※本記事は、平田機工株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 平田機工ってどんな会社?
自動車や半導体、家電などの生産ラインを支える生産設備エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1951年に産業車両の製造販売を目的に設立され、1964年にはテレビ組立ラインを納入し生産設備分野へ参入しました。1974年に現社名へ変更し、2006年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2017年に東京証券取引所市場第一部へ市場変更を果たし、現在はグローバルに事業を展開しています。
同社グループは連結従業員1,995名、単体1,196名を擁する体制です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第3位には空気圧機器大手のSMCが名を連ねています。SMCは同社にとって重要な取引先でもあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.85% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.75% |
| SMC | 4.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名(社外取締役含む)の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長執行役員は平田雄一郎氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平田 雄一郎 | 代表取締役社長執行役員 | 1989年同社入社。事業本部長、海外事業本部長などを経て、2011年より現職。 |
| 前田 繁 | 取締役副社長執行役員 | 1979年同社入社。事業本部熊本第一事業部長、事業本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 小﨑 勝 | 取締役常務執行役員グローバル事業本部長 | 1986年同社入社。シンガポール法人Managing Directorなどを経て、2023年4月より現職。 |
| 二宮 秀樹 | 取締役執行役員管理本部長 | 1990年同社入社。法務部長、管理本部副本部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 平田 正治郎 | 取締役 | 1989年同社入社。デバイスセンター長、調達本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、小川暁(株式会社和幸製作所代表取締役社長)、上田亮子(SBI大学院大学教授)、多田隈建二郎(大阪大学大学院教授)、元田直邦(元株式会社肥後銀行取締役)、今村憲(奧野総合法律事務所パートナー)、遠藤恭彦(元みずほ証券常務執行役員)、岡部麻子(岡部麻子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車関連」、「半導体関連」、「その他自動省力機器」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車関連
自動車および自動車部品メーカー向けに、生産システムの製造販売を行っています。具体的には、電気自動車(EV)関連設備、エンジン、トランスミッション、その他車載用電子部品などの自動組立ラインを中心とした製品を提供しています。
収益は、顧客である自動車メーカー等からの生産システムの販売代金により得ています。運営は主に平田機工が担い、海外案件については各地域の連結子会社が製造または販売を行っています。
■(2) 半導体関連
半導体製造工程で使用されるウェーハ搬送装置の製造販売を行っています。主な製品には、ウェーハを各種処理装置に取り込むロードポート、ウェーハ搬送ロボット、およびそれらを統合したEFEM(Equipment Front End Module)などがあります。
収益は、半導体製造装置メーカーやデバイスメーカーへの装置販売により獲得しています。運営は平田機工を中心とし、製造・販売体制をグローバルに展開しています。
■(3) その他自動省力機器
家電製品の生産設備や物流関連機器、タイヤ関連生産設備、医療・理化学機器などの製造販売を行っています。高性能家電に組み込まれるモーターの組立設備や、ストッカー・搬送装置などが含まれます。
収益は、各業界のメーカー等からの設備販売代金となります。運営は平田機工および各連結子会社が行っており、国内では連結子会社のタイヘイテクノスが製造業務の委託を受けています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、太陽光発電関連やポイント・顧客管理システム関連などの事業が含まれています。これらは特定のセグメントに属さない小規模な事業群です。
収益は、それぞれの事業における製品・サービスの販売により得ています。運営は同社グループの子会社等が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間において増加傾向にあり、特に直近2期は800億円を超える水準で推移しています。利益面でも、経常利益率は6〜7%台を維持しており、当期は増収に伴い親会社株主に帰属する当期純利益も増加しました。全体として堅調な成長を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 653億円 | 671億円 | 784億円 | 828億円 | 885億円 |
| 経常利益 | 52億円 | 43億円 | 58億円 | 63億円 | 69億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 6.3% | 7.4% | 7.6% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 41億円 | 27億円 | 43億円 | 43億円 | 48億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が増加したことに伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しました。売上総利益率は若干改善しており、営業利益率も前期を上回っています。増収効果が利益増に寄与している構造です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 828億円 | 885億円 |
