寺崎電気産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

寺崎電気産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の寺崎電気産業は、船舶やビル向けの配電制御システムおよび低圧遮断器などの機器製品の製造販売を主力とします。直近の業績は、造船業界の需要増加を背景にシステム製品の販売が好調に推移し、増収ならびに営業増益を達成しました。グローバルに事業を展開し、安定的な経営基盤を有しています。


※本記事は、寺崎電気産業株式会社の有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 寺崎電気産業ってどんな会社?


同社グループは、船舶や産業用の配電制御システム製品と低圧遮断器などの機器製品の製造販売をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


1923年に大阪市において電気機械器具類の製造・販売を目的として創業し、1980年に現在の寺崎電気産業が設立されました。1970年代からイギリスやシンガポール、ブラジルなどに合弁会社を設立し、早くから海外進出を推進してきました。2007年にはジャスダック証券取引所(現在の東証スタンダード市場)に株式を上場し、現在もグローバルな生産・販売体制を強化しています。

現在の従業員数は連結で2,219名、単体で566名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業会社である寺崎で、第2位は同社代表取締役の寺崎泰造氏、第3位は個人の荒巻かおり氏となっています。

氏名 持株比率
寺崎 17.94%
寺崎泰造 9.37%
荒巻かおり 6.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員を寺崎泰造氏が務め、社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
寺崎泰造 代表取締役社長執行役員 1995年同社入社。経営企画室部長や機器事業国際部部長を歴任。1999年に取締役に就任し、2020年より現職。
熊澤和信 取締役専務執行役員経営企画・技術・情報開示・人事・総務担当 1978年同社入社。人事部やシステム事業の各部長を経て、2021年より現職。
長瀬順治 取締役常務執行役員経理・情報システム担当 1983年同社入社。システム事業事業管理室室長や経理部部長を経て、2021年より現職。
梅本好弘 取締役常務執行役員機器事業事業担当 1984年同社入社。機器事業の各部長や海外子会社社長を歴任し、2023年より現職。
吉川和宏 取締役常務執行役員システム事業事業担当・産業用システム担当 1984年同社入社。システム事業の各部長や子会社社長を経て、2025年より現職。
安川恵太 取締役執行役員システム事業船舶用システム担当 1988年同社入社。システム事業海洋技術部部長や海外子会社社長を経て、2025年より現職。
西田昌央 取締役(常勤監査等委員) 1981年同社入社。各事業部長や子会社社長、システム事業担当取締役を経て、2025年より現職。


社外取締役は、千代田邦夫(元金融庁公認会計士・監査審査会会長)、鷹野俊司(弁護士法人中本総合社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「ヨーロッパ」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


船舶用および産業用の配電制御システム製品、低圧遮断器などの機器製品、メディカルデバイスなどの製造販売を行っています。顧客は国内外の造船会社、プラント、医療機関など幅広く、顧客の個別仕様に基づいたシステム製品や、主要規格に対応した機器製品を提供しています。

収益は、製品の販売代金や保守・メンテナンスサービスの提供に対する対価として得ています。運営は主に親会社である寺崎電気産業のほか、テラテック、テラメックス、テラサキ伊万里、耶馬溪製作所などの国内子会社が担当しています。

(2) アジア


中国や韓国、東南アジア市場向けに、船舶用配電制御システム製品や機器製品の製造・販売、およびエンジニアリングやライフサイクルサービスを提供しています。LNG運搬船など高付加価値船向けの需要に応えるとともに、現地のインフラ市場への製品供給も行っています。

収益は、アジア各国の顧客に対するシステム製品や機器製品の販売代金、およびアフターサービスから得ています。運営は、TERASAKI ELECTRIC (CHINA) やTERASAKI ELECTRIC (SHANGHAI)、シンガポールおよびマレーシアの現地子会社が行っています。

(3) ヨーロッパ


イギリスを中心とした欧州、中東、アフリカ市場向けに、低圧遮断器などの機器製品の販売や、船舶向けブレーカのライフサイクルおよびレトロフィットビジネス(更新工事等)を展開しています。

