※本記事は、マツダ株式会社 の有価証券報告書(第159期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マツダってどんな会社?
「走る歓び」を追求する自動車メーカーです。独自の技術開発とデザインで、世界中の顧客に感動を提供しています。
■(1) 会社概要
1920年に東洋コルク工業として設立され、1931年に三輪トラックの生産を開始しました。1949年に東京証券取引所に上場し、1967年には世界初のロータリーエンジン搭載量産車を発売しました。1979年にフォードモーターと資本提携を行い、2017年にはトヨタ自動車と業務資本提携に関する合意書を締結しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は48,783名、単体では23,391名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は2017年に業務資本提携を結んだトヨタ自動車です。第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.81% |
| トヨタ自動車 | 5.07% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は毛籠 勝弘氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菖 蒲 田 清 孝 | 代表取締役会長 | 1982年入社。オートアライアンス(タイランド)社長、常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2021年6月より現職。 |
| 毛 籠 勝 弘 | 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)〔コミュニケーション・サステナビリティ統括〕 | 1983年入社。グローバルマーケティング本部長、マツダモーターオブアメリカ会長兼CEOなどを経て、2023年6月より現職。 |
| ジェフリー・エイチ・ガイトン | 代表取締役専務執行役員兼CFO(最高財務責任者)〔社長補佐、経営企画・北米事業・欧州事業・コスト革新統括〕 | 1996年フォードモーター入社。マツダモーターヨーロッパ社長兼CEO、マツダモーターオブアメリカ社長兼CEOなどを経て、2023年6月より現職。 |
| 青 山 裕 大 | 取締役専務執行役員〔コスト低減統括〕 | 1988年入社。グローバルマーケティング本部長、マツダモーターヨーロッパ社長兼CEO、取締役専務執行役員兼CCEOなどを経て、2025年4月より現職。 |
| 廣 瀬 一 郎 | 取締役専務執行役員〔社長補佐〕 | 1984年入社。パワートレイン開発本部長、マツダモーターヨーロッパ副社長、取締役専務執行役員兼CTOなどを経て、2025年4月より現職。 |
| 向 井 武 司 | 取締役専務執行役員兼CSCO(最高サプライチェーン責任者)〔ものづくり・サプライチェーン変革・カーボンニュートラル推進統括〕 | 1986年入社。車両技術部長、オートアライアンス(タイランド)副社長、専務執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 小 島 岳 二 | 取締役専務執行役員兼CSO(最高戦略責任者)〔カーボンニュートラル推進統括補佐〕 | 1989年入社。商品戦略本部長、広報本部長、専務執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
| 渡 部 宣 彦 | 取締役監査等委員(常勤) | 1982年入社。中国事業本部長、マツダ(中国)企業管理有限公司董事長、常務執行役員などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤 潔(元東京エレクトロン代表取締役社長)、小川 理子(パナソニック ホールディングス 執行役員)、北村 明良(元三井住友銀行代表取締役兼専務執行役員)、柴崎 博子(元東京海上日動火災保険常務執行役員)、杉森 正人(元住友商事専務執行役員)、井上 宏(元福岡高等検察庁検事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「その他の地域」の各報告セグメントにおいて事業を展開しています。
■(1) 日本
マツダブランドの自動車および同部品の製造・販売を行っています。主な顧客は国内の一般消費者や法人顧客です。国内では同社および倉敷化工などが製造を担い、国内販売会社を通じて顧客へ製品を提供しています。
収益は、自動車および部品の販売対価として顧客から受け取ります。製造は主にマツダが行い、販売は関東マツダ、東海マツダ販売などの販売会社が担うほか、一部の大口顧客に対しては同社が直接販売を行っています。
■(2) 北米
米国、カナダ、メキシコにおいて、自動車および同部品の製造・販売を行っています。主な顧客は北米地域の一般消費者や法人顧客です。現地での製造拠点や販売網を通じて事業を展開しています。
収益は、自動車および部品の販売により得ています。製造はメキシコのマツダモトールマヌファクトゥリングデメヒコなどが担い、販売は米国ではマツダモーターオブアメリカ、カナダではマツダカナダなどが担当しています。
■(3) 欧州
ドイツ、イギリス、スペインなど欧州各国において、自動車および同部品の販売を行っています。主な顧客は欧州地域の一般消費者や法人顧客です。各国の販売子会社を通じて製品を提供しています。
収益は、自動車および部品の販売対価として顧客から受け取ります。販売はドイツのマツダモータース(ドイツランド)、その他の欧州各国にある販売子会社などが担当しており、欧州事業の統括はマツダモーターヨーロッパが行っています。
■(4) その他の地域
オーストラリア、タイ、中国などのアジア・オセアニア地域およびその他地域において、自動車および同部品の製造・販売を行っています。主な顧客は各地域の一般消費者や法人顧客です。
収益は、自動車および部品の販売により得ています。製造はタイのオートアライアンス(タイランド)などが担い、販売はオーストラリアのマツダオーストラリア、その他の地域の販売会社などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では5兆円規模に達しています。利益面では、経常利益率が変動しており、当期は前期と比較して低下しました。当期純利益も前期の過去最高益から減益となりましたが、黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 2兆8,821億円 | 3兆1,203億円 | 3兆8,268億円 | 4兆8,277億円 | 5兆0,189億円 |
