東京電力ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京電力ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京電力ホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、電気事業を中心に燃料・火力発電、送配電、小売、再生可能エネルギー発電等の事業を幅広く展開しています。直近の業績では、販売電力量の減少等により売上高が減少し、災害特別損失等の計上に伴い親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。


※本記事は、東京電力ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京電力ホールディングスってどんな会社?


同社グループは、電気事業を中心に、燃料調達から発電、送配電、販売までを担う総合エネルギー企業です。

(1) 会社概要


同社は1951年に関東配電と日本発送電から設備の出資等を受け設立され、同年上場を果たしました。2016年にホールディングカンパニー制へ移行し、現在の商号に変更するとともに各事業を子会社へ承継しました。2019年には東京電力リニューアブルパワーを設立し、再生可能エネルギー発電事業を推進しています。

現在の従業員数は連結で38,341名、単体で7,157名です。筆頭株主は資金援助等を行う原子力損害賠償・廃炉等支援機構で、第2位および第3位は信託業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 54.75%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.56%
日本カストディ銀行(信託口) 1.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性23名、女性2名の計25名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表執行役社長は小早川智明氏が務めています。取締役13名中、社外取締役は6名で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
小早川 智明 取締役
代表執行役社長原子力改革特別タスクフォース長
1988年同社入社。東京電力エナジーパートナー社長などを経て2017年より代表執行役社長。2024年より現職。
山口 裕之 取締役
代表執行役副社長最高財務責任者兼ESG担当
1991年同社入社。東京電力パワーグリッド山梨総支社長などを経て2022年より代表執行役副社長。2023年より現職。
酒井 大輔 取締役
代表執行役副社長アライアンスCEO兼経営企画担当(共同)
1994年同社入社。東京電力フュエル&パワー経営企画室長などを経て2023年より代表執行役副社長。2026年より現職。
長﨑 桃子 取締役
執行役副社長最高マーケティング責任者兼チーフ・スポークスマン
1992年同社入社。東京電力エナジーパートナー社長などを経て2024年より同社常務執行役。2025年より現職。
福田 俊彦 取締役
執行役副社長原子力・立地本部長兼原子力改革特別タスクフォース長代理兼同事務局長
1983年同社入社。原子力損害賠償・廃炉等支援機構の執行役員などを経て2022年より同社常務執行役。2023年より現職。
吉野 栄洋 取締役指名委員会委員
執行役会長補佐兼社長補佐兼経営企画担当(共同)
1992年通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁の政策課長などを経て2021年より取締役に就任。現職。
守谷 誠二 取締役監査委員会委員長 1986年同社入社。東京電力フュエル&パワー社長や同社代表執行役副社長などを経て2023年より取締役に就任。現職。


社外取締役は、小林喜光氏(元三菱ケミカルホールディングス会長・指名委員長)、大八木成男氏(元帝人会長・報酬委員長)、大西正一郎氏(フロンティア・マネジメント会長兼社長)、大川順子氏(元日本航空副会長)、永田高士氏(元デロイトトーマツグループCEO)、内田貴和氏(元三井物産副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホールディングス」「フュエル&パワー」「パワーグリッド」「エナジーパートナー」「リニューアブルパワー」の5つの報告セグメントを展開しています。

