小糸製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小糸製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。自動車照明器の世界的メーカーで、LEDヘッドランプ等を主力とします。当期の連結業績は、自動車生産の減少等の影響により、売上高は9,167億円(前期比3.5%減)、経常利益は491億円(同22.3%減)と減収減益となりましたが、当期純利益は増益でした。(138文字)


※本記事は、株式会社小糸製作所 の有価証券報告書(第125期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小糸製作所ってどんな会社?


自動車用照明器のリーディングカンパニーです。「安全を光に託して」を掲げ、世界で事業を展開しています。

(1) 会社概要


1915年に創業し、1936年に設立。1949年に上場しました。1979年に異形ヘッドランプ、2003年に世界初のAFS、2007年にはLEDヘッドランプの量産化に成功しました。2019年にKIホールディングスを完全子会社化するなど、技術革新と組織再編を通じて事業基盤を強化しています。

連結従業員数は23,332名、単体では4,227名です。筆頭株主は事業パートナーであるトヨタ自動車で、第2位以降には信託銀行等の金融機関が名を連ねています。強固な顧客基盤とグローバルな生産体制を有しています。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 22.70%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.30%
日本カストディ銀行(信託口) 3.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は加藤充明氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
大嶽 昌宏 取締役会長(代表取締役) 1977年入社。常務、専務、代表取締役副社長を経て、2007年より代表取締役社長。2015年より現職。
加藤 充明 取締役社長(代表取締役) 1982年入社。欧米部長、常務、専務を経て、2021年より現職。
内山 正巳 取締役副社長(代表取締役) 1983年入社。人事部長、常務、専務を経て、2021年より現職。生産本部長等を担当。
小長谷 秀治 取締役副社長(代表取締役) 1987年入社。経理部長、常務執行役員、専務を経て、2023年より現職。調達本部長等を担当。
草川 克之 専務取締役 1980年トヨタ自動車工業入社。同社常勤顧問、常務を経て、2019年より現職。経営企画部等を担当。
豊田 淳 専務取締役 1983年入社。コイトヨーロッパNV取締役、常務執行役員等を経て、2023年より現職。営業本部長。


社外取締役は、上原治也(元三菱UFJ信託銀行社長)、櫻井欣吾(公認会計士)、五十嵐チカ(弁護士)、田中里沙(事業構想大学院大学学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「中国」「アジア」「欧州」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


LEDヘッドランプ、標識灯、道路交通信号、航空機部品、鉄道車両シートなどを製造・販売しています。自動車メーカー等の顧客に対し、先進的な照明技術を提供しています。

収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は、同社、小糸九州、コイト電工などが担っており、製造から販売、物流、保険業務に至るまでグループ各社が連携して事業を行っています。

(2) 北米


米国およびメキシコにおいて、LEDヘッドランプや標識灯、センサシステム(LiDAR)などを製造・販売しています。現地の自動車メーカー等が主な顧客です。

製品の販売により収益を得ています。運営は主にノースアメリカンライティングインクやセプトンテクノロジーズインクなどが行っており、現地生産体制を強化しています。

(3) 中国


中国市場において、自動車用照明機器の製造・販売を行っています。急速に普及するEVメーカーや現地自動車メーカーへの供給を行っています。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は広州小糸車灯有限公司、湖北小糸車灯有限公司、福州小糸車灯有限公司などが担当しています。

(4) アジア


タイ、インドネシア、台湾、インド、マレーシア等で自動車用照明機器を製造・販売しています。経済成長が続くアジア各国の自動車需要に対応しています。

製品の販売により収益を得ています。運営はタイコイトカンパニーリミテッド、PT.インドネシアコイト、インディアジャパンライティングプライベートリミテッドなどが行っています。

