※本記事は、ファナック株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
ファナックは、ファクトリーオートメーション(FA)の総合サプライヤとして、CNCシステム、レーザ、ロボット、ロボマシンなどの開発、製造、販売、保守サービスをグローバルに展開しています。CNCシステムの技術を基盤とし、自動化による生産システムに貢献しています。
単体従業員数は4,842名、連結従業員数は10,040名です。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
ファナックは、産業用ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)機器で世界をリードする企業です。同社グループは、技術革新を追求する環境で、専門性を高めながら長期的にキャリアを築くことを重視しています。安定した事業基盤のもと、グローバルな事業展開も特徴の一つです。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
ファナックでは、従業員の平均年齢が40.0歳、平均勤続年数が15.3年となっており、長期にわたってキャリアを形成する従業員が多い傾向が見られます。これは、同社が安定した環境を提供し、従業員が腰を据えて働き続けられる職場であることを示しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 11,444,000円 |
| 平均勤続年数 | 15.3年 |
| 平均年齢 | 40.0歳 |
| 単体従業員数 | 4,842人 |
| 連結従業員数 | 10,040人 |
| 単体のグループ内比率 | 48.2% |
ファナックは、退職給付制度として確定給付型と確定拠出型の両方を採用しています。確定給付型は給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度であり、確定拠出型は会社が拠出した資金を従業員が運用する制度です。この制度は、同社および国内連結子会社に適用され、一部の海外子会社でも確定給付型および確定拠出型の制度が設けられています。退職一時金制度も設けられています。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。直近の退職給付債務は1,592億円、年金資産は1,403億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
ファナックグループは、中長期的な成長において人材を最重要であると位置付けています。社員がより働きやすい職場の実現やエンゲージメントの一層の向上を重要課題として取り組んでいます。
給与その他の給付については、優れた人材の確保・育成および社員の働きがいの向上を図る観点から、職務内容や役割、そのもとで発揮された価値、専門性等を総合的に勘案し決定することを基本方針としています。将来を見据えた必要な人材の採用や社員の育成強化のための人的資本への投資を積極的に行い、継続的に人的資本の充実を図る方針です。
また、人材の多様性を受け入れ、価値観等の個性を互いに尊重し、各社員が多様な能力を発揮できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンをグループ全体で推進しています。社員を技術革新と価値創造の原動力となる人的財産と考え、一人ひとりの健康と成長を支援し、安全・安心のもと、やりがいを持って自己実現を図る環境を整えることに注力しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 94.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 40.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 42.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) | 47.5% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ ファナックパートロニクス
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 11.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 79.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) | 93.8% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
ファナックは、ファクトリーオートメーション(FA)の総合的なサプライヤとして、CNCシステムとその応用商品の開発、製造、販売、保守サービスを主な事業としています。自動化による生産システムに使用される製品を提供し、幅広い産業の顧客を支えています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、CNCシステム(CNCおよびサーボモータ)、レーザ、ロボット(ロボットシステムを含む)、ロボマシン(ロボドリル、ロボショット、ロボカット)などを開発、製造、販売しています。これらの製品は、CNCシステムの技術を基盤としており、その用途は自動化による生産システムに幅広く利用されています。
同社グループの事業は、FA部門、ロボット部門、ロボマシン部門、サービス部門の4つの商品部門に分けられます。FA部門ではCNCシステムを工作機械業界向けに提供し、ロボット部門ではロボットシステムを一般産業や自動車産業、EV関連向けに販売しています。ロボマシン部門では小型切削加工機や電動射出成形機、ワイヤ放電加工機などを展開しています。サービス部門は「サービスファースト」の精神のもと、製品の保守サービスや保守契約を提供し、顧客満足度の向上に努めています。
