能美防災 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

能美防災 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する能美防災は、火災報知設備や消火設備の製造、販売、施工、保守点検までの一貫体制を持つ総合防災企業です。直近の業績は、堅調な市場需要を背景に価格改定や業務効率化を推進した結果、売上高が過去最高を更新するとともに、各段階利益においても増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、能美防災株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 能美防災ってどんな会社?


同社は、火災報知設備や消火設備の製造から施工、保守までを手がける総合防災企業です。

(1) 会社概要


1916年12月に能美商会として創立され、1924年3月に日本初の自動火災報知装置や防火機器の製造販売および工事請負を開始しました。1944年に日本防災通信工業を設立し、1948年に能美防災工業へ社名変更、1989年に現在の能美防災となりました。1991年に東証第一部銘柄に指定されています。直近では2026年2月に気象防災・宇宙防衛事業を展開する明星電気を子会社化し、事業領域を拡大しました。

従業員数は連結で3,251名、単体で1,961名です。筆頭株主は事業会社で親会社のセコムで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
セコム 51.89%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.06%
能美防災代理店持株会 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長は岡村武士氏、代表取締役社長は長谷川雅弘氏が務めています。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
岡村武士 代表取締役会長 1983年4月同社入社。常務取締役、専務取締役などを経て、2021年6月に代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。
長谷川雅弘 代表取締役社長営業統括本部長 1978年4月同社入社。常務取締役、取締役常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。
中村雅之 取締役執行役員技術本部長兼情報システム室・環境システム事業部担当 1988年4月同社入社。研究開発センター長、執行役員などを経て、2025年6月より現職。
千田岳彦 取締役 2016年4月セコム入社。同社執行役員を経て、2023年6月より現職。
藤井裕之 取締役常勤監査等委員 1987年4月同社入社。CSR推進室長、常勤監査役を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、塩谷愼(元富士銀行取締役)、平野啓子(大阪芸術大学教授)、鷲見哲也(東京海上日動オートサポートセンター社長)、長濱晶子(弁護士)、福田真人(元三井住友海上火災保険副社長)、安部道雄(富士電機特別顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「火災報知設備」「消火設備」「保守点検等」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 火災報知設備


自動火災報知設備、環境監視システム、防火戸、防排煙設備などの製造、販売、取付工事を提供しています。オフィスビルや商業施設、住宅など幅広い建築物の安全を担うシステムを構築し、顧客の火災検知ニーズに対応しています。

収益源は機器の販売代金や取付工事の請負代金です。運営は同社のほか、子会社の上海能美消防設備が製造販売を担い、販売や取付工事は岩手ノーミや日信防災などの各地域の子会社が担当しています。また、親会社のセコムに対して機器をOEM供給しています。

(2) 消火設備


各種スプリンクラー設備、泡消火設備、プラント防災設備、トンネル防災設備などの製造、販売、取付工事を提供しています。高層ビルなどの一般物件から、プラントやトンネルといった特殊物件まで、多様な環境に応じた消火システムを展開しています。

収益源は消火設備機器の販売代金および取付工事の請負代金です。運営は同社が製造販売を担うほか、販売や取付工事については能美エンジニアリングや東北ノーミなどの子会社、および持分法適用関連会社のコーアツなどが施工を請け負って展開しています。

(3) 保守点検等


火災報知設備や消火設備をはじめとする各種防災設備が常に正常に稼働するよう、定期的な保守点検および設備の補修工事を提供しています。設備のライフサイクル全般をサポートし、長期的な安全性の維持に貢献しています。

収益源は顧客からの定期的な保守点検費用および補修工事代金です。運営は同社が直接サービスを提供するほか、九州ノーミやノーミシステム、北興通信などの子会社が各地域で保守点検や補修工事の代行を行っています。

(4) その他


報告セグメント以外の事業として、駐車場車路管制システムや気象防災・宇宙防衛機器の製造、販売、施工、保守などを展開しています。屋外を中心とする防災領域や駐車場などの関連分野へサービスを提供しています。

