※本記事は、株式会社アドバンテスト の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. アドバンテストってどんな会社?
半導体製造工程に不可欠なテストシステムの世界的大手メーカー。AIや5Gなど先端技術の進化を支えています。
■(1) 会社概要
1954年にタケダ理研工業として設立され、電子計測器の製造を開始しました。1983年に東証第二部へ上場し、1985年には東証第一部へ指定替えとなると同時に、現社名のアドバンテストへ変更しました。2011年にはVerigy Ltd.を完全子会社化し事業を拡大。2022年の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は7,001名、単体では1,988名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家が高い比率を占めています。第3位は香港上海銀行の関連名義です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 30.98% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 13.37% |
| HSBC HONG KONG-TREASURY SERVICES A/C ASIAN EQUITIES DERIVATIVES | 2.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表者は代表取締役兼経営執行役員Group CEOのDouglas Lefever氏と、代表取締役兼経営執行役員社長Group COOの津久井幸一氏です。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| Douglas Lefever | 代表取締役兼経営執行役員Group CEO | 1998年Advantest America, Inc.入社。同社CEO等を経て、2024年4月より当社代表取締役兼経営執行役員Group CEO。2025年4月より現職。 |
| 津久井 幸一 | 代表取締役兼経営執行役員社長Group COO | 1987年入社。執行役員、常務執行役員、CTO、副社長等を歴任。2024年4月より代表取締役兼経営執行役員社長。2025年4月よりGroup COOとして現職。 |
| 吉田 芳明 | 取締役会長 | 1999年入社。常務執行役員、専務執行役員を経て、2017年代表取締役兼執行役員社長CEOに就任。2024年4月より現職。 |
| 栗田 優一 | 取締役常勤監査等委員 | 1973年富士通入社。2001年当社入社。執行役員、常務執行役員、専務執行役員を経て、2015年6月より現職。 |
社外取締役は、占部利充(三菱商事元常務執行役員)、Nicholas Benes(会社役員育成機構代表理事)、西田直人(東芝元執行役専務)、住田清芽(元あずさ監査法人パートナー)、中田朋子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体・部品テストシステム事業」、「メカトロニクス関連事業」および「サービス他」事業を展開しています。
■(1) 半導体・部品テストシステム事業部門
半導体や電子部品産業の顧客に対し、テストシステム製品を提供しています。主な製品群には、SoC半導体デバイス向けの「SoCテスト・システム」や、メモリ半導体デバイス向けの「メモリ・テスト・システム」などがあり、これらは半導体の性能や信頼性を検査するために不可欠な装置です。
収益は、主に半導体メーカー等の顧客に対するこれらテストシステムの販売から得ています。生産は同社および外部委託企業が担当し、販売は国内および一部海外を同社が、その他の海外についてはAdvantest America, Inc.やAdvantest Europe GmbH等の現地法人が担当しています。
■(2) メカトロニクス関連事業部門
半導体デバイスをハンドリングする「テスト・ハンドラ」や、被測定物とのインターフェースとなる「デバイス・インタフェース」、およびナノテクノロジー関連製品を提供しています。テスト・ハンドラはテストシステムと組み合わせて使用され、効率的な検査工程を支える重要な役割を担っています。
収益は、これらのメカトロニクス応用製品等の販売から得ています。生産は同社グループおよび複数の外部委託企業が行い、販売活動については半導体・部品テストシステム事業部門と同様に、国内は主に同社が、海外は各地域の現地法人が担当しています。
■(3) サービス他部門
上記事業に関連する総合的な顧客ソリューションの提供を行っています。具体的には、半導体やモジュールのシステムレベルテストソリューション、サポート・サービス、消耗品販売、中古品の販売、および装置リース事業などで構成されています。
収益は、顧客へのソリューション提供、保守・サポートサービスの対価、消耗品や中古品の販売代金、およびリース料等から得ています。事業運営は、同社および各国のグループ会社が連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上収益と利益は半導体市況の影響を受けつつも、全体として拡大傾向にあります。特に2025年3月期は、AI関連の需要増などにより売上収益が大幅に伸長し、税引前利益も過去最高水準に達しました。利益率も高い水準を回復しており、成長性と収益性を兼ね備えた業績推移となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 3,128億円 | 4,169億円 | 5,602億円 | 4,865億円 | 7,797億円 |
| 税引前利益 | 696億円 | 1,163億円 | 1,713億円 | 782億円 | 2,248億円 |
| 利益率(%) | 22.3% | 27.9% | 30.6% | 16.1% | 28.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 698億円 | 873億円 | 1,304億円 | 623億円 | 1,612億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は約1.6倍に急増しています。これに伴い売上総利益も大きく増加し、売上総利益率は大幅に改善しました。営業利益率は前期の16.8%から29.3%へと飛躍的に向上しており、増収効果に加えて製品ミックスの良化などが寄与し、収益性が著しく高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,865億円 | 7,797億円 |
| 売上総利益 | 2,460億円 | 4,451億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.6% | 57.1% |
| 営業利益 | 816億円 | 2,282億円 |
| 営業利益率(%) | 16.8% | 29.3% |
