働災害度数率(0.3)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報管理に係るリスク
万が一、強力なマルウェアの侵入や外部からのサイバー攻撃によって情報漏洩やシステム障害が発生した場合、企業イメージの悪化や生産遅延が生じる可能性があります。これに対し、同社は不正アクセス防止システムの導入やセキュリティ規程の整備、従業員教育の徹底などを通じて、インシデントに迅速に対応できる体制を構築しています。
■(2) 海外での事業活動に係るリスク
同社グループはグローバルに事業を展開しているため、進出先における政治動向の急変や法規制の変更、地政学的リスク、社会的混乱などの影響を受ける可能性があります。このリスクを低減するため、国内外の子会社間で定期的に情報交換を行い、周辺環境の変化を早期に把握し、迅速な対応を図る体制を整えています。
■(3) 市場環境等の変化に係るリスク
自動車関連や半導体分野など多岐にわたる企業の設備投資動向に業績が左右されるほか、原材料価格や人件費の高騰が収益に影響を及ぼす可能性があります。対策として、特定の事業分野に資本を集中させず複数の事業を推進することでリスクの分散を図るとともに、知財教育や報奨制度を通じて技術革新と競争力強化を進めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。