※本記事は、新明和工業株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新明和工業ってどんな会社?
特装車や航空機、パーキングシステムなど、社会インフラを支える多彩な製品群を展開する老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
1920年に前身の川西機械製作所が設立され、航空機製造を開始しました。1949年に新明和興業が設立され、同年にはダンプトラック第1号を完成させています。1960年に現在の社名へ変更し、1967年に東京・大阪両証券取引所市場第一部へ指定替えとなりました。2020年には創業100周年を迎えています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は6,473名、単体では3,336名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は三信、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、機関投資家や関連企業が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.45% |
| 三信 | 10.21% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性4名の計10名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役取締役社長は五十川龍之氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 五 十 川 龍 之 | 代表取締役取締役社長 | 1983年入社。執行役員、パーキングシステム事業部長、常務執行役員、専務執行役員を経て、2017年4月より現職。 |
| 久 米 俊 樹 | 取締役常務執行役員財務部長 | 1989年入社。財務部長、執行役員を経て、2019年4月より現職。新明和商事代表取締役取締役社長を兼務。 |
| 椢 原 敬 士 | 取締役常務執行役員新事業戦略本部長 | 1985年入社。執行役員流体事業部長、常務執行役員を経て、2022年4月より現職。 |
| 西 田 幸 司 | 取締役監査等委員(常勤) | 1984年入社。経理部長、監査室長、監査部長、常勤監査役を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、長井聖子(元日本航空客室乗員室室長)、梅原俊志(元日東電工代表取締役)、浅見彰子(元タイガー魔法瓶取締役)、杦山栄理(弁護士)、木村文彦(公認会計士)、鈴木敦子(元アサヒグループホールディングス理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「特装車」「パーキングシステム」「産機・環境システム」「流体」「航空機」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 特装車
ダンプトラック、タンクローリ、塵芥車(ごみ収集車)、脱着ボデートラック、テールゲートリフタ、トレーラ、林業機械などの「働く車」を製造・販売しています。多様なニーズに合わせ、作業性と安全性を満たす製品を提供しています。
製品本体および部品の製造、販売、修理等による収益を得ています。主な運営主体は、新明和工業、新明和オートエンジニアリング、イワフジ工業、東邦車輛などです。
■(2) パーキングシステム
都市インフラに不可欠な機械式駐車設備および航空旅客搭乗橋を提供しています。機械式駐車設備はマンションや商業施設向けに、搭乗橋は空港向けに展開しています。
製品の製造、販売に加え、保守、改修等のサービスによる収益を得ています。運営は主に新明和工業、新明和パークテック、ShinMaywa(Asia)Pte. Ltd.などが行っています。
■(3) 産機・環境システム
産業用の自動電線処理機、成膜装置、ダイレクトドライブモータ等の機器や、ごみ中継施設、リサイクル施設等の環境関連システムを提供しています。製造業の生産性向上や効率的なごみ処理を支える事業です。
機器・システムの製造、販売、修理、および環境施設の運営管理等による収益を得ています。主な運営主体は、新明和工業、新明和ウエステックなどです。
■(4) 流体
下水処理施設や水害対策用の水中ポンプ、水処理関連設備・機器、高圧洗浄機などを提供しています。水インフラを支える多様な製品・システムを展開しています。
製品の製造、販売、据付工事、保守修理等による収益を得ています。運営は主に新明和工業、新明和アクアテクサービスなどが行っています。
■(5) 航空機
救難飛行艇「US-2」等の航空機製造や、民間航空機向け部品の製造を行っています。また、固定翼無人航空機の開発にも取り組んでいます。独自の技術を活かし、防衛省や海外航空機メーカーに製品を提供しています。
航空機および航空機部品の製造、販売、修理等による収益を得ています。運営は主に新明和工業、新明和岩国航空整備などが行っています。
■(6) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、建設事業、不動産事業、ソフトウェア事業等を展開しています。
建設工事の請負、不動産の賃貸・管理、システム開発・運用等による収益を得ています。主な運営主体は、明和工務店、新明和商事、新明和ソフトテクノロジなどです。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、直近の2025年3月期には2664億円に達しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに安定的に推移しており、特に直近では増益基調が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,092億円 | 2,168億円 | 2,252億円 | 2,571億円 | 2,664億円 |
| 経常利益 | 112億円 | 118億円 | 99億円 | 121億円 | 135億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 5.5% | 4.4% | 4.7% | 5.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 55億円 | 69億円 | 73億円 | 73億円 | 90億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は16%台後半へ向上し、営業利益率も5%台に改善しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,571億円 | 2,664億円 |
