スズキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スズキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、四輪車、二輪車、船外機等の製造販売を主な事業としています。当連結会計年度の業績は、販売台数の増加や価格改定、為替の影響などにより、売上収益、各利益段階ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、スズキ株式会社 の有価証券報告書(第159期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. スズキってどんな会社?


四輪車、二輪車、船外機等を世界中で展開する輸送用機器メーカーです。「小・少・軽・短・美」を掲げ、小型車やインド市場に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1909年に鈴木式織機製作所として創業し、1920年に鈴木式織機として設立されました。1955年に軽四輪乗用車を発売し自動車事業へ進出、1982年にはインド政府と合弁生産に基本合意し、主力となるインド市場への足掛かりを築きました。2019年にはトヨタ自動車と資本提携契約を締結しています。

連結従業員数は74,077名、単体従業員数は17,414名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第3位には2019年に資本提携を行った事業会社のトヨタ自動車が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.55%
日本カストディ銀行(信託口) 7.59%
トヨタ自動車 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.0%です。代表取締役社長は鈴木俊宏氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 俊宏 取締役社長(代表取締役)(取締役会議長) 1994年同社入社。経営企画室長、海外営業担当などを経て、2015年代表取締役社長に就任。2021年より現職。
石井 直己 取締役副社長(代表取締役) 1989年トヨタ自動車入社。2020年同社入社。経営企画室長、副社長を経て、2023年より現職。
加藤 勝弘 取締役副社長 1986年同社入社。四輪パワートレイン技術本部長、技術統括などを経て、2025年より現職。
岡島 有孝 取締役専務役員 1983年同社入社。スズキ自販中部社長、広報部長、渉外広報本部長などを経て、2025年より現職。
村松 鋭一 取締役専務役員 1984年同社入社。スズキ自販千葉社長、国内営業本部中日本営業部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、堂道秀明(元駐インド・ブータン特命全権大使)、江草俊(元東芝執行役員常務)、高橋尚子(元五輪女子マラソン優勝者)、青山朝子(元日本電気執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「四輪事業」「二輪事業」「マリン事業」および「その他」事業を展開しています。

四輪事業


軽自動車、小型自動車、普通自動車の製造販売を行っており、世界中の一般消費者を主な顧客としています。製造は同社のほか、海外では子会社のマルチ・スズキ・インディア社などで行っています。

顧客への製品販売による代金が主な収益源です。販売は、国内では株式会社スズキ自販近畿をはじめとする販売会社を通じて行い、海外では子会社のイタリアスズキ社などを通じて行っています。物流サービスはスズキ輸送梱包株式会社が担当しています。

二輪事業


二輪車やバギーの製造販売を行っており、趣味嗜好品として、または生活の足・業務用途として利用する消費者を顧客としています。製造は同社のほか、インドの子会社スズキ・モーターサイクル・インディア社などで行っています。

顧客への製品販売による代金が主な収益源です。販売は、国内では株式会社スズキ二輪などの販売会社を通じて行い、海外では米国の子会社スズキ・モーター・USA社などを通じて行っています。

マリン事業


船外機の製造販売を行っており、水上で楽しむ、または働く顧客を対象としています。製造は同社のほか、タイの子会社タイスズキモーター社で行っています。

顧客への製品販売による代金が主な収益源です。販売は、国内では株式会社スズキマリンが、海外では米国の子会社スズキ・マリン・USA社などの販売会社を通じて行っています。

その他事業


電動車いす、太陽光発電、不動産などの事業を展開しています。電動車いすは高齢者や移動に制約のある顧客向けに提供されています。

製品や不動産の販売による代金が主な収益源です。電動車いすの販売は株式会社スズキ自販近畿などが、不動産の販売は株式会社スズキビジネスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上収益は順調に増加しており、第159期には5.8兆円を超えています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに前期比で増加傾向にあり、利益率も向上しています。全体として増収増益の基調を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 5兆3,575億円 5兆8,252億円
税引前利益 5,917億円 7,302億円
利益率(%) 11.0% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3,170億円 4,161億円

