東芝テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東芝テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のPOSシステム世界トップクラス企業。流通小売業向けリテールソリューションと、複合機等のワークプレイスソリューションを展開。当期は海外リテール事業の伸長や為替効果により増収となり、営業利益、経常利益ともに大幅な増益を達成しました。


※本記事は、東芝テック株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東芝テックってどんな会社?


世界トップシェアのPOSシステムを主力とする東芝グループの企業。店舗とオフィスをつなぐソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


1950年に東京芝浦電気(現東芝)から分離独立し、東京電気器具として設立。1994年にテック電子と合併、1999年に現社名へ変更し、東芝より複写機事業を譲り受けました。2012年にはIBMよりグローバルコマースソリューション事業を取得し海外展開を加速。2022年に東証プライム市場へ移行しました。

連結従業員数は15,509名、単体では3,082名です。筆頭株主は親会社の東芝で発行済株式の過半数を所有しています。第2位の日本マスタートラスト信託銀行は信託業務を行う金融機関、第3位のモルガン・スタンレーMUFG証券は金融商品取引業者です。

氏名 持株比率
東芝 50.24%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.35%
モルガン・スタンレーMUFG証券 5.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は錦織弘信氏です。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
錦織 弘信 代表取締役社長社長執行役員、指名委員会委員、報酬委員会委員 1980年富士通入社。2009年東芝入社後、執行役専務、東芝デジタルソリューションズ取締役社長等を経て、2020年4月東芝テック副社長執行役員、同年6月より現職。
内山 昌巳 取締役専務執行役員、社長補佐、経営企画担当、IT戦略システム担当、生産調達戦略担当 1984年入社。リテール・ソリューション事業本部長、取締役常務執行役員等を経て2020年4月より現職。IT戦略システム担当、サステナビリティ推進責任者を兼務。
湯沢 正志 取締役常務執行役員、社長補佐、新規事業担当、全社海外事業責任者、グローバル経営推進担当 富士通、東芝ストレージデバイス、東芝を経て、東芝デジタルソリューションズ取締役等を歴任。2020年東芝テック入社、2023年6月より現職。
大西 泰樹 取締役常務執行役員、リテール・ソリューション事業本部長 1987年入社。リテール・ソリューション事業本部関西支社長、同本部副事業本部長等を経て、2022年4月より現職。
武井 純一 取締役常務執行役員、法務担当、リスク・コンプライアンス統括責任者(CRO)、経営変革推進部長、全社営業統括責任者、指名委員会委員、報酬委員会委員 1987年入社。経営企画部長、DX戦略部長、総務担当等を歴任。2023年6月より現職。全社営業統括責任者を兼務。
谷  尚 史 取締役常務執行役員、財務統括責任者(CFO)、内部管理体制推進担当、財務部長 1987年東芝入社。同社執行役常務、東芝プラントシステム取締役上席常務等を経て、2023年6月より現職。
三原 隆正 取締役(非常勤) 1991年東芝入社。同社執行役上席常務等を経て、2023年12月より同社上席常務執行役員。2021年6月より現職。


社外取締役は、桑原道夫(元丸紅代表取締役副社長)、青木美保(元エスケル・ジャパン・リミテッド代表取締役)、梅葉芳弘(元三菱ケミカルHD取締役監査委員長)、永濱光弘(元みずほ銀行取締役副頭取)です。

2. 事業内容


同社グループは、「リテールソリューション事業」および「ワークプレイスソリューション事業」を展開しています。

(1) リテールソリューション事業


国内および海外市場向けにPOSシステム、オートIDシステム、およびそれらの関連商品・サービスの提供を行っています。流通小売業を主要顧客とし、国内はTECブランド、海外はTOSHIBAブランドを中心に展開しています。

機器の販売に加え、保守サービスやソリューション提供による対価を収益源としています。運営は主に東芝テックおよび販売代理店が行うほか、海外では東芝グローバルコマースソリューション社等の現地子会社が販売を担っています。

