※本記事は、株式会社ミマキエンジニアリング の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミマキエンジニアリングってどんな会社?
産業用プリンタやカッティングマシンの開発・製造・販売を手掛けるグローバル企業です。独自の技術力で市場に「新しさと違い」を提供しています。
■(1) 会社概要
1975年に長野県で有限会社として設立され、1981年に株式会社へ改組しました。1995年に台湾現地法人を設立して海外展開を本格化させ、2004年にはオランダに現地法人を設立しました。2007年にジャスダック証券取引所へ上場し、2015年には東京証券取引所市場第一部へ市場変更を行いました。2018年にはアルファーデザインを完全子会社化し、事業領域を拡大しています。
連結従業員数は2,114名、単体では891名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の池田ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は創業家関係の田中企画です。創業家およびその関連会社が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 池田ホールディングス | 17.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.24% |
| 田中企画 | 7.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名、計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長 CEOは池田和明氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田 和明 | 代表取締役社長 CEO | 2004年グラフィッククリエーション入社。2006年同社入社。営業本部長、MIMAKI USA, INC.取締役などを経て、2019年7月より現職。 |
| 竹内 和行 | 専務取締役 CTO | 1985年日本ビクター入社。1990年同社入社。技術本部長、研究開発部長などを経て、2019年7月より現職。 |
| 清水 浩司 | 常務取締役 CFO | 1997年八十二銀行入行。2009年同社入社。経営企画本部長、経営管理部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 羽場 康博 | 取締役営業本部長兼AO事業部長 | 1997年同社入社。MIMAKI USA, INC.代表取締役社長、営業本部副本部長などを経て、2023年10月より現職。 |
| 牧野 成昭 | 取締役グローバル人財総務本部長兼人事部長 | 1983年八十二銀行入行。2015年同社入社。監査室長、管理本部総務部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 古平 武史 | 取締役技術本部長兼研究開発部長 | 1999年同社入社。技術本部設計統括部長、技術本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 森澤 修二郎 | 取締役FA事業部長 | 2006年アルファーデザイン入社。同社代表取締役社長、アルファーシステムズ代表取締役社長などを経て、2022年6月より現職。 |
| 田中 規幸 | 取締役(監査等委員) | 1967年松下電器産業入社。1975年同社代表取締役社長。会長、相談役を経て、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、善野洋(元三菱UFJキャピタル副社長)、田中誠(税理士法人エクラコンサルティング代表社員)、荒井寿光(元特許庁長官)、蓑毛誠子(弁護士)、沼田俊介(IGPIグループ パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「SG市場向け」「IP市場向け」「TA市場向け」「FA事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) SG(サイングラフィックス)市場向け
広告・看板等のサイングラフィックス市場向けの製品群を提供しています。顧客は看板製作業者や印刷会社などで、大型ポスター、カーラッピング、のぼり旗、表示板等の製作に利用されています。
主な収益源は、インクジェットプリンタ(JV/CJV/UJVシリーズ等)やカッティングプロッタ(CGシリーズ等)の製品本体の販売、およびそれに付随するインク等の消耗品販売、保守サービス料です。運営は主にミマキエンジニアリングおよび各国の販売子会社が行っています。
■(2) IP(インダストリアルプロダクツ)市場向け
工業製品やノベルティグッズ等のインダストリアルプロダクツ市場向けの製品群です。自動車の計器パネル、家電の操作パネル、スマートフォンケース、オーダーグッズなどの生産現場で利用されています。
収益は、フラットベッドUVインクジェットプリンタ(JFX/UJFシリーズ等)やフラットベッドカッティングプロッタ(CFシリーズ等)、3Dプリンタの販売に加え、インク等の消耗品販売から得ています。運営はミマキエンジニアリング等が担っています。
■(3) TA(テキスタイル・アパレル)市場向け
衣服や生地等のテキスタイル・アパレル市場向けの製品群です。ファッションウェア、スポーツウェア、ネクタイ、スカーフなどの生地へのプリント等に用いられています。
収益源は、昇華転写インクジェットプリンタ(TSシリーズ)、ダイレクト捺染インクジェットプリンタ(Txシリーズ)、DTFプリンタ(TxFシリーズ)等の製品販売およびインク等の消耗品販売です。運営はミマキエンジニアリングおよび各国の販売子会社が行っています。
■(4) FA事業
ファクトリーオートメーション(FA)装置、基板実装装置、半導体製造装置、基板検査装置、金属加工事業等を展開しています。顧客の生産工程の自動化・効率化を支援するカスタム機器などを提供しています。
顧客からの装置受注・販売による収益が主となります。運営は主に子会社のアルファーデザイングループ(アルファーデザイン、アルファーシステムズなど)が手掛けています。
■(5) その他
上記のいずれにも属さない機種の製造・販売や、プリントサービス事業などが含まれます。顧客の多様なニーズに対応した製品やサービスを提供しています。
収益源は、製品販売やサービス料などです。運営はミマキエンジニアリングのほか、グラフィッククリエーション、楽日などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は毎期着実に増加し、成長傾向にあります。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに大幅な増益基調が続いており、直近では利益率も10%を超え、収益性が大きく向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 487億円 | 595億円 | 706億円 | 756億円 | 840億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 27億円 | 38億円 | 49億円 | 84億円 |
