※本記事は、ニチコンの有価証券報告書(第91期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチコンってどんな会社?
コンデンサ事業と家庭用・産業用蓄電システム等のNECST事業をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1950年に設立され、1961年に日本コンデンサ工業へ商号変更しました。1966年に東京・大阪・名古屋証券取引所市場第一部へ指定替えを果たしています。1987年に現在のニチコンへ商号を変更し、その後国内外での生産・販売網の拡大や、ユタカ電機製作所の事業譲受などを経て事業領域を拡大してきました。
従業員数は連結で4,982名、単体で623名となっています。大株主の筆頭は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位は同社との取引先で構成されるニチコン取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.10% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.10% |
| ニチコン取引先持株会 | 5.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役会長CEOは武田一平氏、代表取締役社長COOは森克彦氏が務めています。取締役8名のうち社外取締役が5名を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 武田一平 | 代表取締役会長CEO | 1963年同社入社。国際部長、大野工場長などを経て、1998年代表取締役社長に就任。2003年執行役員社長を経て、2013年より現職。 |
| 森克彦 | 代表取締役社長COO | 1991年同社入社。海外営業本部部長、台湾カンパニーリミテッド総経理などを経て、2020年コンデンサ事業本部長。2023年より現職。 |
| 矢野明弘 | 取締役執行役員専務管理本部長兼サステナビリティ推進室長 | 1980年パイオニア入社。同社欧州現地法人の代表などを経て、2009年同社入社。企画本部長などを歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、松重和美(九州大学名誉教授)、加藤治彦(元国税庁長官)、栗本知子(関西法律特許事務所パートナー弁護士)、谷口宗哉(三菱UFJ証券ホールディングス特別顧問)、池坊専好(紫雲山頂法寺副住職)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンデンサ事業」および「NECST事業」を展開しています。
■(1) コンデンサ事業
アルミ電解コンデンサ、小形リチウムイオン二次電池、パワーエレクトロニクス用フィルムコンデンサ、xEV用フィルムコンデンサ、変圧器などの製造販売を行っています。自動車・車両関連機器や情報通信機器、産業用インバータなどを主要顧客としています。
電子デバイス製品を顧客企業に販売することで売上を得ています。同社を中心に、ニチコン製箔やニチコン草津などの国内子会社、およびマレーシアや中国の現地子会社が生産を担い、グローバルな販売会社を通じて製品を提供しています。
■(2) NECST事業
家庭用蓄電システム、V2Hシステム、EV・PHEV用急速充電器、スイッチング電源、公共・産業用蓄電システム、大型特殊電源などの環境関連製品および回路製品を製造・販売しています。
カーボンニュートラル社会に向けた環境関連機器や、医療・学術向けの特殊電源などを販売し収益を上げています。主にニチコン草津、ニチコン亀岡、ユタカ電機製作所などが生産を担い、同社および各国の販売子会社を通じて顧客に提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2023年3月期から2024年3月期にかけて1,800億円台に成長しましたが、以降は軟調に推移しています。一方、経常利益および当期利益は変動を伴いつつも、当期は前期比で増益を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1422億円 | 1847億円 | 1816億円 | 1758億円 | 1697億円 |
| 経常利益 | 86億円 | 153億円 | 114億円 | 75億円 | 83億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | 8.3% | 6.3% | 4.3% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 65億円 | 61億円 | 118億円 | 103億円 | 55億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少したものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期を上回る水準となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1758億円 | 1697億円 |
| 売上総利益 | 283億円 | 300億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.1% | 17.7% |
| 営業利益 | 52億円 | 65億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が78億円(構成比33.0%)、運送費が34億円(同14.4%)を占めています。売上原価の構成として、当期総製造費用のうち材料費が361億円(構成比88.6%)、労務費が19億円(同4.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
コンデンサ事業は情報通信分野の需要拡大等により増収となりました。一方、NECST事業は新製品投入時期の遅れや一部市場の停滞により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| コンデンサ事業 | 992億円 | 1027億円 |
| NECST事業 | 766億円 | 670億円 |
| 連結(合計) | 1758億円 | 1697億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 183億円 | 82億円 |
| 投資CF | -84億円 | -66億円 |
| 財務CF | -143億円 | -38億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。より良い地球環境の実現に努め、倫理的・社会的責任を果たすとともに、顧客・株主・従業員をはじめ全ての人々を大切に、企業価値の最大化を目指して、誠心誠意をもって「考働(※考えて働くという同社の造語)」します。」を経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
「モノづくりからコトづくり」「製造業から創造業への変革」の実践を重視しています。また、「品質、コスト、納期、サービス、技術」などあらゆる面で最上級を目指す「トップノッチ経営」を打ち出しており、すべてのステークホルダーに対し誠心誠意対応することで、持続可能な社会の実現と企業の発展を目指す文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期的な成長目標として「Vision 2025」を掲げ、積極的な成長戦略を展開して企業価値の向上を図っています。最終年度における具体的な数値目標として、売上高2,000億円、営業利益率10%以上の達成を目指し、持続的な利益成長と事業基盤の強化に取り組んでいます。
* 売上高:2,000億円
* 営業利益率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「エネルギー・環境・医療機器」「自動車・車両関連機器」「白物家電・産業用インバータ機器」「情報通信機器」の4市場を重点分野と定めています。車載・車両分野ではフィルムコンデンサの生産能力拡大を図り、情報通信向けではAIサーバー市場の需要を取り込みます。また、NECST事業では蓄電システムやEV用急速充電器などの環境関連製品を拡充し、カーボンニュートラル社会に向けた価値創造ビジネスを拡大します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業環境の変化に対応し、情報を分かち合い適切な判断・アクションができる人材を重視しています。求める人材像に「社会の変化を察知し、変化に対応できる人材」を掲げ、階層別・職能別研修や英会話学習講座などを通じた人材育成を推進しています。また、産学連携による若手技術者の育成や、1on1ミーティングの実施など、多様な人材が活躍できる組織体制づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.5歳 | 8.9年 | 6,913,636円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 39.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方および取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、度数率(0.00)、2026年の新卒採用実績(96名)、2025年の中途採用実績(168名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替変動によるリスク
同社グループはグローバルに事業を展開しており、製品の販売や生産拠点の運営において外貨建ての取引が発生します。為替レートの変動により、円換算後の価値が影響を受けるため、為替予約などの対策を講じていますが、経営成績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 新製品の開発リスク
ユーザーニーズを先取りした新製品の開発が不可欠ですが、多様化する顧客要求への対応能力や、新技術の展開能力が不足した場合、競争力を失うリスクがあります。同社は研究開発体制を強化し、産学連携などを通じて技術革新と製品化のスピード向上に努めています。
■(3) 環境規制などによる影響
事業活動は各国の様々な環境法令の適用を受けており、将来的な規制強化に伴い有害物質の除去義務などが追加された場合、対応にかかる費用が経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は環境マネジメントシステム規格ISO14001の認証を取得し、環境保全活動を推進しています。



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