日東電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東電工は東京証券取引所プライム市場に上場し、インダストリアルテープやオプトロニクス等の事業をグローバルに展開しています。2026年3月期の業績は、スマートフォンや半導体向け部材の需要増や核酸受託製造の拡大により売上収益が増収となった一方、利益面は為替の影響等により減益の傾向となっています。


※本記事は、日東電工株式会社の有価証券報告書(第161期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日東電工ってどんな会社?


インダストリアルテープやオプトロニクスなどの高機能材料を製造・販売する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1918年10月に電気絶縁材料の国産化を目的に日東電気工業として設立されました。1962年8月に株式を上場し、1988年9月に現在の日東電工へと商号を変更しています。2016年11月にはブリストル・マイヤーズ スクイブ社と独占ライセンス契約を締結し、2022年6月にはMondi plcのパーソナルケア事業を買収するなど、多様な事業領域へ展開しています。

同社グループは連結で26,477名、単体で6,813名の従業員を擁しています。大株主の構成をみると、筆頭株主並びに第2位株主は資産管理業務などを行う信託銀行となっており、第3位株主はチェース・マンハッタン・バンク等の海外金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 25.31%
日本カストディ銀行(信託口) 10.23%
THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDONSECS LENDING OMNIBUS ACCOUNT(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 2.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長CEOは髙﨑秀雄氏、代表取締役社長COOは赤木達哉氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
髙﨑秀雄 代表取締役取締役会長CEO 1978年4月同社に入社。2008年6月取締役執行役員を経て、2014年4月代表取締役取締役社長CEO、COOに就任。2026年4月より現職。
赤木達哉 代表取締役取締役社長COO 1993年4月同社に入社。2019年6月執行役員情報機能材料事業部門長を経て、2024年6月取締役常務執行役員情報機能材料事業部門長に就任。2026年4月より現職。
三木陽介 取締役専務執行役員 1993年4月同社に入社。2020年6月取締役常務執行役員CTOを経て、2022年6月取締役専務執行役員CTOに就任。2026年4月より現職。
伊勢山恭弘 取締役専務執行役員CFO 1991年6月同社に入社。2017年6月執行役員経理財務統括部長を経て、2020年6月取締役上席執行役員CFOに就任。2023年6月より現職。
大脇泰人 取締役専務執行役員CSO、CHRO 1984年4月同社に入社。2020年6月常務執行役員CIOサステナビリティ本部長を経て、2024年6月取締役専務執行役員CHROに就任。2026年4月より現職。


社外取締役は、古瀬洋一郎(元住友銀行常務取締役)、ウォン・ライヨン(元Penang Women's Development Corporation Director)、澤田道隆(元花王代表取締役社長執行役員)、山田泰弘(元日本銀行理事)、江藤真理子(元大塚家具社外監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インダストリアルテープ」「オプトロニクス」「ヒューマンライフ」および「その他」事業を展開しています。

(1) インダストリアルテープ


同事業では、接合材料、保護材料、プロセス材料、自動車材料などの基盤機能材料を、スマートフォンや半導体、自動車業界などの顧客に向けて提供しています。

収益は、これらの基盤機能材料の販売から得ています。事業の運営は主に日東電工および日昌や日東シンコーなどの子会社が行っています。

(2) オプトロニクス


同事業では、光学フィルムなどの情報機能材料や、高精度基板などの回路材料を、ディスプレイ業界やデータセンターなどの顧客に向けて提供しています。

収益は、これらの情報機能材料や回路材料の販売から得ています。事業の運営は主に日東電工およびTaiwan Nitto Opticalなどの子会社が行っています。

(3) ヒューマンライフ


同事業では、核酸医薬の受託製造や核酸創薬、高分子分離膜、おむつ向け衛生材料などを、製薬業界や水処理設備、消費財メーカーの顧客に向けて提供しています。

収益は、核酸医薬の受託製造手数料や、分離膜、衛生材料などの部材販売から得ています。事業の運営は主に日東電工およびHydranautics、Nitto Denko Aveciaなどの子会社が行っています。

(4) その他


同事業では、次世代半導体や環境ソリューション、デジタルヘルスの分野などにおける新規事業やその他製品を展開しています。

収益は、これら新規事業で提供される製品やサービスの販売等から得ています。事業の運営は主に日東電工が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上収益は安定的に推移し、直近では1兆円を上回る売上規模に達しています。税引前利益及び当期利益についても、年度による若干の変動はあるものの高い水準を維持し、利益率は18.0%と高い収益性を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 8,534億円 9,290億円 9,151億円 10,139億円 10,282億円
税引前利益 1,324億円 1,468億円 1,389億円 1,853億円 1,850億円
利益率(%) 15.5% 15.8% 15.2% 18.3% 18.0%
当期利益 971億円 1,092億円 1,027億円 1,372億円 1,335億円

