KOA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KOA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場し、抵抗器やIC、複合部品といった電子機器向け回路部品の開発・製造・販売を主力事業としています。自動車や産業機器向けを中心にグローバル展開していますが、直近の決算では産業機器向けの需要低迷や固定費増加などが響き、売上高は641億円で微減、最終利益は3億円と大幅な減益となりました。(155文字)


※本記事は、KOA株式会社 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KOAってどんな会社?


抵抗器を中心とする電子部品メーカーとして、自動車や産業機器分野などで高い信頼性と技術力を提供しています。

(1) 会社概要


同社は1940年に興亜工業社として創業し、1947年に設立されました。1961年に東証二部に上場し、1984年には東証一部へ指定替えを行いました。1986年に現在の社名へ変更しています。海外展開も早くから進め、1973年にはマレーシア、1980年にはアメリカに現地法人を設立するなど、グローバルな生産・販売体制を構築しています。

同社グループの従業員数は連結で4,288名、単体で1,679名です。筆頭株主は信託銀行で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は地方銀行の八十二銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.20%
日本生命保険相互会社 6.00%
八十二銀行 4.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役 社長執行役員は向山浩正氏、社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
向山 浩正 代表取締役 社長執行役員 2005年同社入社。シンガポール現法社長などを経て、2025年4月より現職。
向山 孝一 取締役会長 1972年同社入社。社長を経て、2018年6月より現職。
百瀬 克彦 取締役 副社長執行役員ものづくりイニシアティブトップマネジメント 1985年同社入社。KPS本部GM、経営戦略センターGM等を経て、2025年4月より現職。
野々村 昭 取締役 常務執行役員販売イニシアティブトップマネジメント 1983年同社入社。日本営業ビジネスフィールド代表等を経て、2024年6月より現職。
花形 忠男 取締役 上席執行役員 1979年同社入社。社長、品質保証イニシアティブトップマネジメント等を経て、2025年4月より現職。
山岡 悦二 取締役 上席執行役員品質保証イニシアティブトップマネジメント 1986年同社入社。技術イニシアティブトップマネジメント等を経て、2024年6月より現職。
小嶋 敏博 取締役 上席執行役員・経営管理イニシアティブトップマネジメント・KPS-3イニシアティブトップマネジメント 1986年同社入社。マーケティングセンターGM等を経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、マイケルジョンコーバー(グローバルベンチャーキャピタル代表取締役)、北川徹(元スターバックスコーヒージャパンCFO)、高橋晃次(元東京ウエルズ常務取締役)、小澤仁(フォレストコーポレーション社長)、角幸子(SUMI人材教育開発研究所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「アメリカ」「ヨーロッパ」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


抵抗器、IC、高周波インダクタ等の電子機器用回路部品の開発・製造・販売を行っています。特に高度技術製品や高付加価値製品の生産拠点としての役割を担っています。

収益は、顧客である電子機器メーカー等への製品販売から得ています。生産は同社および興亜エレクトロニクスなどの連結子会社が担当し、販売は同社および興亜販売などが担当しています。

(2) アジア


コスト競争力とグローバル展開を目的とし、抵抗器等の生産および販売を行っています。中国、マレーシア、台湾などに拠点を持ち、成長市場への供給体制を担っています。

収益は、各地域の顧客への製品販売により得ています。生産は高雄興亜股份有限公司、上海興亜電子元件有限公司などが担当し、販売はKOA DENKO(S)PTE. LTD.などが担当しています。

(3) アメリカ


北米市場における電子部品の販売事業を展開しています。自動車向けや産業機器向けなど、同社グループ製品の販売拠点としての機能を果たしています。

収益は、北米地域の顧客への製品販売から得ています。運営は、持株会社のKOA SPEER HOLDING CORP.および販売事業会社のKOA SPEER ELECTRONICS,INC.が行っています。