ホールディングス


グループ全体の経営サポートや各基幹事業会社への共通サービスの提供、および原子力発電等の事業を行っています。

グループ各社に対する経営指導に係る料金等を受け取ることで収益を得るモデルです。事業の運営は、主に東京電力ホールディングスが行っています。

フュエル&パワー


火力発電による電力の販売、燃料の調達、火力電源の開発、および燃料事業への投資等を行っています。

燃料調達や火力発電所で発電した電力の販売等により収益を得ています。運営は主に、東京電力フュエル&パワーおよび関連会社のJERAが担っています。

パワーグリッド


送電・変電・配電による電力の供給、送配電や通信設備の建設・保守、設備土地・建物等の調査・取得・保全を行っています。

小売電気事業者や他の一般送配電事業者等から受け取る送配電関連設備の利用料金である託送収益等を主な収益源としています。運営は東京電力パワーグリッドが行っています。

エナジーパートナー


顧客の要望に沿った最適なトータルソリューションの提案、充実した顧客サービスの提供、および安価な電源調達を行っています。

一般家庭やオフィス、工場向けに販売した電気の料金およびガスの料金等を収益源としています。運営は主に東京電力エナジーパートナーが行っています。

リニューアブルパワー


再生可能エネルギー発電による電力の販売、設備の維持管理、国内外における再生可能エネルギー電源の新規開発・投資等を行っています。

水力発電や洋上風力発電などの再生可能エネルギーによって発電した電力の販売等により収益を得ています。運営は主に東京電力リニューアブルパワーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は6兆円から8兆円規模で推移しています。経常利益は燃料価格や市場価格の変動等により赤字となる期があるものの、直近では黒字を確保しており利益率は改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5兆3100億円 8兆1122億円 6兆9184億円 6兆8104億円 6兆3286億円
経常利益 422億円 -2854億円 4255億円 2544億円 4173億円
利益率(%) 0.8% -3.5% 6.2% 3.7% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1206億円 1938億円 -1625億円 -632億円 -7602億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少していますが、営業利益は増加し、営業利益率も改善しています。これは、燃料費調整制度の期ずれ影響の好転や継続的なコスト削減の取り組みによるものです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6兆8104億円 6兆3286億円
営業利益 2345億円 3377億円
営業利益率(%) 3.4% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、委託費が1553億円(構成比43%)、給与手当が906億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高は、エナジーパートナーセグメントが全体の多くを占めていますが、販売電力量の減少等により前期比で減収となっています。一方、ホールディングスセグメントは増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ホールディングス 1351億円 2127億円
フュエル&パワー 38億円 37億円
パワーグリッド 1兆2101億円 1兆2256億円
エナジーパートナー 5兆3726億円 4兆8350億円
リニューアブルパワー 888億円 515億円
連結(合計) 6兆8104億円 6兆3286億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローはプラス、投資キャッシュ・フローはマイナス、財務キャッシュ・フローはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-12.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3612億円 5603億円
投資CF -8592億円 -6636億円
財務CF 1942億円 1104億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、福島第一原子力発電所事故の責任を全うし、安全確保と競争下での電力の安定供給をやり抜くという使命のもと、企業価値の最大化の実現に向け、「責任と競争」を両立する事業運営・企業改革を主導することを掲げています。被害者の方々に寄り添った賠償や、福島復興への継続的な取り組みを通じ、福島への責任を果たしていくことを事業の根幹としています。

(2) 企業文化


同社は、「東京電力グループ企業行動憲章」を制定し、事業活動のあらゆる場面において安全を最優先に掲げています。また、「一人ひとりがTEPCO」のスローガンのもと、多様な人材が互いに尊重し合い能力を発揮できる組織づくり(DEI)を推進し、変革を恐れず挑戦する新たな企業文化の確立を目指しています。法令遵守や企業倫理の徹底を通じ、社会から信頼される企業となることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「第五次総合特別事業計画(五次総特)」において、以下の経営目標を掲げています。賠償や廃炉に関して、グループ全体で年間約5,000億円程度の資金を確保するとともに、2028年度以降のフリーキャッシュフローの黒字確保を目指しています。

* 賠償・廃炉に向けた資金確保:グループ全体で年間約5,000億円程度
* 2028年度以降のフリーキャッシュフロー:黒字確保

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、カーボンニュートラルの実現と安定供給責任の全うに向け、「脱炭素電源の確保」「迅速かつプッシュ型の電力供給」「多様なニーズに応じた料金メニューの提供」の3つの価値提供を進めています。また、柏崎刈羽原子力発電所の安全を最優先とした安定的な運営に取り組むとともに、資産回転型の投資や他社とのアライアンスを通じて、中長期的な事業成長と企業価値の向上を図っていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業戦略と連動した人財戦略として「5つの優先領域」を設定しています。中長期にわたり事業戦略上重要なスキル領域を特定した計画的な人財確保、経営リーダーやプロフェッショナル人財の育成サイクル構築、多様性マネジメントを通じたインクルーシブな企業文化の醸成等を進めています。また、「TEPCO Work Innovation」を推進し、ワークライフバランスの実現と生産性向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 22.1年 8,828,772円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 92.9%
男女賃金差異(全労働者) 83.5%
男女賃金差異(正規雇用) 82.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 福島第一原子力発電所の廃炉に伴う影響


同社は中長期ロードマップに基づき廃炉作業を進めていますが、燃料デブリの取り出しに関する未解明な課題や汚染水の漏えい等のトラブルが発生した場合、廃止措置が計画通りに進捗しない可能性があります。これが円滑に進まない場合、事業運営や業績、財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。

(2) 電力安定供給における支障の発生


大規模自然災害、設備事故、テロや暴動等の妨害行為、燃料調達支障等により、長時間かつ大規模な停電が発生した場合、安定供給を確保できなくなるリスクがあります。これが社会的信用の低下を招き、同社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原子力発電およびバックエンド事業への影響


国による原子力政策や安全規制の見直し等により、原子力発電事業の運営が影響を受けるリスクがあります。柏崎刈羽原子力発電所等の安定稼働ができない場合、火力燃料費の増加等により、業績や財政状態が悪化する可能性があります。また、使用済燃料の再処理等のバックエンド事業においても不確実性が存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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