※本記事は、株式会社エクセディの有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. エクセディってどんな会社?
同社は自動車用のマニュアルクラッチやトルクコンバータなど、駆動系部品をグローバルに提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1923年に創業し、1950年に設立されました。1995年に現在のエクセディへと社名変更し、1997年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。グローバルに事業を拡大する中、近年はインホイールモータ開発の英国企業を買収するなど、自動車の電動化を見据えた次世代事業への投資も積極的に推進しています。
現在の従業員数はグループ全体で10,970名、単体で2,514名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位および第3位にはシティインデックスファーストならびにシティインデックスイレブンスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.60% |
| シティインデックスファースト | 8.00% |
| シティインデックスイレブンス | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は吉永徹也氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉永徹也 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。エクセディアメリカ社長、ダイナックス上海総経理、AT製造本部長などを歴任し、2022年6月より現職。 |
| 豊原浩 | 代表取締役専務執行役員 | 1995年同社入社。財務企画本部長、管理本部長などを経て、2022年6月より現職。2025年4月より経営戦略推進本部長も務める。 |
| 廣瀬譲 | 取締役常務執行役員 | 2001年同社入社。エクセディグローバルパーツ社長、営業本部長などを経て2019年6月取締役就任。2025年4月より戦略事業本部長。 |
社外取締役は、髙野利紀(元ローム取締役)、林隆司(元東京ラヂエーター製造代表取締役社長)、井上福子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、伊藤紀美子(田嶋代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、手動変速装置関連事業、自動変速装置関連事業、産業機械用駆動伝動装置事業、およびその他の事業を展開しています。
■手動変速装置関連事業(MT)
主に自動車向けのマニュアルトランスミッション用部品として、クラッチディスクやクラッチカバー、2マスフライホイールなどを製造・販売しています。補修用部品については独自の受発注システムを通じた即納体制を構築し、グローバルに積極的な販売活動を展開しています。
収益は、自動車メーカーや補修部品市場の顧客への製品販売によって得ています。運営は同社のほか、ダイナックスやエクセディ機工などの国内子会社、およびエクセディグローバルパーツ等の海外グループ各社が幅広く行っています。
■自動変速装置関連事業(AT)
オートマチックトランスミッション用のトルクコンバータやAT部品を製造・販売しています。ハイブリッド車(HEV)向けに、エンジンやモーターの振動を吸収するダンパー装置やトルクリミッター付きダンパーの開発なども手掛けています。
収益は、完成車メーカー等への製品販売から得ています。運営は同社を中心に、ダイナックス、ダイナックスアメリカ、エクセディダイナックス上海など、世界各国のグループ会社がそれぞれの現地で生産・販売を担っています。
■産業機械用駆動伝動装置事業(TS)
建設機械やフォークリフト、ラフテレーンクレーンなどに搭載されるパワーシフトトランスミッションおよび同部品を製造・販売しています。コスト競争力の強化を図るとともに、運転性や作業性の向上を目的とした製品を提供しています。
収益は、産業機械メーカーなどへの製品販売によって得ています。運営は同社やダイナックス、エクセディ機工、エクセディオーストラリアなどの各関連会社が担っています。
■その他
インドやアセアン地域で需要が拡大している2輪車用クラッチのほか、機械装置、金型治工具などの製造販売、および運送請負事業を行っています。さらに、電動化の進展に対応するため、インホイールモータや小型モビリティ用電動ユニットなどの新規事業も推進しています。
収益は、二輪車メーカーへの製品販売や各種サービス提供から得ています。運営は同社のほか、エクセディ物流やエクセディインディア、新たに子会社化した英国のProtean Electricなどが各事業を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は2022年3月期以降、増加傾向にありましたが直近では微減となっています。一方、利益面では2024年3月期に一時的な赤字を計上したものの、その後は不採算拠点の閉鎖やコスト構造の改善が進み、利益率は7%台まで回復して安定した利益水準を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2611億円 | 2856億円 | 3083億円 | 3096億円 | 3039億円 |
| 税引前利益 | 195億円 | 99億円 | -133億円 | 204億円 | 236億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 3.5% | -4.3% | 6.6% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 125億円 | 46億円 | -100億円 | 127億円 | 137億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となったものの、生産性向上などにより営業利益は増加し、営業利益率も7%台へと改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3096億円 | 3039億円 |