(4) ヨーロッパ


欧州市場における電子部品の販売および研究開発を行っています。自動車産業が盛んな欧州において、製品販売と技術開発の両面から事業を展開しています。

収益は、欧州地域の顧客への製品販売から得ています。販売はKOA Europe GmbHが担当し、研究開発はVIA electronic GmbHが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期の751億円をピークに減少傾向にあり、当期は641億円となっています。利益面では、経常利益がピーク時の105億円から当期は12億円へと大きく落ち込み、利益率は1.9%まで低下しました。当期利益も前期比で大幅な減益となり、3億円にとどまっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 504億円 650億円 751億円 648億円 641億円
経常利益 29億円 69億円 105億円 45億円 12億円
利益率(%) 5.8% 10.6% 14.0% 6.9% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 48億円 74億円 28億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の648億円から当期は641億円へと微減しました。一方、売上総利益は195億円から182億円へ減少し、売上総利益率は30.1%から28.3%へ低下しています。これに伴い営業利益も前期の33億円から12億円へと6割以上減少し、営業利益率は1.8%となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 648億円 641億円
売上総利益 195億円 182億円
売上総利益率(%) 30.1% 28.3%
営業利益 33億円 12億円
営業利益率(%) 5.1% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が71億円(構成比42%)、その他費用が53億円(同31%)を占めています。売上原価については、内訳データがありません。

(3) セグメント収益


アジアセグメントは中国市場の回復等により増収増益となりましたが、日本セグメントは産業機器向け等の需要低迷により赤字転落しました。アメリカは在庫調整の影響で減収減益、ヨーロッパは自動車向けが堅調でしたが産業機器向けの減速により微増収減益となり、全体として厳しい決算となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 516億円 516億円 4億円 -11億円 -2.0%
アジア 325億円 338億円 13億円 14億円 4.1%
アメリカ 113億円 110億円 6億円 2億円 2.3%
ヨーロッパ 120億円 121億円 5億円 5億円 3.9%
連結(合計) 1073億円 1085億円 29億円 11億円 1.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、株主、顧客・取引先、社員とその家族、地域社会、地球という5つのステークホルダーとの間に「信頼」を築き上げることを企業使命としています。これら5つの主体の支えにより企業活動が成り立っていると認識し、信頼関係の構築を通じて企業価値の向上を目指すことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「KOA Profit System(KPS)」と呼ばれる全員参加の経営改善活動を推進しています。また、社員一人ひとりが信頼し合ったチームワークの中で力を発揮し、仕事の充実感を味わいながら目標を達成できる職場環境を目指しています。さらに、「Quality 1st」を掲げ、品質と信頼性を重視する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた長期ビジョン「2030ビジョン」を策定し、その実現に向けたフェーズとして中期経営計画を実行しています。次期中期経営計画(2025-2027)については、外部環境の不透明さを理由に数値目標の再検討を行っていますが、長期的にはカーボンニュートラル社会への貢献や供給体制の強化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


自動車分野の電動化(CASE)や産業機器の高度化に対応するため、品質と信頼性を重視する分野に注力しています。具体的には、2030年に向けた供給体制の構築、KPSの深化、イノベーション・マネジメントシステムの導入、再生可能エネルギー導入による環境対応、未来を創造する人づくり、ガバナンス強化を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人こそが持続的成長の源泉」との考えのもと、イノベーション人材や高度専門人材の育成、DX推進人材の強化、次世代リーダーの育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、女性管理職比率の向上や柔軟な働き方の導入、心理的安全性の高い職場づくりを推進し、社員の自律的な成長と挑戦を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 16.6年 5676581円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 61.1%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメント・レーティング(47.7)、人材開発/育成投資(196)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外展開に伴うリスク


同社グループは生産・販売拠点をグローバルに展開しており、進出国の経済・政治・社会情勢の変化や、輸出入規制、為替変動、法令・税制の変更などが業績に影響を及ぼす可能性があります。特に米国貿易政策や経済安全保障などの予期せぬ事態が懸念されます。

(2) 原材料調達のリスク


原材料の安定調達に努めていますが、紛争、自然災害、規制変更などの要因によりサプライチェーンが寸断される可能性があります。調達先の生産停止やトラブルにより原材料の確保が困難になった場合、製品供給責任を果たせず、業績に悪影響を与える恐れがあります。

(3) 自然災害やパンデミックのリスク


地震、洪水などの大規模災害やパンデミックの発生により、生産・営業拠点の稼働が困難になるリスクがあります。従業員の被災、交通網やインフラの遮断などにより事業活動が停滞した場合、生産遅延や営業活動の混乱を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。