※本記事は、株式会社島津製作所の有価証券報告書(第163期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 島津製作所ってどんな会社?
科学技術を基盤に、計測機器や医用・産業機器などを幅広く手がける精密機器の総合メーカーです。
■(1) 会社概要
1875年に教育用理化学器械の製造で創業しました。1917年に株式会社へ改組して産業機器の製造を開始し、1949年には東京証券取引所に上場しました。その後、米国や欧州、アジアなどに現地法人を設立しグローバルな事業展開を推進してきました。近年では2022年に島津ダイアグノスティクスを子会社化しています。
同社グループは連結で14,649名、単体で3,779名の従業員を抱えています。筆頭株主および第3位の株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は生命保険会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.00% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 7.18% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長CEOは山本靖則氏です。社外取締役の比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本靖則 | 代表取締役社長CEO | 1983年同社入社。常務執行役員、CFO等を経て2022年4月より現職。 |
| 上田輝久 | 代表取締役会長取締役会議長 | 1982年同社入社。専務執行役員、代表取締役社長、CEO等を経て2022年4月より現職。 |
| 渡邊明 | 取締役専務執行役員CRO、環境経営(GX)担当、コーポレート・トランスフォーメーション(CX)担当 | 1985年同社入社。常務執行役員、CFO等を経て2026年4月より現職。 |
社外取締役は、花井陳雄(元協和キリン社長)、中西義之(元DIC社長)、濱田奈巳(マイル・ハイ・キャピタル共同創業者)、北野美英(SynFiny Advisorsパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「計測機器」「医用機器」「産業機器」「航空機器」および「その他」事業を展開しています。
■計測機器
クロマト分析システムや質量分析システム、環境分析システムなどの計測機器を提供しています。製薬・食品市場をはじめ、ライフサイエンス分野や環境・化学市場の企業および研究機関を主な顧客としています。
機器本体の販売代金に加え、試薬や消耗品の販売、保守サービスによる継続的な手数料を収益源としています。運営は同社のほか、島津サイエンスや島津ダイアグノスティクスなどの子会社が担っています。
■医用機器
血管撮影システム、X線TVシステム、一般撮影システムなどの医用画像診断装置や医療情報システムを提供しています。国内外の病院や医療機関の医療スタッフを対象に、業務効率化や患者負担軽減を支援します。
医療機器の販売代金と、据付修理やメンテナンスなどの保守サービス料金を主な収益源としています。同社が開発や製造を担い、島津メディカルシステムズや島根島津が販売やサービスを提供しています。
■産業機器
ターボ分子ポンプや油圧機器、工業炉などを製造・販売しています。生成AI向けの先端半導体製造装置メーカーや、産業車両・特装車などの自動車関連メーカーに対して各種システムを提供しています。
製品の販売代金に加え、部品交換や保守サービスによるリカーリング収益を獲得しています。同社のほか、島津産機システムズや島津プレシジョンテクノロジーなどの事業会社が運営を行っています。
■航空機器
フライトコントロールシステムやエアマネジメントシステムなどの航空機用搭載品を製造しています。防衛分野向けに加え、民間航空機メーカーや航空会社向けの補用部品も提供しています。
搭載機器の販売代金や補用部品の販売による収益を獲得しています。事業運営は同社と島津エアロテックなどのグループ会社が連携して行っています。
■その他
各報告セグメントに属さない事業として、不動産賃貸や不動産管理、建設舗床業などを展開しています。グループ内の不動産や施設管理などの付帯業務を中心に行います。
賃貸料や不動産管理手数料、各種工事の請負代金を収益源としています。運営は主に島津総合サービスや太平工業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、グローバルでの積極的な事業展開により売上高が堅調に拡大し、成長トレンドを維持しています。経常利益も概ね増加傾向にあり、各セグメントでの高付加価値ソリューションの提供やアフターサービスの強化による利益率の底上げが寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4282億円 | 4822億円 | 5119億円 | 5390億円 | 5607億円 |
| 経常利益 | 656億円 | 709億円 | 769億円 | 720億円 | 828億円 |
| 利益率(%) | 15.3% | 14.7% | 15.0% | 13.4% | 14.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 361億円 | 405億円 | 425億円 | 410億円 | 510億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益や営業利益も拡大傾向にあります。高付加価値製品の販売増や価格転嫁が進んだことにより、売上総利益率は高い水準を維持し、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5390億円 | 5607億円 |
