ファナック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファナック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。主要事業はファクトリーオートメーション(FA)、ロボット、ロボマシンの開発・製造・販売。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.2%増の7,971億円、経常利益が8.2%増の1,967億円、親会社株主に帰属する当期純利益が10.8%増の1,476億円となり、増収増益でした。


※本記事は、ファナック株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファナックってどんな会社?


工場の自動化(FA)を追求し、NC装置や産業用ロボットで世界的なシェアを持つFAの総合サプライヤです。

(1) 会社概要


同社は1972年、富士通のNC部門が分離独立して設立されました。1976年に東証二部へ上場し、1983年には東証一部(現プライム)へ指定替えしました。1982年に現在の社名に変更し、1984年には本社を山梨県忍野村へ移転しました。その後も国内外に拠点を拡大し、2016年には壬生工場、2018年には筑波工場で新ロボット工場を稼働させています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結10,113名、単体4,793名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行です。上位株主は主に信託銀行や海外の金融機関によって構成されています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 23.97%
日本カストディ銀行(信託口) 10.38%
シティバンク エヌエイ エヌワイ アズ ディポジタリー バンク フォー ディポジタリー シェアホルダーズ(常任代理人シティバンク エヌ・エイ東京支店) 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長 兼 CEOは山口賢治氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 賢治 代表取締役社長 兼 CEO 1993年同社入社。専務取締役、取締役副社長、代表取締役副社長、代表取締役社長 兼 COOを経て、2019年4月より現職。
稲葉 善治 取締役会長 1973年いすゞ自動車入社。1983年同社入社。代表取締役社長、代表取締役会長 兼 CEO、代表取締役会長を経て、2023年6月より現職。
流石 柳二 取締役常務執行役員 兼 CFO経理・営繕本部長兼 秘書部長 1992年同社入社。LIXILを経て2015年再入社。執行役員、経理本部長、常務執行役員 兼 CFOを経て、2023年6月より現職。
マイケルジェイ チコ 取締役ファナック アメリカ コーポレーション取締役社長兼 CEO 1999年ファナック アメリカ コーポレーション入社。同社取締役社長 兼 COO、同社執行役員、常務執行役員を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、山崎直子(宇宙飛行士)、魚住弘人(元日立GEニュークリア・エナジー取締役会長)、武田洋子(三菱総合研究所研究理事)、横井秀俊(東京大学名誉教授)、富田美栄子(西綜合法律事務所代表)、五十島滋夫(五十島公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「FA部門」「ロボット部門」「ロボマシン部門」および「サービス部門」事業を展開しています。

(1) FA部門


工作機械の制御を司るCNCシステム(CNCおよびサーボモータ)やレーザ発振器などの基本技術製品を開発・製造しています。主な顧客は国内外の工作機械メーカーや産業機械メーカーであり、工場の自動化システムの中核として利用されています。

収益は、これらの製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主にファナック(親会社)および海外の販売子会社(FANUC America Corporation、FANUC Europe Corporation等)が行っています。

(2) ロボット部門


工場での溶接、ハンドリング、組立、塗装などを行う産業用ロボットやロボットシステムを開発・製造しています。自動車産業をはじめとする幅広い製造業の顧客に対し、生産効率向上や省人化のための自動化ソリューションを提供しています。

収益は、ロボット本体やシステムの販売代金として顧客から受け取ります。運営はファナック(親会社)のほか、米州・欧州・アジアの各地域統括会社や中国の合弁会社などが担当しています。

(3) ロボマシン部門


小型切削加工機(ロボドリル)、電動射出成形機(ロボショット)、ワイヤ放電加工機(ロボカット)などの機械製品を開発・製造しています。スマートフォン部品や自動車部品、精密機器部品などの加工を行う製造業の顧客に向けて販売されています。

収益は、これらの機械製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営はファナック(親会社)や海外子会社に加え、中国ではSHANGHAI-FANUC ROBOMACHINE CO., LTD.などが担当しています。

