※本記事は、株式会社東京精密の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京精密ってどんな会社?
半導体製造装置と計測機器の製造販売を主力とし、グローバルに事業を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1949年に東京精密工具として設立され、ミシン加工用切削工具等の製作販売を開始しました。1962年に現在の東京精密に社名変更し、同年8月に東京証券取引所市場第二部に株式を上場、1986年に同市場第一部銘柄に指定されました。1989年以降は欧米やアジアに海外拠点を設立し、グローバル展開を進めています。
現在の同社グループは、連結従業員数2,890名、単体従業員数1,428名の体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位はJP MORGAN CHASE BANKとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) | 16.67% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.75% |
| JP MORGAN CHASE BANK 385642(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 3.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長CEOは木村龍一氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は5名で、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村龍一 | 代表取締役社長CEO | 1986年入社。半導体社執行役員社長などを経て2011年代表取締役に就任。代表取締役副社長COOなどを歴任し、2025年より現職。 |
| 吉田均 | 代表取締役会長 | 1983年入社。計測社執行役員社長などを経て2011年代表取締役に就任。代表取締役社長CEOなどを歴任し、2025年より現職。 |
| 伯耆田貴浩 | 取締役半導体社執行役員カンパニー長兼業務会社情報システム室長兼事業戦略室長 | 1986年ワイ・デー・ケー入社。1995年同社入社。半導体社執行役員常務等を経て2015年取締役に就任。2025年より現職。 |
| ロミ プラダン | 取締役(非常勤) | 1991年米国California Energy Commission入社。2001年同社米国子会社入社。米国子会社プレジデント等を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、高増潔(東京大学名誉教授)、森重哉(元ジャパンセミコンダクター取締役社長)、相良由里子(中村合同特許法律事務所経営パートナー)、川﨑素子(富士フイルムホールディングス常勤監査役)、髙山清子(髙山清子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体製造装置」および「計測機器」の事業を展開しています。
■(1) 半導体製造装置
ウェーハプロービングマシン、ウェーハダイシングマシン等、半導体製造工程で使用される加工・検査装置の製造販売を展開しています。顧客の生産性向上に寄与する最先端の製品を、国内外の半導体メーカー向けに供給しています。
製品の販売による収益に加え、修理や保守等のサービス提供により料金を受け取ります。生産と販売の大部分は同社が担当し、東精エンジニアリングなどの子会社が関連製品の生産や保守を、トーセーシステムズがソフトウェアの供給を担っています。
■(2) 計測機器
三次元座標測定機、表面粗さ・輪郭形状測定機等の精密測定機器類の製造販売を行っています。自動車や航空宇宙、エネルギー産業など、幅広い製造業の顧客に対して、高精度な計測ソリューションを提供しています。
測定機器の販売および修理・保守サービスにより収益を得ています。生産と販売の大部分は同社および東精エンジニアリングが担当し、一部製品は東精計量儀(平湖)有限公司などの海外子会社が現地生産を行っています。ソフトウェアはトーセーシステムズが供給しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は半導体市場の需要動向に影響を受けつつも、全体としては成長基調にあります。経常利益率も継続して高い水準を維持しており、世界的な技術革新を背景に安定した収益力を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,307億円 | 1,468億円 | 1,347億円 | 1,505億円 | 1,668億円 |
| 経常利益 | 292億円 | 353億円 | 265億円 | 299億円 | 348億円 |
| 利益率(%) | 22.3% | 24.0% | 19.6% | 19.9% | 20.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 241億円 | 228億円 | 168億円 | 230億円 | 241億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と売上総利益がともに増加しており、堅調な事業成長が伺えます。売上総利益率は安定して推移し、営業利益率も上昇していることから、効率的なコストコントロールと本業の収益力強化が図られていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,505億円 | 1,668億円 |
| 売上総利益 | 625億円 | 689億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.5% | 41.3% |
| 営業利益 | 297億円 | 337億円 |
| 営業利益率(%) | 19.7% | 20.2% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が120億円(構成比34%)、従業員給料手当が70億円(同20%)を占めています。最先端技術の創出や人材確保に継続的に注力していることが伺えます。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、半導体製造装置事業、計測機器事業ともに前年から増加しています。生成AI等に関連する設備投資の増加や、自動車・航空・防衛分野などでの事業機会の獲得が増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 半導体製造装置 | 1,135億円 | 1,279億円 |
| 計測機器 | 371億円 | 390億円 |
| 連結(合計) | 1,505億円 | 1,668億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で十分なキャッシュを創出し、その資金で設備投資や研究開発を行いながら、借入金の返済や株主還元も進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 288億円 | 250億円 |
| 投資CF | 25億円 | -115億円 |
| 財務CF | -140億円 | -157億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「計測で未来を測り、半導体で未来を創る」をパーパス(存在意義)として掲げています。「夢のある未来」の実現を目指し、世界中の技術や情報を融合して世界No.1の商品を創り出すことをミッションとしています。各ステークホルダーとのWIN-WINの関係構築を通じ、社会貢献と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
企業成長の必須条件として、「安全・健康」「品質」「環境・省エネルギー」「全員力」を行動指針としています。多様な価値観を受け入れ、相手の視点でものを見ることで互いの強みを引き出す協働の文化を重視し、失敗を恐れずにより高度な課題にチャレンジできる風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
成長分野において最先端技術を駆使した商品を継続的に提供し、資本効率を維持向上させることを経営方針としています。具体的な中期目標として、2028年3月期までに以下の数値目標を掲げています。
・連結売上高:1,850億円
・連結営業利益:450億円
・ROE:15%
■(4) 成長戦略と重点施策
最先端技術を駆使した世界No.1商品を不断に提供し続けるため、品質向上と生産革新を継続的に推進し、高収益・高効率の企業体質確立を図っています。また、海外売上高が過半を占める中、現地経営幹部の積極的登用や現地調達体制の確立など、グローバル化に対応した経営体制の構築を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員一人ひとりの成長を支援するため、教育研修プログラムの提供や現場でのチャレンジの場の設定を進めています。また、多様な人材が働きがいを感じ、活躍できる環境づくりを推進しており、自律的に成長する人材の育成に向けて、上司に対する「人財育成力研修」などを通じて対話力の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.5歳 | 9.5年 | 8,276,412円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.2% |
また、同社は「サステナビリティへの取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.43%)、管理職における中途採用者割合(41.0%)、フルタイム労働者の平均所定外労働時間(20.9時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバル事業環境と規制リスク
半導体製造装置と計測機器の事業はグローバルに展開しており、各地域での需給バランスの変動や経済環境の悪化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、為替レートの予期せぬ変動や、貿易管理令の変更等の輸出規制が業績に影響するリスクが存在します。
■(2) 技術開発と生産体制リスク
技術進化が著しい事業分野において、先端技術の開発と製品化の努力が成功に結びつかないリスクがあります。また、突発的な事象による製造設備の損害や、需要急拡大による生産スペースや部材等の不足による納期遅延が、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 基幹部品の調達難リスク
生産活動には高品質の部材の安定供給が必要ですが、一部の基幹部品はその特殊性から調達先が限定され、切り替えが困難です。当該部品の供給不足や納入遅延が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 知的財産及び情報セキュリティリスク
最先端技術を搭載した製品を取り扱っており、第三者との権利関係をめぐる訴訟等が発生するリスクがあります。また、顧客の機密情報や事業に関する機密情報が、過失や外部からの攻撃等により外部流出または改ざんされた場合、社会的信用の低下を招く可能性があります。



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