同社グループは、海外での事業展開も広く行っており、米州、欧州、中国、アジア(中国以外)など多岐にわたる地域で売上を上げています。特定の顧客への売上集中も見られ、SHANGHAI-FANUC Robotics CO., LTD.への売上高が全体の10%以上を占めています。世界経済の動向や為替変動、地政学的リスクなどが同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの連結業績は、直近5年間で売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに増加傾向にあります。特に当連結会計年度においては、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも前期から増加しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,330億円 | 8,520億円 | 7,953億円 | 7,971億円 | 8,578億円 |
| 経常利益 | 2,134億円 | 2,313億円 | 1,818億円 | 1,967億円 | 2,275億円 |
| 経常利益率 | 29.1% | 27.2% | 22.9% | 24.7% | 26.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,553億円 | 1,706億円 | 1,332億円 | 1,476億円 | 1,665億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 161.90 | 178.55 | 140.23 | 157.31 | 178.47 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は前期から増加し、従業員1人あたり営業利益(連結)も同様に増加しています。これらの指標の改善は、同社グループの収益体質が強化され、組織全体の生産性が向上している傾向を示しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 78.8百万円 | 85.4百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 15.7百万円 | 18.3百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
ファナックは、安定した財務基盤を築き、事業活動で得た資金を将来の成長に投資しながらも、手元資金を厚くしている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループは、高い自己資本比率を維持しており、プライム市場平均(製造業46.8%)を大きく上回る水準にあります。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均(9.4%)に近い水準で推移しています。手元資金も潤沢であり、外部環境の変化に対する耐性が強く、安定した事業運営の基盤を示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1兆7,399億円 | 1兆8,829億円 |
| 自己資本比率 | 89.0% | 89.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 8.6% | 9.3% |
| 現金及び預金 | 5,905億円 | 7,181億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループは、本業の事業活動で安定的に資金を生み出しています。営業活動の結果得られた資金は、主に棚卸資産の増減額が減少したことにより、前期から減少しています。投資活動では、主に定期預金の払戻によるもので、前期より使用した資金が減少しています。財務活動では、主に自己株式の取得による支出の減少により、前期より使用した資金が減少しています。これらの資金の流れは、同社グループが安定した事業運営を継続し、将来の成長に向けた投資と株主還元を両立していることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 2,553億円 | 2,509億円 |
| 投資CF | △1,341億円 | △564億円 |
| 財務CF | △1,366億円 | △986億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 1,212億円 | 1,945億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、新興国企業の技術力向上やIoTシステム連携を含めた競争への変化、新技術の台頭による競争力低下のリスクを認識しています。また、海外市場における売上高の割合が大きく、各国政府による安全保障貿易管理や経済安全保障政策、輸入関税率の引き上げなどが事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、外部環境の変化による競争激化の中で、優れた人材の確保・育成が遅れたり、優秀な人材が流出したりする場合に競争力が低下するリスクを認識しています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ファナックは、製造業のオートメーションを一貫して追求し、技術で勝負する企業像を目指しています。基本理念として「厳密と透明」を掲げ、企業の永続性と健全性を追求する文化を大切にしています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
ファナックは1956年に日本で民間初のNCとサーボ機構の開発に成功して以来、一貫して製造業のオートメーションを追求しています。創業期から「技術で勝負する企業」を目指し、産業のオートメーションに経営資源を集中する「狭い路」を歩むことを経営方針としています。
基本理念は「厳密と透明」であり、企業の永続性と健全性を重視しています。FA、ロボット、ロボマシンの3事業を展開し、最新技術を適用することで顧客の効率的な商品利用を支援しています。生産財のサプライヤとして保守サービスを継続提供し、産業のオートメーション推進を通じて社会貢献と着実な成長を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
ファナックは基本理念「厳密と透明」のもと、企業の永続性と健全性を追求する文化を大切にしています。「one FANUC」をスローガンに、FA、ロボット、ロボマシンの各事業とサービスが一体となり、お客様へトータルソリューションを提供しています。
