テイ・エス テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テイ・エス テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するホンダ系の自動車部品メーカーです。主要事業は四輪車用シートや内装品、二輪車用シート等の製造販売で、世界4極体制で事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上収益が増加して増収となった一方、営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は減益となりました。


※本記事は、テイ・エス テック株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. テイ・エス テックってどんな会社?


ホンダグループを主要顧客とし、自動車用シートや内装品、二輪車用シート等をグローバルに供給するシステムサプライヤーです。

(1) 会社概要


1960年に帝都布帛工業より分離独立し、東京シートとして設立されました。1997年に現社名へ変更し、2007年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。グローバル展開を推進し、2021年にはポーランドに生産会社を設立しています。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は14,163名、単体では1,634名です。筆頭株主は主要顧客であり取引関係のある本田技研工業で、第2位および第3位は信託業務を行う信託銀行です。安定した株主構成のもと、事業を展開しています。

氏名 持株比率
本田技研工業 21.48%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.27%
日本カストディ銀行(信託口) 4.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は保田真成氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
保田 真成 代表取締役 社長 1982年同社入社。開発・技術本部長、代表取締役専務取締役などを経て、2018年6月より現職。
鳥羽 英二 代表取締役 専務執行役員 1994年同社入社。アジア・欧州地域本部長などを経て、2024年4月より開発・技術本部長およびコンプライアンスオフィサーを兼務。
須﨑 康清 取締役 専務執行役員 1990年同社入社。生産本部長、リスクマネジメントオフィサーなどを経て、2025年4月より米州地域本部長およびTS TECH AMERICAS, INC.社長。
内藤 浩 取締役 執行役員 1989年本田技研工業入社。同社事業管理本部経理部長などを経て、2024年4月同社入社。同年6月より事業管理本部長。
林 晃彦 取締役 1978年同社入社。生産本部長、米州地域本部長などを歴任。2025年4月より米州地域補佐。
関根 健夫 取締役監査等委員(常勤) 1982年同社入社。事業管理本部副本部長、常務執行役員経営企画室長、監査役などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、荻田健(元第一三共取締役専務執行役員)、松下香織(K&Lコンサルティング代表取締役社長)、林肇(さざんか法律事務所所長)、中田朋子(東京ヘリテージ法律事務所所長)、内藤憲一(元宇部テクノエンジ取締役管理統括部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「中国」「アジア・欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


主に二輪車用シートおよび樹脂部品、四輪車用シートおよび内装品等の製造販売を行っています。ホンダグループ等の顧客に対し製品を供給しています。

収益は製品の販売による対価等です。運営は主にテイ・エス テックが行い、子会社の九州テイ・エス、テイ・エス パーツ アンド サービス等が製造や物流を担っています。

(2) 米州


主に二輪車用シートおよび樹脂部品、四輪車用シートおよび内装品等の製造販売を行っています。同グループ最大の売上規模を持つ地域です。

収益は製品の販売による対価等です。運営はTS TECH AMERICAS, INC.、TS TECH USA CORPORATION、TS TECH ALABAMA, LLC.、TS TECH CANADA INC.などの現地子会社が行っています。

(3) 中国


主に四輪車用シートおよび内装品等の製造販売を行っています。現地の自動車メーカー向けに製品を供給しています。

収益は製品の販売による対価等です。運営は広州提愛思汽車内飾系統有限公司、武漢提愛思全興汽車零部件有限公司などの現地子会社が行っています。

(4) アジア・欧州


主に二輪車用シートおよび樹脂部品、四輪車用シートおよび内装品等の製造販売を行っています。タイ、インド、ハンガリー、ポーランドなどで事業を展開しています。

収益は製品の販売による対価等です。運営はTS TECH ASIAN CO.,LTD.、TS TECH (THAILAND) CO.,LTD.、TS TECH Poland sp. z o.o.などの現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間において増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方、利益面では2023年3月期に大きく落ち込んだ後、回復傾向にありましたが、2025年3月期は再び減益となりました。親会社所有者帰属当期利益率は低水準で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 3,461億円 3,500億円 4,092億円 4,417億円 4,605億円
税引前利益 277億円 239億円 129億円 217億円 201億円
利益率(%) 8.0% 6.8% 3.2% 4.9% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 207億円 124億円 53億円 102億円 86億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。その結果、営業利益は前期を下回っています。為替影響等による増収効果はあったものの、コスト増が利益を圧迫している状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,417億円 4,605億円
売上総利益 599億円 630億円
売上総利益率(%) 13.6% 13.7%
営業利益 175億円 164億円
営業利益率(%) 4.0% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が30億円(構成比6.5%)、研究開発費が16億円(同3.3%)、支払手数料が15億円(同3.1%)、荷造運搬費が12億円(同2.5%)となっています。