(4) サービス部門


同社製品を利用する顧客に対し、保守サービスや保守契約を提供しています。「生涯保守」を掲げ、顧客が同社製品を使用し続ける限り保守を提供する体制を整えています。

収益は、スポットでの保守サービス料や、期間契約に基づく保守契約料として顧客から受け取ります。運営はファナック(親会社)および世界各国のサービス拠点を持つグループ会社全体で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間の推移を見ると、売上高は2021年3月期の5,513億円から2023年3月期の8,520億円まで拡大しましたが、直近2期は約7,900億円台で推移しています。利益面では、2023年3月期に高い利益水準を記録した後、2024年3月期に一旦減少しましたが、2025年3月期は再び増益に転じています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,513億円 7,330億円 8,520億円 7,953億円 7,971億円
経常利益 1,287億円 2,134億円 2,313億円 1,818億円 1,967億円
利益率(%) 23.4% 29.1% 27.2% 22.9% 24.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 940億円 1,553億円 1,706億円 1,332億円 1,476億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から微増となりましたが、売上原価の減少により売上総利益が増加しました。売上総利益率は34.7%から37.0%へ改善しています。販売費及び一般管理費は若干増加しましたが、売上総利益の増加が上回り、営業利益は前期比で増加し、営業利益率も改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7,953億円 7,971億円
売上総利益 2,758億円 2,949億円
売上総利益率(%) 34.7% 37.0%
営業利益 1,419億円 1,588億円
営業利益率(%) 17.8% 19.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が433億円(構成比32%)、荷造費及び運賃が138億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


各部門の売上高を見ると、FA部門はインドや中国での需要が堅調で増加しました。一方、ロボット部門は欧米や中国での需要低迷により減少しました。ロボマシン部門は中国市場等が堅調で大幅に増加し、サービス部門も体制強化により微増となりました。全体としては微増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
FA 1,804億円 1,948億円
ロボット 3,809億円 3,296億円
ロボマシン 1,034億円 1,376億円
サービス 1,306億円 1,352億円
連結(合計) 7,953億円 7,971億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業である営業活動から得た豊富な資金により、自己株式の取得などの財務活動を行い、定期預金への預入などの投資活動も実施しています。無借金経営を基本としており、手元資金も潤沢です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,718億円 2,553億円
投資CF -136億円 -1,341億円
財務CF -1,225億円 -1,366億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.0%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは基本理念として「厳密と透明」を掲げています。これは、企業の永続性と健全性は「厳密」から生まれ、組織の腐敗や衰退は「不透明」から始まるという考えに基づいています。技術で勝負し、工場の自動化を追求する企業として、「狭い路」を真っ直ぐに歩むことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「one FANUC」を合言葉に、グループ一体となってトータルソリューションの提供や世界中の顧客対応を行っています。また、「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」製品開発や、顧客が製品を使用し続ける限り保守を行う「生涯保守」という「サービスファースト」の精神を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は短期的な事象に左右されない長期的視点に立った経営を行っており、市場シェアや利益率、ROEなどを総合的に判断しています。また、資本コストを的確に把握し、5年平均でのエクイティ・スプレッド(ROEと資本コストの差)をプラスとすることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


工場の自動化分野に絞り込んで研究開発投資を積極的に行い、競争力の高い商品を開発します。特に、IoT・AI技術を全分野に適用し、生産効率化を推進します。また、サプライチェーンの強化や、生産・サービス拠点の複数化に取り組み、いかなる場合も供給責任を果たす体制を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最重要と捉え、働きやすい職場の実現とモチベーション向上に取り組みます。必要な人材の採用や育成強化のため人的資本へ積極的に投資し、多様な人材の活躍を推進しています。また、社員の健康と成長を支援し、やりがいを持って自己実現できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.9歳 15.0年 11,639,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 38.7%
男女賃金差異(正規雇用) 41.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(7.8%)、女性幹部社員比率(2.8%)、育休後復職率(100%)、年次休暇取得率(84.9%)、定期健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 戦争に関するリスク


海外売上高比率が高い同社にとって、アジア、欧州、米州などの主要市場で戦争が発生した場合、販売市場やサプライチェーン、物流等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。また、社員の安全確保も重要な課題となります。

(2) 自然災害に関するリスク


研究開発部門や工場が本社地区(山梨県)に集中しているため、大地震や富士山の噴火等が発生した場合、被害が甚大になる可能性があります。これに対し、壬生工場や筑波工場の新設・拡充による生産拠点の複数化や、サービス拠点の分散化などの対策を進めています。

(3) サイバーセキュリティに関するリスク


サイバー攻撃により、生産設備への被害や秘密情報の流出、IoT関連商品を通じた顧客設備への被害などが生じる可能性があります。これに対し、CISOの任命やCSIRT、SOCの設置、PSIRTの運用など、対応体制の強化を進めています。

(4) 競争力低下に関するリスク


新興国企業の台頭や技術革新、市場ニーズの変化に対応できない場合、競争優位性が失われる可能性があります。将来を見据えた研究開発の強化や、自動化・ロボット化の推進により競争力の維持・強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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