三菱自動車工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三菱自動車工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の自動車メーカー。主要事業は自動車および部品の開発・生産・販売、金融事業です。2024年3月期の連結業績は、売上高2兆7896億円、経常利益2090億円で増収増益となりました。アセアン地域での販売や電動車の投入に注力し、収益性の向上を図っています。


※本記事は、株式会社三菱自動車工業 の有価証券報告書(第3期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三菱自動車工業ってどんな会社?


三菱グループに属する自動車メーカーです。SUVやピックアップトラック、電動車(PHEV)に強みを持ち、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1970年に三菱重工業の自動車部門が独立して発足しました。2003年にはトラック・バス事業を分社化。2016年に日産自動車と資本業務提携を締結し、ルノー・日産・三菱アライアンスの一角を担っています。2019年に指名委員会等設置会社へ移行するなど、ガバナンス体制の強化も進めています。

同グループは連結従業員28,982人、単体13,844人の体制で運営されています。筆頭株主は事業会社の日産自動車で、第2位は同じく事業会社の三菱商事です。両社とは資本業務提携や事業運営上の協力関係にあり、強力なパートナーシップのもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
日産自動車 34.01%
三菱商事 20.00%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性19名、女性3名、計22名で構成され、女性役員比率は13.6%です。代表執行役社長 兼最高経営責任者は加藤隆雄氏です。取締役会における社外取締役比率は84.6%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 隆雄 取締役代表執行役社長 兼最高経営責任者 1984年同社入社。ロシア組立事業推進室上級エキスパート、名古屋製作所副所長、インドネシア現地法人社長などを経て、2021年4月より現職。
中村 達夫 代表執行役副社長(営業担当) 1986年三菱商事入社。同社執行役員自動車事業本部長などを経て、2016年三菱自動車工業執行役員アセアン本部長。2023年4月より現職。
松岡 健太郎 代表執行役副社長(CFO) 1987年三菱銀行入行。三菱UFJ銀行取締役専務執行役員などを経て、2023年6月同社顧問。同年7月より現職。
山口 武 代表執行役副社長(開発・TCS・デザイン担当) 1988年日産自動車入社。同社常務執行役員、東風汽車有限公司副総裁などを経て、2024年4月より現職。
稲田 仁士 取締役 1980年三菱商事入社。米国三菱商事SVPなどを経て、2011年同社入社。常務執行役員、専務執行役員などを歴任し、2022年6月より現職。


社外取締役は、平工奉文(元経済産業省製造産業局長)、宮永俊一(三菱重工業取締役会長)、幸田真音(作家)、佐々江賢一郎(元外務事務次官)、坂本秀行(日産自動車取締役)、中村嘉彦(公認会計士)、田川丈二(日産自動車専務執行役員)、幾島剛彦(日産自動車専務執行役員)、垣内威彦(三菱商事取締役会長)、三毛兼承(三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役)、大串淳子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車事業」および「金融事業」を展開しています。

(1) 自動車事業


普通・小型乗用車、軽自動車、SUV、ピックアップトラック、電動車(EV・PHEV)およびその部品の開発・生産・販売を行っています。主な製品には「アウトランダー」「エクリプス クロス」「デリカ」「eKクロス」「トライトン」などがあり、一般消費者や法人を顧客としています。

収益は、顧客への車両および部品の販売代金等から得ています。運営は、開発・生産を担う同社を中心に、販売を担う東日本三菱自動車販売などの国内販売会社、生産・販売を行うミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド等の海外子会社が行っています。

(2) 金融事業


同社製品を購入・利用する顧客に対し、販売金融やリース等の金融サービスを提供しています。自動車のリース事業や販売金融事業を通じて、顧客の車両購入をサポートしています。

収益は、顧客からのリース料やローン金利収入等から得ています。運営は主に、三菱自動車ファイナンス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2020年3月期から2024年3月期までの5期間を見ると、売上高は2021年3月期に一度落ち込みましたが、その後は回復・拡大傾向にあり、直近では2兆7,896億円に達しています。利益面では、2020年3月期と2021年3月期に損失を計上しましたが、2022年3月期以降は黒字化し、経常利益・当期利益ともに安定した水準を維持しています。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 22,703億円 14,555億円 20,389億円 24,581億円 27,896億円
経常利益 -38億円 -1,052億円 1,010億円 1,820億円 2,090億円
利益率(%) -0.2% -7.2% 5.0% 7.4% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -70億円 -2,734億円 401億円 1,891億円 1,661億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は2兆4,581億円から2兆7,896億円へと約13%増加しました。売上総利益も増加し、営業利益率は6.8%から7.7%へと改善しています。コストコントロールと販売価格の適正化が進み、収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 24,581億円 27,896億円
売上総利益 5,228億円 5,688億円
売上総利益率(%) 21.3% 20.4%
営業利益 1,905億円 1,910億円
営業利益率(%) 7.7% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が936億円(構成比25%)、役員報酬及び給料手当が814億円(同22%)を占めています。売上原価については、詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