販売費および一般管理費のうち、従業員給付費用が1,073億円(構成比55%)、減価償却費および償却費が185億円(同9%)を占めています。また、売上原価の内訳については詳細な記載がありませんが、研究開発費は販売費および一般管理費に含まれ、714億円(販売費および一般管理費合計の約37%相当)が計上されています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収となりました。特に主力の半導体・部品テストシステム事業は売上高が約1.8倍に拡大し、利益も大幅に増加しました。メカトロニクス関連事業も好調に推移しています。一方、サービス他事業は増収ながらも赤字が拡大しましたが、これはのれん等の減損損失計上などが影響しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 半導体・部品テストシステム事業 | 3,315億円 | 5,981億円 | 919億円 | 2,440億円 | 40.8% |
| メカトロニクス関連事業 | 527億円 | 732億円 | 92億円 | 168億円 | 22.9% |
| サービス他 | 1,023億円 | 1,084億円 | -28億円 | -109億円 | -10.1% |
| 調整額 | - | - | -166億円 | -217億円 | - |
| 連結(合計) | 4,865億円 | 7,797億円 | 816億円 | 2,282億円 | 29.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「健全型」です。本業でしっかりと現金を稼ぎ出し(営業CFプラス)、それを将来のための投資(投資CFマイナス)と借入金の返済や株主還元(財務CFマイナス)に充てている、財務的に安定した状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 327億円 | 2,860億円 |
| 投資CF | -279億円 | -422億円 |
| 財務CF | 108億円 | -828億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、経営理念(パーパス&ミッション)として「先端技術を先端で支える」を掲げています。これは、世界中の顧客に満足される製品・サービスを提供するために自己研鑽に励み、最先端の技術開発を通じて社会の発展に貢献することを使命とするものです。ビジョンとして「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「The Advantest Way」として企業理念体系を定めています。その中でコア・バリューとして「INTEGRITY」を掲げ、誠実さや真摯さを重視しています。また、行動指針として「本質を究める」を定め、物事の表層だけでなく根源や本質を追求し、正しいソリューションを見出す姿勢を大切にしています。これらを共通の価値観として、多様な文化を持つ組織の結束を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期経営方針「グランドデザイン」に基づき、第3期中期経営計画(MTP3、2024~2026年度)を推進しています。この計画では、成長戦略の実行を通じて収益拡大や資本効率向上を図り、企業価値を高めることを目指しています。2024年度の実績はすべての指標で目標を超過しました。
* 売上高:5,600~7,000億円(平均目標)/実績7,797億円
* 営業利益率:22~28%(平均目標)/実績29.3%
* ROE(参考):実績34.4%
* 投下資本利益率(ROIC):18~28%(平均目標)/実績31.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
「MTP3」では、コア市場の成長率を上回る成長、近縁市場・新規事業領域への展開、オペレーショナル・エクセレンスの推進、サステナビリティの取り組み強化を戦略として掲げています。AI/HPC向けなど成長領域への投資や、テストの自動化・効率化ソリューションの提供、システムレベルテスト等の事業拡大に注力しています。また、DXによる業務効率化や人的資本の強化、サプライチェーンの強靭化も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を持続的成長に不可欠な人的資本と捉え、「個人の力」と「組織の力」を高める人事戦略を推進しています。「Advantest Development Framework」に基づき、キャリア自律、グローバル人材、最先端人材の育成を図っています。また、「The Advantest Way」の浸透による企業文化の醸成、健康経営、多様な働き方の支援など、エンゲージメントを高める社内環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.8歳 | 20.2年 | 10,491,797円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 66.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 85.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(連結)(9.7%)、離職率(4.4%)、教育・研修費用(6.8億円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場の需要変動リスク
同社の事業は半導体メーカー等の設備投資に大きく依存しており、半導体産業の需要変動の影響を強く受けます。半導体市場は世界経済の動向、技術革新、地政学的情勢などに左右され、好不況の波が激しい特徴があります。市場が低迷した場合、顧客の投資抑制により受注が減少し、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 国際的な事業展開に伴うリスク
同社は売上の大部分を海外が占め、生産・開発拠点も世界各地に展開しています。そのため、米中貿易摩擦などの地政学的リスク、各国での政治・経済の混乱、法規制や税制の変更、為替変動、自然災害などの影響を受ける可能性があります。特にサプライチェーンの寸断や輸出入規制の強化は、製品供給や部品調達に支障をきたし、業績に悪影響を与える恐れがあります。
■(3) 激しい競争環境
半導体テストシステム市場は世界的に競争が激しく、競合他社との技術開発競争や価格競争に晒されています。顧客のテストコスト削減要求や内製化の動きもあり、競争力のある新製品をタイムリーに投入し、シェアを維持・拡大できなければ、収益性が低下する可能性があります。また、M&Aによる業界再編や新規参入者の台頭も競争環境を変化させる要因となります。
■(4) 人材の確保・育成に関するリスク
技術革新の速い業界において競争力を維持するためには、高度な専門性を持つ技術者やグローバルに活躍できる多様な人材の確保・育成が不可欠です。しかし、人材獲得競争は激化しており、必要な人材を十分に確保できない場合や、流出が続いた場合には、製品開発や事業運営に支障をきたし、将来の成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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