※本記事は、シャープ株式会社 の有価証券報告書(第131期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シャープってどんな会社?
電気通信機器・電気機器・電子応用機器全般および電子部品の製造・販売を行う総合電機メーカーです。「目の付けどころ」や「特長技術」を強みに、独創的な商品やサービスを提案しています。
■(1) 会社概要
1912年に創業者の早川徳次が個人企業として創業し、1915年に金属繰出鉛筆(後のシャープペンシル)を発明・発売しました。1935年に株式会社組織へ改組し、1949年に大阪証券取引所、1956年に東京証券取引所に株式を上場しました。2016年に鴻海精密工業股份有限公司の傘下に入り、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。2022年には堺ディスプレイプロダクトを子会社化しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は40,123名、単体では5,636名です。筆頭株主は電子機器受託生産サービスを行う親会社の鴻海精密工業股份有限公司で、第2位および第3位も同社グループの投資会社であるSIO INTERNATIONAL HOLDINGS LIMITEDおよびFOXCONN (FAR EAST) LIMITEDが名を連ねており、鴻海グループとの資本関係が強い体制となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HON HAI PRECISION INDUSTRY CO., LTD. | 22.32% |
| SIO INTERNATIONAL HOLDINGS LIMITED | 13.23% |
| FOXCONN (FAR EAST) LIMITED | 11.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表者は代表取締役社長執行役員 CEOの沖津 雅浩氏です。社外取締役比率は77.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 沖 津 雅 浩 | 代表取締役社長執行役員 CEO | 1980年同社入社。健康・環境システム事業本部長、スマートアプライアンス&ソリューション事業本部長、スマートライフグループ長などを歴任。2022年代表取締役副社長執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 呉 柏 勲 | 代表取締役副会長執行役員 | 2001年鴻海精密工業入社。シャープディスプレイプロダクト経営企画マネージャー、Sharp Thai社長などを経て、2022年同社代表取締役社長執行役員兼CEO。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、清田 瞭(元日本取引所グループCEO)、張 慶 瑞(元國立台灣大學代理校長)、永 塚 誠 一(元経済産業省商務情報政策局長)、梶 原 ゆみ子(元富士通執行役員)、呂 旭 東(元鴻準精密工業経理責任者)、姫 岩 康 雄(姫岩公認会計士事務所所長)、中 川 裕(元ソニー執行役員副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スマートライフ&エナジー」「スマートオフィス」「ユニバーサルネットワーク」「ディスプレイデバイス」「エレクトロニックデバイス」の5つの報告セグメントを展開しています。
■(1) スマートライフ&エナジー
冷蔵庫、過熱水蒸気オーブン、電子レンジ、エアコン、洗濯機、掃除機、空気清浄機、理美容機器などの白物家電や、太陽電池、蓄電池などを製造・販売しています。また、スモールアプライアンスやエネルギーソリューションもこのセグメントに含まれます。
これらの製品・サービスの主な運営はシャープ、シャープマーケティングジャパン、シャープエネルギーソリューションなどが行っています。顧客への製品販売や設置工事、ソリューション提供などを通じて収益を得ています。
■(2) スマートオフィス
デジタル複合機、インフォメーションディスプレイ、POSシステム機器、パソコン、およびオフィス関連ソリューション・サービス等を提供しています。企業や自治体などの法人顧客に対し、業務効率化やDXを支援する製品・サービスを展開しています。
主な運営主体はシャープ、シャープマーケティングジャパン、Dynabook、シャープNECディスプレイソリューションズなどです。機器の販売に加え、保守サービスや消耗品の提供、ソリューションサービス料などが収益源となります。
■(3) ユニバーサルネットワーク
テレビ、ブルーレイディスクレコーダー、オーディオ機器、携帯電話機・スマートフォン、タブレット端末などを扱っています。家庭向けのAV機器からモバイル端末まで、映像や通信に関連する製品を国内外の市場へ提供しています。
この事業は主にシャープ、シャープマーケティングジャパンなどが運営しています。一般消費者や通信事業者等への製品販売が主な収益源となっています。
■(4) ディスプレイデバイス
ディスプレイモジュールや車載カメラなどを開発・製造・販売しています。スマートフォン、タブレット、車載用、PC用など幅広い用途に向けた液晶パネルなどを、電子機器メーカー等に供給しています。
運営はシャープディスプレイテクノロジーなどが担っています。国内外のセットメーカー等に対するデバイス製品の販売により収益を得ています。
■(5) エレクトロニックデバイス
カメラモジュール、ウエハファウンドリ、半導体レーザーなどを取り扱っています。スマートフォン向けや車載向けのカメラモジュール、各種センサーデバイスなどを製造し、顧客の製品に組み込まれる重要部品を提供しています。
主な運営会社はシャープセンシングテクノロジーやシャープ福山レーザーなどです。電子部品やモジュールの販売が収益の柱となっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2兆円台前半で推移していますが、利益面では大きな変動が見られます。2023年3月期および2024年3月期には多額の赤字を計上しましたが、2025年3月期には構造改革の進展等により黒字転換を果たしました。利益率もマイナス圏からプラスへと回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆4259億円 | 2兆4956億円 | 2兆5481億円 | 2兆3219億円 | 2兆1601億円 |
| 経常利益 | 632億円 | 1150億円 | -305億円 | -71億円 | 177億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 4.6% | -1.2% | -0.3% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 533億円 | 740億円 | -2608億円 | -1500億円 | 361億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上原価の低減や構造改革の効果により売上総利益が増加し、売上総利益率が改善しました。営業利益も黒字化しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、原価改善効果が上回った形です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆3219億円 | 2兆1601億円 |
