東芝テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東芝テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する東芝テックは、POSシステムなどのリテールソリューションと、複合機などのワークプレイスソリューションを主力とする企業です。直近の業績は売上高が微減し、米国関税措置等の影響により営業利益も減少する減収減益となっていますが、収益モデルの転換により事業成長を目指しています。


※本記事は、東芝テックの有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東芝テックってどんな会社?


POSシステムや複合機を中心に、多様なソリューションをグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1950年に東京芝浦電気(現 東芝)から分離独立して設立されました。1994年にテック電子と合併したのち、1999年に現在の東芝テックへと商号変更し、同時に東芝から複写機事業を譲り受けました。2012年にはIBMからグローバルコマースソリューション事業を取得し、リテール分野の事業基盤を大きく強化しています。

現在、連結で15,078名、単体で2,894名の従業員を擁しています。筆頭株主は親会社の東芝であり、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行や証券会社が名を連ねています。「社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出し、グローバルトップのソリューションパートナーへ」を掲げ、事業を変革しています。

氏名 持株比率
東芝 50.21%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.04%
モルガン・スタンレーMUFG証券 5.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長は錦織弘信氏が務めています。取締役9名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
錦織弘信 代表取締役社長社長執行役員、指名委員会委員、報酬委員会委員 1980年富士通入社。東芝などを経て、2020年4月に同社副社長執行役員に就任。同年6月より現職。
大西泰樹 取締役専務執行役員、社長補佐、経営企画担当、リテール・ソリューション事業本部長、指名委員会委員、報酬委員会委員 1987年同社入社。リテール・ソリューション事業本部関西支社長などを経て、2025年6月より現職。
湯沢正志 取締役常務執行役員、社長補佐、新規事業担当、全社海外事業責任者 1983年富士通入社。東芝などを経て、2020年7月に同社入社。2024年4月より現職。
谷尚史 取締役常務執行役員、財務統括責任者(CFO)、内部管理体制推進担当、財務部長 1987年東芝入社。東芝インフラシステムズ取締役などを経て、2023年6月より現職。
三原隆正 取締役(非常勤) 1991年東芝入社。東芝アジアパシフィック社総務責任者などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、桑原道夫(元ダイエー社長・特別委員長・指名委員長)、青木美保(元日本アムウェイ副社長・報酬委員長)、梅葉芳弘(元三菱ケミカル取締役)、永濱光弘(元みずほコーポレート銀行副頭取)です。

2. 事業内容


同社グループは、「リテールソリューション事業」および「ワークプレイスソリューション事業」の報告セグメントを展開しています。

リテールソリューション事業


国内および海外市場向けのPOSシステムをはじめ、国内向けの複合機やオートIDシステムなどの開発・製造・販売から保守サービスまでを包括的に提供しています。近年では、セルフレジやスマートレシートの拡販に加え、画像認識AIを活用した小売店舗向けのDX支援ソリューションの展開を推進し、顧客の省人化・効率化ニーズに対応しています。

収益源は、流通小売業などの顧客に対するハードウェア機器の販売代金と、保守サービス契約に基づくサービス料金です。国内では自社および代理店を通じて、海外では子会社や代理店を経由して製品を販売しています。事業の運営は同社および東芝グローバルコマースソリューションなどの子会社が担っています。

ワークプレイスソリューション事業


海外市場向けに複合機やオートIDシステム、ならびにそれらの関連商品や保守サービスの提供を行っています。オフィスのDX推進に伴うデジタル化ニーズに対応し、プリント機器の提供にとどまらず、クラウドベースのドキュメントワークフロー自動化など、高付加価値なオフィスソリューションの展開を進めています。

収益源は、海外の顧客への複合機などハードウェアの販売代金と、製品導入後に継続的に発生するアフターサービス料金です。機器の販売のみならず、保守などのサービスを通じた安定的な収益基盤を有しています。事業運営は、東芝アメリカビジネスソリューションなどの海外子会社が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は4,400億円台から5,700億円台まで順調に拡大していましたが、直近では微減となっています。経常利益も180億円規模まで成長したものの、当期は米国関税措置による市況悪化等の影響で106億円へと減少しています。当期利益は投資有価証券評価損等の特別損失計上により赤字となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,453億円 5,108億円 5,481億円 5,770億円 5,693億円
経常利益 102億円 131億円 110億円 183億円 106億円
利益率(%) 2.3% 2.6% 2.0% 3.2% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 -81億円 90億円 136億円 -121億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で微減となっており、それに伴い売上総利益も減少しています。製品価格の改定や生産拠点の最適化などの施策を進めたものの、売上総利益率および営業利益率はいずれも前年から低下しており、米国関税措置等に伴う影響を補えず、全体として収益性の改善が課題となる状況がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,770億円 5,693億円
売上総利益 2,278億円 2,174億円
売上総利益率(%) 39.5% 38.2%
営業利益 203億円 143億円
営業利益率(%) 3.5% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与等が1,027億円(構成比51%)、研究開発費が198億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


