※本記事は、SMK株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SMKってどんな会社?
コネクタやリモコンなどの電子機器用部品をグローバルに製造販売する企業です。
■(1) 会社概要
1925年4月に池田無線電機製作所として創立し、放送無線受信機器等の製造販売を開始。1929年に昭和無線工業へ改称し、1962年に東証二部に上場しました。1973年以降は米国、香港、台湾、マレーシア等に現地法人を設立しグローバル展開を推進。1985年に現在のSMKへ社名変更しています。
同社グループの従業員数は連結で3,626名、単体で530名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はSMK協力業者持株会、第3位は公益財団法人昭和池田記念財団となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.98% |
| SMK協力業者持株会 | 8.15% |
| 公益財団法人昭和池田記念財団 | 5.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は池田靖光氏が務めています。取締役における社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田靖光 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。経営企画室長、執行役員等を経て2012年より現職。 |
| 池尾政信 | 代表取締役副社長CTO、CFO、技術本部、財務企画部、イノベーションセンター担当 | 1979年同社入社。CS事業部長等を経て2022年に代表取締役副社長に就任。2026年より現職。 |
| ポールエヴァンス | 取締役常務執行役員、欧米州圏営業担当 | 1986年SMK Europe N.V.入社。2000年に米州圏の現地法人社長に就任し、2016年より現職。 |
社外取締役は、中村利雄(元中小企業庁長官)、石川薫(元外務省経済局長)、高橋琴美(現Worldwide City HoldingsCEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「CS事業部」「SCI事業部」「イノベーションセンター」および「その他」事業を展開しています。
■CS(コネクション・システム)事業部
同事業部は、同軸コネクタ、基板対基板コネクタ、FPCコネクタやジャックなどの電気通信・電子機器用部品を製造し、情報通信、車載、家電、産業機械市場向けに提供しています。
収益はこれらの製品の販売代金から得ています。事業の運営は同社および、米国、上海、シンガポール、深圳などの各海外現地法人が担っています。
■SCI(センシング、コミュニケーション&インターフェース)事業部
同事業部は、リモコン、カメラモジュール、各種センサーやセンシング製品、ユニットなどを製造し、主に家電や車載、スマートホーム市場の顧客に向けて提供しています。
収益はこれらの製品の販売代金から得ています。事業の運営は同社および、米国、メキシコ、東莞、マレーシアなどの各海外現地法人が担っています。
■イノベーションセンター
同事業部は、音声によるあたまの健康度分析技術や、筋電位を活用した筋電センサーなど、生体情報を活用した新たな価値創出に向けた先進的な製品の開発と販売を行っています。
収益は独自開発した分析技術やセンサー製品の提供対価から得ています。事業の運営は同社が主体となって担っています。
■その他
同セグメントでは、保有する不動産の賃貸事業や、労働者派遣事業を展開しています。
収益は不動産の賃貸料や派遣サービスの対価から得ています。運営は同社および昭和エンタプライズが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は460億円台から540億円台で推移しています。利益面では、一時的に最終赤字となった時期がありましたが、直近では構造改革の成果等もあり経常利益が大幅に改善し、最終損益も黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 482億円 | 548億円 | 465億円 | 481億円 | 482億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 25億円 | 2億円 | 5億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 7.1% | 4.6% | 0.5% | 1.1% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 30億円 | 13億円 | -5億円 | -19億円 | 0.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期とほぼ横ばいですが、売上総利益は微増となり、売上総利益率も改善しました。販売費及び一般管理費などの固定費削減が寄与し、営業損益は前期の赤字から当期は黒字へと転換しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 481億円 | 482億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 94億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 19.5% |
| 営業利益 | -2億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | -0.5% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が44億円(構成比49%)、賞与引当金繰入額が4億円(同4%)を占めています。売上原価においては、材料費が217億円(構成比56%)、労務費が171億円(同44%)となっています。
