日東電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、インダストリアルテープ、オプトロニクス、ヒューマンライフなどの事業をグローバルに展開しています。当連結会計年度の業績は、データセンター向け部材や電子機器向け材料の需要増などにより、売上収益は前期比10.8%増、営業利益は33.4%増の増収増益となりました。


※本記事は、日東電工株式会社 の有価証券報告書(第160期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日東電工ってどんな会社?


粘着技術や塗工技術を核に、エレクトロニクスから医療まで幅広い分野で高機能材料を提供する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1918年に電気絶縁材料の国産化を目的として日東電気工業として設立されました。1946年にテープ事業へ進出し、1962年には東京・大阪両証券取引所市場に上場しました。1976年に高分子分離膜の製造を開始し、1988年に現社名へ変更しました。2016年には研究開発施設「inovas」を設立しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は25,769名、単体では6,729名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は常任代理人を通じた外国銀行であり、機関投資家や海外投資家が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 25.50%
日本カストディ銀行(信託口) 10.74%
JP MORGAN CHASE BANK 385632 4.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役取締役社長CEO、COOは髙﨑秀雄氏です。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
髙﨑 秀雄 代表取締役取締役社長CEO、COO 1978年4月同社入社。取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2014年4月より現職。
三木 陽介 取締役専務執行役員CTO 1993年4月同社入社。ICT事業部門長、全社技術部門長などを歴任。2022年6月より現職。
伊勢山 恭弘 取締役専務執行役員CFO 1991年6月同社入社。経理財務統括部長などを経て、2023年6月より現職。
大脇 泰人 取締役専務執行役員CHRO 1984年4月同社入社。CIO、CPO、サステナビリティ本部長、人財本部長などを歴任。2024年6月より現職。
赤木 達哉 取締役常務執行役員 1993年4月同社入社。情報機能材料事業部門長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、古瀬洋一郎(エバンストン代表取締役)、ウォン ライヨン(First Penguin Sdn.Bhd.創業者)、澤田道隆(元花王取締役会長)、山田泰弘(元日本銀行理事)、江藤真理子(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インダストリアルテープ」「オプトロニクス」「ヒューマンライフ」および「その他」事業を展開しています。

インダストリアルテープ


基盤機能材料として、接合材料、保護材料、プロセス材料、自動車材料などを提供しています。スマートフォンなどの電子機器、半導体、セラミックコンデンサー、自動車など幅広い業界が顧客となります。

製品の販売による対価を主な収益としています。運営は、同社および日昌、日東シンコー、ニトムズなどの関係会社が行っています。

オプトロニクス


情報機能材料(光学フィルム等)や回路材料(CIS、高精度基板等)を提供しています。ディスプレイ市場やデータセンター向けHDD、スマートフォンなどのハイエンド製品向けに部材を供給しています。

製品の販売による対価を主な収益としています。運営は、同社およびShanghai Nitto Optical Co., Ltd.などの関係会社が行っています。

ヒューマンライフ


ライフサイエンス(核酸受託製造、核酸合成材料、核酸創薬、医療関連材料等)、メンブレン(高分子分離膜)、パーソナルケア材料(衛生材料等機能性フィルム)を展開しています。製薬業界や各種産業の水処理用途などが顧客です。

製品の販売や受託製造、ライセンス収入などを収益としています。運営は、同社およびNitto Denko Avecia Inc.などの関係会社が行っています。

その他


新規事業やその他製品を扱っています。次世代半導体、環境ソリューション、デジタルヘルス分野などで早期の事業化を目指しています。

製品の販売等による対価を収益としています。運営は、同社および関係会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は1兆円の大台を突破し、増加傾向にあります。税引前利益も高い水準を維持しており、直近では1,853億円に達しました。利益率も10%台後半で推移しており、収益性の高さがうかがえます。当期利益も順調に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 7,613億円 8,534億円 9,290億円 9,151億円 10,139億円
税引前利益 933億円 1,324億円 1,468億円 1,389億円 1,853億円
利益率(%) 12.3% 15.5% 15.8% 15.2% 18.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 702億円 971億円 1,092億円 1,027億円 1,372億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期から約1,000億円増加し、1兆139億円となりました。売上原価率は改善傾向にあり、売上総利益率は36.2%から39.0%へ上昇しています。これに伴い、営業利益も1,391億円から1,857億円へと大幅に伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9,151億円 10,139億円
売上総利益 3,309億円 3,955億円
売上総利益率(%) 36.2% 39.0%
営業利益 1,391億円 1,857億円
営業利益率(%) 15.2% 18.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が255億円(構成比約17%)、業務委託費が132億円(同約9%)を占めています。

