島津製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

島津製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の精密機器メーカーです。計測機器、医用機器、産業機器、航空機器事業を展開しています。当連結会計年度は、半導体関連や防衛分野が好調で売上高は過去最高を更新しました。一方で、成長投資や人的投資の増加により、営業利益は前期比で減益となりました。(133文字)


※本記事は、株式会社島津製作所の有価証券報告書(第162期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 島津製作所ってどんな会社?


分析・計測機器や医用機器などの製造・販売を行う精密機器メーカーです。「科学技術で社会に貢献する」を社是とし、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社の創業は1875年、初代島津源蔵が教育用理化学器械製作の業を興したことに始まります。1917年に株式会社へ改組し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1956年には航空機器部門を新設し、1989年には英国のクレイトスグループを買収するなど事業を拡大。2022年には日水製薬(現島津ダイアグノスティクス)を子会社化し、ヘルスケア領域を強化しています。

連結従業員数は14,481名、単体では3,687名です。大株主は、資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主で、第2位は明治安田生命保険、第3位は日本カストディ銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.47%
明治安田生命保険 7.18%
日本カストディ銀行(信託口) 4.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは山本靖則氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山本靖則 代表取締役社長CEO 1983年同社入社。製造・情報システム・CS担当、経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当、専務執行役員CFOなどを経て、2022年4月より現職。
上田輝久 代表取締役会長取締役会議長 1982年同社入社。分析計測事業部長、専務執行役員などを経て、2015年代表取締役社長CEOに就任。2022年4月より現職。
渡邊明 取締役専務執行役員 1985年同社入社。産業機械事業部長、CFOなどを歴任。2025年4月よりリスクマネジメント担当、環境経営(GX)担当、コーポレート・トランスフォーメーション(CX)担当として現職。
丸山秀三 取締役 1982年同社入社。Shimadzu Scientific Instruments, Inc.社長、分析計測事業部長、専務執行役員、島津(香港)有限公司社長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、花井陳雄(元協和発酵キリン代表取締役会長)、中西義之(元DIC取締役会長)、濱田奈巳(マイル・ハイ・キャピタル共同創業者)、北野美英(元P&Gジャパン合同会社ディレクター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「計測機器」、「医用機器」、「産業機器」、「航空機器」および「その他」事業を展開しています。

(1) 計測機器事業


クロマト分析システム、質量分析システム、光分析システム、試験機などを提供しています。製薬、食品、環境、化学などの幅広い分野における研究開発や品質管理が主な用途であり、大学・官公庁の研究機関や民間企業の研究所、工場などが顧客です。

収益は、顧客への製品販売および保守サービス等の対価として得ています。運営は、同社および島津サイエンス東日本、島津アクセス、島津ダイアグノスティクス、米国のShimadzu Scientific Instruments, Inc.などが担っています。

(2) 医用機器事業


血管撮影システム、X線TVシステム、一般撮影システムなどの画像診断機器を提供しています。医療機関における診断や治療支援が主な用途であり、病院やクリニックなどの医療施設が顧客です。

収益は、医療機関への機器販売および保守サービス料から構成されます。運営は、同社および島津メディカルシステムズ、島根島津などのグループ会社が行っています。

(3) 産業機器事業


ターボ分子ポンプ、油圧機器、工業炉、ガラスワインダなどを提供しています。半導体製造装置メーカーや産業機械メーカー、自動車関連企業などが主な顧客であり、製造プロセスや製品への組み込み部品として利用されています。

収益は、製品の販売およびメンテナンスサービスから得ています。運営は、同社および島津産機システムズ、島津プレシジョンテクノロジーなどが主に行っています。

(4) 航空機器事業


フライトコントロールシステム、エアマネジメントシステム、コックピットディスプレイシステムなどを提供しています。防衛省向けの防衛装備品や、民間航空機メーカー向けの搭載機器として利用されています。

収益は、防衛省や航空機メーカーへの製品納入および修理・整備などのサービスから得ています。運営は、同社および島津エアロテックなどが担当しています。

(5) その他の事業


不動産賃貸、不動産管理、建設舗床業などを展開しています。

収益は、不動産の賃貸料や管理料、工事代金などから得ています。運営は、島津総合サービスや太平工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加し、成長傾向にあります。利益面では、2024年3月期まで増加基調でしたが、直近の2025年3月期は減益となりました。利益率は13%前後で推移しており、安定した収益性を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,935億円 4,282億円 4,822億円 5,119億円 5,390億円
経常利益 484億円 656億円 709億円 769億円 720億円
利益率(%) 12.3% 15.3% 14.7% 15.0% 13.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 270億円 361億円 405億円 425億円 410億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。特に販売費及び一般管理費の増加率が売上高の伸びを上回ったため、営業利益は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,119億円 5,390億円
売上総利益 2,208億円 2,344億円
売上総利益率(%) 43.1% 43.5%
営業利益 728億円 717億円
営業利益率(%) 14.2% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が625億円(構成比38.4%)、研究開発費が182億円(同11.2%)を占めています。同社は将来の成長に向けた研究開発投資や人的資本への投資を積極的に行っています。