| 売上総利益 | 2344億円 | 2501億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.5% | 44.6% |
| 営業利益 | 717億円 | 737億円 |
| 営業利益率(%) | 13.3% | 13.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が647億円(構成比37%)、研究開発費が234億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の計測機器事業はヘルスケアや環境市場向けが牽引し、増収となっています。航空機器事業も防衛および民間航空機向けの搭載品需要の拡大により好調に推移しています。一方で産業機器事業は国内市況の影響等で微減となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 計測機器 | 3479億円 | 3649億円 |
| 医用機器 | 726億円 | 738億円 |
| 産業機器 | 723億円 | 715億円 |
| 航空機器 | 387億円 | 434億円 |
| その他 | 76億円 | 71億円 |
| 連結(合計) | 5390億円 | 5607億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で十分なキャッシュを獲得し、投資に充てるとともに借入金の返済や株主還元を行う「健全型」のキャッシュ・フロー構造となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 520億円 | 547億円 |
| 投資CF | -232億円 | -159億円 |
| 財務CF | -484億円 | -255億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「『人と地球の健康』への願いを実現する」を経営理念に掲げています。人の命と健康、地球の健康、産業の発展と安心・安全な社会の実現をミッションとし、科学技術を用いて複雑化する社会課題の解決に貢献することで、企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
1875年の創業以来の精神である「科学技術で社会に貢献する」を社是としています。人を最大の財産と位置づけ、従業員の挑戦と成長を重視する企業文化を育んでいます。「Leadership & Diversity」のスローガンのもと、多様性を活かす組織風土づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2027年3月期の連結業績予想として、中東情勢などの不透明な経営環境下でも、注力領域での事業拡大を通じた持続的な成長を目指し、以下の数値を目標に掲げています。
* 売上高:5750億円
* 営業利益:760億円
■(4) 成長戦略と重点施策
ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーの4領域において事業の社会価値創出を強化します。AIやロボティクスを活用した計測・医用機器の開発や、リカーリングビジネスの拡大に注力します。また、北米やインドなど海外全地域での展開を強化し、収益力の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「高潔な倫理観を持ち、多様な視点や専門性を活かし、果敢に挑戦し、自ら成長し続ける存在」を求める人材像と定義しています。独自のプログラムによる次世代リーダーの育成や、複線型人事制度の導入により、従業員が自律的に専門性を高め活躍できる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 18.5年 | 9,240,736円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 68.0% |
| 男女賃金差異(正規従業員) | 74.5% |
| 男女賃金差異(非正規従業員) | 50.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性の割合(21.6%)、新卒採用数に占める女性の割合(34.6%)、女性の育児休業取得率(100%)、従業員エンゲージメント肯定的回答率(66%)、休業災害件数(7件)、企業倫理コンプライアンス研修受講率(100%)、高度専門人財数(594人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の市場動向による影響
事業をグローバルに展開しているため、各国の政策や景気、設備投資動向の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、地政学リスクやサプライチェーンの混乱による資源・原材料価格の高騰も懸念され、経済活動の停滞につながる恐れがあります。
■(2) 海外での事業活動におけるリスク
海外市場での事業拡大を推進し、経営基盤の強化を図っていますが、予期せぬ法規制や政策の変更、貿易制限措置、政治的・社会的混乱などが生じた場合、事業活動が妨げられ、グループの財政状態に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 製品品質と安全性に関するリスク
ISO規格等に基づく品質マネジメントシステムを構築し、製品の安全性向上に努めています。しかし、想定を超える多様な環境下での使用により品質トラブルや安全上の懸念事項が発生した場合、ブランド力や信頼性の低下につながる恐れがあります。



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