(3) セグメント収益


インダストリアルテープは電子機器向け材料の販売増で増収増益、オプトロニクスは情報機能材料や回路材料の需要増で大幅な増収増益となりました。ヒューマンライフは増収ながらも、先行投資等の影響で営業損失となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
インダストリアルテープ 3,377億円 3,557億円 387億円 460億円 12.9%
オプトロニクス 4,705億円 5,430億円 1,246億円 1,731億円 31.9%
ヒューマンライフ 1,245億円 1,321億円 -95億円 -119億円 -9.0%
その他 0.1億円 0.2億円 -57億円 -122億円 -64363.2%
調整額 -176億円 -170億円 -90億円 -94億円 -
連結(合計) 9,151億円 10,139億円 1,391億円 1,857億円 18.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:本業で得たキャッシュ(営業CF)の範囲内で投資活動(投資CF)や株主還元・借入返済(財務CF)を行っており、財務体質は健全です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,555億円 2,179億円
投資CF -679億円 -1,151億円
財務CF -908億円 -789億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」をミッションとして掲げています。ESGを経営の中心に置き、事業を通じた社会課題の解決と経済価値の創造の両立を図ることで、持続可能な未来の実現と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Nittoらしさ」として、「チャレンジを楽しむ」社風・文化を重視しています。これは「The Nitto Way」として共有される価値観であり、変化を先取りし、独自の技術や知見を融合させてニッチトップ製品を生み出し続ける土壌となっています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」において、2030年のありたい姿として「なくてはならないESGトップ企業」を掲げています。

* 2025年度 営業利益:1,700億円
* 2025年度 営業利益率:17%
* 2025年度 ROE:15%

(4) 成長戦略と重点施策


「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」をスローガンに、環境・人類に貢献する事業ポートフォリオへの変革を進めています。重点分野として「パワー&モビリティ」「デジタルインターフェース」「ヒューマンライフ」を設定し、これらが交わる領域で技術の融合を図り、新たなニッチトップソリューションを創出します。

* 2030年度 PlanetFlags/HumanFlagsカテゴリ売上収益比率:50%以上
* 2030年度 新製品比率:35%以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財は最も重要な財産」と位置付け、多様性を尊重し、従業員が活き活きと活躍できる環境構築を目指しています。「チャレンジを楽しむ」文化の醸成に向け、新規事業創出の機会提供や人事・育成制度の変革を進めるとともに、グローバルでのリーダー育成やDE&Iの推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 12.7年 8,336,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.0%
男性育児休業取得率 65.4%
男女賃金差異(全労働者) 79.9%
男女賃金差異(正規雇用) 82.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、チャレンジ比率(41%)、女性リーダー比率(22%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外取引・為替リスク


海外売上比率が高く、約40社の関係会社が貿易取引を行っているため、各国の電力供給停止、人件費上昇、労働争議、サイバーテロ等の影響を受ける可能性があります。また、為替変動や市場変動、保護主義の台頭なども業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 顧客の財務状況


エレクトロニクスやライフサイエンス分野など変化の激しい業界の顧客において、事業環境の変化により財務上の問題が発生した場合、貸倒れによる損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料確保


一部の原材料を特定の購入先に依存しており、自然災害や事故等で購入先からの供給が停止した場合、必要な原材料の確保が困難になったりコストが上昇することで、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 研究開発


市場変化の激しい業界で事業展開しており、他社の新技術や新製品により自社製品が陳腐化する可能性があります。予測困難な市場変化に対応できず、製品の競争力を維持できない場合、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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