収益は、現地顧客やOEM(相手先ブランド製品製造)販売先への製品販売代金、およびエンジニアリングサービスから得ています。運営は、主にイギリスの現地法人であるTERASAKI ELECTRIC (EUROPE) が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は379億円から629億円へと継続的に拡大しています。経常利益も19億円から65億円へと大幅な成長を遂げており、利益率は安定して10%台を維持しています。主力である造船業界向けの需要増加などが成長を牽引しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 379億円 443億円 521億円 564億円 629億円
経常利益 19億円 35億円 58億円 61億円 65億円
利益率(%) 5.1% 7.9% 11.1% 10.7% 10.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 23億円 40億円 45億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も前年から約14億円増加し、総利益率は約28%で安定しています。営業利益も着実に増加しており、約10%の高い営業利益率を維持し、強固な収益基盤を確立しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 564億円 629億円
売上総利益 160億円 174億円
売上総利益率(%) 28.4% 27.7%
営業利益 56億円 62億円
営業利益率(%) 10.0% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が37億円(構成比33%)、荷造・運賃費が9億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本およびアジアセグメントが売上成長を牽引しています。特にアジアでは船舶用システム製品の好調により、前年比で大幅な増収を達成しました。一方、ヨーロッパは一部地域の低調により微減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 269億円 285億円
アジア 222億円 272億円
ヨーロッパ 73億円 71億円
連結(合計) 564億円 629億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 83億円 12億円
投資CF -32億円 -29億円
財務CF -7億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経営理念である「顧客第一主義」を念頭に、同社の商品を選んだ顧客のニーズに応えるとともに、貴重なエネルギー資源を有効に利用して世界に通用する商品を提供し、社会に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


高度な「情報通信技術」や「コンピューター応用技術」との融合を進化させ、未来のための電気エネルギー制御を究め、技術の進歩に寄与していく姿勢を重視しています。グローバルな組織の有効活用と更なる最適化の追求を「TEAM TERASAKI」として目指し、企業倫理に基づく積極的な取り組みを行っています。

(3) 経営計画・目標


安定経営を基軸とした着実な収益の向上により、中長期的な業容の拡大を目指しており、経営指標として以下の数値を中期目標として掲げています。

* 連結営業利益率8%以上
* 自己資本比率55%以上

(4) 成長戦略と重点施策


営業活動の強化、設計・生産の改善活動の継続による生産性および品質レベルの向上を図るとともに、市場ニーズを反映した新製品の開発や他社との研究開発プロジェクトへの参画に努めています。また、BCP(事業継続計画)を考慮した生産体制の強化や、環境対応ビジネスの拡大、脱炭素に向けた新エネルギー関連の制御システムなどの提案を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「人を活かす 私たちは同僚と共に働くことを喜びとし、それぞれの一度しかない人生をテラサキでのびのびと生きることができるように努力します」という方針を掲げています。性別や国籍などの多様性を財産とし、自律的人材やグローバル人材の育成を強化するため、教育環境の整備やジョブローテーションを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.6歳 16.7年 5,918,522円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均有給休暇取得率(87.6%)、平均離職率(2.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資動向の影響


同社グループの事業は、システム製品および機器製品の製造販売やエンジニアリングサービスが主体であり、国内外の設備投資動向に影響を受けます。設備投資の動向が予想を超えて変化した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 海外活動に潜在するリスク


欧州、中国、東南アジアなどの海外で生産および販売を展開しています。現地の情勢を随時把握し適切に対処する方針ですが、法的規制の変更や慣習に起因する労働争議などの不測の事態が発生した場合、業績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) コンプライアンスに関するリスク


事業を展開する国や地域における規制および法令等を遵守して事業運営を行っています。コンプライアンス体制の強化や研修を通じて予防策を講じていますが、万が一法令等に違反する事態が生じた場合、社会的制裁や信頼の失墜につながり、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。