カシオ計算機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カシオ計算機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カシオ計算機は、東京証券取引所プライム市場に上場し、G-SHOCKを中心とした時計や関数電卓などのコンシューマ向け製品の開発・生産・販売をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、時計事業とコンシューマ事業が堅調に推移し増収増益を達成、着実な収益基盤の強化により成長軌道への転換を図っています。


※本記事は、カシオ計算機の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カシオ計算機ってどんな会社?


時計と教育・コンシューマ製品をグローバル展開する電子機器メーカーです。

(1) 会社概要


1946年に樫尾製作所として創業し、1957年に設立されました。1970年に東京証券取引所第二部へ株式を上場、1972年には同第一部へ指定替えを果たしました。1974年に電子腕時計を発売して時計事業へ本格参入し、1980年には電子楽器を発売するなど、独自の技術を活かした電子機器の事業領域を拡大してきました。

現在は連結従業員数8,259名、単体では2,053名の規模を誇ります。大株主の状況としては、筆頭株主が日本マスタートラスト信託銀行で、第2位が日本カストディ銀行、第3位がSMBC信託銀行となっており、上位を資産管理業務等を行う信託銀行が占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 15.83%
日本カストディ銀行 13.05%
SMBC信託銀行 6.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは高野晋氏が務めています。取締役8名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高野晋 代表取締役社長CEO 1984年同社入社。経理部長、執行役員財務統轄部長、取締役執行役員財務統轄部長等を経て、2025年6月より現職。
樫尾和宏 取締役会長 1991年同社入社。執行役員経営統轄部副統轄部長、代表取締役社長CEO等を経て、2025年6月より現職。
田村誠治 取締役執行役員経営統轄部長兼IR担当 1988年同社入社。財務統轄部資金部IR担当部長、執行役員広報・IR担当等を経て、2025年7月より現職。
山口昭彦 取締役監査等委員(常勤) 1979年同社入社。営業本部営業管理部長、営業企画管理部長、BPR企画推進部長を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、数原英一郎(三菱鉛筆代表取締役会長)、倉澤佳子(サステナビリティコンサルタント)、阿部博友(一橋大学名誉教授・指名委員長)、原夏代(公認会計士・報酬委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「時計」「コンシューマ」および「その他」事業を展開しています。

時計

G-SHOCKやCASIO WATCHなどのウオッチ、クロック等の開発・生産・販売を行っています。幅広いラインアップを展開し、若年層から女性、新世代まで多様な顧客層をターゲットにグローバルな市場に製品を提供しています。

製品の販売による収益が主な収益源です。開発・販売は主に同社が担い、主要な生産は山形カシオやカシオ電子(深圳)、Casio(Thailand)など国内外の子会社が行っています。

コンシューマ

電子辞書、関数電卓をはじめとする電卓、電子文具、電子楽器(サウンド事業)などの開発・生産・販売を行っています。教育現場や個人の学習・趣味のニーズに応える製品を提供しています。

製品の販売を主な収益源としています。開発・販売は主に同社が行い、生産は山形カシオやカシオ電子科技(中山)、Casio(Thailand)などの子会社が担っています。

その他

成形部品や金型の製造・販売、グループ会社の独自事業などを展開しています。主に国内の企業顧客等を対象とした事業活動を行っています。

部品や金型の販売などによる収益が中心です。これらの事業は主に山形カシオが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な増減があるものの、概ね拡大傾向にあります。経常利益は減少傾向が続いていましたが、直近の期間では時計事業の好調などにより大幅な増益に転じ、利益率も回復しています。継続的な事業構造改革とコア事業への集中が業績の持ち直しに寄与していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,523億円 2,638億円 2,688億円 2,618億円 2,763億円
経常利益 222億円 196億円 179億円 141億円 257億円
利益率(%) 8.8% 7.4% 6.7% 5.4% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 190億円 226億円 103億円 121億円 161億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益と営業利益も増加しています。特に営業利益は大幅な増益を達成しており、売上総利益率と営業利益率の両方が改善しています。ブランド戦略の奏功による高付加価値化や、固定費の削減などの収益性強化の取り組みが結果として表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,618億円 2,763億円
売上総利益 1,134億円 1,222億円
売上総利益率(%) 43.3% 44.2%
営業利益 142億円 231億円
営業利益率(%) 5.4% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が342億円(構成比35%)、広告宣伝費が140億円(同14%)を占めています。売上原価は1,541億円で、売上高に対する売上原価率は56%となっています。

