ミマキエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミマキエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミマキエンジニアリングは東証プライム市場に上場し、産業用インクジェットプリンタやカッティングプロッタの開発・製造・販売を手掛ける企業です。直近の業績では、売上高は前年比で微減の837億円となったものの、収益性の改善により経常利益は89億円と増益を達成し、各段階利益で過去最高を更新しています。


※本記事は、株式会社ミマキエンジニアリングの有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミマキエンジニアリングってどんな会社?


同社は産業用インクジェットプリンタやカッティングプロッタの開発・製造・販売を主力事業とするメーカーです。

(1) 会社概要


1975年に長野県で有限会社として設立され、時計用精密部品の組立から事業を開始しました。1981年に株式会社へ改組し、2007年にはジャスダック証券取引所に上場しました。その後、2018年にはアルファーデザインや楽日を子会社化し、ファクトリーオートメーションやグッズ企画等へ事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で2,152名、単体で936名です。大株主については、筆頭株主が池田ホールディングスであり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には田中企画が名を連ねており、関係会社や金融機関が主要な株主となっています。

氏名 持株比率
池田ホールディングス 18.52%
日本マスタートラスト信託銀行 12.48%
田中企画 9.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長 CEOは池田和明氏が務めています。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
池田和明 代表取締役社長 CEO 2004年グラフィッククリエーション入社。2006年同社入社。海外子会社社長等を歴任し、2019年より現職。
竹内和行 専務取締役 CTO 1985年日本ビクター入社。1990年同社入社。技術本部長などを経て2016年に専務取締役に就任。2019年より現職。
清水浩司 常務取締役 CFO 1997年八十二銀行入行。2009年同社入社。経営企画本部長などを経て2022年常務取締役就任。2024年より現職。
羽場康博 取締役営業本部長兼AO事業部長 1996年キャム入社。1997年同社入社。海外子会社社長を経て2017年より取締役営業本部長を務め、2023年より現職。
牧野成昭 取締役グローバル人財総務本部長兼人事部長 1983年八十二銀行入行。2015年同社入社。総務部長等を経て2018年に取締役に就任し、2024年より現職。
古平武史 取締役技術本部長兼研究開発部長 1999年同社入社。技術本部で各種技術部長等を務め、2019年に技術本部長へ就任。2020年に取締役に就任し、2024年より現職。
森澤修二郎 取締役ADBUビジネスユニット長 2001年電脳工芸プラス入社。2006年アルファーデザイン入社、2017年同社社長。2022年に取締役に就任し、2026年より現職。
池田裕司 取締役営業本部副本部長兼ビジネスディベロップメント統括部長 2002年ファイブフォックス入社。2005年同社入社。欧州子会社社長などを経て、2023年に営業本部副本部長に就任し、2026年より現職。
北沢修司 取締役コーポレート統括本部長 1985年同社入社。国内営業部長や生産本部長等を経て、2024年にコーポレート統括本部副本部長となり、2026年より現職。


社外取締役は、善野洋氏(元三菱UFJキャピタル副社長)、荒井寿光氏(元東京中小企業投資育成社長)、蓑毛誠子氏(本間合同法律事務所弁護士)、沼田俊介氏(日本共創プラットフォーム執行役員)、中沢ひろみ氏(リコーリース社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、報告セグメントごとに事業を展開しています。

(1) SG(サイングラフィックス)市場向け


広告・看板などのサイングラフィックス市場向け製品群を提供しています。大型ポスターやカーラッピング、のぼり旗等の製作に用いられるエコソルベントインク搭載のプリンタやUV硬化インク搭載のプリンタ、高精度な輪郭カットを実現するカッティングプロッタを展開しています。顧客は主に広告製作業者等です。

製品本体の販売代金やインクなどの消耗品代、保守サービス料等を収益源としています。事業の運営は、同社を中心に各地域の子会社であるミマキプレシジョン等の製造会社、および国内外の各販売会社が担っています。

(2) IP(インダストリアルプロダクツ)市場向け


ノベルティや工業製品等の市場向けに製品群を提供しています。一般消費者向け商品から自動車の計器パネル等の工業製品生産現場まで幅広く用いられるフラットベッドUVインクジェットプリンタやカッティングプロッタ、さらに立体造形物をプリントする3Dプリンタを製造・販売しています。

収益源は、プリンタ本体や3Dプリンタの販売代金、機能性インク等の消耗品、保守サービス料などから構成されます。本事業は同社およびミマキプレシジョンなどのグループ製造会社において生産され、世界各国の販売子会社を通じてエンドユーザーへ提供されています。

(3) TA(テキスタイル・アパレル)市場向け


衣服や生地等のテキスタイル・アパレル市場向けに製品群を展開しています。ファッションウエアやスポーツウエア、スカーフなどの生地へのプリントに用いられる昇華転写インクジェットプリンタやダイレクト捺染プリンタ、顔料転写方式のプリントシステム等を提供しています。

収益は主にプリンタ本体の販売代金のほか、インクなどの消耗品の継続的な販売によってもたらされます。同社をはじめとする国内外の製造拠点において開発・生産が行われ、地域ごとの販売子会社を通じてアパレルメーカーやプリント業者等へ提供されています。

(4) FA事業


ファクトリーオートメーション装置事業や半導体製造装置事業、基板検査装置事業などを手掛けています。自動車関連のFA装置やAIチップ等の半導体事業におけるダイボンダ、基板実装機器や検査装置などを中心に、工場の自動化・省人化に向けたカスタム機器を提供しています。

