#記事タイトル:東京精密転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社東京精密 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京精密ってどんな会社?
半導体製造装置と精密計測機器の2つの事業を柱に、グローバルに展開する精密機器メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1949年に東京精密工具株式会社として設立され、1962年に現在の社名へ変更しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1986年には市場第一部へ指定替えとなりました。2005年には子会社の株式会社東精エンジニアリングを完全子会社化し、グループ体制を強化しています。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は2,767名(連結)、単体では1,292名です。大株主構成については、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第2位は日本カストディ銀行株式会社(信託口)、第3位は外国法人等となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行㈱ (信託口) | 17.84% |
| ㈱日本カストディ銀行(信託口) | 12.16% |
| STATE STREET BANK AND TRUSTCOMPANY 505001(常任代理人 ㈱みずほ銀行決済営業部) | 4.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役会長CEOは吉田均氏、代表取締役社長COOは木村龍一氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉田 均 | 代表取締役会長CEO | 1983年同社入社。計測社執行役員社長、代表取締役社長CEO等を経て、2022年4月より現職。 |
| 木村 龍 一 | 代表取締役社長COO | 1986年同社入社。半導体社執行役員社長、代表取締役副社長COO等を経て、2022年4月より現職。 |
| 川村 浩 一 | 代表取締役副社長CFO | 1980年富士銀行入行。2008年同社入社。業務会社執行役員社長、代表取締役CFO等を経て、2022年4月より現職。 |
| 伯耆田 貴 浩 | 取締役半導体社執行役員カンパニー長兼業務会社情報システム室長兼事業戦略室長 | 1995年同社入社。半導体社執行役員常務、半導体社技術部門長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 塚田 修 一 | 取締役 | 1983年同社入社。計測社執行役員、計測社カンパニー長を経て、2021年6月より現職。 |
| ロミ プラダン | 取締役(非常勤) | 2001年米国子会社入社。同社取締役副社長、同社プレジデント等を務め、2023年6月より現職。 |
| 秋本 伸 治 | 取締役(監査等委員) | 1987年同社入社。業務会社執行役員人事室長、監査役等を経て、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、高増潔(東京大学名誉教授)、森重哉(元ジャパンセミコンダクター社長)、相良由里子(弁護士・弁理士)、須永真樹(公認会計士・税理士)、川﨑素子(富士フイルムHD常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体製造装置」および「計測機器」事業を展開しています。
■(1) 半導体製造装置
ウェーハプロービングマシン(検査装置)やウェーハダイシングマシン(加工装置)など、半導体製造工程で使用される精密装置を提供しています。半導体メーカーや電子部品メーカーが主な顧客です。
収益は、顧客への装置販売およびアフターサービスから得ています。開発・製造・販売は主に同社が担当し、一部の関連製品や消耗品については株式会社東精エンジニアリングなどの子会社が生産を行っています。ソフトウェアの供給は主に株式会社トーセーシステムズが担当しています。
■(2) 計測機器
三次元座標測定機、表面粗さ・輪郭形状測定機などの精密測定機器類を提供しています。自動車産業や工作機械業界など、精密なモノづくりを行う製造業全般が顧客となります。
収益は、顧客への機器販売および保守サービスから得ています。生産と販売の大部分は同社および株式会社東精エンジニアリングが担当し、一部製品は海外子会社での現地生産も行われています。ソフトウェア供給は株式会社トーセーシステムズが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は900億円台から1,500億円規模へと大きく成長しています。特に2022年3月期以降は高い水準を維持しており、当期(2025年3月期)は売上高1,505億円、当期純利益256億円といずれも過去最高を記録しました。経常利益率も20%前後と高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 971億円 | 1,307億円 | 1,468億円 | 1,347億円 | 1,505億円 |
| 経常利益 | 159億円 | 292億円 | 353億円 | 265億円 | 299億円 |
