ファナック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファナック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファナックは東京証券取引所プライム市場に上場し、ファクトリーオートメーション(FA)の総合サプライヤとしてCNCシステムやロボット等の開発・製造・販売を展開しています。直近の業績は、売上高8,578億円(前期比7.6%増)、経常利益2,275億円(前期比15.6%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、ファナックの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファナックってどんな会社?


工場自動化に不可欠なCNCシステムとロボットの開発・製造・販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1972年に富士通からNC部門が分離し設立されました。1976年に東証二部に上場し、1983年に東証一部に上場しました。1984年に山梨県忍野村へ本店を移転し電動射出成形機を開発するなど事業を拡大しています。直近では2016年に壬生工場、2018年に筑波で新ロボット工場を建設し、生産体制をさらに拡充しています。

従業員数は連結で10,040名、単体で4,842名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も資産管理業務を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 23.41%
日本カストディ銀行(信託口) 10.32%
シティバンク エヌエイ エヌワイ アズ ディポジタリー バンク フォー ディポジタリー シェアホルダーズ 2.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長 兼 CEOは山口賢治氏が務めています。社外取締役の比率は60%となっています。

氏名 役職 主な経歴
山口賢治 代表取締役社長 兼 CEO 1993年同社入社。専務取締役、取締役副社長、代表取締役副社長、代表取締役社長 兼 COOを経て、2019年4月より現職。
マイケルジェイ チコ 取締役ファナック アメリカ コーポレーション取締役社長兼 CEO 1999年ファナックアメリカコーポレーション入社。同社バイスプレジデント等を経て、2016年7月より同社取締役社長 兼 CEO。2020年6月より同社取締役。
流石柳二 取締役常務執行役員 兼 CFO経理・営繕本部長兼 秘書部長 1992年同社入社。LIXIL等を経て2015年同社再入社。秘書部長、経理本部長等を経て、2023年6月より現職。
岡田俊哉 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。法務部長、専務取締役、取締役専務執行役員等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、山崎直子(Vast Japan合同会社ゼネラルマネージャー)、魚住弘人(原子力エネルギー協議会理事長)、武田洋子(三菱総合研究所常務研究理事)、横井秀俊(東京大学名誉教授)、富田美栄子(西綜合法律事務所代表)、五十島滋夫(五十島公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「FA部門」「ロボット部門」「ロボマシン部門」「サービス部門」の事業を展開しています。

(1) FA部門


工作機械などの自動化による生産システムに使用されるCNCシステム(CNCおよびサーボモータ)とレーザの開発、製造、販売を行っています。主な顧客は工作機械メーカーなどです。

製品を顧客に引き渡し、検収を受けた時点で収益を得るモデルです。事業の運営は、ファナックのほか、ファナックアメリカコーポレーション、ファナックヨーロッパコーポレーションなどの各地域の現地法人が行っています。

(2) ロボット部門


自動化生産システムに組み込まれるロボットおよびロボットシステムの開発、製造、販売を行っています。自動車産業や一般産業、EV関連企業などが主要顧客です。

ロボット単体の販売に加え、ロボットシステムの製造・販売において、契約で合意したマイルストーンの達成状況に応じて一定期間にわたり収益を得ています。運営は同社やファナックアメリカコーポレーションなどの現地法人が担っています。

(3) ロボマシン部門


ロボドリル(小型切削加工機)、ロボショット(電動射出成形機)、ロボカット(ワイヤ放電加工機)の開発、製造、販売を行っています。

機械設備の製品販売により、顧客の検収完了時に収益を得るモデルです。事業の運営は、同社のほかファナックアメリカコーポレーション、上海ファナックロボマシンなどの現地法人が担っています。