■(3) セグメント収益
CS事業部は車載・家電・産機市場が好調で増収となりましたが、利益は減少しました。SCI事業部は車載等が好調に推移したものの、情報通信市場の減少等により売上は微減、営業損失を計上しています。イノベーションセンターは事業見直しの影響で減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| CS事業部 | 222億円 | 225億円 | 15億円 | 12億円 | 5.3% |
| SCI事業部 | 256億円 | 256億円 | -13億円 | -4億円 | -1.6% |
| イノベーションセンター | 3億円 | 0.6億円 | -4億円 | -4億円 | -611.3% |
| 連結(合計) | 481億円 | 482億円 | -2億円 | 4億円 | 0.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で得た資金で借入の返済を進めつつ、投資活動も継続している健全な財務状態にあるといえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 24億円 | 20億円 |
| 投資CF | -22億円 | -23億円 |
| 財務CF | 3億円 | -25億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「可能性の追求を通して、総合的な高度技術により、情報社会の発展に寄与する」ことを企業理念としています。また、ビジョンとして「CREATIVE CONNECTIVITY -Challenge, Creativity, Solutions」を掲げ、クリエイティブで柔軟な発想を持ち、社会や顧客の課題を解決するソリューションの提供を目指しています。
■(2) 企業文化
失敗を恐れず果敢にチャレンジし、より良い社会と未来の創出に貢献できる企業を目指す価値観を重視しています。社会的責任を果たすため「企業行動憲章」や「社員行動規範」を制定しており、コンプライアンスの徹底や人権尊重、環境保全への取り組みを通じて、社会に貢献し評価される企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、創立100周年を迎えるにあたり、2035年長期ビジョン「あらゆるニーズを実現する“ものづくり力”で、次の100年に貢献する」を設定しています。そのマイルストーンとして中期経営計画「SMK Next100」を策定しており、以下の数値を目標に掲げています。
・売上高:600億円
・営業利益率:3.5%
・ROE(自己資本当期純利益率):5.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的成長に向けた構造改革を加速させる期間として、不採算事業の撤退・縮小や成長性・採算性の高い分野へのリソース集中を進めています。あわせて、コスト構造改革による企業体質強化を図ります。具体的には以下の施策を推進しています。
・最適地生産体制のレビューや拠点間の連携による自動化・省人化の推進
・スマート工場の実現に向けたAIやロボットの活用
・環境配慮設計や再生可能エネルギー導入によるカーボンニュートラルへの対応
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人材を価値創造を担う人的資本と位置付け、高い人間力とプロフェッショナリズムを備え、自ら問い・考え・動く「自律型人材」の育成を重視しています。また、多様な人材が性別や国籍にかかわらず能力を最大限発揮できるよう、職務遂行に必要な能力要件に基づく階層別研修や人事制度の拡充、組織風土改革を推進し、人材の定着と成長を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.3歳 | 19.1年 | 7,065,919円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 33.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職比率(24.8%)、中途採用管理職比率(56.0%)、一人あたり研修受講時間(45H)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合及び価格動向
電子部品業界は国内外に多数の同業者が存在する競争の激しい市場です。同社グループは独自技術の蓄積と新製品開発に努めていますが、競合他社に市場シェアを奪われる可能性や、コストダウンによる採算性の悪化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外展開に伴うリスク
同社グループはアジア、北米、欧州などでグローバルに事業を展開しており、売上の約6割を海外が占めています。進出先の経済・政治・社会情勢の変化や、予期せぬ法令・規則の変更、経済安全保障上の関税・規制強化などが生じた場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。
■(3) 原材料等の調達と価格変動
同社グループは原材料や一部部材を外部から調達しています。需要の急激な変動に伴う供給元からの調達難や、仕入価格の想定以上の上昇が発生した場合、生産の遅延やコストの増大を招き、同社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 災害等の発生
地震や水害等の自然災害、感染症の流行などが発生した場合、生産設備の破壊や物流機能の麻痺が生じるリスクがあります。同社は事業継続計画の策定や代替生産体制の構築に取り組んでいますが、想定を超える規模の事象が起きた場合、事業活動が低下する可能性があります。



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