リテールソリューション事業は国内市場向けのPOSシステムなどが好調に推移し、売上を微増させています。一方でワークプレイスソリューション事業は、ペーパーレス化の進展や米州での複合機の販売減少などにより売上が低下しており、全体として事業環境の厳しさが反映されています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
リテールソリューション事業 3,467億円 3,476億円
ワークプレイスソリューション事業 2,304億円 2,217億円
連結(合計) 5,770億円 5,693億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 249億円 43億円
投資CF -100億円 -114億円
財務CF -57億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も26.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ともにつくる、つぎをつくる。~いつでもどこでもお客様とともに~」という経営理念を掲げています。社会の一員として持続可能な社会の実現を目指し、事業活動を通じて環境への配慮や高い倫理観を重視し、お客様への価値創造を原点とした経営により、持続的な企業価値の向上を図ることを使命としています。

(2) 企業文化


経営理念を具現化するため、行動指針を実践する企業文化を醸成しています。「社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出し、グローバルトップのソリューションパートナーへ」というスローガンの下、新しい価値創造へのこだわりと挑戦を続ける風土が根付いています。ステークホルダーとの約束の実現を重視し、高い倫理観と遵法の精神を持って行動しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、基礎収益力の向上と事業転換を並行して進める「中期経営計画(2026~2028年度)」を推進しています。高収益・成長モデルの確立に向けて基盤整備に取り組み、最終年度となる2028年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

・売上高:5,800億円
・営業利益:380億円
・営業利益率(ROS):6.6%
・親会社株主に帰属する当期純利益:210億円
・投下資本利益率(ROIC):16%

(4) 成長戦略と重点施策


「共創による新たな価値の創出」を中核に据え、グローバルに展開する顧客基盤と販売・保守網のタッチポイントを起点に、社会課題解決に貢献する新たなサービスや付加価値の創出を推進します。リテール分野ではグローバルリテールプラットフォーム「ELERA」を軸としたリカーリング型収益モデルへの転換を加速し、ワークプレイス分野では複合機の開発改革やオフィスソリューション販売の強化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画に基づき、「人財育成」「採用強化」「ダイバーシティ推進」の3本柱を人財戦略として掲げています。事業を牽引する経営幹部やグローバル人財、ソフトウェア人財の育成に注力するとともに、グローバル総合職の新設や専門スキルを持つキャリア採用を強化しています。多様な人財が能力を発揮できるよう、メリハリのある人事処遇制度や柔軟な働き方支援を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.7歳 15.0年 8,044,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.7%
男性育児休業取得率 56.9%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 64.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(35.4%)、外国籍従業員(26名)、キャリア採用者(33名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) リテールソリューションの事業環境


流通小売業においてセルフレジ等の店舗従業員との接触を抑えた機器やソフトウェア・サービス分野への投資比重が増加しており、従来型のハードウェアPOSへの投資優先度が低下するリスクがあります。独立系ソフトウェアメーカーや大手ベンダーとの競争激化により、同社製品の販売に影響が及ぶ可能性があります。

(2) ワークプレイスソリューションの事業環境


働き方の変化やペーパーレス化の進展により、同社のコア事業であるオフィス領域における需要減少傾向が継続するリスクがあります。このリスクが顕在化した場合、複合機の販売台数の減少や保守サービスの売上減少等により、当該事業の収益が悪化する可能性があります。

(3) 情報セキュリティ


同社は技術情報や営業情報、個人情報など事業遂行に関連する多数の情報を保有しています。サイバー攻撃が高度化・巧妙化する中で、情報システムの監視強化等の対策を講じていますが、未知の脆弱性や人的ミス等により情報が流出する可能性があります。この対応に伴う多額の費用負担や企業の信頼低下が業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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