※本記事は、能美防災株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 能美防災ってどんな会社?
国内最大手の総合防災設備メーカーです。火災報知設備や消火設備の開発からメンテナンスまで一貫して提供しています。
■(1) 会社概要
1916年に創業し、1924年に国内初の自動火災報知装置等の製造販売・工事請負業を開始しました。1991年に東京証券取引所市場第一部へ指定替えとなり、2006年にはセコムを引受先とする第三者割当増資を実施し、同社の子会社となりました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は2,875名、単体では1,869名です。筆頭株主は親会社のセコムで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。親会社であるセコムとは、火災報知設備のOEM供給や販売等で取引関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| セコム | 51.90% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.00% |
| 能美防災代理店持株会 | 3.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は岡村武士氏です。社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋 爪 毅 | 代表取締役会長 | 1967年同社入社。1998年取締役、2004年常務、2006年専務を経て、2008年代表取締役社長に就任。2013年6月より現職。 |
| 岡 村 武 士 | 代表取締役社長営業統括本部長 | 1983年同社入社。2015年取締役、2017年常務、2019年専務を経て、2021年6月より現職。 |
| 長谷川 雅 弘 | 取締役専務執行役員営業統括本部副本部長・エンジニアリング本部長兼中部地区担当 | 1978年同社入社。2013年取締役、2018年常務、2020年取締役常務執行役員を経て、2022年取締役専務執行役員に就任。2024年6月より現職。 |
| 千 田 岳 彦 | 取締役 | 2016年セコム入社。2017年同社執行役員。2023年6月より現職。 |
| 藤 井 裕 之 | 取締役常勤監査等委員 | 1987年同社入社。2015年CSR推進室長、2023年常勤監査役を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、塩谷愼(元株式会社富士銀行取締役)、平野啓子(大阪芸術大学芸術学部放送学科教授)、鷲見哲也(株式会社東京海上日動オートサポートセンター取締役社長)、長濱晶子(弁護士)、福田真人(三井住友海上あいおい生命保険株式会社社外監査役)、安部道雄(富士電機株式会社特別顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「火災報知設備」「消火設備」「保守点検等」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 火災報知設備
自動火災報知設備、環境監視システム、防火戸、防排煙設備等の製造販売および取付工事を行っています。ビルや商業施設、工場など多様な施設において、火災の早期発見と避難誘導を支援するシステムを提供し、顧客は建設会社や建物所有者などが中心です。
製品の製造は同社および海外子会社が行い、販売・取付工事は同社、連結子会社の岩手ノーミ、日信防災、海外子会社などが行っています。収益は、機器の販売代金および設置工事代金として顧客から受領します。また、親会社であるセコムに対して機器をOEM供給しています。
■(2) 消火設備
各種スプリンクラー設備、泡消火設備、プラント防災設備、トンネル防災設備等の製造販売および取付工事を行っています。一般ビルからプラント、トンネルなどの特殊施設まで、対象施設の特性に応じた消火システムを提供しています。
製造は同社が行い、販売・取付工事は同社、連結子会社の能美エンジニアリング、東北ノーミなどが行っています。収益は、消火設備の機器販売および設計・施工に対する対価として顧客から得ています。
■(3) 保守点検等
各種防災設備の保守点検および補修業務を行っています。設置された防災システムが常に正常に機能するよう、定期的な点検やメンテナンス、老朽化した設備の改修工事などを提供しています。
同社および連結子会社の九州ノーミ、ノーミシステムなどがサービスを提供しています。収益は、保守点検契約に基づく点検料や、補修工事代金として顧客から受領します。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、駐車場車路管制システムの施工・保守や、防犯設備機器の製造販売などを行っています。
連結子会社の日信防災が駐車場車路管制システムを、上海能美西科姆消防設備有限公司が防犯設備機器を取り扱っています。収益は、各システムの施工・保守料や機器販売代金として得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は大幅な増収となり、利益面でも経常利益、当期純利益ともに大きく伸長しています。利益率も改善傾向にあり、高水準の利益を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,079億円 | 1,129億円 | 1,055億円 | 1,185億円 | 1,337億円 |
| 経常利益 | 115億円 | 132億円 | 94億円 | 122億円 | 162億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 11.7% | 8.9% | 10.3% | 12.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 58億円 | 77億円 | 54億円 | 62億円 | 91億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を分析すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して向上しており、収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,185億円 | 1,337億円 |
