テイ・エス テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テイ・エス テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するテイ・エス テックは、四輪車用シートや内装品、二輪車用シートの製造販売を主力事業としています。直近の業績は、主要顧客向けの減産影響等により、売上収益は4,423億円で前期比微減、営業利益は103億円と減収減益となりました。新たな価値創造で持続的成長を目指します。


※本記事は、テイ・エス テック株式会社 の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. テイ・エス テックってどんな会社?


四輪車用シートや内装品等の製造販売をグローバルに展開する企業の特徴を解説します。

(1) 会社概要


1960年、東京シートとして分離独立し、1963年に四輪車用シートの製造を開始しました。1977年に米国へ進出して以降、中国やアジアなどへグローバルに展開しています。1997年に現在の社名に変更し、2007年には東京証券取引所市場第一部に株式を上場しました。

従業員数は連結で13,558名、単体で1,649名です。筆頭株主は主要顧客である本田技研工業で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は同じく信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
本田技研工業 21.88%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.55%
日本カストディ銀行(信託口) 4.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は鳥羽英二氏、代表取締役は保田真成氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
鳥羽 英二 代表取締役 社長 1994年同社入社。アジア・欧州統括責任者や開発・技術本部長などを経て2026年より現職。
保田 真成 代表取締役 1982年同社入社。開発・技術本部長などを経て2018年に代表取締役社長就任。2026年より現職。
宗村 聡 取締役 専務執行役員 1986年同社入社。営業・購買本部長などを経て2026年より現職。
須﨑 康清 取締役 専務執行役員 1990年同社入社。生産本部長や米州地域本部長などを経て2026年より現職。
内藤 浩 取締役 常務執行役員 1989年本田技研工業入社。2024年に同社執行役員事業管理本部長となり、2026年より現職。
有賀 義和 取締役監査等委員(常勤) 1990年同社入社。購買本部長や営業・購買本部副本部長などを経て2025年より現職。


社外取締役は、松下香織氏(K&Lコンサルティング代表取締役社長)、和田浩美氏(i-Golfスタジオ代表取締役)、林肇氏(さざんか法律事務所所長)、中田朋子氏(東京ヘリテージ法律事務所所長)、内藤憲一氏(元宇部エクシモ常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「中国」「アジア・欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


主に二輪車用シート及び樹脂部品、四輪車用シート及び内装品等の製造販売を行っています。顧客は主要取引先である本田技研工業をはじめとする完成車メーカーなどです。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は同社や九州テイ・エス、テイ・エス パーツ アンド サービスなどの子会社が行っています。

(2) 米州


北米および南米市場において、主に四輪車用シートおよび内装品等の製造販売を展開しています。現地の自動車メーカーや関連企業に製品を提供しています。

収益は、顧客への製品引き渡しによる販売代金として得ています。運営は、米国のTS TECH AMERICAS, INC.やカナダ、メキシコ、ブラジルの各現地子会社が担っています。

(3) 中国


中国および香港市場に向けて、四輪車用シートおよび内装品等の製造販売に特化した事業を展開しています。急速に変化する現地市場のニーズに対応した製品を提供しています。

収益は、現地および日系の自動車メーカーへの製品販売によって得ています。広州提愛思汽車内飾系統や武漢提愛思全興汽車零部件などの合弁会社や現地子会社が運営を行っています。