(4) サービス部門


同社製品を継続的に利用できるようにするための保守サービスおよび保守契約の提供を行っています。

実施した保守サービスが顧客に検収された時点、または保守契約期間にわたる均等な収益認識により対価を受け取っています。事業運営は同社や各地域の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は7,000億円から8,500億円規模で推移しており、直近では8,578億円へと成長しています。経常利益も概ね20%を超える高い水準を維持しており、安定した収益力を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,330億円 8,520億円 7,953億円 7,971億円 8,578億円
経常利益 2,134億円 2,313億円 1,818億円 1,967億円 2,275億円
利益率(%) 29.1% 27.2% 22.9% 24.7% 26.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,221億円 1,906億円 1,033億円 1,274億円 1,605億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も拡大しています。売上総利益率は38.3%、営業利益率は21.4%と、高い付加価値を創出する事業構造であることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,971億円 8,578億円
売上総利益 2,949億円 3,285億円
売上総利益率(%) 37.0% 38.3%
営業利益 1,588億円 1,838億円
営業利益率(%) 19.9% 21.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が449億円(構成比31.0%)、荷造費及び運賃が168億円(同11.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


各部門ともに前期から売上を伸ばしており、特にロボット部門の売上高が全体の44.1%を占める最大の事業に成長しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
FA部門 1,948億円 2,085億円
ロボット部門 3,296億円 3,786億円
ロボマシン部門 1,376億円 1,296億円
サービス部門 1,352億円 1,411億円
連結(合計) 7,971億円 8,578億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で十分なキャッシュを創出し、それをもとに投資活動と借入金の返済などの財務活動を手元資金で賄っている健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2,553億円 2,509億円
投資CF -1,341億円 -564億円
財務CF -1,366億円 -986億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


基本理念として「厳密と透明」を掲げています。企業の永続性、健全性は厳密から生まれ、組織の腐敗、企業の衰退は不透明から始まるという考えのもと、産業のオートメーションに経営資源を集中し、社会に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「one FANUC」をスローガンに、FA、ロボット、ロボマシンとサービスが一体となり、顧客にトータルソリューションを提供する文化があります。また、「サービスファースト」を掲げ、世界中のどこででもグローバルスタンダードに基づく高度なサービスを提供しています。

(3) 経営計画・目標


営業利益率、経常利益率、ROEなどに加えて、市場シェアも重要な経営指標と捉え、総合的に判断して経営を行っています。資本コストを的確に把握し、ROEの向上に努めつつ、成長投資を積極的に行い企業価値の向上を図る目標を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


顧客のダウンタイムを最小にして稼働率向上を図るため、「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」商品の開発に注力しています。また、最新の制御・デジタル・IoT・AI技術を全分野に積極的に適用し、熟練労働者不足に対応する使いやすい商品の開発を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中長期的な成長のためには人材が最重要であると位置づけ、働きやすい職場の実現とエンゲージメントの一層の向上に取り組んでいます。また、人材の多様性を受け入れ、個性を尊重するダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、組織の強化と持続的成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 15.3年 11,444,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育休取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 40.0%
男女賃金差異(正規雇用) 42.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 47.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育休後復職率(100.0%)、年次休暇取得率(88.7%)、定期健康診断受診率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 戦争に関するリスク


海外市場での売上比率が高いため、アジア、欧州、米州など市場規模が大きな地域で戦争が発生した場合、販売市場やサプライチェーン、物流等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) サイバーセキュリティに関するリスク


AIを利用した高度なサイバー攻撃により、生産設備等が被害を受け生産に影響が生じる可能性や、秘密情報が流出する可能性があります。また、IoT商品を通じて顧客設備に被害が生じるリスクがあります。

(3) 競争力低下に関するリスク


新興国企業の技術力向上や、IoTシステム連携などの市場ニーズの多様化、新技術の台頭といった外部環境の変化に柔軟に対応できない場合、商品の競争力における優位性が失われる可能性があります。

(4) 各国の政策、法規制に関するリスク


日本を含む各国政府の安全保障貿易管理や経済安全保障政策の変更により、商品の販売やサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。また、保護主義による関税引き上げ等もリスクとなります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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