小糸製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小糸製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小糸製作所は東京証券取引所プライム市場に上場し、自動車照明器や航空機部品等の製造販売を主力とする企業です。直近の連結業績は、売上高と営業利益・経常利益で増収増益を達成したものの、特別損失の計上により当期利益は減益となりました。グローバル展開と次世代モビリティ向け技術開発で持続的成長を目指しています。


※本記事は、小糸製作所の有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小糸製作所ってどんな会社?


自動車照明器の製造・販売を主力事業とし、光を用いた安全と新しい価値を創造するグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社は1915年に小糸源六郎商店として創業し、鉄道信号灯用レンズの販売を開始しました。1936年に小糸製作所が設立され、1949年に株式上場を果たしました。1957年のオールグラス・シールドビームヘッドランプ生産を皮切りに自動車照明分野で成長し、現在はグローバル5極体制で事業を展開しています。

現在の従業員数は連結で21,507名、単体で4,247名です。大株主の構成は、筆頭株主が事業会社のトヨタ自動車であり、第2位および第3位は信託業務などを行う金融機関となっています。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 21.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.70%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行) 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役社長は加藤充明氏が務めています。社外取締役比率は、取締役13名中5名となっています。

氏名 役職 主な経歴
大嶽昌宏 取締役会長(代表取締役) 1977年同社入社。1993年常務取締役、1999年専務取締役、2005年代表取締役副社長、2007年代表取締役社長を経て、2015年より現職。
加藤充明 取締役社長(代表取締役) 1982年同社入社。2004年欧米部長、2005年取締役、2011年常務取締役、2017年専務取締役を経て、2021年より現職。
内山正巳 取締役副社長(代表取締役) 1983年同社入社。2005年人事部長、2007年取締役、2011年常務取締役、2017年専務取締役を経て、2021年より現職。
小長谷秀治 取締役副社長(代表取締役) 1987年同社入社。2006年経理部長、2009年取締役、2013年常務執行役員、2017年専務取締役を経て、2023年より現職。
豊田淳 取締役副社長(代表取締役) 1983年同社入社。2005年取締役、2015年北米子会社社長、2023年専務取締役を経て、2025年より現職。
草川克之 専務取締役 1980年トヨタ自動車工業入社。2011年同社常勤顧問、同年常務取締役、2012年取締役常務執行役員を経て、2019年より現職。
柴田英祐 専務取締役 1999年同社入社。2019年北米部長、同年執行役員、2021年常務執行役員、2023年専務執行役員を経て、2025年より現職。
大嶽孝仁 専務取締役 2005年大和証券SMBC入社。2019年同社常勤顧問、同年執行役員、2023年専務執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、上原治也(元三菱UFJ信託銀行社長)、櫻井欣吾(公認会計士)、五十嵐チカ(弁護士)、田中里沙(事業構想大学院大学学長)、川田善正(静岡大学電子工学研究所副所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「中国」「アジア」「欧州」の報告セグメントにおいて事業を展開しています。

(1) 日本


主に自動車照明器をはじめ、鉄道車両制御機器、航空機部品、電子部品などの製造・販売を行っています。顧客は国内外の自動車メーカーやインフラ関連企業などです。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取る代金から構成されています。事業の運営は主に小糸製作所が行い、小糸九州などの国内子会社が製造・販売を担っています。