自動車事業が売上高の大部分を占めており、前期比で大幅な増収となっています。金融事業も売上高は増加しましたが、利益は微減となりました。全体として、主力の自動車事業の好調が連結業績の拡大を牽引しています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
自動車事業 24,266億円 27,553億円 1,861億円 1,879億円 6.8%
金融事業 315億円 343億円 49億円 44億円 12.9%
その他 206億円 221億円 - - -
調整額 -190億円 -199億円 -4億円 -14億円 -
連結(合計) 24,581億円 27,896億円 1,905億円 1,910億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、財務規律を維持しつつ持続可能な成長を図り、企業価値を高めることで株主への成果配分を安定的に維持することを基本としており、フリー・キャッシュ・フローを経営管理指標の一つとして設定しています。

営業活動では、主に税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少、仕入債務の増加により収入超過となりました。投資活動では、主に設備投資の支払により支出超過となりましたが、前年度と比較すると支出は減少しました。財務活動では、主に長期借入金の返済により支出超過となりましたが、前年度と比較すると支出は増加しました。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 1,736億円 1,408億円
投資CF -531億円 -1,389億円
財務CF -619億円 377億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「モビリティの可能性を追求し、活力ある社会をつくる」というビジョンを掲げています。また、ミッションとして、株主、顧客、従業員、パートナー、社会といった全てのステークホルダーに対し、魅力ある商品・サービスの提供や持続的発展への貢献、透明性の高い経営を行うことを定めています。

(2) 企業文化


ビジョン・ミッションを実現するための行動指針として「MMC WAY」を制定しています。「お客様第一」「挑戦」「協働」「誠実」「情熱」といった価値観を共有し、これらを基礎として全役員・社員が守るべき規範であるグローバル行動規範を定めています。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2025年度までの中期経営計画「Challenge 2025」を推進しています。安定的な収益基盤の確立と更なる成長を目指し、以下の主要な数値目標を掲げています。

* 販売台数:110万台
* 営業利益:2,200億円
* 営業利益率:7%

(4) 成長戦略と重点施策


「Challenge 2025」に基づき、地域戦略としてアセアン・オセアニア地域での成長と、そこでの商品を他地域へ展開することによる収益力向上を目指しています。また、今後5年間で電動車9車種を含む16車種を投入する計画です。

* カーボンニュートラル実現に向けた温室効果ガス排出削減
* デジタル化推進と新ビジネス領域への進出
* アライアンス(ルノー・日産・三菱)との連携強化による相互補完

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「MMC WAY」を体現できる人材の育成と、従業員が能力を発揮できる職場環境の整備を方針としています。中期経営計画の実現に向け、「より一層働きやすい職場への改革」「教育・リスキリングプログラムの充実」「多様で幅広い人材確保の推進」を重点項目として掲げ、人材開発会議等を通じて施策を実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 42.1歳 15.3年 7,863,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用数(448人)、従業員エンゲージメントスコア(+1ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 部品・原材料調達の影響


グローバルな調達網を持つ一方で、希少金属などの特定の地域に偏在する原材料を使用しています。需給変動、地政学リスク、自然災害等により供給が停止した場合や、人権リスクへの対応が遅れた場合、生産遅延やコスト増、ブランド毀損により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品の品質・安全性の影響


品質向上や安全性確保に努めていますが、製品の欠陥や不具合による大規模なリコールや賠償請求が発生するリスクがあります。これらが発生した場合、多額の費用負担やブランドイメージの低下により、経営成績等に悪影響を与える可能性があります。

(3) 法規制等の影響


各国の環境規制(排ガス、燃費等)や安全規制、貿易規制など、広範な法令の適用を受けています。法令違反や対応の遅れが生じた場合、罰則や訴訟、社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 訴訟その他の法的手続の影響


事業活動において、製造物責任訴訟などの当事者となる可能性があります。保険等の対策は講じていますが、想定外の不利な判決が出た場合、損害賠償金の支払いや社会的信用の低下により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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