#記事タイトル:アンリツ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、アンリツ株式会社 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. アンリツってどんな会社?
電子計測器や食品・医薬品向け品質保証システムを主力とするグローバル企業。120年以上の歴史を持ち、通信計測分野で高い技術力を誇ります。
■(1) 会社概要
1895年創業の共立電機と1900年設立の安中電機製作所が1931年に合併し、安立電気として設立されました。1950年に企業再建整備法に基づき第二会社として再発足し、1961年に厚木事業所を新設。1968年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。1985年に現社名へ変更し、1990年には米国のWiltron Company(現 Anritsu Company)を買収して海外展開を加速させています。
同グループは連結従業員数3,966名、単体1,713名の体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行の信託口が占めています。第3位は米国のステート・ストリート銀行の常任代理人となっており、機関投資家や海外投資家が上位株主に名を連ねる株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 17.17% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 11.26% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 2.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表者は代表取締役社長グループCEOの濱田 宏一氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 濱田 宏一 | 代表取締役社長グループCEO | 1988年入社。米国法人バイスプレジデント、計測事業グループプレジデント等を経て、2018年社長、2019年より現職。 |
| 杉田 俊一 | 取締役常務執行役員CFO | 1986年入社。経営企画室長、アンリツエンジニアリング社長等を歴任。2024年より現職。 |
| 島 岳史 | 取締役常務執行役員通信計測カンパニー プレジデント | 1988年入社。米国販売子会社社長、アジア・大洋州営業本部長等を歴任。2020年より現職。 |
社外取締役は、正村 達郎(元日本無線取締役)、上田 望美(弁護士)、青柳 淳一(公認会計士)、西郷 英敏(元沖電気工業常務)、小林 昭夫(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「通信計測」「PQA」「環境計測」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 通信計測事業
スマートフォンやタブレット端末などのモバイル通信機器、光ファイバ通信システム、ネットワークインフラの構築・保守に使用される電子計測器などを提供しています。主な顧客は通信事業者、ネットワーク機器メーカー、電子部品メーカーなどです。
製品販売による収益に加え、保守・修理サービスや校正サービスなどの対価を顧客から受け取っています。運営は主にアンリツが担い、米国ではAnritsu Company、欧州ではAnritsu EMEA GmbHなど、各国の現地法人が製造・販売を行っています。
■(2) PQA事業
食品や医薬品の生産ラインにおける品質保証システムを提供しています。主力製品には、X線異物検出機、金属検出機、自動重量選別機(オートチェッカ)などがあり、食品・医薬品メーカーの品質管理や安全性確保を支援しています。
機器の販売代金および保守サービス料が主な収益源です。運営はアンリツのほか、国内ではアンリツインフィビス、海外ではAnritsu Infivis Inc.(米国)やAnritsu Infivis B.V.(オランダ)などが担当しています。
■(3) 環境計測事業
電気自動車(EV)や電池開発向けの充放電試験装置、電源装置、およびインフラ監視用の映像計測ソリューションなどを提供しています。自動車メーカーや電池メーカー、官公庁などが主な顧客です。
製品およびシステム販売による対価を収益としています。運営はアンリツおよび子会社の株式会社高砂製作所が中心となって行っています。
■(4) その他事業
光デバイスや電子デバイスの開発・製造・販売、物流サービス、福利厚生サービス、不動産賃貸業などを行っています。デバイス事業は通信機器メーカー等が顧客となります。
デバイス製品の販売収入、物流業務受託料、不動産賃料などを収益としています。運営はアンリツデバイス、アンリツ興産、アンリツ不動産などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2021年3月期から2023年3月期にかけて売上収益は1,050億円から1,100億円前後で推移していましたが、利益面では減少傾向が見られました。しかし、2025年3月期は増収となり、利益も回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,059億円 | 1,054億円 | 1,109億円 | 1,100億円 | 1,130億円 |
| 税引前利益 | 198億円 | 172億円 | 124億円 | 100億円 | 127億円 |
| 利益率(%) | 18.7% | 16.3% | 11.2% | 9.1% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 161億円 | 128億円 | 93億円 | 77億円 | 93億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益率は前期の8.2%から当期は10.7%へと改善しており、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,100億円 | 1,130億円 |
| 売上総利益 | 516億円 | 550億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.9% | 48.7% |