| 利益率(%) | 0.8% | 4.5% | 5.4% | 6.5% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3億円 | 23億円 | 28億円 | 37億円 | 62億円 |
■(2) 損益計算書
増収効果に加え、原価率の低減により売上総利益率が改善しました。販管費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益率は大きく伸長しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 756億円 | 840億円 |
| 売上総利益 | 326億円 | 391億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.1% | 46.6% |
| 営業利益 | 55億円 | 91億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 10.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が84億円(構成比28.0%)、研究開発費が37億円(同12.4%)、製品保証引当金繰入額が15億円(同5.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全地域で増収となりました。特に日本・アジア・オセアニア地域が最大規模を維持しつつ伸長し、北・中南米、欧州地域も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本・アジア・オセアニア | 340億円 | 380億円 |
| 北・中南米 | 215億円 | 241億円 |
| 欧州・中東・アフリカ | 201億円 | 219億円 |
| 連結(合計) | 756億円 | 840億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFで得た資金の範囲内で投資を行い、財務CFのマイナスで借入返済等を進めている健全型です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 96億円 | 79億円 |
| 投資CF | -26億円 | -24億円 |
| 財務CF | -14億円 | -75億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する開発型企業」「顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社」「市場に常に新しさと違いを提供するイノベーター」「各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土」の4項目を経営ビジョンとして掲げています。
■(2) 企業文化
市場に対して常に「新しさと違い」を提供し続けるイノベーターであることを重視しています。また、従業員一人ひとりが持つ個性や能力を最大限に発揮できるような企業風土を目指しており、独自技術とスピード感を大切にする文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
新中長期成長戦略「Mimaki Innovation 30」を策定し、安定的な収益性での成長と新たな領域へのチャレンジを掲げています。2030年3月期には以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:1,500億円
* 営業利益率:8%以上
* 新製品売上高比率:年30%
■(4) 成長戦略と重点施策
「Mimaki Innovation 30」に基づき、既存のSG・IP・TA市場でのシェア拡大と、高粘度領域や3Dプリンタ等の新規領域への挑戦を推進します。また、FA事業では自動車関連や半導体事業を強化します。周辺機器への進出としてセカンドブランドの立ち上げも計画しています。
* SG市場:UVプリンタとサステナブルインクで競争力を強化し、多様なラインナップでシェア拡大を図る。
* IP市場:小型フラットベッド市場での独走に加え、高粘度領域・Digital Paintで新分野を開拓する。
* TA市場:デジタル化の潜在市場として注力し、昇華転写やDTFプリンタで差別化を図る。
* FA事業:自動車関連事業を強化し、AIチップ向け半導体製造装置でのシェア拡大を目指す。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「開発型企業」「イノベーター」であり続けるため、製品開発やグローバル展開を担う中核人材の確保と育成を最重要課題としています。職種に応じた適材適所の採用に加え、専門教育の深化や階層別教育の充実を図り、イノベーションを創出できる人材を育成します。また、女性活躍推進やダイバーシティの確保、働きやすい職場環境の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 10.7年 | 7,272,765円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 95.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 57.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(21.4%)、1人平均有給休暇取得日数(14.2日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品の欠陥について
自社開発製品に不具合が発生した場合、修理や補償のコストが発生するほか、製品開発計画の遅延を招く可能性があります。これらは経営成績に悪影響を及ぼす恐れがあります。同社は品質改善を最優先事項としてプロジェクト体制で推進し、再発防止策の徹底や製造物責任賠償保険への加入などでリスク低減に努めています。
■(2) コスト競争力について
原材料の調達困難や価格高騰、または需要予測と販売実績の乖離による生産計画の狂いが生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。地政学的リスクを考慮した調達先の分散や見直し、部品の共通化、需要変動に柔軟に対応できる生産システムの構築を進めることで、コスト競争力の維持・強化に取り組んでいます。
■(3) 製品開発について
新製品開発には先行的な研究開発費が発生しますが、開発が計画通り進まずコストが増加したり、開発遅延により売上機会を逸したりした場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は先進的かつ効率的な開発手法の導入や、プラットフォーム設計の推進により、効率的な新製品開発に努めています。



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