| 利益率(%) | 16.3% | 22.3% | 24.0% | 19.6% | 19.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 89億円 | 213億円 | 228億円 | 168億円 | 230億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期から増加しました。売上総利益率は40.7%から41.5%へと改善し、営業利益率は18.8%から19.7%へと上昇しており、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,347億円 | 1,505億円 |
| 売上総利益 | 548億円 | 625億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.7% | 41.5% |
| 営業利益 | 253億円 | 297億円 |
| 営業利益率(%) | 18.8% | 19.7% |
販売費及び一般管理費のうち、試験研究費が104億円(構成比32%)、従業員給料手当が67億円(同21%)を占めています。積極的な研究開発投資が行われていることが分かります。
■(3) セグメント収益
半導体製造装置事業は、生成AI関連や中国向けの需要が堅調で、売上高・利益ともに2桁成長となりました。計測機器事業も自動車業界等の設備更新需要により増収となりましたが、利益は横ばい圏でした。両事業とも高い利益率を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 半導体製造装置 | 1,001億円 | 1,135億円 | 199億円 | 243億円 | 21.4% |
| 計測機器 | 346億円 | 371億円 | 54億円 | 54億円 | 14.6% |
| 連結(合計) | 1,347億円 | 1,505億円 | 253億円 | 297億円 | 19.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 49億円 | 288億円 |
| 投資CF | -106億円 | 25億円 |
| 財務CF | 16億円 | -140億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「計測で未来を測り、半導体で未来を創る」をパーパス(存在意義)とし、「世界中の優れた技術・知恵・情報を融合して世界No.1の商品を創り出し、皆様と共に大きく成長していく」、「WIN-WINの仕事で世界No.1の商品を創ろう」をミッションとして掲げています。
■(2) 企業文化
企業成長の必須条件として「安全・健康」、「品質」、「環境・省エネルギー」、「全員力」を行動指針としています。コーポレートブランド「ACCRETECH」のもと、国内外のパートナーと「WIN-WIN」の関係を築くことにより、真のグローバル・カンパニーを目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中期的な経営指標として、2028年3月期までに以下の目標達成を目指しています。
* ROE 15%
* 連結売上高 1,850億円
* 連結営業利益 450億円
■(4) 成長戦略と重点施策
最先端技術を駆使した世界No.1商品を継続的に提供するため、品質向上と生産革新を推進し、高収益・高効率の企業体質確立を目指しています。また、海外売上高が過半を占める中、現地経営幹部の登用や現地調達体制の確立など、グローバル化に対応した経営体制の構築を重要課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「WIN-WINの仕事で世界No.1の商品を創ろう」というミッションのもと、従業員の自律的な成長を支援する方針です。階層別研修や部門別研修に加え、上司の「人財育成力研修」を推進し、対話を通じた成長支援を強化しています。また、多様な人材が活躍できるよう、女性活躍推進や障がい者雇用の環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.9歳 | 10.1年 | 7,828,240円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 54.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 61.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性割合(21.8%)、従業員に占める女性割合(11.6%)、障がい者雇用率(2.43%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 販売活動に係るリスク
同社グループはグローバルに事業を展開しており、各地域の経済環境や需給バランスの変動が業績に影響を与える可能性があります。また、海外売上高が過半を占めるため、為替変動や貿易管理令等の規制変更、貿易紛争などの地政学的リスクも業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 生産・開発活動に係るリスク
技術革新が速い分野において、新製品開発や製品化が成功しなかった場合、競争力低下により業績に悪影響が生じる可能性があります。また、自然災害等による生産活動の中断、想定以上の需要拡大による部材不足や納期遅延、基幹部品の調達難、製品の品質欠陥なども業績変動の要因となり得ます。
■(3) 知的財産に係るリスク
同社製品は最先端技術を搭載しており、特許や商標等の知的財産保護に努めています。しかし、第三者との間で知的財産権を巡る訴訟等が発生した場合、損害賠償や製品販売の差し止め等により、業績に影響が及ぶ可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。