横河電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横河電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横河電機はプライム市場に上場し、制御事業や測定器事業をグローバルに展開する企業です。主力の制御事業ではプラント向けの総合的なソリューションを提供しています。直近の業績は、堅調なエネルギー需要を背景とした大口案件の獲得等により増収となったものの、一過性の要因による利益率の低下で微減益となっています。


※本記事は、横河電機株式会社の有価証券報告書(第150期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 横河電機ってどんな会社?


主力の制御事業を軸に、プラントの制御・運転監視システムや計測機器を世界中で展開する企業です。

(1) 会社概要


1920年に電気計器の研究所を母体として設立され、1955年に海外企業と技術援助契約を締結し、1986年に現在の横河電機へ社名を変更しました。その後、1992年に統合生産制御システムを発表し、2015年には創立100周年を迎えました。2024年に中期経営計画「GS2028」を発表し、変革を推進しています。

同社の従業員数は連結で18,313名、単体で2,240名です。筆頭株主および第2位株主は資産管理業務などを行う信託銀行であり、第3位株主には日本生命保険が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.16%
日本カストディ銀行(信託口) 7.42%
日本生命保険相互会社 5.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長の重野邦正氏などを中心に経営が行われており、過半数が社外取締役で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
奈良寿 取締役会長代表執行役 1985年同社入社。海外子会社社長や常務執行役員などを歴任。2019年に代表取締役社長を務め、2024年取締役代表執行役社長を経て、2025年より現職。
重野邦正 取締役代表執行役社長 1991年同社入社。中東やアフリカの海外子会社社長やデジタルソリューション統括本部長を務める。2024年に代表執行役社長となり、2025年より現職。
吉川光 取締役 1989年同社入社。広報・IR部長や経営企画室長を歴任。海外子会社社長や内部監査室長などを経て、2024年より現職。
中嶋倫子 取締役執行役 経理財務本部長 1994年同社入社。予算管理部長や財務部長などを歴任。2021年に執行役員経理財務本部長に就任し、2024年より現職。


社外取締役は、内田章(元トーレ・ホールディング(U.S.A.)社長)、浦野邦子(元小松製作所常務・指名委員長)、平野拓也(元日本マイクロソフト社長・報酬委員長)、五嶋祐治朗(元日本触媒社長)、大澤真(元日本銀行那覇支店長)、小野傑(西村あさひ法律事務所オブカウンセル)、丸山寿(元昭和電工マテリアルズ会長・監査委員長)、クリスティーナ・アメージャン(一橋大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「制御事業」「測定器事業」および「新事業他」を展開しています。

(1) 制御事業


プラント等の生産設備の制御・運転監視を行う分散形生産制御システムや、現場の流量計などのフィールド機器、各種ソフトウェアを提供しています。石油、ガス、化学、電力などの幅広い業種の顧客に対し、設備のライフサイクル全体を最適化する総合的なソリューションを展開しています。

顧客から製品の販売代金やエンジニアリング、保守サービスなどの料金を受け取る収益モデルです。運営は同社のほか、横河マニュファクチャリングが製造を担い、国内販売を横河ソリューションサービスが、海外販売を各地域の子会社が担当しています。

(2) 測定器事業


先端産業における新製品の開発・生産をサポートする電子計測器を提供しています。主な製品として、波形測定器、光通信関連測定器、信号発生器、電力・温度・圧力測定器などを取り扱い、顧客の開発現場におけるマザーツールとして幅広く活用されています。

製品の販売や保守サービスを通じて顧客から収益を得るモデルです。運営は主に同社や横河マニュファクチャリングが行っており、国内での販売やアフターサービスは横河計測が、海外では各地域の現地子会社が担当しています。

(3) 新事業他


産業用IoT(IIoT)に関連するハードウェア、ソフトウェア、クラウド環境を提供するソリューションビジネスなどを展開しています。その他、関連子会社を通じた不動産関連事業なども本セグメントに含まれています。

