KOA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KOA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KOAは東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、抵抗器などの電子機器等回路部品の開発・製造・販売を主力事業としています。直近の業績では、中国の自動車向けやアジアでのAI関連機器向けの需要が堅調に推移したことで、増収ならびに大幅な営業増益を達成しています。


※本記事は、KOA株式会社の有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KOAってどんな会社?


同社は、各種電子機器に不可欠な抵抗器などの回路部品の開発・製造・販売をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


同社は1940年に興亜工業社として創立され、1950年に興亜電工へ改称した後、1961年に株式を上場しました。1984年には東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第一部(現プライム・プレミア市場)へ指定替えを行っています。1986年に現在のKOAへ改称し、海外にも多数の生産・販売拠点を設けています。

現在の従業員数は連結で4,409名、単体で1,669名です。筆頭株主は信託業務を担う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、上位はいずれも金融機関や機関投資家が占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.10%
日本生命保険相互会社 6.00%
日本カストディ銀行(信託口) 5.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役 社長執行役員は向山浩正氏が務めており、社外取締役の比率は高く保たれています。

氏名 役職 主な経歴
向山浩正 代表取締役 社長執行役員 2005年同社入社。海外子会社トップや経営管理担当を経て2021年取締役就任。2025年4月より現職。
向山孝一 取締役会長 1972年同社入社。1977年代表取締役社長を経て2018年取締役会長に就任。2021年より指名・報酬委員会委員。
百瀬克彦 取締役 副社長執行役員 1985年同社入社。経営戦略やものづくり部門を歴任し、2011年取締役就任。2025年4月より現職。
野々村昭 取締役 常務執行役員 1983年同社入社。海外子会社トップや販売部門を歴任し2012年取締役就任。2024年より現職。
山岡悦二 取締役 上席執行役員 1986年同社入社。技術や品質保証部門を歴任し、2012年取締役に就任。2024年より現職。
千原臣祐 取締役 上席執行役員 1995年同社入社。中国子会社の総経理・董事長を経て、2024年執行役員就任。2025年より現職。


社外取締役は、マイケルジョンコーバー(グローバルベンチャーキャピタル代表取締役)、北川徹(元スターバックスコーヒージャパンCFO)、高橋晃次(元東京ウエルズ常務取締役最高技術責任者)、小澤仁(フォレストコーポレーション代表取締役社長)、角幸子(SUMI人材教育開発研究所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「アメリカ」「ヨーロッパ」の各報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


高度技術製品や高付加価値製品の生産と国内での販売を主力としており、電子部品業界を中心とした顧客に製品を提供しています。

抵抗器やIC等の販売によって顧客から対価を得る収益モデルです。同社および興亜エレクトロニクスなどの連結子会社が生産を担い、同社の営業所や興亜販売が販売業務を担当しています。

(2) アジア


生産コストの有利性やグローバルな事業展開を目的として、アジア地域における電子部品の生産と販売を担っています。

製品の販売を通じて顧客から収益を獲得しています。生産拠点は高雄興亜、上海興亜電子元件などが担当し、販売拠点はKOA DENKO(S)PTE. LTD.などの子会社および関連会社が運営しています。

(3) アメリカ


北米市場を中心とする販売拠点として機能し、現地の顧客に対して各種電子部品を提供しています。

製品の販売による収益を柱としています。同事業の運営と販売活動は、子会社のKOA SPEER HOLDING CORP.およびKOA SPEER ELECTRONICS,INC.が担当しています。

(4) ヨーロッパ


欧州市場における電子部品の販売拠点として機能するとともに、同社グループの研究開発拠点としての役割も担っています。

顧客への製品販売により収益を得ています。販売活動はKOA Europe GmbHが担当しており、研究開発業務はVIA electronic GmbHが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年3月期にかけて大きく伸長したものの、その後は顧客の在庫調整等の影響で一時落ち込みました。しかし直近の2026年3月期は、AI関連や自動車向け需要の回復により再び増収ならびに大幅な増益に転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 650億円 751億円 648億円 641億円 723億円
経常利益 69億円 105億円 45億円 12億円 52億円
利益率(%) 10.6% 14.0% 6.9% 1.9% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 74億円 28億円 3億円 40億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況では、売上高の増加に加えて徹底した経費抑制を進めたことで、売上総利益と営業利益の双方が大きく改善し、収益性が回復傾向にあることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 641億円 723億円
売上総利益 182億円 219億円
売上総利益率(%) 28.3% 30.3%
営業利益 12億円 36億円
営業利益率(%) 1.8% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が27億円(構成比15%)、研究開発費が22億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本およびヨーロッパでは顧客の在庫調整が一巡し、中国での自動車向けやアジアでのAIサーバー関連需要が力強く牽引したことで、全セグメントにおいて前期比で増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 200億円 222億円
アジア 210億円 248億円
アメリカ 110億円 115億円
ヨーロッパ 121億円 138億円
連結(合計) 641億円 723億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 81億円 91億円
投資CF -239億円 -71億円
財務CF 113億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「株主様、お客様・お取引先様、地域社会、社員・家族、地球」という5つの存在が同社グループを支える主体であると認識し、それらの主体との間に「信頼」を築き上げていくことを企業ミッションとして掲げています。

(2) 企業文化


創業の精神である「農工一体」「伊那谷に太陽を」という考え方を重んじ、社員を単なる労働力ではなく地域や家族を支える存在として重視しています。長期雇用や現場重視、チームワーク、地域密着をベースとした独自の文化が深く根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030ビジョンの実現に向けたフェーズ2として「2027中期経営計画」を推進しており、「ROIC経営を軸に利益成長と効率向上を実現する」ことをコンセプトに掲げています。

* ROE:6.2%
* ROIC:4.7%

(4) 成長戦略と重点施策


CASEやAI技術の普及を見据え、次世代モビリティ、AIサーバー、GX(グリーントランスフォーメーション)市場を注力領域に定めています。高信頼性・高性能が求められる分野において、顧客のニーズより先行した製品開発(デザインイン)を強化し、高付加価値製品の拡販とコスト構造改革を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人こそが持続的成長の源泉」との考えのもと、事業変革を牽引する次世代経営人材や高度専門人材の育成に注力しています。長期雇用を基盤としながらも、社員が自律的にキャリアを描ける支援や、挑戦を評価する役割基準の人事制度を導入し、組織力の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 17.1年 5,923,699円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.96%
男性育児休業取得率 77.42%
男女賃金差異(全労働者) 71.45%
男女賃金差異(正規雇用) 72.16%
男女賃金差異(非正規) 55.82%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、職務要件書数(22件)、社内公募制度ポジション数(4件)、資格取得報奨金申請数(50件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動リスク

同社の主要製品には、貴金属相場の影響を大きく受ける原材料が含まれています。調達先の分散などに努めていますが、価格の急騰分を顧客へ十分に転嫁できない場合や、調達先の操業停止等で安定的な調達が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) グローバル事業展開に伴うリスク

市場のグローバル化に対応し、国内外に生産拠点および販売拠点を展開しています。そのため、進出国の政治・経済情勢の変化や経済安全保障に基づく輸出入規制、為替レートの大幅な変動などが生じた場合、事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 市場における競争激化

電子部品業界は激しい競争に晒されており、製品価格が低下する傾向にあります。これに対し同社は新製品の投入やコスト削減等で対応していますが、競争のさらなる激化や新製品のリリース遅延、想定通りのコスト削減が実現できなかった場合には、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。