寺崎電気産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

寺崎電気産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する電気機械器具メーカーです。船舶・産業用配電制御システムおよびブレーカ等の機器製品の製造販売を主力としています。第45期は、造船市況の好調を背景に船舶用システム製品の受注が拡大し、売上高は前期比8.3%増、経常利益は4.8%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、寺崎電気産業株式会社 の有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 寺崎電気産業ってどんな会社?


配電制御システムやブレーカ等の電気機器を製造・販売し、船舶用システムで高いシェアを持つグローバル企業です。

(1) 会社概要


1923年に大阪市で寺崎電機製作所として創業し、1980年に現在の寺崎電気産業を設立しました。1970年代から英国、シンガポール、ブラジル等に現地法人を設立し、早期から海外展開を進めています。2007年にジャスダック証券取引所(現スタンダード市場)へ株式を上場しました。現在は船舶用配電制御システムや産業用システム、医療機器関連事業等を展開し、グローバルな供給体制を構築しています。

連結従業員数は2,198名、単体では553名です。筆頭株主は同社の関連会社である株式会社寺崎で、第2位は代表取締役社長の寺崎泰造氏です。上位株主には創業家関連や従業員持株会、取引先金融機関などが名を連ねており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
寺崎 16.89%
寺崎泰造 8.79%
テラサキトラスト 6.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は寺崎泰造氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
寺崎 泰造 代表取締役社長執行役員 1995年同社入社。経営企画室部長、常務取締役、代表取締役専務を経て、2011年より現職。
熊澤 和信 取締役 専務執行役員 1978年同社入社。人事部長、システム事業各部長、経営本部総務部長などを歴任し、2021年より現職。
長瀬 順治 取締役 常務執行役員 1983年同社入社。システム事業事業管理室長、経理部長、取締役監査等委員を経て、2021年より現職。
梅本 好弘 取締役 常務執行役員 1984年同社入社。機器事業各部長、シンガポール子会社社長、テラテック社長などを経て、2023年より現職。
吉川 和宏 取締役 常務執行役員 1984年同社入社。システム事業各部長、テラメックス社長、執行役員などを経て、2025年より現職。
安川 恵太 取締役 執行役員 1988年同社入社。システム事業海洋技術部長、中国子会社総経理などを経て、2025年より現職。
西田 昌央 取締役(常勤監査等委員) 1981年同社入社。上海子会社総経理、テラテック社長、常務執行役員などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、千代田邦夫(公認会計士、元金融庁公認会計士・監査審査会会長)、鷹野俊司(弁護士法人中本総合社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「アジア」および「ヨーロッパ」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


船舶用・産業用の配電制御システム、機関監視制御システム、メディカルデバイス(医療機器)、および低圧遮断器等の機器製品を提供しています。主な顧客は造船会社、建設会社、工場、医療機関等です。

収益は、顧客への製品販売およびエンジニアリング・ライフサイクルサービス(保守・メンテナンス)の提供による対価から得ています。運営は主に同社(寺崎電気産業)が行い、製造・販売の一部をテラテック、テラメックス、テラサキ伊万里、耶馬溪製作所等の国内子会社が担っています。

(2) アジア


中国、シンガポール、マレーシア等のアジア地域において、船舶用システム製品および機器製品の製造・販売を行っています。現地造船所や日系企業の設備投資需要、インフラ関連市場等が主なターゲットです。

収益は、製品の販売およびエンジニアリングサービスの提供による対価から得ています。運営は、TERASAKI ELECTRIC CO.,(F.E.) PTE.LTD.(シンガポール)、TERASAKI ELECTRIC (CHINA) LIMITED(中国)、TERASAKI ELECTRIC (M) SDN.BHD.(マレーシア)等の現地連結子会社が行っています。

(3) ヨーロッパ


欧州、中東、アフリカ地域向けに、主に機器製品(低圧遮断器等)の販売およびシステム製品のエンジニアリングサービスを提供しています。現地市場でのシェア拡大やOEM販売の強化に取り組んでいます。