収益源はシステムや機器の販売、施工および保守に係る代金です。運営は、駐車場車路管制システムを日信防災が行い、気象防災・宇宙防衛機器に関しては明星電気が製造販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、一時的な落ち込みがあったものの、その後は順調に拡大を続けています。主力事業の需要が堅調に推移したことに加え、価格改定や業務効率化の推進が奏功し、売上および利益水準ともに着実な成長傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,129億円 1,055億円 1,185億円 1,337億円 1,397億円
経常利益 132億円 94億円 122億円 162億円 194億円
利益率(%) 11.7% 8.9% 10.3% 12.1% 13.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 77億円 54億円 62億円 91億円 110億円

(2) 損益計算書


堅調な市場環境のもとでコスト上昇に対して計画的な価格対応を進めた結果、売上総利益率および営業利益率ともに改善を見せており、収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,337億円 1,397億円
売上総利益 465億円 523億円
売上総利益率(%) 34.7% 37.5%
営業利益 157億円 183億円
営業利益率(%) 11.7% 13.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が108億円(構成比32%)、業務委託費が32億円(同10%)、研究開発費が30億円(同9%)を占めています。売上原価(完成工事原価)のうち、外注工事費が300億円(構成比44%)、材料費が283億円(同42%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて増収基調となり、特に消火設備セグメントが特殊物件の需要増や手持ち工事の順調な進捗により高い利益の伸びを示しました。火災報知設備もコスト上昇を価格改定で吸収し利益を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
火災報知設備 480億円 510億円 85億円 100億円 19.6%
消火設備 451億円 469億円 84億円 108億円 23.0%
保守点検等 346億円 367億円 80億円 80億円 21.8%
その他 60億円 50億円 4億円 5億円 10.0%
連結(合計) 1,337億円 1,397億円 157億円 183億円 13.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 115億円 146億円
投資CF -71億円 -159億円
財務CF -75億円 -68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「防災事業のパイオニアとしての使命に徹し、社会の安全に貢献する」ことを社是に掲げています。また、「研究開発からメンテナンスまでの一貫体制の下、災害から生命・財産を守るための最新・最適な防災システムを、日本全国そして世界に提供し続けること」を経営理念として事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、あらゆる災害から生命・財産を守ること、そしてサステナブルな未来を創ることに挑戦する文化を重視しています。社員一人ひとりの個性を尊重し、多様な能力や価値観を持つ人材が活躍・成長できる組織風土の確立を目指しており、自律と挑戦を重んじる姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中長期ビジョン2028」を策定しており、2026年3月期から2029年3月期までの4年間を「ステージⅢ」と位置付けて目標の達成に取り組んでいます。

- 連結売上高:1,700億円以上(2029年3月期)
- 営業利益率:12%以上
- ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存事業の収益拡大と利益率の向上、事業の拡大、新規事業創出とスケール化を重点施策としています。人材採用・育成の強化やデジタルトランスフォーメーションの加速に取り組むほか、防災周辺領域や隣接業界へのM&Aの積極的な展開、組織的な対応による「事業の深耕と探索」を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「飛躍的成長への人事戦略」を掲げ、社員と組織双方の成長サイクルを加速させる施策を展開しています。多様な能力・価値観を持つ人材に活躍・成長の機会を提供するため、ワークライフバランスの促進、戦略的な異動配置、早期戦力化に向けた育成体制の構築、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)の推進に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.4歳 14.8年 6,925,273円


※平均年間給与は賞与及び基準賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.3%
男性育児休業取得率 53.7%
男女賃金差異(全労働者) 71.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.1%
男女賃金差異(非正規労働者) 61.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(74.1%)、障がい者雇用率(2.48%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業界や公共事業の動向リスク


同社グループの事業は建設業界や公共事業の動向に大きく影響を受けます。景気の後退により民間の設備投資や公共投資が減少した場合には、受注環境が悪化し、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 消防法などの法的規制リスク


同社グループの売上の主要な部分は、消防法による規制に関連して生じています。今後、関連する法規制が急激に変化した場合には競争環境に変化が生じ、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品・サービスの不具合リスク


自動火災報知設備や消火設備など、社会の安全に貢献する製品・サービスを提供しており品質管理には万全を期していますが、予期せぬ事情で社会の安全を損なう不具合が発生した場合、社会的信用が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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