スズキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スズキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、四輪車、二輪車、船外機などの製造販売を主力としています。直近の業績トレンドとしては、インド市場などでの堅調な販売により売上収益が前年比で増加し増収となった一方、人財や技術への先行投資の拡大等により営業利益は減少となり、増収減益の決算となっています。


※本記事は、スズキ株式会社の有価証券報告書(第160期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. スズキってどんな会社?


同社は四輪車、二輪車、船外機および電動車いすなどの製造販売を主力として展開する輸送用機器メーカーです。

(1) 会社概要


1909年に鈴木式織機製作所として創業し、1920年に法人化されました。1949年に株式を上場し、1952年に輸送用機器部門へ進出、1955年に軽四輪乗用車を発売しました。1982年にはインドでの四輪車合弁生産に基本合意するなどグローバル展開を進め、1990年に現在のスズキへ社名を変更しています。

現在の従業員数は連結で76,889名、単体で17,871名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行となっています。また、第3位には資本提携関係にあるトヨタ自動車が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.08%
日本カストディ銀行(信託口) 6.49%
トヨタ自動車 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.0%です。代表取締役社長は鈴木俊宏氏が務めています。社外取締役の比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木俊宏 取締役社長(代表取締役)(取締役会議長) 1994年同社入社。生産本部磐田工場長、代表取締役副社長などを経て2015年より代表取締役社長。2021年より現職。
石井直己 取締役副社長(代表取締役) 1989年トヨタ自動車入社。2020年同社入社。常務役員、専務役員を経て2022年に副社長。2026年より現職。
加藤勝弘 取締役副社長 1986年同社入社。四輪商品・原価企画本部長、品質保証本部長、専務役員技術統括などを歴任し、2026年より現職。
村松鋭一 取締役専務役員 1984年同社入社。国内営業本部や各販売会社の社長を歴任。2025年に専務役員グローバル営業統括となり、2026年より現職。
岡島有孝 取締役専務役員 1983年同社入社。広報部長や各販売会社の社長を経て2022年に渉外広報本部長兼東京支店長。2026年より現職。


社外取締役は、堂道秀明(元駐インド・ブータン特命全権大使)、江草俊(元東芝電池事業部長)、高橋尚子(パラスポーツ推進ネットワーク理事長)、青山朝子(TDK電子部品ビジネスカンパニーCFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「四輪事業」「二輪事業」「マリン事業」および「その他事業」を展開しています。

四輪事業


同社グループの中核として、軽自動車や小型自動車、普通自動車などの開発・製造を行っています。顧客は国内外の一般消費者や法人であり、地域のニーズに合わせた電動車や内燃機関車の提供を通じて日々の移動を支えています。

主な収益源は、世界各国の販売会社や販売代理店を通じて得られる車両および部品の販売代金です。製造は同社をはじめマルチ・スズキ・インディア社などの子会社が行い、販売はスズキ自販近畿等の子会社が担っています。

二輪事業


一般消費者向けに二輪車やバギーの開発・製造・販売を展開しています。趣味や嗜好品として利用される欧米向けの大型製品から、生活の足や業務用途として利用されるインドなどの新興国向けの製品まで幅広く扱っています。

主な収益源は、国内および海外の販売ネットワークを通じて得られる二輪車や関連部品の販売代金です。製造は同社のほかスズキ・モーターサイクル・インディア社などが担当し、販売はスズキ二輪等の子会社が担っています。

マリン事業


水上の楽しむ用途や働く用途で使用される船外機の開発・製造を行っています。顧客は世界中の一般消費者や水上業務に従事する事業者であり、耐久性と信頼性に優れた製品とサービスを提供しています。

主な収益源は、国内外の販売会社などを通じた船外機および関連部品の販売代金です。製造は同社およびタイ・スズキ・モーター社などが手掛け、販売は国内ではスズキマリン、海外ではスズキ・マリンUSA社などが担っています。

その他事業


高齢者等の移動手段となる電動車いすの製造販売のほか、太陽光発電関連事業や不動産事業などを展開しています。既存事業の強みを活かし、地域の社会課題解決に貢献するサービスや新しいモビリティの提供を進めています。

主な収益源は、電動車いすの販売代金や不動産の販売・賃貸収入などです。電動車いすの販売はスズキ自販近畿などの販売子会社を通じて行われ、不動産の販売事業は子会社であるスズキビジネスが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近3期間で継続して成長しており、堅調な拡大傾向を示しています。税引前利益および当期利益も増加傾向にありますが、直近の期間では成長投資などの影響により利益率がやや低下し、税引前利益は微増にとどまっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 5兆3,575億円 5兆8,252億円 6兆2,930億円
税引前利益 5,917億円 7,302億円 7,307億円
利益率(%) 11.0% 12.5% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 3,170億円 4,161億円 4,393億円

