日本精機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本精機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日本精機は、四輪車や二輪車用の計器類、ヘッドアップディスプレイなどの車載部品、民生用機器、樹脂材料の製造販売、自動車販売を主な事業として展開しています。直近の連結業績では、二輪車用計器の販売増や原価低減活動などが奏功し、増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、日本精機株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本精機ってどんな会社?


四輪車や二輪車向けの車載計器やヘッドアップディスプレイなどの開発・製造を主力事業として展開しています。

(1) 会社概要


1946年に設立され、時計や計器類の製造販売を開始しました。1989年には東京証券取引所市場第二部などに株式を上場しています。2000年にエヌエスアドバンテックを設立し、2010年には新潟マツダ自動車の株式を取得して自動車販売へも参入しました。2026年には台湾に設計支店を設立しています。

現在の従業員数は連結で13246名、単体で1453名です。筆頭株主は事業会社の本田技研工業で、第2位も事業提携先であるアルプスアルパインとなっています。第3位には金融機関が名を連ねており、取引先との強固な関係性や安定した資本基盤を背景に、グローバルな事業展開を支える体制を構築しています。

氏名 持株比率
本田技研工業 6.53%
アルプスアルパイン 5.21%
THE CHASE MANHATTAN BANK,N.A. LONDONSECS LENDING OMNIBUS ACCOUNT 3.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は永野恵一氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
永野恵一 代表取締役社長社長執行役員 1989年4月同社入社。ニッポンセイキヨーロッパゼネラルマネジャー等を経て、2024年6月同社代表取締役副社長に就任。2025年6月より現職。
佐藤浩一 代表取締役会長 1985年4月同社入社。エヌ・エス・インターナショナル取締役副社長などを経て、2020年6月同社代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。
吉原正博 取締役副社長執行役員グローバル品証本部、グローバル生産本部、長岡工場管掌 1985年9月同社入社。上海日精儀器総経理などを経て、2024年6月同社取締役専務執行役員に就任。2026年4月より現職。
東政利 取締役専務執行役員システム設計本部、技術開発本部管掌地域担当:日本(NSウエスト、共栄エンジニアリング) 1984年4月同社入社。タイ-ニッポンセイキ取締役会長等を歴任。2025年6月同社取締役専務執行役員に就任し、2026年4月より現職。
平田祐二 取締役(常勤監査等委員) 1984年4月同社入社。上海日精儀器総経理などを歴任。2025年5月同社顧問を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、島田さつき氏(ユーロフィンFQLソリューションビジネス担当執行役員)、富山栄子氏(学校法人新潟総合学園開志創造大学大学院教授)、鈴木北吉氏(パラマウントベッド上席執行役員技術開発本部長)、榎本俊彦氏(日本精工理事)、山田聡之氏(新潟簡易裁判所司法委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「車載部品事業」「民生部品事業」「樹脂コンパウンド事業」「自動車販売事業」および「その他」事業を展開しています。

車載部品事業


四輪車や二輪車用の計器類、ヘッドアップディスプレイ、各種センサーなどの開発・製造販売を行っています。高度な光学設計技術を活用し、安全で快適なモビリティ環境を支えるインターフェース製品を国内外の自動車メーカー等の顧客に提供しています。

製品の販売を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。運営は同社のほか、エヌエスアドバンテック、NSウエストなどの国内関係会社や、米国、メキシコ、中国、タイ、インドなどに展開する多数の海外子会社が現地ニーズに合わせて事業を行っています。

民生部品事業


OA機器や情報機器向けの操作パネル、空調・住設機器向けのコントローラーなどの開発および製造販売を行っています。車載事業で培った高い品質基準やユーザーインターフェースの技術を応用し、様々な民生用機器の操作性向上に貢献する製品を提供しています。

製品の引渡し時に顧客から代金を受け取ることで収益を上げています。事業の運営は同社が主体となりつつ、エヌエスアドバンテックが空調・住設機器コントローラーを担当するほか、タイ-ニッポンセイキや東莞日精電子などの海外子会社も展開しています。

樹脂コンパウンド事業


さまざまな工業製品の材料となる樹脂材料の加工および製造販売を行っています。顧客が求める特性や色調に合わせた樹脂の着色加工などを手がけ、車載部品や民生部品などの多様な用途向けに高品質な樹脂素材を安定的に供給しています。

加工・製造した樹脂材料を顧客に販売することで収益を得ています。本事業の運営は、主に国内子会社であるエヌエスアドバンテックが担当しているほか、中国の海外子会社である日精工程塑料(南通)も現地での加工・販売事業を担っています。

自動車販売事業


新潟県内において、新車や中古車の販売、および車検・整備等のアフターサービス事業を展開しています。地域に密着した販売網を通じて、個人から法人まで幅広い顧客に対して自動車関連の総合的なサービスを提供しています。

車両の引渡しによる販売代金や、整備・車検等のサービス提供に伴う手数料などを主な収益源としています。事業の運営は、ホンダ四輪販売長岡や新潟マツダ自動車などの国内子会社が担い、それぞれのブランド車両を取り扱っています。

