※本記事は、株式会社エクセディ の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. エクセディってどんな会社?
自動車用のクラッチやトルクコンバータなど、駆動系部品の製造販売を行うグローバルメーカーです。
■(1) 会社概要
1923年に創業し、1950年に株式会社大金製作所として設立されました。1973年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1995年に現社名へ変更しました。海外展開を積極的に進め、1977年の米国販売会社設立を皮切りに、アジア、欧州などに拠点を拡大しました。2001年には株式会社アイシン(当時アイシン精機)と業務提携契約を締結しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は10,997名、単体では2,553名体制です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は株式会社シティインデックスファースト、第3位は株式会社レノとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.30% |
| シティインデックスファースト | 9.70% |
| レノ | 6.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は吉永徹也氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉永 徹也 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。エクセディアメリカ社長、上級執行役員、AT製造本部長、専務執行役員などを経て、2022年6月より現職。 |
| 豊原 浩 | 代表取締役専務執行役員 | 1995年同社入社。財務企画本部長、管理本部長、常務執行役員などを歴任。2022年6月より代表取締役。2025年4月より経営戦略推進本部長を兼務。 |
| 廣瀬 譲 | 取締役常務執行役員 | 2001年同社入社。エクセディグローバルパーツ社長、営業本部長などを経て、2019年6月より取締役。2025年4月より戦略事業本部長を兼務。 |
社外取締役は、髙野利紀(元ローム株式会社取締役)、林隆司(元東京ラヂエーター製造株式会社代表取締役社長)、井上福子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、伊藤紀美子(田嶋株式会社代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「MT」「AT」「TS」および「その他」事業を展開しています。
■(1) MT(手動変速装置関連事業)
手動変速装置(マニュアルトランスミッション)に使用されるクラッチディスク、クラッチカバー、2マスフライホイールなどを製造・販売しています。自動車メーカー等に向けて、駆動力を伝達・遮断する重要保安部品を提供しています。
収益は、国内外の自動車メーカーや補修部品市場の顧客からの製品代金等で構成されます。運営は、同社およびダイナックス、エクセディ機工、エクセディ精密などの国内子会社のほか、エクセディアメリカ、エクセディタイランドなどの海外グループ各社が行っています。
■(2) AT(自動変速装置関連事業)
自動変速装置(オートマチックトランスミッション)用のトルクコンバータやAT部品を製造・販売しています。乗用車等のスムーズな発進や変速を実現するための流体変速装置および関連部品を供給しています。
収益は、自動車メーカー等への製品販売により得ています。運営は、同社、ダイナックス、エクセディ奈良などの国内拠点のほか、エクセディダイナックス上海、エクセディダイナックスメキシコなどの海外拠点が担っています。
■(3) TS(産業機械用駆動伝動装置事業)
建設機械や産業車両、農業機械などに使用されるパワーシフトトランスミッションやその部品を製造・販売しています。過酷な使用環境にも耐えうる耐久性の高い駆動伝達装置を提供しています。
収益は、建設機械メーカーや産業車両メーカー等への製品販売から得ています。運営は、同社、エクセディ鋳造、ダイナックスなどのほか、海外ではダイナックスアメリカなどが担当しています。
■(4) その他
2輪車用クラッチ、機械装置、金型治工具の製造販売や運送請負などを行っています。特に2輪用クラッチはインドやアセアン市場向けに展開しています。
収益は、2輪車メーカーへの製品販売や運送サービスの対価等から得ています。運営は、同社、エクセディ物流、エクセディマニファクチャリングインドネシア、エクセディベトナムなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期は減収かつ大幅な損失を計上しましたが、2025年3月期は売上収益が微増し、各利益段階で黒字転換を果たしました。特に税引前利益と当期利益は、前期の損失状態から大きく回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,274億円 | 2,611億円 | 2,856億円 | 3,083億円 | 3,096億円 |
| 税引前利益 | 91億円 | 195億円 | 99億円 | -133億円 | 204億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 7.5% | 3.5% | -4.3% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 50億円 | 125億円 | 46億円 | -100億円 | 127億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は横ばい圏内で推移しましたが、売上原価の抑制などにより売上総利益が増加しました。営業利益については、前期の赤字から当期は黒字に転換し、営業利益率は大幅に改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,083億円 | 3,096億円 |
| 売上総利益 | 539億円 | 594億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.5% | 19.2% |
| 営業利益 | -154億円 | 218億円 |
