東海理化電機製作所転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社東海理化電機製作所の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月9日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海理化電機製作所ってどんな会社?
HMI製品やスマートシステムなどの自動車用部品を手掛け、トヨタ自動車を主要顧客とするメーカーです。
■(1) 会社概要
1948年に東海理化電機製作所として設立し、自動車用スイッチの製造販売を開始しました。1961年に東証および名証の市場第二部に上場し、1978年に同第一部へ指定替えとなりました。1986年に米国へ現地法人を設立して海外進出を本格化し、2020年にはデジタルキー事業の独自ブランドを立ち上げています。
現在の従業員数は連結で19381名、単体で6043名です。筆頭株主は事業における主要な取引先でもあるトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は外資系金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 34.38% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.98% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 3.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は二之夕裕美氏が務めています。取締役9名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 二之夕裕美 | 代表取締役社長 | 1984年4月トヨタ自動車入社。同社常務役員等を経て、2020年6月より現職。 |
| 佐藤雅彦 | 代表取締役 | 1985年4月同社入社。第1営業部長、副社長執行役員等を経て、2023年6月より現職。 |
| 今枝勝行 | 取締役 | 1990年4月同社入社。セキュリティ生技部長、執行役員等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、藤岡圭(元三井倉庫ホールディングス社長)、宮間三奈子(大日本印刷常務取締役)、安部和志(ソニーグループシニアアドバイザー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「アジア」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
主にHMI製品、スマートシステム、シートベルト、シフトレバーなどの自動車用部品を製造・販売しており、国内の自動車メーカーなどを主な顧客としています。また、次世代技術を活用したデジタルキーや幼児置き去り検知システムなどの新製品開発も推進しています。
収益は顧客への製品販売によって得ています。事業の運営は主に東海理化電機製作所が行っているほか、東海理化NExT、サン電材社、東海理化エレテック、東海理化クリエイトなどの国内子会社が生産・販売や関連サービスを担っています。
■(2) 北米
北米地域において、HMI製品、シートベルト、シフトレバー等の自動車用部品の製造および販売を行っています。米国の完成車メーカーや現地に進出している日系自動車メーカーを主な顧客として事業を展開しています。
収益は主に現地顧客への部品供給によって得ています。運営は、北米統括を担うTRAMをはじめ、TACマニュファクチャリング、TRMI、TRQSS、トウカイリカメキシコなどの現地連結子会社が主体となって行っています。
■(3) アジア
中国、台湾、タイ、インド、インドネシア、フィリピンなどのアジア地域において、自動車用部品の製造および販売を行っています。現地の自動車メーカーや日系メーカーの現地拠点に対して広く製品を供給しています。
収益は各国の拠点を通じた部品の販売によって得ています。運営は、理嘉工業、佛山東海理化汽車部件、天津東海理化汽車部件、タイシートベルト、トウカイリカインドネシアなどの各国の連結子会社が担っています。
■(4) その他
欧州および南米地域において、現地に根ざした自動車用部品の製造および販売や、営業・技術活動を行っています。主な対象国はブラジル、ベルギー、チェコ、イギリスなどです。
収益は現地での製品販売から得ています。運営は、TRBR インダストリア イ コメルシオ、トウカイリカベルギー、TRCZ、TRBなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、自動車生産の回復や為替の影響などを受け、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も成長基調にあり、利益率も改善が進んでおり、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4872億円 | 5534億円 | 6234億円 | 6177億円 | 6447億円 |
| 経常利益 | 154億円 | 244億円 | 395億円 | 343億円 | 438億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 4.4% | 6.3% | 5.6% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 46億円 | 81億円 | 168億円 | 219億円 | 232億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となりました。一方、売上総利益率および営業利益率は前期とほぼ同水準を維持しており、安定した収益構造を保っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6177億円 | 6447億円 |
| 売上総利益 | 897億円 | 919億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.5% | 14.3% |