| 売上総利益 | 395億円 | 465億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.3% | 34.7% |
| 営業利益 | 117億円 | 157億円 |
| 営業利益率(%) | 9.8% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が98億円(構成比32%)、賞与引当金繰入額が29億円(同9%)、研究開発費が27億円(同9%)を占めています。売上原価は872億円で、売上高に対する比率は65.3%となっています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて増収となりました。火災報知設備は新築・リニューアル共に堅調で、価格改定も寄与しました。消火設備は一般物件・特殊物件共に需要が堅調でした。保守点検等はリニューアル需要や保守点検の積み上げにより伸長しました。その他セグメントも駐車場関連の増収により売上が増加しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 火災報知設備 | 430億円 | 480億円 |
| 消火設備 | 382億円 | 451億円 |
| 保守点検等 | 321億円 | 346億円 |
| その他 | 51億円 | 60億円 |
| 連結(合計) | 1,185億円 | 1,337億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* パターン:**健全型**
* 営業で利益を出し、借入返済や自己株式取得などの財務活動を行いながら、投資も手元資金で賄っている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 33億円 | 115億円 |
| 投資CF | -27億円 | -71億円 |
| 財務CF | -28億円 | -75億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.2%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「防災事業のパイオニアとしての使命に徹し、社会の安全に貢献する」ことを社是としています。また、「研究開発からメンテナンスまでの一貫体制の下、災害から生命・財産を守るための最新・最適な防災システムを、日本全国そして世界に提供し続けること」を経営理念に掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「研究開発からメンテナンスまでの一貫体制」を重視しています。また、2028年度のありたい姿に向けた施策の中で、「事業の深耕と探索」および「提案型人財の育成」を推進する「未来共創プロジェクト」に取り組んでおり、新しい価値創造に挑戦する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、「中長期ビジョン2028 ~期待の先をカタチに~」を策定しており、2029年3月期に向けた数値目標を設定しています。
* 連結売上高:1,700億円以上
* 営業利益率:12%以上
* ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
2026年3月期から2029年3月期までの「ステージⅢ」において、ありたい姿の実現に向けた総仕上げに取り組みます。既存事業の収益拡大と利益率向上、事業の拡大、新規事業創出ならびにスケール化を重点施策として掲げています。
* 既存事業:人財採用・育成・配置の強化徹底、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
* 事業拡大:防災周辺領域や隣接業界へのM&Aの積極展開
* 新規事業:未来共創プロジェクト活動等への注力
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「中長期ビジョン2028」の実現を支えるため、「飛躍的成長への人事戦略」を推進しています。社員一人ひとりと組織双方の成長サイクルを加速させることを目指し、ワークライフバランスの促進、必要な人財の採用注力(施工、メンテナンス人財等)、働きがいのある職場環境の構築、戦略的な異動配置、早期戦力化に向けた育成体制の構築、多様な人財が活躍するDE&Iの推進などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.0歳 | 15.7年 | 6,370,695円 |
※平均年間給与は基準賃金に賞与を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 29.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 61.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(70.7%)、障がい者法定雇用率(2.37%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境について
同社グループの事業は、建設業界や公共事業の動向の影響を受けます。積極的な提案営業や原価低減に取り組んでいますが、景気後退により民間設備投資や公共投資が減少した場合、受注環境が悪化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等について
売上の主要な部分は消防法による規制に関連して生じています。この規制が急激に変化した場合には、競争環境に変化が生じ、同社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 製品・サービスの不具合等について
自動火災報知設備や消火設備など社会の安全に貢献する製品・サービスを提供しており、品質管理には万全を期していますが、予期せぬ事情により製品・サービスにおいて不具合等が発生した場合、社会的信用が低下し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。