サービスやソリューションの提供を通じた利用料などを顧客から受け取っています。運営は同社や関連する子会社のほか、不動産関連事業については横河パイオニックスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は売上高が順調に拡大しており、増収傾向が続いています。一方、経常利益は大幅な増益を記録した後に高水準を維持していますが、直近では利益率がやや低下傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,899億円 4,565億円 5,402億円 5,624億円 6,048億円
経常利益 357億円 486億円 841億円 854億円 843億円
利益率(%) 9.2% 10.6% 15.6% 15.2% 13.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 128億円 255億円 563億円 453億円 411億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益率が低下したことで営業利益は微減となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,624億円 6,048億円
売上総利益 2,674億円 2,764億円
売上総利益率(%) 47.6% 45.7%
営業利益 835億円 826億円
営業利益率(%) 14.9% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料が577億円(構成比30%)、研究開発費が329億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の制御事業は、国内外での大口案件の獲得などにより増収を牽引しています。測定器事業もAIデータセンター関連の需要増を背景に大きく売上を伸ばしており、新事業他を含めた全セグメントで増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
制御事業 5,283億円 5,655億円
測定器事業 299億円 340億円
新事業他 42億円 53億円
連結(合計) 5,624億円 6,048億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 990億円 860億円
投資CF -286億円 -331億円
財務CF -262億円 -352億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というYokogawa's Purposeを掲げています。また、創業の精神を受け継ぐ企業理念として「横河電機は計測と制御と情報により持続可能な社会の実現に貢献する。横河人は良き市民であり勇気を持った開拓者であれ」と定めています。

(2) 企業文化


行動指針として「共有する価値観」を定めており、社員一人ひとりが大切にすべき行動と意志を示しています。個々の社員の挑戦を後押しし、前向きな失敗を許容して次に生かす風土を重視しています。また、多様性を認め合い、誰もが能力を最大限に発揮できるインクルーシブな組織文化の構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた長期経営構想のもと、中期経営計画「Growth for Sustainability 2028」を推進しています。本計画では、2028年度までの事業成長と財務目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高の成長(年平均5~7%)
* 売上高営業利益率(ROS)14%以上
* 自己資本利益率(ROE)11%以上

(4) 成長戦略と重点施策


社会全体が「System of Systems(SoS)」となる世界において、統合化・自律化・デジタル化による全体最適の価値創出を目指しています。コンサルティングとインテグレーションを通じた価値提供を行うとともに、ITとOT(運用技術)の融合による業種対応力の強化や、無形資本(人的・知的資本等)の活用、DX戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略を起点とした人材ポートフォリオを定義し、成長領域に必要な専門人材の育成と獲得を進めています。また、社員の自律的なキャリア形成を支援するピープルマネージャーの育成や学習環境の整備を行い、多様な人材が能力を最大限発揮できるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 16.0年 9,486,104円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.0%
男性育児休業取得率 74.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 79.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場・競合環境の急激な変化


デジタル技術の活用による生産性向上や、サブスクリプション型などの新しいビジネスモデルへの需要が高まっています。これらの市場ニーズの変化に迅速に対応できず、新たな技術革新に追随できない場合、競争優位性が低下し、ビジネス機会を喪失するリスクがあります。

(2) プロジェクトマネジメントの実行遅延


製品やシステム一式を顧客に提供するプロジェクト型のビジネスにおいて、確実なプロジェクトマネジメントが求められています。想定見積りからの乖離やサプライチェーンの混乱による調達難などにより、予期せぬ原価の発生や納期遅延が生じた場合、業績や賠償責任に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 専門人材の確保・育成の遅れ


同社の成長は、最先端の技術を支える人材や高い品質を支える技能者によって支えられています。AIやデジタル技術、新規事業に関する高度な知見を持つ人材の獲得競争が激化する中で、計画通りに人材の確保や育成が進まない場合、戦略の遂行や事業運営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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