(3) セグメント収益


主力の時計セグメントが大幅な増収増益を達成し、全体の成長を牽引しています。コンシューマセグメントも関数電卓の堅調な推移により利益が大きく改善しました。一方で、その他セグメントは事業ポートフォリオの整理や不採算事業の構造改革により減収となり、営業赤字が継続しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
時計 1,661億円 1,850億円 203億円 271億円 14.6%
コンシューマ 821億円 821億円 22億円 34億円 4.1%
その他 135億円 92億円 -20億円 -13億円 -14.1%
調整額 -億円 -億円 -62億円 -62億円 -%
連結(合計) 2,618億円 2,763億円 142億円 231億円 8.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ利益で投資を行いながら、借入金の返済や株主還元(配当・自己株式取得)を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 161億円 302億円
投資CF 47億円 -89億円
財務CF -248億円 -174億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「創造 貢献」を掲げています。これは、同社独自の強みを最大限に活かし、時代の変化に合わせて常に新しい文化を創造することで、世の中の役に立ち続けるということを意味しています。この貢献のための創造を通じて、人々の暮らしの中に溶け込み、必要としてくれる人にとって最も大切な存在となるような新しい価値を生み出し続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


パーパスとして「驚きを身近にする力で、ひとりひとりに今日を超える歓びを。」を掲げ、事業活動を通じた価値創造と社会課題の解決を両立させるサステナビリティ経営を推進しています。従業員一人ひとりがパーパス・バリューズを実践し、力を集結させて新たな価値を創造し、社会に提供していくことで、持続可能な地球・社会づくりへの貢献を両輪で実現する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた企業価値極大化を目指し、2027年3月期から2029年3月期の3ヶ年中期経営計画を「持続的成長に向けた基盤確立期」と位置付けています。新たな成長領域におけるイノベーションと経営基盤強化により、「足元の収益性強化」と「中期の成長基盤確立」の両輪の実現を図ります。

* 売上高:3,150億円(2029年3月期)
* 営業利益:350億円(2029年3月期)
* 営業利益率:11.1%(2029年3月期)
* ROE:10%超(2029年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


時計事業では、「G-SHOCK」と「CASIO WATCH」の2軸戦略により収益極大化を図り、成長ポテンシャルの高いエリアでの販売を強化します。EdTech事業では関数電卓の商品開発力強化と教育アプリビジネスの展開を進めます。また、新規事業としてAIペット「Moflin」などでパーソナルウェルビーイング領域での確立を目指し、DX基盤やR&D体制の強化により中長期的な成長を支えます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営を推進しています。「自ら考え行動し、会社の成長発展に貢献する」自律人材の育成を重要課題とし、キャリアサポート制度の充実を図っています。また、多様な人材がパフォーマンスを発揮できる組織を目指したマネジメント強化や、社員の心身の健康を維持・向上させる健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 15.7年 8,384,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 78.7%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.1%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 60.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断再検査受診率(88.7%)、正社員に占めるキャリア研修実施カバー率(60.0%)、ジョブチャレンジ実施延べ経験人数(149人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外国為替および金利の変動リスク

同社は世界各地で製品の生産販売を行っているため、為替レートの変動による影響を受けます。円と対象通貨との為替レート変動が利益に不利益をもたらす可能性があり、また金利変動リスクにも晒されています。これに対し、為替予約取引などの手段を講じて影響の軽減と回避に努めています。

(2) 国際活動および海外進出に関するリスク

同社の生産および製品販売の大部分は日本国外で行われているため、事業や業績は海外の政治経済情勢ならびに法制度に大きく影響されます。予期しない規則や制度の変更、法令の適用など予測が難しい事態に備え、各国の法改正情報や規制動向を継続的に収集・分析し、影響を最小限に抑えるよう適時適切な対応に努めています。

(3) 情報管理に関するリスク

事業の推進に関連して多くの個人情報や機密情報を保有しているため、情報漏洩のリスクが存在します。万が一情報が流出した場合、競争力の低下や顧客および社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。ITセキュリティの継続的な強化、社内規程の整備、従業員教育などを通じて情報管理の強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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