| 売上総利益 | 408億円 | 448億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.9% | 16.8% |
| 営業利益 | 118億円 | 140億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が114億円(構成比37.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
特装車、パーキングシステム、流体、その他セグメントが増収増益となり、全社の業績を牽引しました。一方、産機・環境システムは減収減益、航空機は増収ながら減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特装車 | 1,005億円 | 1,082億円 | 23億円 | 49億円 | 4.5% |
| パーキングシステム | 413億円 | 457億円 | 28億円 | 33億円 | 7.3% |
| 産機・環境システム | 430億円 | 333億円 | 34億円 | 22億円 | 6.6% |
| 流体 | 263億円 | 275億円 | 41億円 | 44億円 | 15.9% |
| 航空機 | 319億円 | 337億円 | 22億円 | 20億円 | 5.8% |
| その他 | 140億円 | 180億円 | 7億円 | 15億円 | 8.1% |
| 調整額 | -41億円 | -73億円 | -36億円 | -43億円 | - |
| 連結(合計) | 2,571億円 | 2,664億円 | 118億円 | 140億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
新明和工業は、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業基盤を強化しています。営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加し、これは主に税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の増加によるものです。一方で、投資活動では有形固定資産の取得を中心に資金支出があり、財務活動では配当金の支払いなどにより資金が支出されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 141億円 | 205億円 |
| 投資CF | -82億円 | -108億円 |
| 財務CF | -59億円 | -51億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「たゆまぬ技術革新で、安心な社会と快適な暮らしを支え続け、人々の幸せに貢献します」という経営理念を掲げています。創業100周年を機に、次の100年に向けて持続的成長を遂げる企業グループとなることを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念を拠り所とし、2030年を目標とした長期ビジョン「グローバルな社会ニーズに応え、都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する価値共創カンパニーを目指します」を掲げています。現状とのギャップをバックキャストで埋めていく「長期志向経営」への転換を進めています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度までの長期経営計画「SG-Vision 2030」と、その第2フェーズである中期経営計画「SG-2026」(2024~2026年度)を推進しています。「SG-2026」の主な経営指標は以下の通りです。
* 連結売上高:3,200億円
* 連結営業利益:180億円
* 海外売上高:800億円
* ROE:10%以上
* ROIC:7%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的成長の実現に向け、海外展開の加速(東南アジア・オセアニア・北米)、戦略的M&Aの実施、DX推進による新たな価値創造、新事業創出に取り組んでいます。また、ROICを基準に事業ポートフォリオを「成長力強化事業」(パーキング、産機・環境、流体)と「収益力強化事業」(特装車、航空機)に区分し、メリハリのある経営資源配分を行っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念実現のため、「意識醸成」「人権尊重と社内環境整備」「人材育成」を3つの柱とする人事基本方針を定めています。多様な価値観を尊重し、チームワークを大切にする組織風土づくりを進めるとともに、経営戦略と人材戦略を連動させるため、人材ポートフォリオを活用した動的な取り組みを実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 14.8年 | 7,276,188円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 175.0% |
| 男女賃金差異(全) | 65.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 69.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.5% |
※女性管理職比率については、内閣府令に基づき記載しておりません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX人材(重点ケイパビリティ)(187%)、エンゲージメントサーベイスコア(ポジティブ回答)(66ポイント)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 研究開発等の遅延
多額の投資を要する新製品開発や研究開発において、顧客からの求償・訴訟や想定外の変更、原材料高騰等に伴う原価低減の遅延が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。顧客との綿密な打ち合わせや進捗のモニタリングにより対応しています。
■(2) 脱炭素対応遅れ
温室効果ガス排出量削減に関する活動が計画通りに進捗しない場合や、法令改正等に適合しなくなった場合、エネルギー調達コスト増加や炭素税増税等により業績等に影響を及ぼす可能性があります。KPIや目標値を定めて低減活動を実施しています。
■(3) 法令違反
独占禁止法違反の疑いによる立入検査や排除措置命令・課徴金納付命令を受けた事実があり、法令遵守体制の不備は社会的評価・信用の低下や課徴金等により業績に影響を及ぼす可能性があります。再発防止策やコンプライアンス体制の強化に取り組んでいます。



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