(2) 米州


米国、メキシコ、ブラジルにおいて、LEDヘッドランプや各種小型電球などの自動車照明器、センサシステム(LiDAR)等の製造・販売を行っています。

製品の販売代金を自動車メーカーから受け取る収益モデルです。運営はノースアメリカンライティングインクなどの現地子会社が行っています。

(3) 中国


中国において、自動車照明器を中心とした製品の製造・販売を展開し、現地の自動車メーカーや日系メーカーの現地拠点に製品を供給しています。

収益源は自動車メーカーに対する照明機器の販売代金です。広州小糸車灯、湖北小糸車灯、福州小糸車灯の各子会社が事業を運営しています。

(4) アジア


タイ、インドネシア、台湾、インド、マレーシアなどのアジア地域で、自動車照明機器の製造と販売を行っており、各国の市場ニーズに対応した製品を提供しています。

製品販売による代金が主な収益源であり、タイコイトカンパニーリミテッドやインディアジャパンライティングプライベートリミテッドなどの子会社が運営を担っています。

(5) 欧州


チェコなどを拠点として、欧州地域の自動車メーカーに向けて自動車照明機器の製造・販売を行っています。

製品販売による代金を顧客から受け取る収益モデルであり、運営は主にコイトチェコs.r.o.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な変動がありつつも概ね増加傾向にあり、当期は9,476億円に達しています。一方で、経常利益率は5〜7%台で推移してきましたが、当期利益は特別損失の計上により大きく減少しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,607億円 8,647億円 9,503億円 9,167億円 9,476億円
経常利益 606億円 485億円 633億円 491億円 588億円
利益率(%) 8.0% 5.6% 6.7% 5.4% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 38億円 297億円 409億円 462億円 165億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善を見せています。合理化の推進などが収益性の向上に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 9,167億円 9,476億円
売上総利益 967億円 1,115億円
売上総利益率(%) 10.5% 11.8%
営業利益 449億円 514億円
営業利益率(%) 4.9% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、一般管理費の従業員給与手当が139億円(構成比23.2%)、福利厚生費が56億円(同9.4%)を占めています。また、販売費の従業員給与手当が55億円(同9.2%)となっています。

(3) セグメント収益


日本およびアジアセグメントが増収増益を牽引しています。米州は売上が増加したものの関税影響等により減益となりました。中国と欧州は減収でしたが、固定費負担の減少等により営業黒字に転換しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 3,717億円 3,893億円 227億円 248億円 6.4%
米州 3,157億円 3,290億円 53億円 35億円 1.1%
中国 692億円 605億円 -11億円 5億円 0.8%
アジア 1,559億円 1,636億円 169億円 189億円 11.6%
欧州 364億円 354億円 -8億円 8億円 2.3%
連結(合計) 9,167億円 9,476億円 449億円 514億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金を使って投資を行い、さらに借入金の返済なども進めている健全なキャッシュ・フロー状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 884億円 999億円
投資CF -410億円 -108億円
財務CF -783億円 -714億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「光」をテーマとしてお客様のニーズを創造し、社会の進歩発展に貢献するとともに、株主・お客様・従業員・取引先等すべてのステークホルダーとの共存共栄を図ることを経営の基本方針としています。また、「人と地球にやさしいものづくり」を事業活動において展開しています。

(2) 企業文化


企業メッセージ「安全を光に託して」のもと、自動車照明器、電気機器メーカーとしてお客様の求める新しい価値を創造しています。安全・安心、そして信頼できる製品・サービスの提供を通じて、自動車産業や社会の発展に貢献する企業であり続けるという姿勢を重視し、社会貢献活動にも積極的に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


「第1次中期経営計画」において、2026年度の修正計画として売上高9,300億円、営業利益560億円(営業利益率6.0%)を目標に掲げています。また、2024年〜2026年度の3カ年累計で株主還元2,000億円程度、連結配当性向40%以上を目安とし、資本効率を重視した財務基盤の強化を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


自動車産業の世界最適生産の拡大に対応するため、グローバル5極体制の充実を図っています。モビリティ変化に対応した先端技術の開発と迅速な商品化、環境保全およびコンプライアンスの強化を推進しています。また、2050年度のカーボンニュートラル達成を目指し、環境負荷物質の低減などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を重要な経営資源の一つと位置づけ、グループ戦略と連動した人材の確保・育成に取り組んでいます。国籍、性別等にかかわらず、多様な経験や価値観を持つ従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整備し、「ダイバーシティ推進」と「働き方改革」を重要課題として推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.5歳 20.8年 6,695,431円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者管理職比率(10.6%)、外国人管理職比率(0.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サプライチェーンの寸断リスク


国内外の多数の取引先から原材料や部品を調達しており、自然災害や地政学リスク、物流停滞、サイバー攻撃等により部品供給が滞った場合、生産活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。同社は重要取引先のBCP確認や代替調達、複数購買ルートの構築等で安定調達体制の強化に努めています。

(2) 品質問題や製品リコールリスク


自動車の電子化・高機能化に伴い制御系・電子部品比率が高まっており、不具合発生時の影響範囲が拡大しています。市場不良やリコールが発生した場合、企業イメージの毀損や対応費用の増加を通じ、業績に重大な影響を与える恐れがあるため、設計段階から生産工程までの品質確認を強化しています。

(3) 情報セキュリティとサイバー攻撃リスク


標的型サイバー攻撃やランサムウェア感染等による機密情報漏洩、システム停止のリスクがあります。自動車業界のサプライチェーン全体を狙った攻撃も増加しており、同社はセキュリティガイドラインへの対応やEDR導入、グローバル包括型サイバー保険の導入などで対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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