エレコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エレコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エレコムは東京証券取引所プライム市場に上場し、パソコン・デジタル機器・家電の開発・製造・販売を行う企業です。直近の業績は法人向けの政策需要やパソコン更新需要の取り込み、M&Aの効果等により売上を拡大しました。利益重視の販売方針も奏功し、営業利益等が過去最高を更新する力強い増収増益を達成しています。


※本記事は、エレコム株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エレコムってどんな会社?


パソコン及びデジタル機器関連製品の開発・製造・販売を主力とし、ファブレス体制で事業を展開しています。

(1) 会社概要


1986年に家電量販店向けOA家具メーカーとして設立され、パソコンデスクの販売から事業を開始しました。2006年にジャスダックに上場、2013年には東証一部へ市場変更を果たしています。近年はM&Aを推進し、2017年にDXアンテナを、2025年には日本アンテナを完全子会社化して事業領域を拡大しています。

現在は連結で2,077名、単体で880名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の葉田順治氏で、第2位は同氏の関連会社とみられる有限会社サンズ、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
葉田 順治 20.78%
有限会社サンズ 15.64%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は石見浩一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
葉田 順治 取締役会長(代表取締役) 1986年同社設立・取締役。1994年取締役社長、2021年より取締役会長。グループ各社の会長を歴任し、2025年より日本アンテナ取締役会長も務める。現職。
石見 浩一 取締役 社長執行役員(代表取締役) 2001年トランスコスモス入社、代表取締役共同社長等を歴任。2023年同社副社長執行役員、2024年より代表取締役社長執行役員。グループ各社の役員も兼務。現職。
田中 昌樹 取締役 専務執行役員 1992年同社入社。2015年取締役、2021年常務取締役を経て、2023年より取締役専務執行役員。日本アンテナ等のグループ各社の取締役を兼務。現職。
町 一浩 取締役 執行役員 1995年同社入社。物流部長等を経て2021年取締役就任。2023年より取締役執行役員。エレコムサポート&サービスの代表取締役社長も兼務。現職。


社外取締役は、池田博之(元りそな銀行副会長)、渡辺美紀(富士フイルムビジネスイノベーション元CSRグループ長)、長岡孝(元三菱UFJ証券ホールディングス社長)、蔭山秀一(元三井住友銀行副頭取)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パソコン・デジタル機器・家電関連製品の開発・製造・販売及び関連サービス」の単一セグメントで事業を展開しています。

パワー&I/Oデバイス関連


モバイルバッテリーやAC充電器、電源タップなどのパワーサプライ製品のほか、キーボードやマウス、ドッキングステーションといったパソコン入力・周辺機器を提供しています。一般消費者だけでなく、政策需要や企業の更新需要を捉え法人向けにも販売しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。自社で製造設備を持たないファブレスメーカーとして主にエレコムが企画・開発・販売を担い、製造は国内外の委託先に外注する体制を構築しています。販売先は家電量販店やECサイトが中心です。

家電


テスコムブランドを中心とするヘアドライヤーなどの理美容家電や調理家電、さらに新開発の電動エアダスターといったホームアクセサリの企画・開発・販売を行っています。高価格帯の付加価値製品に注力し、消費者ニーズに応える製品展開を進めています。

消費者向け家電製品の販売による収益を主な収入源としています。運営は、主に2023年に子会社化したテスコム電機が製品の開発とブランド展開を担い、グループの販売網を活用しながら家電量販店やオンラインチャネルを通じて事業を展開しています。

BtoBソリューション


ネットワーク機器、セキュリティカメラ、法人向けPC、産業機器向けメモリに加え、放送・通信関連の受信映像機器や関連工事などを提供しています。企業のデジタル化需要やデータ管理需要を背景に、保守サービスを組み合わせたソリューション提案も行っています。

法人顧客への機器販売やシステム構築、保守サービスなどによる収益が主な柱です。エレコムのほか、ロジテックINAソリューションズやハギワラソリューションズ、DXアンテナ、さらに株式交換で完全子会社化した日本アンテナなどが各専門領域の運営を担っています。

周辺機器・アクセサリ


最新規格に対応したネットワーク機器やストレージ機器、スマートフォン・タブレット関連のアクセサリ製品などを広く提供しています。製品の利便性やデザイン性を追求し、モバイル端末の普及や買い替え需要に応える多彩なラインナップを展開しています。

コンシューマーおよび法人向けに各種周辺機器やアクセサリを販売し、収益を得ています。エレコムを中心に企画開発と販売が行われており、EC販路でのマーケティング強化やブランド発信を通じて、国内外の多様な顧客層への販売拡大を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は堅調に推移し、直近の2026年3月期には1,321億円と過去最高を更新しています。経常利益も一時的な踊り場を経て、付加価値の高い新商品投入やM&A効果により166億円へと大きく伸長しました。利益率も改善傾向にあり、力強い収益成長のトレンドが確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,074億円 1,037億円 1,102億円 1,180億円 1,321億円
経常利益 144億円 114億円 134億円 132億円 166億円
利益率(%) 13.4% 11.0% 12.1% 11.2% 12.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 84億円 60億円 66億円 75億円 199億円