(3) セグメント収益


計測機器事業は主力として売上の過半を占め、増収となりましたが、成長投資等により減益となりました。産業機器事業と航空機器事業は大幅な増益を達成しました。一方、医用機器事業は減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
計測機器 3,383億円 3,479億円 575億円 521億円 15.0%
医用機器 723億円 726億円 48億円 43億円 5.9%
産業機器 661億円 723億円 74億円 105億円 14.5%
航空機器 287億円 387億円 35億円 61億円 15.7%
その他 65億円 76億円 10億円 6億円 8.3%
調整額 - - △15億円 △18億円 -
連結(合計) 5,119億円 5,390億円 728億円 717億円 13.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や株主還元を行いつつ、将来のための投資も自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 301億円 520億円
投資CF △160億円 △232億円
財務CF △211億円 △484億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社是として「科学技術で社会に貢献する」、経営理念として「『人と地球の健康』への願いを実現する」を掲げています。これに基づき、事業を通じた社会課題の解決と、社会の一員としての責任ある活動の両輪で企業活動を行い、ステークホルダーからの信頼獲得と企業価値向上に努めています。

(2) 企業文化


同社は「島津グループサステナビリティ憲章」を制定し、「地球環境とグローバル社会の持続可能性」、「島津グループの事業活動の持続と成長」、「従業員の健康とエンゲージメントの向上」を目指すサステナビリティ経営を実践する文化を持っています。科学技術やノウハウを活かし、複雑化する社会課題に応える姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2023年度から2025年度までの中期経営計画を推進しており、最終年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:5,500億円以上
* 営業利益:800億円以上
* 営業利益率:14.5%以上
* 自己資本利益率(ROE):12.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において、「世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニー」を目指し、ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーの4つの社会価値創生領域に注力しています。

* ヘルスケア領域: 液体クロマト分析システムや質量分析システムを重点機種とし、AIによる分析プロセスの革新(AX)や医用画像診断の革新(IMX)を推進します。
* グリーン領域: カーボンニュートラル社会実現に向け、新エネルギー開発やGHG測定分野での計測機器展開、バイオものづくり事業でのソリューション開発に注力します。
* マテリアル領域: 計測製品の自動化・AI活用による複合計測・解析強化、セラミックス複合材料などの革新素材開発への貢献を進めます。
* インダストリー領域: 半導体市場やEV市場向けに、ターボ分子ポンプや工業炉などの産業機械事業を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「Leadership & Diversity」をスローガンに掲げ、多様なパートナーと連携しイノベーションをリードできる人材の創出・獲得を目指しています。人材育成においては、経営幹部候補の育成プログラム「経営塾」や、高度専門人材の育成支援などを実施しています。また、女性管理職比率の向上や柔軟な勤務制度の導入など、多様性を活かす組織風土づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.6歳 18.1年 9,014,824円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 70.6%
男女賃金差異(全労働者) 66.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 46.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用数に占める女性の割合(27.8%)、女性の育児休業取得率(100%)、女性の育児休業からの復帰率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の市場動向


同社グループは世界各地で事業を展開しており、各国の政策や景気動向、設備投資動向の変化が業績に影響を与える可能性があります。また、地政学リスクや感染症の流行等がもたらすサプライチェーンの混乱や資源価格の高騰も、経済活動の停滞を通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外での事業活動


海外売上高比率が高い同社にとって、海外での事業活動には予期できない法律や規制の変更、貿易制限措置、政治的・社会的混乱などのリスクが存在します。これらが顕在化した場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品品質


同社はISO規格の認証を受けた品質システムを構築し、品質保証と製品安全性の向上に努めています。しかし、想定が難しい多様な環境下での製品使用による品質トラブルや製品安全への懸念が発生した場合、信頼性やブランド力の低下に繋がり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 為替変動の影響


グローバルに事業を展開しているため、外貨建て取引や在外連結子会社の財務諸表換算において為替変動の影響を受けます。現地生産や為替予約等によりリスク低減を図っていますが、急激な為替変動は業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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