エレコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エレコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、PC・デジタル機器および家電関連製品の開発・製造・販売を主力とします。第40期は、理美容家電のテスコム電機グループの連結効果やパワー&I/Oデバイスの伸長により売上高は増収、営業利益も増益となりましたが、為替差損の計上により経常利益は減益となりました。


※本記事は、エレコム株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エレコムってどんな会社?


PC周辺機器やデジタル機器、理美容家電などの開発・販売を行い、ファブレスメーカーとして多品種を展開する企業です。

(1) 会社概要


1986年に家電量販店向けOA家具メーカーとして設立され、マウス等の入力装置やLAN事業へ参入しました。2004年にロジテックを子会社化し、2013年に東京証券取引所市場第一部へ銘柄指定されました。2017年にDXアンテナを完全子会社化し放送通信機器へ拡大、2023年にはテスコム電機グループを子会社化し理美容家電分野へ本格参入しました。

連結従業員数は1,936人、単体では829人です。筆頭株主は創業者の葉田順治氏で、第2位は資産管理会社の有限会社サンズです。第3位には信託銀行が名を連ねており、創業家と安定株主による保有比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
葉田 順治 22.96%
有限会社サンズ 16.50%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は石見浩一氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
葉田 順治 取締役会長(代表取締役) 1986年同社設立。社長を経て2021年より現職。DXアンテナやロジテックINAソリューションズの会長、テスコム電機の会長兼社長などを兼務。
石見 浩一 取締役 社長執行役員(代表取締役) 味の素を経てトランスコスモス入社、同社代表取締役共同社長などを歴任。2023年同社入社、2024年より現職。
田中 昌樹 取締役 専務執行役員 1992年同社入社。ロジテックINAソリューションズ、ハギワラソリューションズ、DXアンテナの取締役などを歴任し、2023年より現職。
町 一浩 取締役 執行役員 1995年同社入社。物流企画課長、物流部部長代理を経て2016年物流部部長。2023年より現職。エレコムサポート&サービス社長を兼務。


社外取締役は、池田博之(元りそな銀行副会長)、渡辺美紀(元富士ゼロックスCSRグループ長)、長岡孝(元三菱UFJ証券ホールディングス会長)、蔭山秀一(元三井住友銀行副頭取)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パソコン・デジタル機器・家電関連製品」および「その他」事業を展開しています。

(1) パワー&I/Oデバイス関連


モバイルバッテリーやAC充電器などのパワーサプライ製品、マウスやキーボードなどの入力機器(I/Oデバイス)を提供しています。PCやスマートフォンを利用する一般消費者や法人顧客が主な対象です。

製品の販売による代金が主な収益源です。運営は主にエレコムが行い、市場トレンドや競合状況に応じた新製品の投入、防災需要への対応などを通じて販売拡大を図っています。

(2) 家電


ヘアドライヤーやヘアアイロンなどの理美容家電、調理家電を中心とした製品を展開しています。一般消費者を主な顧客とし、日々の生活を豊かにする製品を提供しています。

製品販売による代金が収益源です。2023年度にグループ入りしたテスコム電機株式会社が中心となり運営を行っており、グループ全体での販売体制強化と新商品の市場投入を推進しています。

(3) BtoBソリューション


法人向けPC、ネットワーク機器、監視カメラ等のセキュリティ関連機器、産業機器向けメモリ、放送通信機器などを提供しています。企業や官公庁、建設業界などが主な顧客です。

機器の販売代金に加え、ソリューション提案や保守サービス、工事などの対価が収益となります。エレコム、ハギワラソリューションズ株式会社、DXアンテナ株式会社、groxi株式会社などが連携して運営しています。