| 営業利益 | 90億円 | 121億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 10.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が227億円(構成比68%)と最も大きく、次いでその他経費が57億円(同17%)を占めています。売上原価においては、人件費が160億円(構成比28%)、原材料費等が大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は主力の通信計測事業が微減収ながら増益を確保しました。一方、PQA事業と環境計測事業は増収増益となり、特にPQA事業の利益成長が顕著です。環境計測事業も収益性を高めています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通信計測 | 710億円 | 701億円 | 75億円 | 84億円 | 11.9% |
| PQA | 254億円 | 282億円 | 13億円 | 28億円 | 10.0% |
| 環境計測 | 74億円 | 85億円 | 5億円 | 9億円 | 10.5% |
| その他 | 87億円 | 92億円 | 8億円 | 15億円 | 15.9% |
| 調整額 | -26億円 | -31億円 | -12億円 | -14億円 | - |
| 連結(合計) | 1,100億円 | 1,130億円 | 90億円 | 121億円 | 10.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業で利益を出し、借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 166億円 | 211億円 |
| 投資CF | -36億円 | -39億円 |
| 財務CF | -66億円 | -123億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「誠と和と意欲」を経営理念の核とし、独自性と高い水準を兼ね備えた「オリジナル&ハイレベル」な商品・サービスの提供を通じて、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献することを目指しています。また、経営ビジョンとして「「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。」を掲げています。
■(2) 企業文化
経営方針として、克己心を持ち誠実に取り組む「誠実」、協力関係を育み解決する「和」、進取の気性でブレークスルーを生み出す「意欲」、そしてステークホルダーと共に未来をつくる「志」の4つを掲げています。これらは従業員一人ひとりが挑戦し、社会に新しい価値を提供し続けるための行動指針となっています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度に売上高2,000億円企業となることを目指し、そのマイルストーンとして中期経営計画「GLP2026」を策定しています。計画最終年度となる2027年3月期には、連結売上高1,400億円、営業利益200億円、営業利益率14%、ROE12%の達成を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「はかる」技術を核に、5Gから6Gへの移行期を見据えた事業展開と、新領域の開拓を推進します。具体的には、「産業計測」「EV/電池」「医薬品/医療」の3つの新領域ビジネスを重点的に拡大し、M&Aや設備投資を含む400億円以上の成長投資を行う方針です。また、通信計測事業以外の収益比率を高め、ポートフォリオの変革を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
2030年度の目標達成に向け、新領域ビジネスの人材確保と育成を最重要課題としています。経営戦略と連動した人員計画に基づき、若手・リーダー層の積極採用やシニア層の活用強化を進めるほか、「A-SKILLs」等の教育機関を通じてスキル向上を図ります。また、ダイバーシティ推進やエンゲージメント向上により、多様な人材が活躍できる風土醸成を目指します。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.8歳 | 21.0年 | 7,304,000円 |
※平均年間給与は税込額で、基準外賃金等諸手当及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.4% |
| 男性育児休業取得率 | 95.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(連結)(12.0%)、障がい者雇用率(2.9%)、従業員満足度調査の働きがいポジティブ回答率(72%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術・マーケティング戦略に関するリスク
情報通信市場の技術革新スピードは非常に速いため、同社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できなかったり、顧客ニーズを十分にサポートできなかったりした場合、競争力を失い、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場の変動に関するリスク
主力である通信計測事業は情報通信市場への依存度が高く、通信事業者や端末メーカー等の設備投資動向に業績が左右される傾向があります。また、PQA事業は食品産業向け、環境計測事業は自動車関連向けの売上比率が高く、それぞれの業界の投資動向の影響を受ける可能性があります。
■(3) 戦略投資に関するリスク
新領域開拓や次なる事業の柱の成長を目指し、M&Aを含む戦略的投資を強化しています。しかし、予期せぬ外部環境の変化や市場環境、競合状況によっては当初期待した成果が得られず、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外事業展開に関するリスク
海外売上比率が約7割を占めており、グローバルに事業を展開しています。そのため、各国の経済動向、国際情勢の変化、法的規制の変更や遵守対応などが、同社グループの事業活動や業績に大きな影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。