カシオ計算機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カシオ計算機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の電機メーカー。「G-SHOCK」等の時計事業を柱に、教育電卓や楽器などのコンシューマ事業、システム事業等を展開。当連結会計年度は、時計事業で「G-SHOCK」の中高価格帯が好調だった一方、システム事業の一部減収や為替の影響等により、減収増益となりました。


指定されたデータとガイドラインに従い、カシオ計算機株式会社の企業分析記事を作成しました。

カシオ計算機転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態


※本記事は、株式会社カシオ計算機の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カシオ計算機ってどんな会社?


時計、電卓、電子楽器などを展開する電機メーカー。「G-SHOCK」ブランドで世界的な知名度を誇ります。

(1) 会社概要


1957年に設立され、世界初の小型純電気式計算機を商品化しました。1970年に上場し、1972年にはパーソナル電卓「カシオミニ」を発売して市場を確立。1974年に電子腕時計、1980年に電子楽器「カシオトーン」を発売し事業を拡大しました。2022年には東証プライム市場へ移行しています。

同社の連結従業員数は8,801名、単体では2,200名です。筆頭株主は信託銀行で、第2位も信託銀行であり、資産管理業務を行う金融機関が上位を占めています。第3位以降には、創業家一族や関連する財団なども名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 19.39%
日本カストディ銀行 12.30%
SMBC信託銀行 6.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長CEOは増田裕一氏です。取締役会の社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
増田 裕一 代表取締役社長CEO 1978年入社。開発本部時計統轄部長、時計事業部長等を歴任。2023年社長CEO兼CHROを経て、2024年4月より現職。
樫尾 和宏 代表取締役会長 1991年入社。新規事業開発本部長、コンシューマ・システム事業本部長等を歴任。2015年代表取締役社長、2021年社長CEOを経て2023年4月より現職。
高野 晋 取締役常務執行役員CFO 1984年入社。経理部長、執行役員財務統轄部長を経て、2021年4月より現職。
樫尾 哲雄 取締役常務執行役員CS本部長 1992年入社。カシオソフト取締役、執行役員営業本部CS統轄部長、上席執行役員CS本部長等を経て、2021年4月より現職。
山岸 俊之 取締役執行役員コーポレートガバナンス戦略担当 1985年入社。経営統轄部長、ESG戦略担当等を歴任。2022年2月より現職。
山口 昭彦 取締役監査等委員(常勤) 1979年入社。営業本部営業管理部長、営業企画管理部長、BPR企画推進部長を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、尾﨑元規(元花王社長)、数原英一郎(三菱鉛筆会長)、廣田康人(アシックス会長CEO)、阿部博友(一橋大学名誉教授)、千葉通子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「時計」「コンシューマ」「システム」および「その他」事業を展開しています。

(1) 時計


「G-SHOCK」や「OCEANUS」などのウオッチ、クロックを提供しています。機能性とデザイン性を兼ね備えた製品を、一般消費者向けにグローバルに展開しています。

製品の販売による収益が主となります。運営は主にカシオ計算機が行い、製造は山形カシオ株式会社や海外の生産子会社が担当しています。

(2) コンシューマ


関数電卓や実務電卓などの計算機、電子辞書、ラベルライターなどの電子文具、電子ピアノやキーボードなどの電子楽器を提供しています。教育現場や一般家庭、オフィスなど幅広い顧客層を持ちます。

製品の販売による対価を収益としています。運営はカシオ計算機が主体となり、製造・販売においては国内外の関係会社が連携して行っています。

(3) システム


人事・給与・就業管理などのHRソリューションや、中堅・中小企業向けの経営支援システムなどを提供しています。企業の管理部門や経営層が主な顧客です。

システムの導入費用や保守サービス料などを顧客から受け取ります。運営は主にカシオヒューマンシステムズ株式会社等の関係会社が行っています。

(4) その他


金型や成形部品の製造・販売、およびその他の事業を含みます。グループの技術力を活かした製品・サービスを提供しています。

製品や部品の販売による収益を得ています。運営は山形カシオ株式会社などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2,200億円台から2,600億円台で推移しており、2024年3月期にピークを迎えた後、当期は微減となりました。経常利益は2022年3月期をピークに減少傾向にあります。当期利益は変動が見られ、当期は前期から増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,274億円 2,523億円 2,638億円 2,688億円 2,618億円
経常利益 163億円 222億円 196億円 179億円 141億円
利益率(%) 7.2% 8.8% 7.4% 6.7% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 84億円 190億円 226億円 103億円 121億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益率は一定水準を維持しています。営業利益は横ばいで推移しました。コストコントロールにより利益率の低下を抑制している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,688億円 2,618億円
売上総利益 1,161億円 1,134億円
売上総利益率(%) 43.2% 43.3%
営業利益 142億円 142億円
営業利益率(%) 5.3% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が360億円(構成比36%)、広告宣伝費が138億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


