東京電力ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京電力ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)上場。グループで電気事業(発電・送配電・小売)等を行う持株会社です。2025年3月期は、燃料価格低下による調整額減少等で減収となり、燃料費調整制度の期ずれ影響などにより経常利益、当期純利益ともに減益となりました。


※本記事は、東京電力ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京電力ホールディングスってどんな会社?


関東エリアを中心に電力供給を行う国内最大手の電力会社です。持株会社制の下、発電・送配電・小売事業を展開しています。

(1) 会社概要


1951年に東京電力として設立され、首都圏への電力供給を担ってきました。2013年に福島復興本社を設置。2016年にホールディングカンパニー制へ移行し、現社名に変更するとともに、燃料・火力、送配電、小売事業を分社化しました。2020年には再生可能エネルギー発電事業も分社化しています。

同グループは連結従業員数38,074名、単体7,200名の体制です。筆頭株主は政府系認可法人である原子力損害賠償・廃炉等支援機構で、経営再建と廃炉の支援を行っています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 54.75%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.94%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 1.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性22名、女性3名の計25名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表執行役社長兼原子力改革特別タスクフォース長は小早川智明氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
小早川 智明 取締役指名委員会委員代表執行役社長兼原子力改革特別タスクフォース長 1988年同社入社。東京電力エナジーパートナー社長、同社取締役を経て、2017年6月より現職。
山口 裕之 取締役代表執行役副社長最高財務責任者兼ESG担当 1991年同社入社。常務執行役、代表執行役副社長最高財務責任者を経て、2023年4月より現職。
酒井 大輔 取締役代表執行役副社長経営企画担当(共同) 1994年同社入社。経営企画ユニット企画室長、常務執行役を経て、2023年6月より現職。
児島 力 取締役執行役副社長最高イノベーション責任者兼事業再構築・アライアンス担当兼ビジネスディベロップメント室長 三菱商事出身。東京電力リニューアブルパワー取締役副社長等を経て、2023年9月より現職。
福田 俊彦 取締役執行役副社長原子力・立地本部長兼原子力改革特別タスクフォース長代理兼同事務局長 1983年同社入社。常務執行役原子力・立地本部長等を経て、2023年4月より現職。
吉野 栄洋 取締役指名委員会委員 1992年通商産業省入省。原子力損害賠償・廃炉等支援機構連絡調整室長等を経て、2021年6月より現職。
守谷 誠二 取締役監査委員会委員長 1986年同社入社。東京電力フュエル&パワー社長、同社代表執行役副社長等を経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、小林喜光(元三菱ケミカルホールディングス会長)、大八木成男(元帝人社長)、大西正一郎(弁護士)、新川麻(弁護士)、大川順子(元日本航空副会長)、永田高士(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホールディングス」「フュエル&パワー」「パワーグリッド」「エナジーパートナー」「リニューアブルパワー」および「その他」事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は5兆円台から8兆円台で推移しています。2023年3月期は大幅な赤字となりましたが、翌期には黒字回復しました。2025年3月期は減収減益となり、当期純利益は再びマイナスとなっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 58,668億円 53,099億円 81,122億円 69,184億円 68,104億円
経常利益 1,899億円 422億円 -2,854億円 4,255億円 2,544億円
利益率(%) 3.2% 0.8% -3.5% 6.2% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 363億円 1,206億円 1,938億円 -1,625億円 -632億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は1.6%減少しました。営業利益も減益となり、利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 69,184億円 68,104億円
営業利益 2,789億円 2,345億円
営業利益率(%) 4.0% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、委託費が1,490億円(構成比39%)、給料手当が879億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


「パワーグリッド」は託送収入の増加により増収となりましたが、需給調整費用や修繕費の増加により減益となりました。「エナジーパートナー」は燃料価格低下による燃料費等調整額の減少で減収となり、期ずれ影響の悪化により減益となっています。

