日本精機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本精機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、四輪・二輪車用計器やヘッドアップディスプレイなどの車載部品事業を主力とする企業です。当連結会計年度の業績は、売上収益3,164億円(前期比1.3%増)、営業利益96億円(同13.0%増)となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、日本精機株式会社 の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本精機ってどんな会社?


車載用計器やヘッドアップディスプレイで世界的なシェアを持つメーカーです。民生機器や樹脂材料も扱います。

(1) 会社概要


1946年に設立され、時計・計器類の製造販売を開始しました。1989年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1995年の上海日精儀器有限公司設立以降、中国・アジア・欧米などグローバルに拠点を展開しています。近年では2024年に新潟県長岡市に蔵王工場を新設するなど、生産体制の強化を進めています。

同グループの従業員数は連結13,450人、単体1,578人です。筆頭株主は主要取引先である本田技研工業で、第2位は資本業務提携関係にあるアルプスアルパインです。第3位は常任代理人を通じて株式を保有するJP MORGAN CHASE BANKとなっています。

氏名 持株比率
本田技研工業 6.54%
アルプスアルパイン 5.23%
JP MORGAN CHASE BANK 385632 4.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は佐藤浩一氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 浩一 代表取締役社長社長執行役員 1985年入社。エヌ・エス・インターナショナル社取締役副社長、日本精機取締役専務執行役員、代表取締役専務などを経て、2020年6月より現職。
永野 恵一 代表取締役副社長副社長執行役員4輪事業本部、2輪・センサ事業本部、コンポーネント事業本部、車載システム設計本部、事業管理本部管掌 1989年入社。ニッポンセイキヨーロッパ社ゼネラルマネジャー、日本精機取締役専務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
吉原 正博 取締役専務執行役員グローバル品証本部、グローバル生産本部、長岡工場管掌地域担当:日本(ものづくり) 1985年入社。上海日精儀器有限公司董事長、日本精機取締役常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
東 政利 取締役常務執行役員技術開発本部、グローバル購買本部管掌地域担当:インド 1984年入社。タイ-ニッポンセイキ社取締役会長、日本精機事業管理本部長などを経て、2020年6月より現職。
島田 さつき 取締役 元富士通クオリティ・ラボ執行役員。現ユーロフィンFQLソリューションビジネス担当執行役員。2024年6月より現職。
永井 達哉 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。日本精機管理本部経営企画管理部長、常勤監査役などを経て、2019年6月より現職。


社外取締役は、島田さつき(現ユーロフィンFQL執行役員)、斉木悦男(あさひ新潟法律事務所代表)、富山栄子(事業創造大学院大学副学長)、鈴木北吉(元サンデン取締役兼常務執行役員)、榎本俊彦(元日本精工理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「車載部品事業」「民生部品事業」「樹脂コンパウンド事業」「自動車販売事業」および「その他」事業を展開しています。

車載部品事業


四輪車用計器、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、二輪車用計器、汎用計器、各種センサー、高密度実装基板EMSなどを提供しています。主な顧客は自動車メーカーや二輪車メーカーです。

製品の販売対価を収益源としています。運営は、同社をはじめ、エヌエスアドバンテック、NSウエスト、ユーケーエヌ・エス・アイ社などの国内外のグループ会社が行っています。