(5) 欧州


英国やチェコを拠点に、欧州市場向けの自動車用照明機器を製造・販売しています。現地の自動車メーカー等に製品を供給しています。

製品の販売代金が収益となります。運営はコイトヨーロッパリミテッドやコイトチェコs.r.o.が行っています。

(6) その他


ブラジルにおいて自動車用照明機器の製造・販売を行っています。南米市場における需要に対応しています。

製品の販売により収益を得ています。運営はエヌエーエルドブラジルインドゥストリアイコメルシオデコンポーネンテスジイルミナサンオリミターダが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第124期まで増加傾向にありましたが、当期は減少に転じました。経常利益は変動があり、当期は前期から減少しています。一方で、当期純利益は特別利益の計上などにより増加しており、過去最高の水準となっています。利益率は5%〜8%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7,064億円 7,607億円 8,647億円 9,503億円 9,167億円
経常利益 611億円 606億円 485億円 633億円 491億円
利益率(%) 8.7% 8.0% 5.6% 6.7% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 380億円 383億円 297億円 409億円 462億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が減少し、売上総利益率も低下しています。営業利益および営業利益率も低下しており、収益性がやや低下した決算となりました。これは生産・出荷停止の影響や品質対応費用、LiDAR事業への投資増加などが影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9,503億円 9,167億円
売上総利益 1,067億円 967億円
売上総利益率(%) 11.2% 10.5%
営業利益 560億円 449億円
営業利益率(%) 5.9% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が178億円(構成比34%)、運賃運送費が40億円(同8%)を占めています。また、売上原価には研究開発費が含まれており、売上原価及び一般管理費に含まれる研究開発費の総額は411億円となっています。

(3) セグメント収益


北米、アジア、その他セグメントでは売上高が増加しましたが、日本、中国、欧州では減少しました。特に中国と欧州での減収幅が大きく、中国では日系車の販売不振、欧州では自動車生産の減産などが影響しました。利益面では、アジアなどで増益を確保した一方、日本、中国、欧州などで減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 3,618億円 3,516億円 340億円 227億円 6.4%
北米 2,866億円 2,972億円 4億円 38億円 1.3%
中国 824億円 583億円 -5億円 -11億円 -1.9%
アジア 1,533億円 1,555億円 150億円 169億円 10.9%
欧州 498億円 362億円 22億円 -8億円 -2.2%
その他 165億円 179億円 18億円 15億円 8.4%
調整額 -327億円 -321億円 32億円 19億円 -
連結(合計) 9,503億円 9,167億円 560億円 449億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:本業で獲得した資金の範囲内で投資を行い、余剰資金で財務活動(株主還元や借入返済等)を行っている、財務体質が健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 964億円 884億円
投資CF -502億円 -410億円
財務CF -597億円 -783億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「光」をテーマに顧客ニーズを創造し、社会の進歩発展に貢献するとともに、全てのステークホルダーとの共存共栄を図ることを基本方針としています。また、企業メッセージ「安全を光に託して」のもと、安全・安心で信頼できる製品・サービスの提供を通じて社会に貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化


CSRの観点から、「人と地球にやさしいものづくり」を全ての事業活動において展開し、環境保全活動や社会貢献活動に取り組んでいます。また、「常にお客様の立場で考え、ご満足いただける製品・サービスを提供する」という強み・DNAを継承し続けています。

(3) 経営計画・目標


「KOITO VISION~人と地球の未来を照らす~」を策定し、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。2026年度および2030年度に向けて以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:1兆円以上(2026年度)、年率平均5%の成長(2030年度)
* 営業利益率:8%(2026年度)、10%以上(2030年度)
* 投下資本利益率(ROIC):9%以上(2026年度)、10%以上(2030年度)
* 自己資本利益率(ROE):9%以上(2026年度)、10%以上(2030年度)

(4) 成長戦略と重点施策


自動車産業の変化に対応するため、グローバル5極体制の強化、先端技術の開発と商品化、環境保全・コンプライアンス強化、経営資源の有効活用を推進しています。特に、ADB(配光可変ヘッドランプ)の普及拡大や、自動運転を見据えたLiDAR等の開発、カーボンニュートラルへの取り組みを強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グループ発展の原動力となる人材育成のため、「ものづくり・人づくり」の強化・革新を目指しています。ダイバーシティ推進や働き方改革を重要課題と捉え、女性や外国人、キャリア採用者の管理職登用、シニア層の活躍推進、男性の育児参加支援など、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 20.4年 6,541,500円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.4%
男女賃金差異(正規) 65.6%
男女賃金差異(非正規) 62.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職比率(0.6%)、キャリア採用者管理職比率(10.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外進出に潜在するリスク


同社グループは海外での生産・販売比率が高いため、各国の予期しない法律や規制の変更、政治的・経済的な要因、テロや戦争などによる社会的混乱が事業に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済状況の変動


自動車照明関連製品の需要は、日本、北米、中国、アジア、欧州などの主要市場における経済状況の影響を受けます。景気後退に伴う需要縮小は、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制への対応


主要製品である自動車照明器は重要な保安部品であり、各国で様々な法的規制を受けています。予期せぬ規制変更が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 原材料等の調達及び価格変動


原材料や部品を国内外から調達していますが、地政学的リスクや需給バランスによる価格高騰、供給不足が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に樹脂材料は原油価格の影響を受けやすくなっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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