(2) 損益計算書


売上収益および売上総利益は順調に拡大していますが、研究開発などの先行投資の増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益は減少しています。結果として営業利益率は前期から低下する形となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5兆8,252億円 6兆2,930億円
売上総利益 6,206億円 6,741億円
売上総利益率(%) 10.7% 10.7%
営業利益 6,429億円 6,229億円
営業利益率(%) 11.0% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2,598億円(構成比26%)、発送費が979億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の四輪事業はインド市場などの需要増により売上を伸ばしましたが、人財や技術への投資拡大により減益となりました。二輪事業は販売増が寄与し増収増益を達成した一方、マリン事業は米国関税の影響等で増収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
四輪事業 5兆3,052億円 5兆7,064億円 5,676億円 5,476億円 9.6%
二輪事業 3,981億円 4,545億円 408億円 448億円 9.9%
マリン事業 1,097億円 1,195億円 306億円 266億円 22.3%
その他事業 121億円 126億円 38億円 39億円 31.0%
連結(合計) 5兆8,252億円 6兆2,930億円 6,429億円 6,229億円 9.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6,698億円 7,175億円
投資CF -4,756億円 -4,995億円
財務CF -1,860億円 -1,273億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.7%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様の立場になって」という社是を掲げ、顧客や社会から必要とされる企業であることを目指しています。お客様の生活に密着したインフラモビリティを提供し、人々の移動を支える頼れるパートナーとなることを使命としており、社会課題を解決しながら持続的な成長を実現していくことを理念としています。

(2) 企業文化


同社は「現場・現物・現実・原理・原則」という事実に基づく徹底した課題解決のアプローチや、「小・少・軽・短・美」という資源やエネルギーを極小化するものづくりの思想を重視しています。また「中小企業型経営」という柔軟で機動的な組織運営の行動理念を徹底し、これらを日々の業務における判断軸としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年度に向けた中期経営計画「By Your Side」の中で、以下の具体的な経営目標を設定しています。労務費や原材料費の高騰環境下においても収益体質を改善させ、資本効率を重視した経営を推進していく計画です。

・売上収益:8兆円
・営業利益:8,000億円
・営業利益率:10%
・ROE:13%(2030年代前半には15%を目指す)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は成長戦略として「エネルギー極少化」を掲げ、車両の軽量化や高効率な内燃機関、ハイブリッドシステムの開発を進めます。また、インド市場を最重要市場と位置づけ、シェア50%の獲得や電気自動車(BEV)の生産拡大を目指します。今後の具体的な投資計画は以下の通りです。

・2030年度までの設備投資:2兆円(うちインド関連1兆2,000億円)
・2030年度までの研究開発費:2兆円(うちエネルギー極少化関連1兆3,500億円)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財開発は会社の一丁目一番地」という方針のもと、従業員の能力発揮と成長を促すための投資に注力しています。事業構造の劇的な変化に対応するため、既存の枠にとらわれない多様な専門性を持つ人財の採用や育成を進めています。また、社員一人ひとりがやりがいを感じて働ける風土醸成や制度の改善に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 18.5年 8,276,061円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 73.2%
男女賃金差異(全労働者) 66.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 56.0%


また、同社は「人的資本に関する取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.45%)、有給休暇取得率(80.7%)、特定健診実施率(97.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動と環境規制への対応


各国の自動車に対するCO2排出や燃費規制の強化がリスクとなります。規制遵守のための開発費用の増加や、対応が遅れた場合の販売機会の逸失、炭素税導入に伴う操業コストの増加が、同社の業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定市場への事業集中


同社はインド市場への依存度が高く、連結売上収益の4割強をインドでの事業が占めています。そのため、インドにおける需要の変動、経済情勢の悪化、他社との競争の激化などの予期せぬ環境変化が発生した場合、同社グループの業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) 部品調達の安定性確保


同社は調達先の分散に取り組んでいますが、特定の取引先に依存している部品も存在します。自然災害や地政学的な要因、人権問題などによりサプライチェーンが寸断され、部品の継続的・安定的な確保が困難になった場合、生産の遅延やコストの増加が生じる可能性があります。

(4) 新技術に伴う品質保証


同社は製品の品質向上に努めていますが、電動化や自動運転技術などの導入により品質要求は複雑化・高度化しています。万が一、新技術に起因する予期せぬ不具合が発生し大規模なリコール等に至った場合、対応費用の発生やブランドイメージの毀損を招くおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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