| 営業利益率(%) | -5.0% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が115億円(構成比32%)、運搬費が50億円(同14%)を占めています。また、研究開発費は75億円(同20%)となっています。
■(3) セグメント収益
AT事業は若干の減収となりましたが、MT事業やその他事業の増収が補い、全体として売上は微増しました。利益面では、前期に巨額の損失を計上したAT事業が黒字転換したことで、全体の収益性が大きく改善しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| MT(手動変速装置関連事業) | 719億円 | 741億円 | 95億円 | 108億円 | 14.5% |
| AT(自動変速装置関連事業) | 2,023億円 | 2,002億円 | -259億円 | 124億円 | 6.2% |
| TS(産業機械用駆動伝動装置事業) | 150億円 | 139億円 | 21億円 | 17億円 | 12.0% |
| その他 | 252億円 | 276億円 | 8億円 | 0億円 | 0.0% |
| 調整額 | -62億円 | -62億円 | -19億円 | -30億円 | - |
| 連結(合計) | 3083億円 | 3096億円 | -154億円 | 218億円 | 7.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、本業で得た資金を投資と借入返済や株主還元に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 376億円 | 315億円 |
| 投資CF | -134億円 | -87億円 |
| 財務CF | -114億円 | -287億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.2%でプライム市場の製造業平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「喜びの創造(お客様の喜び、社会の喜び、私たちの喜び)」という企業理念を掲げています。また、経営方針として「グローバル企業として成長・進化し、持続可能な社会の実現に貢献する(サステナビリティ)」を定めており、顧客満足度の高い商品をグローバルに提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念等の実現に向けた基盤として「7 Values」を定めています。具体的には、「安全最優先」「最高品質」「納期厳守」「競争力あるものづくり」「スピード」「働いてよかったと思える会社」「ESG重視(環境・社会的課題・経営管理体制)」の7つの柱を重視し、事業活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度の目標として、主要な経営指標(KPI)を設定しています。また、2026年度までの中期経営計画「変革/REVOLUTION 2026」を策定し、段階的な目標達成を目指しています。
* 売上高3,300億円(2030年度)
* 営業利益300億円(2030年度)
* ROE 8%(2030年度)、6.7%(2026年度)
* 新製品売上高比率30%(2030年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業ポートフォリオの転換」を掲げ、現行ビジネスの収益改善と新事業創出への資源集中を進めます。MT事業では新興国の補修部品市場開拓、AT・TS事業では生産体制最適化を図り、電動化戦略を加速させる方針です。
* AT事業におけるグローバルな生産能力再編
* 新興国補修部品市場の開拓と製品ライン拡充
* 協業やM&Aを通じた新事業の創出・育成
* 成長投資と株主還元の両立による最適な資本構成の追求
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働いてよかったと思える会社の実現」等を掲げ、人財育成とダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。年間研修時間をKPIに設定し階層別教育を整備するとともに、女性活躍推進やワークライフバランスの実現に向け、休暇制度や勤務制度(在宅、フレックス等)の拡充により社内環境の改善を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.2歳 | 16.8年 | 5,959,658円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人財育成(研修時間/人/年)(38.9時間)、総労働時間(1940.1時間)、有給休暇取得率(93.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車メーカーの生産動向の影響
同社グループの売上の約9割は自動車用伝導装置事業が占めており、自動車の電動化や主要顧客の生産・販売動向の影響を強く受けます。特にAT事業の縮小リスクや、電動化への対応が遅れた場合の売上減少などが、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 海外展開に伴うリスク
世界各地で生産・販売を行っており、2025年3月期の売上収益の約6割は海外が占めています。特にアジア・オセアニア地域は重要市場ですが、各地の政治動向や金融情勢の変化による市場変動が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料・部品の調達リスク
製品の原材料の大部分と一部部品を外部から調達しています。価格高騰、需給逼迫、または調達先の不慮の事故などにより、原材料や部品の不足が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績に悪影響を与えるリスクがあります。
■(4) 固定資産に関する減損のリスク
保有する固定資産について、事業環境の変化や収益性の低下が生じた場合、減損損失を計上するリスクがあります。電動化の急激な進展などにより経営環境が悪化し、収益性が低下した場合には、財務諸表に影響が生じる可能性があります。



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