(3) セグメント収益


日本および米州セグメントでは増収増益となりました。特に日本セグメントは大幅な増益を達成しています。一方、中国セグメントは減収減益となり、アジア・欧州セグメントは減収かつ営業赤字に転落しました。地域によって業績の明暗が分かれています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 912億円 1,105億円 80億円 104億円 9.4%
米州 2,401億円 2,636億円 33億円 61億円 2.3%
中国 875億円 708億円 100億円 74億円 10.5%
アジア・欧州 490億円 451億円 26億円 -9億円 -2.1%
連結(合計) 4,417億円 4,605億円 175億円 164億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

テイ・エス テックは、主に営業活動から生み出されるキャッシュ・フローを営業費用や設備投資等に充当しています。

当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが減少しましたが、これは主に営業債権や棚卸資産の増減によるものです。投資活動では、定期預金の預入等により支出が増加しました。財務活動では、自己株式の取得等により支出が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 377億円 287億円
投資CF -87億円 -359億円
財務CF -178億円 -314億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人材重視」「喜ばれる企業」を経営理念として掲げています。「人材重視」とは、働く者全てが夢と情熱を持って活き活きと働く企業でありたいという想いを表しています。また、安全性や快適さを提供し、全てのステークホルダーから喜ばれる企業であり続けるという意思が込められています。

(2) 企業文化


経営理念を「TSフィロソフィー」としてグループ全体で共有しています。「人こそ企業の決め手」と考え、社員一人ひとりが理念を実践することで企業価値の向上に努める文化があります。また、サステナビリティへの取り組みを通じ、社会課題の解決と事業成長の両立を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2030年ビジョン「Innovative quality company - 新たな価値を創造し続ける -」の実現に向け、第15次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を推進しています。「ESG経営の実現」を方針とし、以下の数値目標等を掲げていますが、現在見直しを行っています。

* DOE(株主資本配当率):3.5%(2026年3月期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


「成長戦略」「地域戦略」「機能戦略」を重点戦略として掲げています。キャビンコーディネート機能の獲得や新事業の拡大、主要客先であるホンダビジネスのシェア向上を目指します。また、北米収益のV字回復、中国事業の再構築、欧州新事業の拡大を進めるとともに、サプライチェーン再構築や環境技術開発を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材重視」の理念の下、社員一人ひとりが個性を活かし活躍できる環境づくりと人材育成に努めています。多様な人材の確保・育成、エンゲージメント向上を強化し、2030年目標として単体での多様な人材(女性・キャリア採用・外国籍・高齢者・障がい者)の管理職比率35%を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.1歳 17.5年 7,594,471円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.4%
男女賃金差異(正規) 77.9%
男女賃金差異(非正規) 64.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(102.6%)、障がい者雇用率(2.9%)、外国籍社員比率(0.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要顧客への販売依存


同グループの売上収益の約87%は本田技研工業グループ向けであり、極めて高い依存度となっています。同社グループの事業戦略変更、生産調整、生産拠点の移管や再編、車種の販売動向、リコール等の問題が発生した場合、同グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合環境の激化


新たな競合の台頭や既存競合の競争力向上により、市場シェアが低下する可能性があります。同社はキャビン全体のコーディネートや次世代技術開発、異業種連携などを通じて競争力向上と新規顧客獲得に取り組んでいますが、競争環境の変化は業績に影響を与える可能性があります。

(3) サプライチェーンの寸断


主力製品の構造上、多数の取引先から原材料や部品を調達しており、取引先の経営破綻や財務悪化等により供給が滞るリスクがあります。取引先の経営状態確認や代替策の策定等でリスク低減を図っていますが、供給網の寸断は生産活動に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品の欠陥・リコール


乗員の安全に関わる重要部品を製造しているため、製品に欠陥が生じリコール等が発生した場合、多額の費用負担や信用低下を招く可能性があります。品質マネジメントシステムの運用やトレーサビリティの確保等で対策していますが、業績への影響リスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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