| 売上総利益 | 3479億円 | 4057億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.0% | 18.8% |
| 営業利益 | -203億円 | 273億円 |
| 営業利益率(%) | -0.9% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び諸手当が1317億円(構成比35%)、運送費及び保管費が465億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
スマートオフィスやユニバーサルネットワークなどのブランド事業が増収増益となり、全社の黒字化を牽引しました。一方、ディスプレイデバイスやエレクトロニックデバイスのデバイス事業は減収となりましたが、ディスプレイデバイスは構造改革により赤字幅が縮小しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| スマートライフ&エナジー | 4503億円 | 4600億円 | 278億円 | 203億円 | 4.4% |
| スマートオフィス | 5800億円 | 6797億円 | 297億円 | 426億円 | 6.3% |
| ユニバーサルネットワーク | 3115億円 | 3383億円 | 89億円 | 187億円 | 5.5% |
| ディスプレイデバイス | 5953億円 | 4953億円 | -833億円 | -405億円 | -8.2% |
| エレクトロニックデバイス | 3848億円 | 1869億円 | 132億円 | 58億円 | 3.1% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | - | - | -166億円 | -196億円 | - |
| 連結(合計) | 2兆3219億円 | 2兆1601億円 | -203億円 | 273億円 | 1.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業キャッシュ・フローはマイナスですが、資産売却等による投資キャッシュ・フローのプラスで資金を確保し、財務キャッシュ・フローのマイナス(借入返済等)に充てている「事業検討型」の状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1245億円 | -16億円 |
| 投資CF | 109億円 | 1037億円 |
| 財務CF | -1497億円 | -748億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は10.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業者の精神である「他社がまねするような商品をつくれ」に基づき、独自性のあるモノづくりを通じて社会に貢献し信頼される企業を目指しています。新たに策定されたOur Mission「誠意をもって人々の日常を見つめ、創意をもって新たな体験を提案する」を指針とし、社会の発展への貢献を掲げています。
■(2) 企業文化
「シャープらしさ」にこだわり、「目の付けどころ」と「特長技術」、そして近年注力している「スピード」の3つを強みとする文化があります。「誠意と創意」の精神のもと、独創的なモノやサービスを生み出し、新たな文化をつくる会社への成長を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
再成長に向けた中期経営計画において、2027年度にブランド事業の収益性向上と全社的な安定収益体質の構築を目指しています。
* 2027年度 ブランド事業営業利益率:7%(挑戦目標)
* 2027年度 全社営業利益:800億円
■(4) 成長戦略と重点施策
ブランド事業のグローバル拡大と事業変革を加速させ、収益性と成長性を向上させる方針です。また、デバイス事業のアセットライト化を進めつつ、EVやAIデータソリューション、ロボティクスなどの新産業領域での「Next Innovation」の具現化に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的成長のため、「成長を支える人材の育成・獲得」と「多様な人材が活躍できる環境づくり」を掲げています。特にAI・デジタル人材やグローバル人材の強化に注力し、技術者のリスキリングや選抜型研修などを推進しています。また、DE&I推進や健康経営、エンゲージメント向上施策を通じて、社員が能力を最大限発揮できる組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.3歳 | 21.1年 | 7,532,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.4% |
| 男性育児休業取得率 | 103.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、AI・デジタル技術者数(1,600人)、障がい者雇用率(2.56%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 世界市場の動向・海外事業
世界各地域で事業を展開しているため、各国の景気動向や個人消費、設備投資の変動の影響を受けます。また、米国の関税政策や貿易摩擦の激化、世界経済の不確実性の高まりなどが、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動の影響
海外売上高比率が高く、海外生産品を国内で販売する取引もあるため、為替変動が業績に影響を与えます。為替予約や最適地生産の拡充によるリスクヘッジを行っていますが、急激な変動はリスク要因となります。
■(3) 特定の事業・製品・顧客に対する依存
デバイス事業においては、顧客仕様に合わせた製品供給を行う特性上、特定の顧客への依存が生じやすい傾向があります。大口顧客の需要変動や戦略変更により販売が落ち込んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 戦略的提携・協業等
競争力強化や新技術開発のために外部企業との提携・協業を推進していますが、パートナーとの戦略上の問題や目標変更等により関係を維持できなくなったり、期待した成果が得られなかったりする場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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