(4) アジア・欧州


タイ、フィリピン、インド、インドネシア、ポーランドなどの国々において、二輪車用シートおよび四輪車用シート、内装品等の製造販売を行っています。

収益は、各地域の自動車・二輪車メーカーに対する製品販売から得ています。運営は、タイのTS TECH (THAILAND) やインドのTS TECH SUN INDIA PRIVATE LIMITEDなどの現地子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上収益は2025年3月期まで順調に拡大していましたが、2026年3月期は減少に転じています。当期利益についても、外部環境の変化や製造コスト上昇の影響を受け、直近2期間は連続して減益となるなど、収益面での課題が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 3500億円 4092億円 4417億円 4605億円 4423億円
税引前利益 - - - - -
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 124億円 53億円 102億円 86億円 71億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で減少しており、これに伴い営業利益も減少しています。売上総利益率はほぼ横ばいですが、販売費及び一般管理費の負担増などが影響し、営業利益率は低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 4605億円 4423億円
売上総利益 134億円 133億円
売上総利益率(%) 2.9% 3.0%
営業利益 164億円 103億円
営業利益率(%) 3.6% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が32億円(構成比26%)、研究開発費が22億円(同18%)、支払手数料が17億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の米州セグメントは減収減益となり、営業利益が大幅に減少しました。中国セグメントやアジア・欧州セグメントでも主要顧客向けの減産影響により減収となっています。一方、日本セグメントは微増収を維持したものの、利益面では減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 1105億円 1121億円 104億円 96億円 8.6%
米州 2636億円 2613億円 61億円 15億円 0.6%
中国 708億円 562億円 74億円 68億円 12.1%
アジア・欧州 451億円 425億円 -9億円 -5億円 -1.1%
調整額 -294億円 -298億円 -66億円 -71億円 -
連結(合計) 4605億円 4423億円 164億円 103億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で稼いだ資金をもとに、将来に向けた設備投資や株主還元、借入金の返済等を自前の手元資金で賄っている優良な状態と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 287億円 226億円
投資CF -359億円 -237億円
財務CF -314億円 -227億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.5%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人材重視」「喜ばれる企業」を経営理念として掲げています。「人材重視」とは、人こそ企業の決め手と考え、働くすべての人々が夢と情熱をもって活き活きと働ける企業でありたいという想いを表しています。また、安全性や快適さ、感動を与えられる製品を車室内空間全体で提供し、社会とともに持続的な成長を続けることで、すべてのステークホルダーから「喜ばれる企業」であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループでは、経営理念を「TSフィロソフィー」としてグループ全体に共有しています。社員一人ひとりがこのフィロソフィーを実践していくことで、企業価値の向上に努める文化が形成されています。また、多様な人材の確保や育成、エンゲージメント向上に向けた取り組みを強化し、社員と会社が一体となってサステナビリティ意識を醸成しながら、社会課題の解決に取り組む風土があります。

(3) 経営計画・目標


2030年ビジョンとして「Innovative quality company -新たな価値を創造し続ける-」を掲げ、車室内空間全体として安心・安全・快適なキャビンを提供できる企業への変革を進めています。第16次中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)では、「“稼ぐ力”を取り戻す」を経営方針とし、最終年度に以下の目標達成を目指しています。

・営業利益率 5.0%
・DOE(株主資本配当率) 3.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


主要顧客である本田技研工業向けのビジネスを基盤としつつ、戦略的な営業活動により新たな顧客(戦略OEM)の獲得と商権拡大を図ります。また、異業種やパートナー企業と連携した魅力ある商品・新技術の投入、高効率な生産体制の構築、持続可能なサプライチェーンの確立に取り組みます。資本効率の面では、ROEの改善を通じた企業価値向上と、業績に左右されない安定的かつ継続的な株主還元を推進していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人こそ企業の決め手」という考えのもと、個人の特性を活かし活き活きと活躍できる環境づくりと人材育成に取り組んでいます。多様な働き方に対応した制度の整備を進めるほか、成果に応じたメリハリある給与・評価制度を運用しています。また、DX推進を牽引する人材の育成や、IT・AI活用に関する全社的なリテラシー向上施策を通じて、組織のパフォーマンス最大化と持続的な価値創造を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 17.6年 7,796,981円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 77.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.8%)、外国籍社員比率(0.6%)、有給休暇取得率(102.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品製造・販売に関するリスク


同社グループは、主要顧客である本田技研工業グループへの販売依存度が非常に高く、同グループの事業戦略や生産調整、販売動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自動車部品の中でも安全上重要な部品を製造しているため、製品の欠陥によるリコール等が発生した場合、多額の賠償費用や信用の低下を招くリスクがあります。

(2) 国際情勢や経済動向等の外部経営環境に関するリスク


グローバルに事業を展開しているため、各国の経済動向や市場構造の変化、為替相場の変動による影響を受けます。また、原材料や半導体等の調達部品における価格上昇や供給不足が生じた場合、サプライチェーンの混乱や製造コストの増加につながり、収益を圧迫するリスクがあります。

(3) 法的規制・訴訟に関するリスク


北米、中国、アジアなど多数の地域で事業を展開しており、各国における予期せぬ法律や環境規制の変更、追加関税、輸出入規制の強化に直面するリスクがあります。さらに、知的財産権の侵害や事業活動にともなう訴訟等の法的手続きにおいて、同社の主張が認められなかった場合、業績や事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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