| 売上総利益 | 178億円 | 190億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.5% | 21.4% |
| 営業利益 | 60億円 | 69億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が46億円(構成比38%)、研究開発費が14億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車関連はEV向け設備等が底堅く推移し大幅な増益となりました。半導体関連は売上高が増加したものの、利益率は低下しています。その他自動省力機器は減収となり、営業損失を計上しました。自動車関連が全体の利益成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車関連 | 370億円 | 431億円 | 17億円 | 42億円 | 9.7% |
| 半導体関連 | 274億円 | 302億円 | 45億円 | 29億円 | 9.5% |
| その他自動省力機器 | 161億円 | 131億円 | 1億円 | -1億円 | -0.8% |
| その他 | 24億円 | 21億円 | -2億円 | -1億円 | -2.7% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 828億円 | 885億円 | 60億円 | 69億円 | 7.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動も自己資金の範囲内で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -46億円 | 94億円 |
| 投資CF | -22億円 | -20億円 |
| 財務CF | 59億円 | -56億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「我々は勇敢に技術革新を追求し 人格を養い能力を高め社会の発展に寄与する」という創業の精神に基づき経営を行っています。また、長期的な経営方針として「人技幸献」というスローガンを掲げ、同社に関わるすべての人を幸福にするとともに、社会に技術で貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
時代ごとに生まれる顧客の製品と同様に、常に新しい技術への挑戦と革新を続けることで時代の変化に対応する文化があります。また、世界中での仕事を通じて個人の見聞を広げ、能力を高め、世界で競争できる力を養うことを重視しています。「技術があってこそ、技術は人があってこそ、働く社員の幸せがあってこそ存在する」という考え方が根底にあります。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から始まる新中期経営計画(2025-2027年度)では、「設備革新による利益の最大化」をスローガンに掲げています。数値目標として、2028年3月期の営業利益100億円以上、ROE9.3%以上、計画期間中の売上高年平均成長率(CAGR)6〜8%の実現を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画では、半導体関連事業の規模拡大、受注生産ビジネスにおける収益性の強化、収益基盤のさらなる強化、量産ビジネスの拡大、新規ビジネスの事業部化を5つの戦略の柱としています。特に半導体関連では生産能力の増強や海外拠点の拡大を進め、自動車関連では案件の選択と集中により収益性を高める方針です。
* 半導体関連事業の2027年度目標:生産能力50%増(各製品の台数ベース)、海外での生産拠点+2拠点(2024年度対比)
* 自動車関連事業の2027年度目標:自動車セグメントの連結営業利益率10%以上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人技幸献」のスローガンのもと、主体的に学び、挑戦し続ける人材の育成を目指しています。階層別研修や技術専門研修を実施し、高い技術力・専門性を持った人材やグローバル人材を育成します。また、多様なキャリアを持つ従業員がやりがいを持って働けるよう、評価・報酬制度の構築やワークライフバランスの実現、健康経営の推進など社内環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.1歳 | 16.3年 | 6,954,611円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.1% |
| 男性育児休業取得率 | 70.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 43.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージしている人の割合(8%)、障がい者雇用率(2.14%)、労働災害度数率(0.62)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境等の変化に係るリスク
自動車関連や半導体関連など多分野の生産システムを受注しているため、顧客の設備投資状況の変化が業績に影響する可能性があります。また、原材料不足や価格高騰、急激な技術革新への対応遅れなどが受注確保や業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
■(2) 法規制等に係るリスク
グローバルに事業展開しているため、各国の法規制への対応が必要です。法令解釈の相違等による違反判断や法規制の改正に伴う対応費用の発生が、業績や財務状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 重要な訴訟の発生に係るリスク
知的財産権の侵害リスクや、製造物責任に関するリスクがあります。意図せず他社の権利を侵害した場合や製品に欠陥が発生した場合、損害賠償請求や訴訟により多額の費用負担が発生し、業績や企業イメージに悪影響を与える可能性があります。
■(4) 情報管理に係るリスク
マルウェアの侵入や不正アクセス等による情報セキュリティインシデントが発生した場合、情報漏洩やシステム停止等により多額の費用負担や社会的信用の失墜を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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