時計事業は売上高が微減となりましたが、利益は高水準を維持し、全社利益の大半を稼ぎ出しています。コンシューマ事業は増益となり利益率が改善しました。一方、システム事業とその他事業は営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
時計 1,670億円 1,661億円 209億円 203億円 12.2%
コンシューマ 845億円 821億円 19億円 22億円 2.6%
システム 73億円 64億円 4億円 -4億円 -6.2%
その他 100億円 71億円 -29億円 -16億円 -22.8%
調整額 -50億円 -55億円 -61億円 -62億円 -
連結(合計) 2,688億円 2,618億円 142億円 142億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、バランスシートの効率化によりフリー・キャッシュ・フローの創造に努め、財務安全性を確保しながら手元資金を有効活用することで、中長期的な成長とROEの持続的な向上を図っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少や運転資金の減少等により、前期比で収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出があったものの、投資有価証券の取得及び売却・償還による収入が大幅に増加したことにより、前期は支出だったものが収入に転じました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長短借入れ及び返済による純支出や自己株式の取得、配当金の支払い等により、前期と比較して支出が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 305億円 161億円
投資CF -2億円 47億円
財務CF -218億円 -248億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創造 貢献」を経営理念として掲げています。これは、独自の強みを最大限に活かし、時代の変化に合わせて常に新しい文化を創造することで、世の中の役に立ち続けることを意味しています。人々の暮らしに溶け込み、必要とされる新しい価値を生み出し続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「カシオらしさ」を発揮しながら課題を克服し、持続的な成長を目指しています。これまで成長の推進力となってきた「新たな価値軸の創造」や、経営課題と位置付ける「コアブランドの育成・確立」など、価値創造を推進する姿勢を重視しています。また、健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成にも努めています。

(3) 経営計画・目標


2024年3月期から2026年3月期までの中期経営計画を推進しており、最終年度となる2026年3月期は「変革・イノベーション創造期」と位置付けています。経営上の目標達成状況を判断する指標として、売上高、営業利益、営業利益率、ROEを設定しています。

* 2026年3月期目標:売上高2,700億円
* 2026年3月期目標:営業利益240億円
* 2026年3月期目標:営業利益率8.9%
* 2026年3月期目標:ROE 7~8%水準

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業の再成長と既存アセットを活用した新規事業の創出に取り組んでいます。時計事業では「G-SHOCK」の中高価格帯拡大や直販ECの強化を進め、EdTech事業では関数電卓のユーザー体験向上を図ります。サウンド事業は構造改革と高付加価値化を推進し、新規事業では保有技術を活用して新たな領域を開拓します。また、キャピタルアロケーション方針に基づき、成長投資や株主還元を強化し、資本効率性の改善を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を資本と捉える人的資本経営を推進しており、2030年度までに各事業品目に新たな価値軸となるコアブランドを確立するため、人材戦略を実行しています。「健康経営」「自律人材」「マネジメント強化」を基本コンセプトとし、社員一人ひとりのパフォーマンス向上や、自ら考え行動する自律的なキャリア形成の支援、多様な人材を活かすマネジメント能力の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.9歳 15.9年 8,144,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.8%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用) 68.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断再検査受診率(88.4%)、正社員に占めるキャリア研修実施カバー率(48.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外国為替リスク及び金利リスク


世界各地で製品の生産販売を行っているため、為替レートの変動による影響を受けます。円と対象通貨とのレート変動が利益に影響を与える可能性があります。また、金利変動リスクにも晒されており、営業費用や調達コスト、金融資産・負債の価値に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国際活動及び海外進出に関するリスク


生産・販売の大部分が日本国外で行われているため、海外の政治経済情勢や法整備の影響を受けます。予期しない規則や制度の変更、法令の適用は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に米国の関税率引き上げによる業績への影響が想定されており、価格対応やサプライチェーン対応などの対策が必要となります。

(3) 情報管理に関するリスク


事業に関連して多くの個人情報や機密情報を保有しており、情報漏洩が発生した場合、競争力の低下や信用の失墜を招く可能性があります。2024年10月にはサーバーへのランサムウェア攻撃により情報流出やシステム停止が発生し、事業活動に影響が生じました。これを受け、セキュリティ強化や管理体制の見直し等の再発防止策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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