(2) ワークプレイスソリューション事業


国内および海外市場向けに複合機、海外市場向けにオートIDシステム等の提供を行っています。オフィス業務の効率化を支援する製品・サービスを展開しています。

機器販売および保守サービス料が主な収益源です。なお、複合機およびオートIDシステムの開発・製造事業は2024年7月にエトリアへ承継され、インクジェットヘッド事業は理想テクノロジーズへ承継されましたが、販売は引き続き同社グループおよび代理店経由で行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は4,057億円から5,770億円へと着実に増加傾向にあります。利益面では、一時的な赤字計上もありましたが、当期は経常利益183億円と回復し、高い水準となりました。親会社所有者帰属持分当期利益もV字回復を果たしています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,057億円 4,453億円 5,108億円 5,481億円 5,770億円
経常利益 72億円 102億円 131億円 110億円 183億円
利益率(%) 1.8% 2.3% 2.6% 2.0% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 84億円 5億円 -81億円 90億円 136億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率は2.9%から3.5%へ改善しました。販売費及び一般管理費は増加しているものの、売上高の伸びがそれを上回り、収益性が向上していることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,481億円 5,770億円
売上総利益 2,212億円 2,278億円
売上総利益率(%) 40.4% 39.5%
営業利益 159億円 203億円
営業利益率(%) 2.9% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与等が1,025億円(構成比49%)、研究開発費が219億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


リテールソリューション事業は、海外市場での伸長や為替影響により増収となりました。ワークプレイスソリューション事業も複合機の販売増や為替効果で増収を確保しました。両セグメントともに売上規模を拡大しており、特にリテール分野が全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
リテールソリューション事業 3,109億円 3,335億円
ワークプレイスソリューション事業 2,373億円 2,435億円
連結(合計) 5,481億円 5,770億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金を返済しつつ、投資も行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 194億円 249億円
投資CF -161億円 -100億円
財務CF -36億円 -57億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ともにつくる、つぎをつくる。~いつでもどこでもお客様とともに~」という経営理念のもと、新しい価値創造へのこだわりと挑戦を続けています。顧客の期待に応える商品やサービスの提供を通じ、社会課題の解決に貢献し、グローバルトップのソリューションパートナーとなることを目指しています。

(2) 経営文化


「三つの視点(環境・社会・ガバナンス)」からなる重要課題(マテリアリティ)を特定し、持続可能な社会の実現を目指しています。環境への配慮、高い倫理観と遵法精神、地域社会への責任を重視するほか、人権尊重に関しては「東芝テックグループ人権方針」を定め、バリューチェーン全体での人権リスク低減に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2024~2026年度)を策定していますが、米国関税措置をはじめとする経営環境の変化を踏まえ、目標値の見直しを検討しています。経営目標の達成状況を判断する指標としては、売上高、営業利益、営業利益率(ROS)、親会社株主に帰属する当期純利益、営業CF、ROICを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「基盤事業の収益力強化」「成長事業の領域拡大」「経営変革・人財強化・サステナビリティ強化」に資源を集中します。リテールではグローバルプラットフォーム「ELERA」によるデータビジネス拡大や戦略的パートナーシップを推進。ワークプレイスでは合弁会社エトリアを通じた開発・生産の強化と効率化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「挑戦し続ける強いプロ集団」の形成を目指し、多様な人財の確保と育成に注力しています。キャリア自律支援や社外留職制度、グローバル人財育成研修などを整備するとともに、ダイバーシティ経営を推進。女性役職者比率や新卒女性採用比率などの目標を掲げ、属性に関わらず個々の能力を発揮できる環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.0歳 15.9年 7,859,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 6.2%
男性労働者の育児休業取得率 29.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 71.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 60.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(41.1%)、外国籍従業員(24名)、キャリア採用者(47名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) リテールソリューションの事業環境


大手流通小売業では、セルフレジやソフトウェア・サービスへの投資比重が増加しており、従来型ハードウェアPOSへの投資優先度が低下傾向にあります。市場構造の変化や競合激化により、同社製品の販売に影響が及ぶ可能性があります。

(2) ワークプレイスソリューションの事業環境


働き方の変化に伴い、コア事業であるオフィス向け印刷需要の減少傾向が継続するリスクがあります。複合機の販売台数や保守サービス売上の減少により、同事業の収益が悪化する可能性があります。

(3) 新事業開拓・新商品開発


新技術を活用した事業開発や商品開発に取り組んでいますが、これらには不確実要素が多く含まれます。想定外の事態が発生した場合、先行投資に見合う成果が得られず、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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