(2) 損益計算書


円安や原材料費の高騰による原価上昇圧力があったものの、高付加価値商品の投入や価格改定、コストダウンの推進により売上総利益率は改善しています。EC販路の強化やM&Aに伴い販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益は二桁の増益を達成しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,180億円 1,321億円
売上総利益 462億円 524億円
売上総利益率(%) 39.1% 39.7%
営業利益 135億円 155億円
営業利益率(%) 11.5% 11.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が93億円(構成比25.3%)、販売促進費が44億円(同12.0%)、運賃及び荷造費が28億円(同7.7%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金をもとに投資を行い、さらに借入金の返済や株主還元を行う健全型の傾向を示しています。強固な資金創出力を背景に、M&Aや事業基盤強化のための投資を積極的に進めつつ、安定した財務状態を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 174億円 99億円
投資CF -44億円 -31億円
財務CF -106億円 -38億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.4%であり、いずれもプライム市場の平均を上回る優れた水準を示しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業以来の価値観を持続的成長の礎とするため、パーパスとして「Better being」を制定しています。これは、「より良き製品、より良きサービス、より良き会社、より良き社会」を常に追求し続けるという姿勢を表しています。社員一人ひとりが主体的に考え行動することで、製品・サービスを通じた社会課題の解決と、より良い地球環境への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、市場の変化に俊敏に対応し、顧客の声を反映した製品を「高速で開発」して効率的にお届けするスピード感を重要な価値観としています。これに加え、顧客と真正面から向き合い、ニーズを深く理解したうえで高付加価値な商品・サービスを提案する姿勢を重視しています。パーパスを中心に据え、社員の自律的な思考と行動を促すことで、自己成長と組織の進化を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画において、「“お客様に愛される日本発・唯一無二のグローバルブランド”を創る」というあるべき姿を掲げています。企業価値向上と持続的成長の実現に向け、具体的な経営目標として以下の数値を設定し、あわせて配当性向30%以上の維持など積極的な株主還元も目指しています。

* 営業利益伸長率:年平均10%以上
* ROE:13%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「お客様満足度を高める商品・サービスによる新たな価値創造」と「強い事業基盤の構築」を重点戦略としています。国内市場ではECチャネルでのシェア拡大や、BtoBにおける保守・ソリューションを絡めた高付加価値ビジネスを構築します。海外では北米・アジアを中心に事業の礎を築き、グローバル展開を加速させます。また、日本と中国の二極開発体制による高速開発や、AI・DX人材の育成を通じた組織力向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員の成長を企業価値向上の源泉と位置づけ、実践的かつ継続的な人材育成を行っています。人事制度では「成果を正当に評価し処遇に反映する」「納得感のある制度運用で挑戦を後押しする」ことを基本方針とし、成果だけでなく行動やプロセスも重視しています。また、多様な人材が能力を発揮できるよう、ドレスコードフリーやテレワーク、副業の一部解禁などを通じて柔軟な働き方と生産性向上の両立を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.1歳 8.5年 6,742,670円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 57.9%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 74.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性監督職比率(15.5%)、女性の育児休業からの復職率(85.7%)、年間研修費用(115,923千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 変化の速い市場動向と競争環境


パソコン及びデジタル関連製品市場を主要領域としているため、技術革新が急速で製品のライフサイクルが短く、陳腐化のリスクがあります。また、競合他社との厳しい価格競争が行われており、販売価格の引下げを余儀なくされる可能性や、仕入価格の上昇分を適正に転嫁できず業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ファブレス体制と特定の仕入先への依存


自社で製造設備を持たないファブレスメーカーとして多品種・少ロットの生産を委託していますが、生産委託先での品質不良や供給遅延が発生した場合、タイムリーな製品供給が困難になります。また、特定の部材や商品を一部の仕入先に依存している場合、供給制限や停止が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) カントリーリスクと国際情勢の変動


製品の原材料仕入先や生産委託先が中国や台湾などのアジア諸国に所在しています。そのため、これらの国々における政治・経済情勢の変動、治安の悪化、法制度や租税制度の変更が起きた場合、製品の生産や供給チェーンに支障をきたすリスクがあります。同社は生産国の分散化やストック対策でリスクの軽減に努めています。

(4) 為替相場の変動と調達コスト上昇


製品の多くを海外から外貨(主に米ドル)建てで仕入れているため、円安が進行した場合に仕入価格が上昇するリスクがあります。為替予約を利用してリスクをヘッジしていますが、想定以上に円安が進み、コスト増加分を適正に販売価格へ転嫁できない場合は、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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