※本記事は、株式会社東海理化電機製作所の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海理化電機製作所ってどんな会社?
スイッチやキーロック等の自動車用部品を主力とし、トヨタグループの中核サプライヤーとしてグローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1948年に愛知県で設立され、自動車用スイッチやキーロックの製造を開始しました。1961年に証券取引所に上場し、その後シートベルトやシフトレバーなどの製造も手掛けています。1980年代以降は北米やアジアへ積極的に進出し、2022年には東北地方での事業拡大を目的に東海理化トウホクを設立するなど、拠点を拡充しています。
連結従業員数は20,157名、単体では5,998名です。筆頭株主は事業会社(親会社・提携先)であるトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も資産管理業務を行う金融機関が名を連ねており、トヨタグループとの強力な資本関係を基盤としつつ、機関投資家からも一定の保有を受けています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 34.38% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.91% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 | 3.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は二之夕裕美氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 二之夕 裕美 | 代表取締役社長 | トヨタ自動車入社、同社常務役員を経て、2020年1月同社副社長執行役員に就任。2020年6月より現職。 |
| 佐藤 雅彦 | 代表取締役 | 同社入社後、第1営業部長、参与、執行役員などを歴任。2023年4月副社長執行役員に就任し、2023年6月より現職。 |
| 今枝 勝行 | 取締役 | 同社入社後、セキュリティ生技部長、執行役員、上級幹部職などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、藤岡圭(元三井倉庫ホールディングス社長)、宮間三奈子(大日本印刷常務取締役)、安部和志(ソニーグループ執行役専務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「アジア」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
主にHMI製品、スマートシステム、シートベルト、シフトレバー等の自動車用部品を製造し、国内の自動車メーカー等へ販売しています。製品の開発機能やマザー工場としての役割も担っています。
収益は主に自動車メーカーへの製品販売による対価です。運営は主に東海理化電機製作所が行い、東海理化NExT、東海理化エレテックなどの国内連結子会社が生産や販売の一部を担っています。
■(2) 北米
米国、カナダ、メキシコにおいて、スイッチ類やシフトレバー、シートベルト等の自動車部品を製造・販売しています。現地の自動車メーカー工場への供給を行っています。
収益は自動車メーカーへの製品販売代金です。運営は、米国のTRAM、TACマニュファクチャリング、TRMI、カナダのTRQSS、メキシコのトウカイリカメキシコなどの現地法人が行っています。
■(3) アジア
中国、タイ、インド、インドネシア、フィリピン、台湾などにおいて、スイッチ、セキュリティシステム、シートベルト等を製造・販売しています。新興国市場の需要に対応しています。
収益は自動車メーカーへの製品販売代金です。運営は、中国の理嘉工業、天津東海理化汽車部件、タイのトウカイリカ(タイランド)、インドのトウカイリカミンダインディアなどの現地法人が行っています。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない欧州(ベルギー、チェコ、イギリス)や南米(ブラジル)などでの事業活動を含んでいます。各地域で自動車部品の製造・販売を行っています。
収益は自動車メーカーへの製品販売代金です。運営は、ベルギーのトウカイリカベルギー、チェコのTRCZ、ブラジルのTRBRインダストリアイコメルシオなどの現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第74期から第77期にかけて順調に拡大してきましたが、当期(第78期)は微減となりました。経常利益は第75期に落ち込んだものの、その後回復基調にありましたが、当期は減益となっています。一方、当期純利益は第75期以降、増加傾向を維持しており、当期も増益を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,401億円 | 4,873億円 | 5,531億円 | 6,236億円 | 6,177億円 |
| 経常利益 | 190億円 | 156億円 | 241億円 | 396億円 | 345億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 3.2% | 4.4% | 6.3% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 97億円 | 51億円 | 87億円 | 169億円 | 237億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高はわずかに減少しましたが、売上原価の減少により、営業利益は増加しました。営業利益率は向上しており、収益性は改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,236億円 | 6,177億円 |
| 売上総利益 | 916億円 | 897億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.7% | 14.5% |
| 営業利益 | 288億円 | 354億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が191億円(構成比35%)、製品保証引当金繰入額が3億円(同1%未満)を占めています。前期は製品保証引当金繰入額が多額でしたが、当期は大幅に減少しています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは売上が減少しましたが、合理化努力などにより営業損失が縮小しました。北米は為替の影響などで増収となりましたが、利益は減少しました。アジアは客先生産台数の減少により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 2,499億円 | 2,462億円 | △98億円 | △8億円 | -0.3% |
| 北米 | 1,638億円 | 1,645億円 | 96億円 | 81億円 | 4.9% |
| アジア | 1,608億円 | 1,582億円 | 253億円 | 240億円 | 15.1% |
| その他 | 491億円 | 488億円 | 36億円 | 35億円 | 7.2% |
| 調整額 | - | - | 1億円 | 7億円 | - |
| 連結(合計) | 6,236億円 | 6,177億円 | 288億円 | 354億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 533億円 | 393億円 |
| 投資CF | △314億円 | △262億円 |
| 財務CF | △226億円 | △80億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様に喜ばれる商品を創造し、豊かな社会づくりに貢献する」「個性とチャレンジ精神を尊重し、若さと夢あふれた企業をめざす」「社会の一員として、法と倫理を遵守し自然・地域と共生する企業をめざす」を経営理念として掲げています。また、志・存在意義としてのパーパス「『技術の進化』と『人』をつなぎ、感動をかたちに」を定めています。
■(2) 企業文化
社員が共有する価値観・行動指針として「東海理化グループ『考動宣言』」を明確にしています。また、個人の成長が会社の未来につながるとの考えのもと、「『健康・考動・笑顔』で未来を創ろう!!」をスローガンに掲げ、グループ一丸となって成長戦略を推進する風土の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画を掲げ、更なる成長のための経営体質強化を図っています。2024年5月には中期経営計画の一環としての成長戦略を発表し、将来像の実現に向けた取り組みを進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「新たなビジネス領域への挑戦の加速」として、組織の枠組みにとらわれない「共創型チーム」を発足させ、イノベーションを促進しています。また、「未来創造投資」として、カーボンナノチューブを用いた熱電変換素子や、リチウムイオンバッテリー技術を持つベンチャー企業への出資など、新技術・新領域への挑戦を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な個を活かし合い、挑戦を通じて新たな価値を創造する環境・人財づくりを目指しています。健康経営の推進、女性や障がい者、シニア社員の活躍推進、キャリア自律支援、次世代リーダーやソフトウエア人財の育成などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 21.5年 | 7,251,268円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 91.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 75.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、疾病における休務発生率(3.5%)、今の会社で働くことができて良かったと思う回答率(71.2%)、チャレンジングな目標設定ができている回答率(52.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車産業及び主要客先への販売依存
製品の販売は自動車の販売台数に大きく依存しており、完成車メーカーの生産動向の影響を強く受けます。特にトヨタ自動車およびトヨタグループへの売上高比率が高いため、同社の生産動向が経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
■(2) 新製品開発
自動車業界の自動化・電動化の進展に伴い、既存製品やビジネスモデルが変化する可能性があります。技術開発や製品企画の遅れは、ビジネス機会の喪失につながり、経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 競争の激化
自動車業界の再編や他業種からの新規参入により、競争が激化しています。価格競争や技術競争への対応が求められており、競争力の維持・強化が課題となっています。
■(4) 海外進出に内在するリスク
海外12か国に拠点を展開しており、海外比率が高まっています。各国の法令・規制の変更、政治的・経済的混乱、労働争議などの予期せぬ事象が発生した場合、事業遂行に支障をきたす可能性があります。



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