※本記事は、株式会社ホギメディカル の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホギメディカルってどんな会社?
同社は医療用不織布製品や手術用キット製品のパイオニアとして、医療現場の安全性と経営効率化を支援する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1955年に紙・文具小売と医療用記録紙の販売を行う個人商店として創業しました。1964年に滅菌包装袋「メッキンバッグ」の製造を開始し、1991年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2016年には主力製品となる「プレミアムキット」の販売を開始し、事業を拡大しています。2024年7月には2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表しました。
現在、同社グループは連結従業員数1,409名、単体748名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託銀行である日本マスタートラスト信託銀行、第2位は投資ファンドのNIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC、第3位は米国の信託銀行であるSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 16.17% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC | 8.73% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025 | 7.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)は川久保秀樹氏が務めています。なお、社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川久保 秀樹 | 代表取締役社長最高経営責任者(CEO) | アステラス製薬、ユー・エス・ジェイ、デクセリアルズを経て2018年に同社入社。経営企画部部長、執行役員管理本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 藤田 泰介 | 取締役最高財務責任者(CFO) | 監査法人トーマツ、モルガン・スタンレー証券などを経て、アムンディ・ジャパン株式運用部長などを歴任。2024年8月より現職。 |
社外取締役は、上杉潔(メディバンクス取締役副社長)、木野瀨祐太(コンチネンタル・インベストメント・グループ代表取締役社長)、高田祐史(島田法律事務所パートナー)、江上美芽(米国ユタ大学薬学部併任教授)、樋口活介(樋口活介公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医療用消耗品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 手術用品類
手術に必要な医療材料をセット化した「キット製品」や、手術用ガウン・ドレープなどの不織布製品を医療機関向けに提供しています。特に戦略製品である「プレミアムキット」は、手術の準備時間を短縮し、医療安全と病院経営の効率化に貢献しています。
収益は、医療機関への製品販売による対価を得ています。運営は主にホギメディカルが行っており、製造の一部はインドネシアの子会社であるP.T.ホギインドネシアに委託しています。
■(2) 滅菌用品類
医療現場で使用される滅菌包装袋「メッキンバッグ」などを提供しています。医療器材の滅菌状態を維持し、院内感染防止に寄与する製品群です。顧客は主に病院や診療所などの医療機関です。
収益は、製品の販売代金として医療機関から得ています。運営はホギメディカルが主体となり、製造は国内工場およびP.T.ホギインドネシアが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は360億円台から390億円台へと緩やかに増加傾向にあります。一方で、経常利益は2023年3月期の67億円をピークに減少傾向にあり、利益率は低下しています。直近の2025年3月期では、売上高は微増となりましたが、利益面では減少が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 365億円 | 368億円 | 390億円 | 391億円 | 391億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 63億円 | 67億円 | 42億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 16.4% | 17.1% | 17.1% | 10.9% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 47億円 | 42億円 | 41億円 | 21億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期とほぼ横ばいの391億円で推移しましたが、売上原価の増加などにより売上総利益は減少しました。営業利益も減少しており、利益率は低下しています。コスト増が利益を圧迫する構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 391億円 | 391億円 |
| 売上総利益 | 131億円 | 126億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.4% | 32.2% |
| 営業利益 | 42億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 10.7% | 9.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が23億円(構成比26%)、荷造運搬費が11億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の手術用品類は横ばいで推移しており、滅菌用品類は微減となりました。全体として大きな変動はなく、安定した売上構成を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 手術用品類 | 347億円 | 348億円 |
| 滅菌用品類 | 34億円 | 34億円 |
| その他 | 8億円 | 8億円 |
| 治療用品類 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 391億円 | 391億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.9%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 71億円 | 116億円 |
| 投資CF | -33億円 | -39億円 |
| 財務CF | -39億円 | -55億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社業を通じて医療進歩の一翼を担い、人々の健やかな生命と幸福に尽くし、もって社会の繁栄に寄与する」を社是として掲げています。この理念のもと、患者や医療従事者の安全確保と、医療機関の経営改善に貢献できる製品およびシステムの提供を使命としています。
■(2) 企業文化
「顧客視点に立脚した価値創造経営の実践」を掲げ、顧客の環境変化を敏感に察知し、課題に対してソリューションを提供できる「オンリーワンの企業」を目指しています。また、医療現場で使用される製品を扱う企業として、安全な製品の安定供給を存在意義かつ社会的責任と捉える文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2024年7月に発表された中期経営計画において、2027年3月期を最終年度とする業績目標を掲げています。
* 売上高:467億円
* 営業利益:75億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:56億円
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な高成長率の維持と資本コストを意識した経営に向け、事業戦略の変革に取り組んでいます。具体的には、営業力の強化、コア事業であるキット製品の競争力強化、海外事業の推進、そして将来のコア事業の創造を重点施策としています。また、ガバナンス体制の変革を通じて、迅速な意思決定と機動的な業務執行を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
国内労働人口の減少を見据え、「D&Iの実践」と「人的資本への投資強化」を2030年までの方針として掲げています。多様な人材が活躍できる職場環境の整備や、グローバル展開に向けたマネジメント力の強化を進めています。また、性別や年齢に関わらず活躍できる人材の育成や管理職登用に向け、階層別研修等を継続的に実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.4歳 | 17.9年 | 6,645,701円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.8% |
| 男性育児休業取得率 | 53.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(150.0%)、男性育休の平均取得日数(164.3日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制に関するリスク
主力製品である医療用キット製品等は医薬品医療機器等法の規制下にあり、製造販売には厚生労働大臣の承認や都道府県知事の許可が必要です。これらの許認可が認められない、あるいは取り消された場合、事業活動が制限され業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 医療機関の環境変化
製品の主な販売先は医療機関であるため、診療報酬の改定や手術手技の進化などが顧客の購買方針に影響を与える可能性があります。これにより、使用製品の変更などが生じた場合、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 主要部材の供給停止
医療用キット製品の構成部材を供給するメーカーが供給不能となった場合、該当部材を使用する製品の製造ができなくなるリスクがあります。これにより製品供給が滞り、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外製造拠点のリスク
インドネシアに製造子会社を有しており、同国での予期せぬ法律変更、政情不安、自然災害などが発生した場合、材料や製品の供給が一時的に滞る可能性があります。これは同社グループの生産体制および業績に影響を与える要因となります。



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