民生部品事業


OA・情報機器操作パネルや空調・住設機器コントローラーなどを製造・販売しています。これらはオフィス機器メーカーや住設機器メーカーなどに提供されています。

製品の販売による対価を収益としています。運営は、同社、エヌエスアドバンテック、タイ-ニッポンセイキ社、香港日本精機有限公司などが担当しています。

樹脂コンパウンド事業


樹脂材料の加工および販売を行っています。顧客のニーズに合わせた樹脂コンパウンド製品を提供しています。

加工・販売された樹脂材料の対価を収益源としています。運営は、エヌエスアドバンテックや日精工程塑料(南通)有限公司などが担っています。

自動車販売事業


新車・中古車の販売および車検・整備等のサービスを提供しています。一般消費者や法人顧客を対象としています。

車両の販売代金および整備・サービス料を収益源としています。運営は、ホンダ四輪販売長岡、新潟マツダ自動車などが地域密着で行っています。

その他


貨物運送、ソフトウエアの開発販売、受託計算などの事業を展開しています。各事業に関連する物流やシステムサポートも担っています。

運送サービス料やソフトウエア開発・販売対価、計算受託料などを収益としています。運営は、同社(貨物運送)、日精サービス、NS・コンピュータサービスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は増加傾向にあり、特に第79期(2024年3月期)にかけて大きく伸長しました。利益面では、第77期に赤字を計上しましたが、その後は回復基調にあり、直近の第80期(2025年3月期)には増収増益を達成しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2,169億円 2,236億円 2,758億円 3,124億円 3,164億円
税引前利益 62億円 -14億円 64億円 139億円 93億円
利益率(%) 2.9% -0.6% 2.3% 4.5% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 -52億円 13億円 53億円 61億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で微増し、売上総利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費も増加していますが、営業利益は前期を上回り、営業利益率も改善傾向を示しています。本業の収益性は向上していると言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,124億円 3,164億円
売上総利益 90億円 106億円
売上総利益率(%) 2.9% 3.4%
営業利益 85億円 96億円
営業利益率(%) 2.7% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が128億円(構成比35%)、荷造運搬費が56億円(同15%)を占めています。売上原価についても同様の費目が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の車載部品事業は増収増益となり、全社の業績を牽引しました。自動車販売事業も大幅な増益を記録しています。一方、民生部品事業は減収となり営業損失を計上しました。樹脂コンパウンド事業やその他事業は増収増益で推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
車載部品事業 2,530億円 2,581億円 63億円 69億円 2.7%
民生部品事業 171億円 136億円 6億円 -3億円 -2.5%
樹脂コンパウンド事業 105億円 107億円 5億円 7億円 6.6%
自動車販売事業 262億円 263億円 8億円 15億円 5.6%
その他 182億円 207億円 9億円 11億円 5.4%
調整額 -127億円 -129億円 -6億円 -2億円 -
連結(合計) 3,124億円 3,164億円 85億円 96億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 246億円 153億円
投資CF 379億円 -83億円
財務CF -596億円 -48億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も56.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「安心と感動に満ちた世界と未来をつくります」というパーパス(存在意義)を掲げています。ビジョンとして「つながる技術で、インターフェースの価値を創造する企業」を目指し、「みえないものをみえるようにします」というミッションのもと、最適な製品とサービスの提供に努めています。

(2) 企業文化


同社は「筋肉質な企業としてチャレンジを続け、社会と企業の持続的な繁栄に貢献します」という経営理念のもと、4つのバリューを重視しています。具体的には「新たな技術への挑戦」「品質へのこだわり」「人にやさしく、地球にやさしく」「たゆまぬ誠実さ」を行動の指針とし、すべてのステークホルダーとの信頼関係構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画を「業績回復期」と位置づけています。毎年1%の営業利益回復を目指し、最終年度の数値目標を以下の通り設定しています。

* 売上高:3,300億円
* 営業利益:165億円(営業利益率5%)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「ヘッドアップディスプレイ事業強化」「欧州事業の黒字化」「新規顧客開拓と新規商材開発」の3点を重点施策としています。世界シェア1位のヘッドアップディスプレイの拡販や新技術開発に加え、欧州事業の構造改革による収益改善、さらにアセアンやインド市場での二輪車用計器のQCD強化に取り組む方針です。また、サプライチェーン改革や業務プロセス改革を通じて、環境変化に強い筋肉質な企業体質への変革を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材こそが最も重要な経営資源」との考えのもと、個人の能力開発と成長を支援する人材育成を行っています。自己啓発支援制度の導入やキャリアカウンセラーによる面談などを通じ、自律的なキャリア形成を促進しています。また、多様な人材が活躍できるダイバーシティ推進や、ワークライフバランスを整えるための社内環境整備にも注力し、組織の創造性と競争力の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 18.0年 6,038,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 63.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.7%
男女賃金差異(正規雇用) 75.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(71.4%)、所定外労働時間(14.9時間)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(24.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要市場における経済状況


日本、米州、欧州、アジアを含む世界各地域で事業を展開しているため、景気悪化や関税政策の変更、地政学的リスクによる需要縮小が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、地産地消の推進やサプライチェーン強化などで対応しています。

(2) 世界各国での事業展開


海外展開に伴い、各国の予期しない法規制の変更、政治的・経済的要因、テロや戦争、社会的混乱などのリスクが存在します。同社は各国の状況や法規制情報を収集し、必要な対応を行うことでリスク管理に努めています。

(3) 為替変動


海外売上比率が高く、為替変動が業績や財政状態に影響を与える可能性があります。特に円換算額の変動が経営成績に影響するため、主要通貨の変動をモニタリングし、為替予約等のヘッジ策を講じています。

(4) 特定の取引先への依存


本田技研工業グループへの販売高が連結売上収益の10%以上を占めており、同顧客の動向や戦略変更が業績に影響を与える可能性があります。これに備え、主要顧客との取引維持に加え、新規顧客の開拓によるリスク分散を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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