その他


上記の報告セグメントに含まれない事業として、グループ内外に向けた貨物運送事業や、情報システムに関するソフトウエアの開発販売、受託計算サービスなどを展開しています。多様なニーズに応える付加価値の提供を行っています。

運送サービスやシステム開発・運用等の対価として手数料やサービス料を受け取る収益モデルです。同社が貨物運送を行うほか、日精サービスがソフトウエア開発を、NS・コンピュータサービスが受託計算などの情報システムサービスを運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上収益は安定して右肩上がりの成長を続けています。利益面では一時期マイナスとなったものの、その後は着実に黒字転換を果たし、近年は収益性の改善が進んでいます。事業基盤の強化により、持続的な成長傾向がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2236億円 2758億円 3124億円 3164億円 3279億円
税引前利益 -14億円 64億円 139億円 93億円 139億円
利益率(%) -0.6% 2.3% 4.5% 3.0% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -52億円 13億円 53億円 61億円 82億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期から堅調に増加しています。売上総利益は一時的に減少したものの、販売費及び一般管理費等のコントロールや原価低減活動の成果により、営業利益は増益を達成しており、本業における稼ぐ力が着実に向上していることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3164億円 3279億円
売上総利益 106億円 84億円
売上総利益率(%) 3.4% 2.6%
営業利益 96億円 116億円
営業利益率(%) 3.0% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が36億円(構成比10%)、従業員給料が20億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の車載部品事業は、二輪車用計器の販売増や原価低減活動により増収増益を牽引しています。自動車販売事業やその他の事業も安定して売上を伸ばす一方で、民生部品事業は営業損失が継続しており、樹脂コンパウンド事業は受注減により減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
車載部品事業 2581億円 2672億円 69億円 85億円 3.2%
民生部品事業 136億円 139億円 -3億円 -3億円 -2.2%
樹脂コンパウンド事業 107億円 96億円 7億円 6億円 5.9%
自動車販売事業 263億円 270億円 15億円 13億円 4.9%
その他 207億円 237億円 11億円 17億円 7.0%
調整額 -129億円 -135億円 -2億円 -1億円 -1.1%
連結(合計) 3164億円 3279億円 96億円 116億円 3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を元手に積極的な投資を行いながら、借入金の返済等も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 153億円 405億円
投資CF -83億円 -129億円
財務CF -48億円 -139億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「安心と感動に満ちた世界と未来をつくります」をパーパスに掲げ、「つながる技術で、インターフェースの価値を創造する企業を目指します」をビジョンとしています。みえないモノやコトをはかり最適なサービスを届けることを使命とし、筋肉質な企業としてチャレンジを続ける経営理念を持っています。

(2) 企業文化


同社は4つのバリュー(価値観)を重視しています。イノベーションで次世代の価値をつくる「新たな技術への挑戦」、顧客の期待に応える「品質へのこだわり」、持続可能な社会をつくる「人にやさしく、地球にやさしく」、そしてステークホルダーとの信頼を築く「たゆまぬ誠実さ」を日々の行動の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2026」を策定し、外部環境に左右されにくい筋肉質な体質への変革を通じて、さらなる業績回復とPBR1倍の達成を目指しています。最終年度である2027年3月期に向けた具体的な数値目標は以下の通りです。

* 売上収益:3,200億円
* 営業利益:140億円
* 親会社の所有者に帰属する当期利益:100億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は企業価値最大化に向け、4つの重点施策を推進しています。将来の成長ドライバーであるヘッドアップディスプレイ等の成長と収益性の確保、インドなど新興市場での二輪車用計器の販売加速を図ります。さらに新規事業領域での革新的な製品創出や、資本収益性の改善に向けたROE向上にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材こそが最も重要な経営資源」と位置づけ、従業員一人ひとりが働きがいを実感し能力を発揮できる企業風土の醸成を重視しています。「本質を捉え考えを持てる人材」「学び成長し続ける人材」「多様な環境で価値を生み出せる人材」を求め、自律的なキャリア形成や自己啓発、グローバル人材の育成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.7歳 18.3年 6,243,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.3%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用) 76.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(24.1%)、年次有給休暇の取得率(73.7%)、所定外労働時間(15.2時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要市場における景気動向と経済状況


同社は世界各地域で製造および販売を行っているため、各国の景気悪化や地政学リスク等により需要が著しく縮小した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、生産拠点の最適化やサプライチェーンの強化などを進めています。

(2) グローバル事業展開に伴う各国のカントリーリスク


米州、欧州、アジア等での事業展開において、予期せぬ法規制の変更や政治・経済的不安、社会的混乱などが生じた場合、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。日々の情報収集を通じて各国の動向に迅速に対応する体制を整えています。

(3) 車載分野の技術革新への対応遅れ


自動車業界の電動化や自動運転機能の高度化などに伴い、ソフトウェアやデータの活用へと競争の源泉が移行しています。こうした急速な技術変化や市場ニーズに適切に対応できない場合、優位性の確保が難しくなるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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