「リニューアブルパワー」は販売電力料収入が増加し、大幅な増収増益を達成しました。「フュエル&パワー」は、持分法適用関連会社(JERA)における期ずれ影響の悪化により減益となっています。

なお、「フュエル&パワー」の利益率が非常に高いのは、セグメント利益の大部分が売上高(営業収益)には含まれない「持分法による投資利益(JERA等の利益の取り込み)」によるものであるためです。

項目 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ホールディングス 7,086億円 7,962億円 -1,271億円 -507億円 -6.4%
フュエル&パワー 39億円 38億円 1,749億円 577億円 1527.0%
パワーグリッド 22,051億円 23,452億円 1,568億円 549億円 2.3%
エナジーパートナー 57,443億円 55,599億円 3,261億円 2,879億円 5.2%
リニューアブルパワー 1,582億円 2,122億円 451億円 536億円 25.3%
連結(合計) 69,184億円 68,104億円 4,255億円 2,544億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動はマイナス、財務活動はプラスでした。これは、本業で得た資金に加え、借入等の資金調達を行いながら、積極的な投資を行っている「積極型」の状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6,730億円 3,612億円
投資CF -6,988億円 -8,592億円
財務CF 5,415億円 1,942億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの両立を軸に、新たな価値を提供するビジネスモデルへの転換を目指しています。福島への責任を全うし、地域や社会からの信頼回復に最優先で取り組むことを経営の根幹としています。

(2) 企業文化


「TEPCO Work Innovation」を推進し、ワークライフバランスの実現と幸福度の向上を目指しています。社員一人ひとりが快適に働ける環境づくりや、人と組織が最大限のパフォーマンスを発揮できる働き方を重視し、公正な競争や法令遵守の徹底にも努めています。

(3) 経営計画・目標


「第四次総合特別事業計画」に基づき、福島への責任を果たすための資金確保と、収益基盤の強化を目指しています。具体的には、グループ全体で年間約5,000億円程度の賠償・廃炉資金の確保と、年間約4,500億円規模の利益創出も可能な収益基盤の確立を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


カーボンニュートラルや防災を軸とした事業構造の変革を進めています。安定供給を維持しつつ、再生可能エネルギーと原子力の活用、電化の推進などにより収益力向上を図ります。また、DXの推進による業務効率化やコスト削減、アライアンスを通じた事業領域の拡大にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「HR-Vision」を掲げ、リソースマネジメント、両利きの経営を加速する人事戦略、DEI推進など5つの優先領域を設定しています。電力事業を支える人材の安定的確保とともに、DXや事業創造などの重要課題に対応できる人材の育成・配置を進め、社員と組織のパフォーマンス最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 21.9年 8,595,666円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 89.1%
男女賃金差異(全労働者) 84.4%
男女賃金差異(正規雇用) 83.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(12.4%)、男女別の社員平均年齢(男性45.4歳、女性44.0歳)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 福島第一原子力発電所の廃炉


廃炉作業において、技術的に未解明な課題やトラブルが発生し、計画通りに進捗しない可能性があります。また、ALPS処理水の海洋放出に関して、設備のトラブルや風評被害等により継続困難となるリスクがあります。

(2) 電気の安定供給


大規模自然災害、設備事故、燃料調達の支障等により、大規模停電が発生し安定供給が困難になる可能性があります。これにより業績への影響だけでなく、社会的信用の低下を招く恐れがあります。

(3) 原子力発電・原子燃料サイクル


原子力政策や安全規制の見直しにより、原子力発電事業や原子燃料サイクル事業の運営に影響が出る可能性があります。特に再稼働の遅れは、燃料費の増加等を通じて財政状態に影響を及ぼします。

(4) 電源調達費用と販売価格


国際情勢や為替変動による燃料価格・卸電力市場価格の高騰、競争激化による販売価格への影響を受ける可能性があります。販売電力量も、気温、経済活動、省エネ政策等の影響を受け変動します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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