収益源は、各製造装置の販売代金および関連するカスタマイズや保守等のサービス料です。本事業は主に子会社であるアルファーデザインやアルファーシステムズ、砺波製作所など、アルファーデザイングループの各社が開発から製造、販売までを一貫して運営しています。

(5) その他


上記の市場区分に属さないプリンタ機種の製造・販売や、ソフトウェアの開発、グッズの企画・販売、プリントサービスなどを提供しています。多様化する顧客ニーズに応えるため、周辺サービスや関連技術の開発も行っています。

収益は、対象機種の販売やソフトウェアの受託開発料、グッズ販売代金などから構成されます。運営は、同社および子会社であるマイクロテック(ソフトウェア開発)、楽日(グッズ企画販売)、グラフィッククリエーション(プリントサービス)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は右肩上がりの成長を続けており、当期は微減となったものの高い水準を維持しています。また、経常利益や利益率も継続的に上昇しており、収益性が大幅に改善されていることがうかがえます。安定した成長と高収益化が両立している状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 595億円 706億円 756億円 840億円 837億円
経常利益 27億円 38億円 49億円 84億円 89億円
利益率(%) 4.5% 5.4% 6.5% 10.1% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 18億円 25億円 54億円 44億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と同水準で推移した一方、売上総利益と営業利益はいずれも増加しています。売上総利益率および営業利益率も上昇しており、原価低減活動やプロダクトミックスの改善による高付加価値化が着実に進展し、収益力の向上が利益を押し上げていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 840億円 837億円
売上総利益 391億円 412億円
売上総利益率(%) 46.6% 49.2%
営業利益 91億円 94億円
営業利益率(%) 10.8% 11.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が90億円(構成比28%)、研究開発費が52億円(同16%)を占めています。研究開発や人材への積極的な投資が行われていることがわかります。

(3) セグメント収益


地域別の売上構成を見ると、日本・アジア・オセアニアおよび欧州・中東・アフリカ地域で前年比微減となった一方、北・中南米地域では増収を記録しています。北米での大型モデルの好調などが売上を牽引しており、各地域でバランスよく収益を確保している状況がうかがえます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本・アジア・オセアニア 380億円 372億円
北・中南米 241億円 250億円
欧州・中東・アフリカ 219億円 216億円
連結(合計) 840億円 837億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。本業で利益を確保しながら投資を行い、借入返済も進める健全なキャッシュ・フロー構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 79億円 46億円
投資CF -24億円 -54億円
財務CF -75億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、独自技術を保有して自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指すことを経営ビジョンとして掲げています。顧客に満足される製品を素早く提供する小回りの利いた会社であり続け、市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターとなることを使命とし、産業用印刷の分野で独自のポジションを築いています。

(2) 企業文化


同社は、「各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土」を重視しています。互いに助け合いながら成長できる組織づくりや、働きやすく挑戦を尊重する環境の整備を推進しています。また、オープンイノベーションを含む多様な連携を通じ、全社的な専門教育を深めることでイノベーターを創出する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年3月期を最終年度とする新中長期成長戦略「Mimaki Innovation 30」を策定し、安定的な収益性とともに資源の積極活用で新たな領域に挑戦しています。主な数値目標は以下の通りです。
・売上高成長率(CAGR)10%以上を継続
・2030年3月期に売上高1,500億円
・営業利益率8%以上
・新製品売上高比率 年30%の達成

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存のインクジェット技術を応用して高粘度領域やフレキシブル有機ELシート等の新領域へ挑戦する戦略を掲げています。また、セカンドブランドを立ち上げて周辺機器へ進出するほか、3Dプリンタ事業をコア事業の新たな柱として育成します。各市場で環境配慮型製品や自動化ソリューションを展開し、収益拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「開発型企業」「イノベーター」を目指すため、製品開発を担う人材やグローバルに活躍できる人材の確保を積極的に進めています。また、ジョブ型人事制度の要素を取り入れて職責を明確化するとともに、ダイバーシティの推進や専門教育の深化を図ることで、各人の能力を最大限に発揮できる企業風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 10.6年 7,661,204円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 88.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.8%
男女賃金差異(正規雇用) 79.9%
男女賃金差異(パート・有期) 53.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(21.1%)、1人平均有給休暇取得日数(14.4日)、1人当たり教育関連投資(38.1千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制・貿易管理への対応


同社は国内外において製造物責任法や輸出貿易管理令、環境規制など多様な法的規制の適用を受けています。法改正や新たな規制への対応によりコストが増加するリスクや、事業活動が制限される懸念があります。これに対し、グローバルベースでの法的規制の調査や管理ワークフローの見直しを実施し、遵守体制を強化しています。

(2) 情報セキュリティとシステム障害


サイバー攻撃や情報セキュリティの脆弱性に起因して機密情報が漏洩した場合、信頼の低下やサービス停止による損害が生じるリスクがあります。このため、同社は専門部門が主導してセキュリティポリシーを策定し、システムのバックアップや脆弱性の監視など防御力の向上と従業員教育を徹底して対策を進めています。

(3) 新規投資・企業買収の事業性リスク


同社グループは成長に向けた新会社の設立や既存企業の買収を積極的に行っていますが、期待したシナジーが得られず投資価値が低下したり、追加の資金拠出が必要になったりするリスクがあります。こうした事態を防ぐため、客観的な事業性と成長性の評価を事前に行い、リスクとリターンの検証を十分に行う方針をとっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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