(4) 周辺機器・アクセサリ


スマートフォンやタブレット関連のアクセサリ、Wi-Fiルーター等のネットワーク機器、ストレージ製品などを提供しています。幅広い一般消費者が顧客です。

製品の販売代金が収益源です。エレコムやロジテックINAソリューションズ株式会社などが運営を担い、新型iPhoneの発売などに合わせたタイムリーな製品展開や、価格改定による収益性の確保に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益率は10%台を維持していますが、直近では原材料価格高騰や為替変動の影響を受けつつも、価格改定やコストダウン等の取り組みにより一定の収益性を確保しています。当期利益は変動が見られますが、安定した黒字経営を継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,072億円 1,074億円 1,037億円 1,102億円 1,180億円
経常利益 152億円 144億円 114億円 134億円 132億円
利益率(%) 14.2% 13.4% 11.0% 12.1% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 112億円 84億円 60億円 66億円 75億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で、事業拡大やM&Aに伴う人件費や販売促進費の増加により、販管費も増加しています。営業利益率は上昇しており、本業の収益力は強化されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,102億円 1,180億円
売上総利益 426億円 462億円
売上総利益率(%) 38.6% 39.1%
営業利益 124億円 135億円
営業利益率(%) 11.2% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が85億円(構成比26%)、販売促進費が35億円(同11%)を占めています。売上原価においては、商品及び製品仕入高が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


家電分野がM&A効果により大幅な増収となりました。パワー&I/Oデバイス関連や周辺機器・アクセサリも堅調に推移しています。一方、BtoBソリューションは半導体関連の投資需要減速等の影響で減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
パワー&I/Oデバイス関連 374億円 399億円
家電 73億円 131億円
BtoBソリューション 343億円 331億円
周辺機器・アクセサリ 305億円 312億円
その他 6億円 7億円
連結(合計) 1,102億円 1,180億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は「健全型」です。営業活動で稼いだ現金を、成長のための投資や株主還元、借入返済に充当しており、財務基盤は安定しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 97億円 174億円
投資CF -24億円 -44億円
財務CF -82億円 -106億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、成長の糧とする存在意義としてパーパス「Better being」を制定しています。創業以来追求してきた「Better」を企業価値創造の中心に置き、より良き製品・サービス・ソリューションによる社会課題の解決と、より良い地球環境への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが自らの心に問い、自分なりに考え、自発的な行動に繋げることで自ら成長することを重視しています。また、変化の速い市場において、お客様の声を聴き、高速で開発し、効率の良いオペレーションで届けるスピード感を持ったビジネスモデルを深化させてきた風土があります。

(3) 経営計画・目標


2024年4月から2027年3月までの中期経営計画では、「“お客様に愛される日本発・唯一無二のグローバルブランド”を創る」ことを目指しています。

* 営業利益伸長率:年平均10%以上
* ROE:13%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「価値創造」と「事業基盤構築」を重点戦略としています。国内BtoCではグローバル競合への対抗やテスコム商品の強化、国内BtoBでは高付加価値ビジネスモデルの構築、海外では北米・アジア市場での事業基盤構築を進めます。また、開発力の強化やSCMの深化、DX人材等の育成・確保にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


パーパス「Better being」に基づき、社員が自律的に考え行動し、個人の成長と共に会社が成長することを目指しています。湘南研修所を活用した合宿型研修や階層別研修で人材育成を行い、成果だけでなくプロセスも評価する制度や業績連動賞与を導入しています。また、多様な働き方の実現や女性活躍推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.9歳 8.3年 6,382,707円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.4%
男女賃金差異(正規) 79.6%
男女賃金差異(非正規) 75.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性監督職比率(16.4%)、育児休業からの復職率(男性100.0%、女性86.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カントリーリスク、国際情勢に関わるリスク


製品の原材料仕入先や生産委託先が中国や台湾などのアジア諸国に集中しているため、これらの国々における政治・経済情勢の変動、治安悪化、法制度の変更などが生産に支障をきたす可能性があります。対策として、生産国の分散化やストック対策を進めています。

(2) 為替相場変動について


製品の多くを海外から米ドル決済で仕入れているため、円安が進行すると仕入価格が上昇します。為替予約によるヘッジを行っていますが、想定以上の急激な円安が進んだ場合、価格転嫁が追いつかず業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、人民元の切り上げも仕入価格上昇のリスク要因となります。

(3) 保有在庫の陳腐化及び製品投入のスピード


技術革新が急速で製品サイクルが短い市場であるため、技術革新による需要変化で在庫が陳腐化するリスクがあります。定期的な評価減で備えていますが、想定以上の陳腐化が進むと業績に影響します。また、市場変化に対応した新製品をタイムリーに投入できない場合も競争力を失う可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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