| 売上総利益 | 235億円 | 229億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.6% | 7.5% |
| 営業利益 | 218億円 | 222億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が64億円(構成比37%)、役員報酬及び給料手当が40億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
売上の中核を担う自動変速装置関連事業は受注減少により減収となりましたが、不採算拠点の整理等により利益は大きく改善しています。一方、その他の事業では売上が増加したものの、新事業に向けた研究開発費の増加等により営業赤字となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 手動変速装置関連事業 | 741億円 | 757億円 | 108億円 | 115億円 | 15.2% |
| 自動変速装置関連事業 | 2002億円 | 1887億円 | 124億円 | 157億円 | 8.3% |
| 産業機械用駆動伝動装置事業 | 139億円 | 128億円 | 17億円 | 15億円 | 11.9% |
| その他 | 276億円 | 328億円 | 0.0億円 | -28億円 | -8.7% |
| 調整額 | -62億円 | -61億円 | -30億円 | -37億円 | - |
| 連結(合計) | 3096億円 | 3039億円 | 218億円 | 222億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 315億円 | 406億円 |
| 投資CF | -87億円 | -201億円 |
| 財務CF | -287億円 | -170億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「喜びの創造(お客様の喜び、社会の喜び、私たちの喜び)」を企業理念として掲げています。また、「グローバル企業として成長・進化し、持続可能な社会の実現に貢献する(サステナビリティ)」という経営方針のもと、持続的な成長と社会課題の解決を目指して経営を行っています。
■(2) 企業文化
経営方針や長期ビジョンを実現するための重要な基盤として、「安全最優先」「最高品質」「納期厳守」「競争力あるものづくり」「スピード」「働いてよかったと思える会社」「ESG重視」という7つの柱(7 Values)を掲げ、顧客に満足される商品をグローバルに提供する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度の目標として以下の数値を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:3,300億円
* 営業利益:300億円
* 新製品売上高比率:30%
* ROE:10%(2026年度で7.5%)
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業ポートフォリオの転換」を骨子とし、基幹事業における稼ぐ力を改善しながら、新事業の創出に人材と資金を集中投入します。OEM事業の生産体制最適化やアフターマーケットの拡充で収益基盤を固めつつ、M&Aや外部との協業を通じて必要な技術を獲得し、電動化戦略を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働いてよかったと思える会社の実現」や「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を優先課題に掲げ、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境整備に取り組んでいます。階層別研修プログラムの充実や多様な勤務制度の拡充を通じ、新たな価値を創造する人材の育成と働きがいの向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.8歳 | 17.4年 | 6,270,036円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 88.6% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 78.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 79.4% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 64.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人財育成の研修時間(38.1時間)、総労働時間(1,940.3時間)、有給休暇取得率(95.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車メーカーの生産動向の影響
同社の売上収益の大部分は自動車用伝導装置で占められており、自動車業界の生産・販売動向に大きく依存しています。車両の電動化が急激に進む中で、市場ニーズに合致した環境対応製品や新たな電動化技術の開発が遅れた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 新規事業を含む事業投資リスク
脱炭素社会の実現や電動化の進展に対応するため、新たな技術の獲得を目指してM&Aやスタートアップ企業への出資など積極的な投資を行っています。しかし、投資先企業の事業活動が想定通りに推移しない場合や想定外の問題が生じた場合、減損損失の発生などを通じて財務状況に影響が及ぶリスクがあります。
■(3) 同業他社との間での価格競争リスク
自動車部品事業において、顧客獲得に向けた価格競争は激しさを増しています。同社は品質と技術力を強みにトップレベルのシェアを有していますが、将来的に価格競争力や製品の優位性を維持できない事態になれば、顧客離れや売価の下落を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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