| 経常利益 | 283億円 | 1,235億円 | 1,859億円 | 3,201億円 | 1,890億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 4.0% | 4.9% | 6.6% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -358億円 | 845億円 | 898億円 | 1,377億円 | 601億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費・一般管理費の増加により、営業利益率は低下しました。特に販売費及び一般管理費の負担が増加傾向にあり、収益性を圧迫する要因となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4兆8,277億円 | 5兆0,189億円 |
| 売上総利益 | 1兆0,387億円 | 1兆0,782億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.5% | 21.5% |
| 営業利益 | 2,505億円 | 1,861億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1,680億円(構成比19%)、広告宣伝費が1,551億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
北米セグメントは販売台数の増加や為替影響により増収となりましたが、製造コスト増などで減益となりました。日本、欧州、その他の地域はいずれも減収減益となり、特に日本セグメントの利益減少幅が大きくなっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 9,426億円 | 9,379億円 |
| 北米 | 2兆3,424億円 | 2兆7,753億円 |
| 欧州 | 8,877億円 | 7,314億円 |
| その他の地域 | 6,550億円 | 5,743億円 |
| 連結(合計) | 4兆8,277億円 | 5兆0,189億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金に加え、財務活動でも資金を調達し、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている「積極型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4,189億円 | 3,056億円 |
| 投資CF | -1,799億円 | -2,000億円 |
| 財務CF | -847億円 | 901億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」をPURPOSE(存在意義)とし、「いきいきとする体験をお届けする」ことを約束(PROMISE)しています。2030年に向けては「走る歓び」で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になることを目指し、地球、社会、人への貢献を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「ひと中心」「飽くなき挑戦」「おもてなしの心」をVALUES(価値観)として重視しています。これらを基盤に、ステークホルダーと共に価値創造を進め、コミュニティと共に歩む姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期までの中期経営計画において、持続的な成長と強靭な経営体質の実現を目指しています。財務指標として以下を掲げています。
* 売上:約4.5兆円
* 売上高営業利益率(ROS):5%以上
* 自己資本利益率(ROE):10%以上
* 配当性向:安定的に30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
2030年に向けた経営方針として、カーボンニュートラルへの挑戦と電動化戦略を推進しています。地域特性に応じた「マルチソリューション」を提供し、3つのフェーズで段階的に電動化を進めます。また、「ライトアセット戦略」により、既存資産の活用と協業を通じて投資効率を高め、持続的な成長を目指します。
* 2030年のグローバルでのバッテリーEV比率想定:25–40%
* 2035年にグローバル自社工場のカーボンニュートラル実現
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「最大の経営資源は人である」との考えのもと、従業員の多様性を尊重し、いきいきと働ける環境づくりを目指しています。高度なソフトウェア技術者等の獲得に向けた拠点開設や、従業員の能力発揮を促す「BLUEPRINT」プログラムの展開、柔軟な賃金引き上げを含む還元などを通じ、人材の確保と育成、エンゲージメント向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 17.4年 | 7,145,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 76.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業を取り巻く経済情勢
日本、北米、欧州、アジアを含む世界各地域で製品を販売しており、各市場の景気動向や需要変動の影響を強く受けます。景気減速、需要構造の変化、価格競争の激化などが進んだ場合、経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 国際的な事業活動に伴うリスク
海外市場での事業展開には、政治・経済要因、法規制の変更、関税等の輸出入規制、物流の逼迫、人材確保の難易度、ストライキ、テロや疫病による社会的混乱などのリスクが内在しています。特に米国による追加関税の影響が長期化した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 自然災害や事故に関するリスク
大規模な地震、台風、豪雨、洪水などの自然災害や火災等の事故が発生し、製品供給に重大な支障をきたした場合、経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。製造設備等の主要施設に関しては防災対策を行っていますが、完全に回避できる保証はありません。



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