(2) 損益計算書


売上収益は微増していますが、売上原価の増加に伴い売上総利益は減少しました。これにより営業利益及び営業利益率も前期と比較してわずかに低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 10,139億円 10,282億円
売上総利益 2,361億円 2,204億円
売上総利益率(%) 23.3% 21.4%
営業利益 1,857億円 1,836億円
営業利益率(%) 18.3% 17.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与手当が237億円(構成比15%)、業務委託費が130億円(構成比8%)を占めています。一方、売上原価は6,374億円で構成比は62%となっています。

(3) セグメント収益


インダストリアルテープおよびヒューマンライフは増収増益または赤字縮小となりましたが、主力であるオプトロニクスはディスプレイ関連の戦略的撤退等の影響で減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
インダストリアルテープ 3,518億円 3,666億円 459億円 517億円 14.1%
オプトロニクス 5,420億円 5,278億円 1,731億円 1,499億円 28.4%
ヒューマンライフ 1,324億円 1,437億円 -117億円 -50億円 -3.5%
その他 0.2億円 0.1億円 -122億円 -70億円 -
調整額 -124億円 -100億円 -94億円 -59億円 -
連結(合計) 10,139億円 10,282億円 1,857億円 1,836億円 17.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2,179億円 1,922億円
投資CF -1,151億円 -1,074億円
財務CF -789億円 -1,066億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.5%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ミッションとして「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」を掲げています。ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に置き、事業を通じた社会課題の解決に努め、持続可能な未来を実現するために、地球環境と社会に貢献しながら成長し続ける企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、グループの大切にすべき価値観として「The Nitto Way」を定めています。これには「安全」「持続可能性」「多様性と人権」「お客様」「変化の先取り」「チャレンジ」「三新活動」「ニッチトップ」「スピードと完成度」「組織風土」「自己変革」「当事者意識」の要素が含まれており、これらを実践できる人材の育成に注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年の目指す姿として「なくてはならないESGニッチトップ企業」を掲げています。その実現に向けたセカンドステップとして新中期経営計画「Nitto RISE 2028」を策定しており、以下の2028年度財務目標を設定しています。

* 営業利益:2,200億円
* 営業利益率:20%
* ROE:14%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、社会課題の解決と経済価値の創造を両立する「ダブル認定」製品・サービスの創出を成長の軸としています。重点分野である「デジタルインターフェース」「グリーンテック」「ヒューマンライフ」へ経営資源を集中させ、事業ポートフォリオの変革を進めます。これを支える施策として「人的資本経営」「デジタル利活用」「脱炭素経営」を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財は最も重要な財産」と位置づけ、多様性を尊重し、従業員が自律的にキャリア形成できる環境の構築に取り組んでいます。「誰もが活き活きとやりがいをもって活躍できる環境の構築」を人材戦略として掲げ、チャレンジを楽しむ文化の醸成や、エンゲージメントの高い組織風土の構築を通じて、グローバルな事業成長を牽引できる人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 15.5年 8,437,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 79.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(81)、チャレンジ比率(58.0%)、女性リーダー比率(22.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 財務・為替リスク


同社グループは海外売上収益比率が8割を超えており、外貨建てでの貿易取引が大半を占めています。そのため、為替レートの変動や、金利などの市場変動、米国の関税政策など保護主義の台頭が業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、各エリアの資金集約や為替リスクヘッジに取り組んでいます。

(2) 海外取引・地政学リスク


海外での取引において、輸出入規制や電力供給・輸送の停止、人件費の上昇、労働争議などのリスクが存在します。また、中東情勢の緊迫化等による国際物流網の混乱は、運送コストの急騰や遅延を招く可能性があり、サプライチェーンの可視化や物流BCPの構築により対応を進めています。

(3) 製品安全・品質コンプライアンスリスク


最高品質の製品を提供する方針のもと厳しい管理を行っていますが、万一、製品の欠陥や化学物質の法令違反が生じた場合、賠償責任や社会的信用の低下を招くリスクがあります。国際的な品質マネジメントシステムの認証維持や、規制物質の代替検討などの未然防止策を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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