| 営業利益 | 353億円 | 356億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が200億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が28億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
地域別のセグメント売上高を見ると、すべての地域で前期を上回る増収となっています。特に主力である日本セグメントと北米セグメントが売上を大きく牽引しており、アジアおよびその他の地域も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 2462億円 | 2596億円 |
| 北米 | 1645億円 | 1733億円 |
| アジア | 1582億円 | 1620億円 |
| その他 | 488億円 | 499億円 |
| 連結(合計) | 6177億円 | 6447億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 392億円 | 438億円 |
| 投資CF | -261億円 | -173億円 |
| 財務CF | -80億円 | -109億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営理念として、「お客様に喜ばれる商品を創造し、豊かな社会づくりに貢献する」「個性とチャレンジ精神を尊重し、若さと夢あふれた企業をめざす」「法と倫理を遵守し自然・地域と共生する企業をめざす」の3つを掲げています。また、会社としての存在意義を示すパーパスに「技術の進化と人をつなぎ、感動をかたちに」を、目指すべき将来像であるビジョンに「安全・安心で豊かな社会の実現に貢献」を定めています。
■(2) 企業文化
同社は、社員が共有する価値観および行動指針であるバリューとして、「東海理化グループ考動宣言」を明確にしています。また、個人の成長が会社の未来につながるという考えのもと、「健康・考動・笑顔で未来を創ろう!!」というスローガンを全社で掲げています。これらの価値観を基盤に、全社員が一丸となって筋肉質な企業体質の構築を目指し、挑戦と変革を後押しする文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長を実現するための指針として中期経営計画「TRV2030」を策定し、成長戦略を推進しています。社会課題の解決やカーボンニュートラルの実現、人的資本経営の推進に向けた定量的かつ具体的な目標を設定しています。
・新規領域・新事業における売上高150億円
・2030年までに工場CO2排出量を2013年度比で60%削減
・疾病における休務発生率2.0%、女性管理職比率5.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の目標達成に向け、同社は筋肉質な企業体質の構築を通じた成長戦略を掲げています。モビリティの在り方や社会課題を見据え、長年培ってきた電波関連技術を核とする新技術開発を一層推進するとともに、新たなサービスやビジネスモデルの構築に挑戦しています。また、専用設備依存を脱却して汎用設備を導入し、生産変動や供給リスクに強いサプライチェーンを構築することで競争力強化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を最重要の経営資源と位置づけ、「挑戦と変革を実現する人的資本経営の推進」を掲げています。重点方針として「健康経営の推進」「変革をリードする人財の育成」「挑戦・成長・活躍機会のさらなる拡大」の3つを軸に戦略的な投資を進めています。社内公募制度やFA制度を通じたキャリア自律支援に加え、多様な働き方を支える制度の整備を進め、全員がやりがいをもって活躍できる環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.6歳 | 21.5年 | 7,526,286円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 96.5% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用者) | 68.2% |
| 男女賃金差異(臨時雇用者) | 71.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、今の会社で働くことができて本当に良かったと思う回答率(73%)、チャレンジングな目標設定ができている回答率(52.4%)、ダイバーシティ推進に関わる活動への参加率(43%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車産業および主要顧客への販売依存
同社の製品は自動車用部品が主であり、売上は自動車の販売台数に大きく依存しています。特にトヨタ自動車およびトヨタグループへの売上高比率が高いため、主要顧客の生産動向や関税政策などの影響を直接受ける可能性があります。対応として、他の完成車メーカーへの拡販活動を継続し、製品の搭載拡大に努めています。
■(2) 新製品開発の遅れによる競争力低下
自動車業界は自動化・電動化やカーボンニュートラル対応などにより大きな構造変化のなかにあります。次世代車両向けの製品企画や技術開発において遅れをとった場合、既存・新規ビジネスの機会を逸失し、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は自動運転向け監視システムなどの新製品開発を推進しています。
■(3) リコール等の品質問題
品質第一を掲げて製品を製造していますが、将来的にリコールや製造物責任に関する問題が発生するリスクがあります。部品の共通化が進むなかで不具合が生じた場合、対象が拡大して多額の対応コストが発生し、社会的信用の低下や業績悪化につながる恐れがあります。品質基盤の強化等によりリスク低減を図っています。



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