ニチコン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチコン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の電子部品メーカーです。コンデンサ事業と環境・エネルギー関連のNECST事業を主力としています。2025年3月期は、自動車・車載関連機器向けや情報通信機器向けの需要変動等の影響を受け、売上高は1,758億円、営業利益は52億円となり、前期比で減収減益となりました。


※本記事は、ニチコン株式会社の有価証券報告書(第90期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチコンってどんな会社?


アルミ電解コンデンサや家庭用蓄電システムなどを開発・製造する、京都に本社を置く電子部品メーカーです。

(1) 会社概要


1950年に大阪市で関西二井製作所として設立され、1961年に株式を上場しました。1966年には東京・大阪・名古屋証券取引所市場第一部へ指定替えを行っています。1987年に販売会社を吸収合併し現社名へ変更しました。2015年にはユタカ電機製作所の事業を譲り受け、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は5,242名、単体では585名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先持株会、第3位は地方銀行の京都銀行となっており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.80%
ニチコン取引先持株会 5.60%
京都銀行 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長COOは森 克彦氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
武田 一平 代表取締役会長CEO 1963年入社。国際部長、大野工場長、代表取締役社長等を経て、2013年より現職。
森 克彦 代表取締役社長COO 1991年入社。海外営業本部部長、台湾現地法人董事長、執行役員コンデンサ事業本部長等を経て、2023年より現職。
矢野 明弘 取締役執行役員専務企画本部長兼サステナビリティ推進室長 1980年パイオニア入社。2009年同社入社。企画本部長、常務、サステナビリティ推進室長を経て、2023年より現職。


社外取締役は、松重 和美(京都大学名誉教授)、加藤 治彦(元国税庁長官)、栗本 知子(弁護士)、谷口 宗哉(元三菱UFJ銀行副頭取)、池坊 専好(華道家元池坊次期家元)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンデンサ事業」および「NECST事業」を展開しています。

(1) コンデンサ事業


主にアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、小形リチウムイオン二次電池等の電子デバイス製品を製造・販売しています。自動車・車両関連機器、情報通信機器、白物家電・産業用インバータ機器等の市場に向けて、高品質な製品を提供しています。

収益は、国内外の顧客に対する製品販売による売上が中心です。運営は主にニチコンが全体を統括し、生産はニチコン製箔、ニチコン大野、ニチコン岩手などの子会社が行い、販売はニチコン(アメリカ)コーポレーション等の海外現地法人が担っています。

(2) NECST事業


家庭用・公共・産業用蓄電システム、V2Hシステム、EV・PHV用急速充電器等の環境関連製品や、スイッチング電源、加速器電源等の回路製品を製造・販売しています。脱炭素化のトレンドを受け、エネルギー・環境関連市場へ製品を展開しています。

収益は、製品の販売に加え、関連サービスの提供等からも得ています。運営はニチコンが中心となり、ニチコン亀岡やユタカ電機製作所等が製造を担当し、日本リニアックスが圧力センサの製造販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、2023年3月期に売上高・利益ともに大きく伸長しましたが、その後は調整局面に入っています。2025年3月期は減収減益となりましたが、一定の利益水準は確保しており、自己資本比率も上昇傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,161億円 1,422億円 1,847億円 1,816億円 1,758億円
経常利益 30億円 86億円 153億円 114億円 75億円
利益率(%) 2.6% 6.0% 8.3% 6.3% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 65億円 61億円 118億円 103億円

(2) 損益計算書


売上高は減少しましたが、売上総利益率は一定水準を維持しています。一方、営業利益は大幅に減少しており、販売費及び一般管理費の負担増などが利益率を圧迫している様子が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,816億円 1,758億円
売上総利益 313億円 283億円
売上総利益率(%) 17.2% 16.1%
営業利益 89億円 52億円
営業利益率(%) 4.9% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が76億円(構成比33%)、運送費が35億円(同15%)を占めています。売上原価においては、材料費等の変動費が主要な割合を占めています。

(3) セグメント収益


コンデンサ事業は減収減益となり、特に利益面での落ち込みが目立ちます。一方、NECST事業は増収増益を達成し、全社の利益を下支えする形となりました。事業ポートフォリオの中でNECST事業の重要性が増しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンデンサ事業 1,064億円 992億円 73億円 16億円 1.6%
NECST事業 752億円 766億円 16億円 36億円 4.8%
調整額 -8億円 -6億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 1,816億円 1,758億円 89億円 52億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスで、本業で稼いだ資金を投資に回しつつ、借入返済も進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 163億円 183億円
投資CF -127億円 -84億円
財務CF -6億円 -143億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%で市場平均(46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。より良い地球環境の実現に努め、倫理的・社会的責任を果たすとともに、顧客・株主・従業員をはじめ全ての人々を大切に、企業価値の最大化を目指して、誠心誠意をもって「考働」します。」を掲げています。

(2) 企業文化


「モノづくりからコトづくり」「製造業から創造業への変革」を実践し、「品質、コスト、納期、サービス、技術」などあらゆる面で最上級を目指す「トップノッチ経営」を推進しています。また、独自の造語である「考働(考えて働く)」を誠心誠意実践することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期成長目標「Vision 2025」に基づき、売上高と営業利益率の持続的な成長を経営指標としています。最終年度となる2026年3月期の目標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:2,000億円
* 営業利益率:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「エネルギー・環境・医療機器」「自動車・車両関連機器」「白物家電・産業用インバータ機器」「情報通信機器」の4市場を重点分野と定めています。中長期視点での成長に向けて、「G:グリーン(環境)」と「D:デジタル(DX)」をキーワードとした価値提供に注力し、競争優位性の向上と収益体質の強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人こそニチコンのエネルギー」を人事理念とし、従業員一人ひとりが社会ニーズを察知し「考働」できる環境整備に努めています。人材育成では、階層別・職能別研修や英会話学習講座に加え、東京大学生産技術研究所への若手技術者派遣など産学連携による育成も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.6歳 9.7年 6,888,476円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 59.2%
男女賃金差異(正規) 60.3%
男女賃金差異(非正規) 35.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用実績(92名)、中途採用実績(141名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動によるリスク


事業における外貨建て項目は連結財務諸表作成時に円換算されるため、為替レートの変動により円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。為替予約等のヘッジを行っていますが、完全に影響を排除できる保証はありません。

(2) 新製品の開発リスク


多様化する顧客要求への対応や適時・適正コストでの開発、新技術の展開などの能力が不足した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、日本と中国の研究開発拠点や産学連携を通じて開発体制を強化しています。

(3) 海外進出の潜在リスク


事業展開国における法令・規制の変更、政治・経済的変動、予期せぬ事象の発生などが、事業遂行に問題を生じさせ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に中国に製造拠点を有しており、現地の情勢変化を注視しています。

(4) 環境規制などによる影響


環境法令の適用を受けており、将来的に規制が厳格化され有害物質の除去義務などが追加された場合、対応費用が発生する可能性があります。ISO14001認証取得など環境保全活動を推進し、環境配慮型製品の提供に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。