また、「サービスファースト」を掲げ、グローバルスタンダードに基づく高度なサービス提供を通じて顧客の稼働率向上を実現しています。品質向上を全プロセスで推進し、安全性や信頼性の向上に取り組むとともに、顧客志向の先進技術開発に注力しています。サプライチェーンの強化や人的資本の充実、ダイバーシティ&インクルージョンも重視し、同社グループ全体で持続的成長を目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
ファナックは、地政学的リスクや景気減速の懸念が続く経営環境において、長期的な視点での経営を継続しています。対処すべき課題として、まず品質の向上を全プロセスで推進し、商品の安全性、法令規格遵守、信頼性の向上に取り組んでいます。
また、生産財のサプライヤとして供給責任を果たすため、生産・サービス拠点の複数化やサプライチェーンの強化を進めています。人的資本の充実も重要課題であり、社員の働きがい向上やエンゲージメント強化、人材の多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進し、組織強化と持続的成長を目指しています。さらに、「未来に残そう、自然と資源」をスローガンに環境対応も強化し、ガバナンスの一層の強化にも努めています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
ファナックは監査等委員会設置会社であり、取締役会と監査等委員会が設置されています。独立社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会も設けられ、客観性と透明性を確保したガバナンス体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
ファナックの株主構成を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、株式会社日本カストディ銀行(信託口)も上位に位置しています。複数の信託銀行が上位株主として名を連ねており、機関投資家が同社グループの主要な株主を占めていることが特徴です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 23.41% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 10.32% |
| シティバンク エヌエイ エヌワイ アズ ディポジタリー バンク フォー ディポジタリー シェアホルダーズ(常任代理人シティバンク エヌ・エイ東京支店) | 2.97% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 | 2.25% |
| ジェーピー モルガン チェース バンク 380055 | 2.05% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性7名・女性3名)で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長 兼 CEOは山口賢治氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山口 賢治 | 代表取締役社長 兼 CEO | 1993年同社入社。専務取締役、取締役副社長、代表取締役副社長を経て、2019年4月より代表取締役社長 兼 CEOに就任し現職。 |
| 流石 柳二 | 取締役常務執行役員 兼 CFO経理・営繕本部長 兼 秘書部長 | 1992年同社入社。ファナック ヨーロッパ ゲーエムベーハー取締役、ファナック ヨーロッパ コーポレーション取締役兼CFO等を経て、2015年同社再入社。2023年6月より取締役常務執行役員 兼 CFOに就任し現職。 |
| マイケルジェイ チコ | 取締役ファナック アメリカ コーポレーション取締役社長 兼 CEO | 1999年ファナック アメリカ コーポレーション入社。同社取締役社長 兼 CEOを経て、2020年6月より同社取締役に就任し現職。 |
社外取締役は、山崎直子氏(Vast Japan合同会社ゼネラルマネージャー・指名・報酬委員会委員長)、魚住弘人氏(原子力エネルギー協議会理事長・監査等委員会委員長)、武田洋子氏(株式会社三菱総合研究所常務研究理事・指名・報酬委員会委員)、横井秀俊氏(東京大学名誉教授・監査等委員会委員長)、富田美栄子氏(西綜合法律事務所代表・指名・報酬委員会委員)、五十島滋夫氏(五十島公認会計士事務所代表・監査等委員会委員)です。
同社は監査等委員会設置会社です。取締役会は取締役10名(うち社外取締役6名)で構成され、監査等委員である取締役4名(うち社外取締役3名)から成る監査等委員会が置かれています。社外取締役6名全員が東京証券取引所の定める独立役員として届け出ています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
ファナックの取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬は、固定報酬、業績連動報酬、株式報酬(譲渡制限付株式)の3つの要素で構成されています。これらの支給割合は、役位や職責、業績を総合的に考慮し、短期的および中長期的な企業価値向上への貢献を評価する仕組みです。業績連動報酬は親会社株主に帰属する当期純利益に連動することを基本とし、非財務指標も評価基準に含められています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 4名 | 7.3億円 | 1.84億円 |
| 社外取締役(監査等委員を除く) | 3名 | 57百万円 | 19.0百万円 |
| 監査等委員(社外除く) | 1名 | 48百万円 | 48.0百万円 |
| 社外取締役(監査等委員) | 3名 | 57百万円 | 19.0百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
個人別報酬が開示されている役員は、稲葉善治氏(1.83億円)、山口賢治氏(3.66億円)、流石柳二氏(1.40億円)、マイケルジェイチコ氏(4.20億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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