収益は、製品の販売およびメンテナンス等のサービス提供による対価から得ています。運営は、イギリスに拠点を置く連結子会社 TERASAKI ELECTRIC (EUROPE) LTD. が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、347億円から564億円へと大幅に拡大しています。経常利益も第42期に一時的な減少が見られたものの、その後は急回復し、直近では60億円を超える水準で安定しています。当期純利益も同様の傾向で、直近では45億円を計上し、利益率も高水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 347億円 379億円 443億円 521億円 564億円
経常利益 30億円 19億円 35億円 58億円 61億円
利益率(%) 8.6% 5.1% 7.9% 11.1% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 13億円 23億円 40億円 45億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。営業利益も増加しており、原材料価格高騰等のコスト増を吸収して増益を確保しました。売上総利益率は約28%台で安定しており、営業利益率も約10%前後と高い収益性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 521億円 564億円
売上総利益 147億円 160億円
売上総利益率(%) 28.3% 28.4%
営業利益 49億円 56億円
営業利益率(%) 9.5% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が34億円(構成比33%)、荷造・運賃費が9億円(同8%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が主要な割合を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。「日本」は売上規模が最大で安定した利益を生み出しています。「アジア」は造船需要の好調を受けて大幅な増収増益となり、利益率も高い水準です。「ヨーロッパ」は一部地域での需要低迷等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 261億円 269億円 39億円 38億円 14.1%
アジア 179億円 222億円 13億円 20億円 9.1%
ヨーロッパ 81億円 73億円 9億円 8億円 11.6%
連結(合計) 521億円 564億円 49億円 56億円 10.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

寺崎電気産業は、営業活動により潤沢な資金を創出し、事業基盤の強化に努めています。営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加しており、これは主に税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少によるものです。投資活動では、有形固定資産の取得に資金を使用しており、将来の成長に向けた設備投資を進めています。財務活動では、リース債務の返済や配当金の支払い等により資金が使用されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 38億円 83億円
投資CF -24億円 -32億円
財務CF -2億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客第一主義」を経営理念として掲げています。顧客のニーズに応えるとともに、貴重なエネルギー資源を有効利用して世界に通用する商品を提供し、社会に貢献することを基本方針としています。また、高度な情報通信技術やコンピューター応用技術との融合を進化させ、未来のための電気エネルギー制御を追求することを目指しています。

(2) 企業文化


グローバルな組織の有効活用と最適化を追求する姿勢を「TEAM TERASAKI」として表現しています。また、「人を活かす」ことを重視し、社員が同僚と共に働くことを喜びとし、それぞれの人生をのびのびと生きることができるよう努力するという方針を持っています。コンプライアンスや企業倫理に基づく取り組みも重視しています。

(3) 経営計画・目標


安定経営を基軸とした着実な収益向上により、中長期的な業容拡大を目指しています。経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、以下の数値を中期目標として掲げています。

* 連結営業利益率:8%以上
* 自己資本比率:55%以上

(4) 成長戦略と重点施策


顧客満足度向上によるシェア維持・拡大、営業活動強化、設計・生産改善による生産性・品質向上を推進しています。特に、環境対応ビジネスの拡大や、IoT・ビッグデータ活用などの新技術を利用した研究開発、新興国インフラ市場への展開、OEM戦略の強化等に取り組んでいます。また、BCP(事業継続計画)を考慮した生産体制の強化も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を活かす」を経営方針とし、性別・国籍・年齢等を含む多様性を財産と捉えています。自律的人材の育成を目標とし、OJTやOff-JTを通じた能力開発、ジョブローテーション、グローバル人材育成のための語学学習支援などに注力しています。また、フレックスタイム制や時間単位休暇等の制度導入により、働きやすい環境整備にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.7歳 17.4年 5,898,013円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 83.3%
男女賃金差異(正規) 80.8%
男女賃金差異(非正規) 88.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員の平均時間外労働時間(12.8時間)、平均有給休暇取得率(84.9%)、平均離職率(2.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資動向の影響


同社グループの主力であるシステム製品および機器製品の収益は、国内外の設備投資動向の影響を受けます。利益計画は予測値を織り込んで策定されていますが、動向が予想を超えて変化した場合は、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定の業界等への高い依存度


主要事業の一つである船舶用配電制御システム等は、顧客である海運造船業界への依存度が高くなっています。他市場への伸長も図っていますが、海運造船業界の経営成績の動向によっては、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外活動に潜在するリスク


欧州、中国、東南アジア等で生産・販売を行っており、現地の法的規制や慣習、労働争議、地政学リスク等の不測の事態が発生した場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。特に為替変動や現地の情勢変化には注意が必要です。

(4) 原材料価格の高騰


製品製造に使用する銅、銀、鋼材等の原材料価格が高騰した場合、特に銅価格の影響を大きく受けます。原価低減活動や価格適正化を進めていますが、価格高騰や入手難が生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。