理想科学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

理想科学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の理想科学工業は、孔版印刷機「リソグラフ」や高速カラープリンター「オルフィス」を展開する印刷機器メーカーです。国内や欧米、アジアなどグローバルに事業を展開しています。直近の連結業績は、売上高787億円、営業利益62億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、理想科学工業株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 理想科学工業ってどんな会社?


同社は、独自技術による高速多枚数プリントに強みを持つ印刷機器の開発・製造・販売を主軸とする企業です。

(1) 会社概要


1955年に謄写版印刷業として設立され、1980年代にデジタル孔版印刷機「リソグラフ」を開発し、事務用印刷の新市場を開拓しました。2000年代には高速カラープリンター「オルフィス」を発売し、多枚数プリント領域での地位を確立しました。2004年にJASDAQ上場、2006年に東証一部(現プライム)へ上場を果たしています。2024年には東芝テックよりインクジェットヘッド事業を承継し、新規事業として運営を開始しました。

同社の連結従業員数は2,859名、単体では1,538名です。筆頭株主は創業家一族の資産管理会社で、第2位は教育関連の公益財団法人、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、創業家と関連団体が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
有限会社理想社 15.41%
公益財団法人理想教育財団 8.30%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長社長執行役員は羽山明氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
羽山 明 代表取締役社長社長執行役員兼 プリントクリエイト事業部担当 1990年同社入社。取締役、専務取締役、営業本部長等を経て1999年より現職。
池嶋 昭一 取締役執行役員 1983年同社入社。開発本部副本部長、開発本部長等を経て2013年より現職。
川津 俊彦 取締役執行役員営業統括本部長兼 日本営業部長兼 デジタルコミュニケーション事業部担当 1989年同社入社。海外営業本部欧米営業部長、海外営業本部長等を経て2021年より現職。


社外取締役は、権藤嘉江子(元グラフィック・パッケージング・インターナショナル社長)、渡部秀敏(元ワタベウェディング会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷機器関連事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 印刷機器関連事業


高速インクジェットプリンター「オルフィス」やデジタル孔版印刷機「リソグラフ」などの開発・製造・販売を行っています。また、2024年に承継したインクジェットヘッド事業も本セグメントに含まれます。学校や官公庁、企業向けに、高速かつ低ランニングコストでの多枚数プリントソリューションを提供しています。

主な収益源は、プリンター機器本体の販売に加え、専用インクやマスターなどの消耗品販売、保守サービス料です。運営は同社が開発・製造・販売を行うほか、海外ではRISO, INC.(米国)、RISO FRANCE S.A.(フランス)などの販売子会社、理想(中国)科学工業有限公司などの製造・販売子会社が担っています。

(2) 不動産事業


同社グループが保有する不動産の賃貸管理を行っています。東京都内などに賃貸用オフィスビルや土地を保有しており、安定的な収益確保を目的として運営されています。

収益源は、テナントからの賃貸料収入です。運営は主に同社が行っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、デジタルコミュニケーション事業やプリントクリエイト事業、アプリケーションソフトウェア事業などを展開しています。

収益源は、各種サービス提供による対価やソフトウェアの利用料などです。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期にかけて、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近では円安の影響もあり、売上高は780億円台後半に達しました。利益面では、経常利益が60億円台で安定的に推移しており、高い利益率を維持しています。当期純利益も安定した水準を保っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 693億円 747億円 746億円 787億円
経常利益 46億円 62億円 62億円 64億円
利益率(%) 6.7% 8.3% 8.3% 8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 49億円 51億円 50億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約60%と高い水準を維持しており、製品力の高さがうかがえます。営業利益も増加し、営業利益率は約8%となりました。全体として、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 746億円 787億円
売上総利益 430億円 470億円
売上総利益率(%) 57.6% 59.7%
営業利益 53億円 62億円
営業利益率(%) 7.0% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が146億円(構成比36%)、研究開発費が56億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


印刷機器関連事業は、海外での販売増や為替の円安効果により増収増益となりました。不動産事業は減収減益となりましたが、その他事業は増収となりましたが赤字幅が拡大しています。主力の印刷機器関連事業が全社の業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
印刷機器関連事業 729億円 770億円
不動産事業 11億円 10億円
その他 6億円 7億円
連結(合計) 746億円 787億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、本業で現金を創出できています。投資活動ではインクジェットヘッド事業の承継などにより支出が増加しました。財務活動は借入金の増加があるものの、自己株式取得や配当支払いでマイナスとなっており、全体として健全型のキャッシュ・フローです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 65億円 33億円
投資CF -13億円 -83億円
財務CF -56億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界に類のないものを創る」という開発ポリシーのもと、他社にはない独自の製品やサービスを通じて、世界中の顧客の生産性、経済性、利便性の向上に貢献することを使命としています。常に新しい価値創造に挑戦し続けることを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「お客様本位」の精神を重視し、顧客の視点に立った製品開発や販売活動を行う文化があります。また、独自の技術開発にこだわりを持ち、失敗を恐れずに新しいことにチャレンジする風土が根付いています。社員一人ひとりが主体的に行動し、チームワークを大切にしながら目標達成に向けて取り組む姿勢が評価されます。

(3) 経営計画・目標


同社はこれまで3ヵ年の「中期経営計画」を策定してきましたが、短期・中期の業績にとらわれず、長期的かつ本質的な視点での運営を目指すため、第八次中期経営計画(2025年3月期終了)に続く新たな中期経営計画は策定しない方針としました。今後は長期的なビジョンに基づき、持続的な成長を目指します。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向け、インクジェット事業の収益力強化を最重要課題としています。具体的には、製品・サービスの特長を活かした販売活動をグローバルに展開するとともに、新規事業の創出にも注力します。また、経営環境の変化に適応し、効率的で強靭な企業体質への変革を進めることで、持続的な企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「多様な人材や働き方が認められ、活躍できる会社」を目指しています。性別や国籍を問わず能力重視の採用を行い、多様性を確保するとともに、次世代リーダーの発掘・育成プログラムを通じて経営人材の育成に注力しています。また、社員が主体的にキャリアを選択できる環境整備や、育児と仕事の両立支援などにも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 22.0年 8157472円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 73.4%
男女賃金差異(正規) 72.7%
男女賃金差異(非正規) 77.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(71.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替レート変動の影響


同社グループの売上高の約半分は海外顧客向けであり、現地通貨建ての取引が多くなっています。そのため、為替レートの変動は円換算後の業績や財務状況に影響を与える可能性があります。特に、米ドルやユーロに対する円高の進行は、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 海外事業展開に伴うカントリーリスク


中国やタイに製造拠点を持ち、世界各地に販売子会社を展開しています。これらの地域における政情不安、経済環境の悪化、労働争議、テロ、戦争、感染症の流行などの不測の事態が発生した場合、生産や販売活動が停止し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 自然災害や事故のリスク


国内外に製造拠点を分散させていますが、地震、台風などの自然災害や火災などの事故により、設備が甚大な被害を受けた場合、操業の中断や生産・出荷の遅延が発生する可能性があります。また、修復費用が多額になり保険でカバーしきれない場合、財務状況に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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