(2) 損益計算書


売上収益の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は改善傾向にあります。営業利益についても前期から大幅に増加しており、営業利益率も上昇しています。コストコントロールと売上拡大が利益押し上げに寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 5兆3,575億円 5兆8,252億円
売上総利益 1兆4,107億円 1兆5,687億円
売上総利益率(%) 26.3% 26.9%
営業利益 4,938億円 6,429億円
営業利益率(%) 9.2% 11.0%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2,410億円(構成比26%)、発送費が2,011億円(同21%)を占めています。売上原価のうち、製品期首棚卸高、当期製品製造原価等の合計から算出される売上原価合計が4兆2,565億円となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて前期比で増収を達成しています。特に主力の四輪事業は売上・利益ともに大きく伸長し、全社の業績を牽引しました。二輪事業も増収増益となり、その他事業も利益率が大幅に向上しています。マリン事業は若干の減収となりましたが増益を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
四輪事業 4兆8,696億円 5兆3,052億円 4,239億円 5,676億円 10.7%
二輪事業 3,650億円 3,981億円 391億円 408億円 10.3%
マリン事業 1,117億円 1,097億円 274億円 306億円 27.9%
その他事業 112億円 121億円 34億円 38億円 31.5%
連結(合計) 5兆3,575億円 5兆8,252億円 4,938億円 6,429億円 11.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金により、借入金の返済や配当支払いを行いつつ、将来のための投資も実施できている健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5,018億円 6,698億円
投資CF -4,774億円 -4,756億円
財務CF -9,290億円 -1,860億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は社是の第一に「お客様の立場になって価値ある製品を作ろう」を掲げ、お客様と社会に必要とされる会社となることを目指しています。法令遵守、安全、品質を最優先とし、「生活に密着したインフラ企業」として、移動の自由を提供し続けることを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


「小・少・軽・短・美」を合言葉に、小さく、少なく、軽く、短く、美しくという行動理念を重視しています。また、「現場・現物・現実」に基づく三現主義や、スピーディーな決断と行動を促す「中小企業型経営」を大切にし、全員が創業者精神を持って高い目標に挑戦する風土があります。

(3) 経営計画・目標


2030年度に向けた経営目標として、規模の拡大と収益体質の改善を掲げています。BEV比率の増加やコスト上昇などの環境変化に対応しながら、持続的な成長を目指しています。

* 売上収益:8兆円
* 営業利益:8,000億円
* 営業利益率:10%
* ROE:13%

(4) 成長戦略と重点施策


「エネルギーを極少化させる技術」を核に、カーボンニュートラルの実現と成長の両立を図ります。地域ごとのエネルギー事情に応じた製品展開を進め、特にインドではシェア50%以上とBEV市場でのリーダーシップを目指します。また、サービスモビリティやバイオガス事業など新規分野への挑戦も加速させます。

* 成長投資(2030年度まで):設備投資・研究開発費あわせて4兆円
* 設備投資(インド関連):1兆2,000億円
* 研究開発費(エネルギー極少化関連):1兆3,500億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財開発は会社の一丁目一番地」とし、社是と行動理念を実践できる人材の育成に注力しています。新人事制度の導入により、職務能力の向上と個の成長を促し、挑戦と行動を評価する仕組みを整えています。多様な人材が能力を発揮できるよう、健康経営やダイバーシティ推進を含めた社内環境整備にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 18.4年 7,849,435円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 65.7%
男女賃金差異(全労働者) 64.5%
男女賃金差異(正規雇用) 65.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者数(2233.98人)、有給休暇取得率(81%)、特定健診実施率(99.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動及び低炭素社会への移行


CO2・燃費規制の強化や炭素税の導入は、研究開発費の増加や操業コストの上昇を招く可能性があります。また、平均気温上昇によるエネルギーコスト増などの物理的リスクも存在し、これらが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品の開発・投入力


顧客ニーズや環境変化に対応した新商品を適時に開発・投入できなければ、販売シェアや売上が低下するリスクがあります。電動化や先進技術への対応遅れは競争力低下につながり、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) インド事業への集中


連結売上収益の4割強をインド事業が占めており、同国での需要変動や競争激化、経済情勢の変化が業績に大きな影響を与えるリスクがあります。特定市場への依存度が高いことは、地域固有のリスクに対する脆弱性につながります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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