※本記事は、株式会社カプコン の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カプコンってどんな会社?
家庭用ゲームソフトの開発・販売を中核とし、世界的な人気コンテンツを多数保有する大手ゲームメーカーです。
■(1) 会社概要
1979年にアイ・アール・エムとして設立され、1983年に販売部門を担う(旧)カプコンを設立しました。1989年に両社が合併し、現在の商号に変更しています。1990年代以降、家庭用ゲームソフトの開発を本格化させ、2000年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は3,766名、単体では3,379名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は株式会社クロスロードです。第3位以下には金融機関が名を連ねています。創業家である辻本家が主要株主として一定の持分を保有しており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 14.32% |
| クロスロード | 10.26% |
| ジェーピー モルガン チェース バンク 380815 | 8.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は辻本春弘氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 辻本 憲 三 | 代表取締役会長最高経営責任者(CEO) | 1983年カプコン代表取締役社長。コンピュータソフトウェア著作権協会理事長等を歴任。2001年CEO、2007年より現職。 |
| 辻本 春 弘 | 代表取締役社長社長執行役員最高執行責任者(COO)兼OP事業、PS事業管掌 | 1987年入社。取締役副社長執行役員等を経て2007年より現職。コンピュータエンターテインメント協会会長も務める。 |
| 宮崎 智 史 | 代表取締役副社長執行役員最高人事責任者(CHO)最高財務責任者(CFO) 兼コーポレート経営管掌 | 1983年日本興業銀行入行。みずほ銀行取締役副頭取等を経て2021年カプコン入社。2025年より現職。 |
| 石田 義 則 | 取締役専務執行役員グローバル事業管掌 | 1992年入社。常務執行役員グローバル事業統括等を経て2022年より現職。 |
| 辻本 良 三 | 取締役専務執行役員最高製品責任者(CPO) 兼開発部門管掌 | 1996年入社。常務執行役員CS第二開発統括等を経て2025年より現職。 |
| 笹原 芳 信 | 取締役専務執行役員コーポレート経営副管掌 | 2008年入社。常務執行役員企画戦略統括等を経て2025年より現職。 |
| 平尾 一 氏 | 取締役(常勤監査等委員) | 1988年入社。執行役員海外事業部長、総務部長等を経て2016年より現職。 |
社外取締役は、水越豊(元ボストン コンサルティング グループ日本代表)、武藤敏郎(元日本銀行副総裁)、廣瀬由美(税理士)、幸田真音(作家)、メットキャフ康子(元KPMG LLP パートナー)、上良睦彦(元国税庁徴収部長)、小谷渉(元警察大学校長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルコンテンツ事業」、「アミューズメント施設事業」、「アミューズメント機器事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) デジタルコンテンツ事業
家庭用ゲームソフトおよびモバイルコンテンツの開発・販売を行う同社の中核事業です。世界的な人気IPである「モンスターハンター」「バイオハザード」「ストリートファイター」などのシリーズを展開し、グローバル市場に向けてコンテンツを提供しています。
収益は、パッケージソフトおよびデジタルダウンロード販売による対価が主な源泉です。近年は、発売後のリピート販売やダウンロード販売の比率が高まっています。運営は主に同社が開発・販売を行うほか、海外においてはCAPCOM U.S.A., INC.などの現地法人が販売を担っています。
■(2) アミューズメント施設事業
商業施設内などで「プラサカプコン」等のアミューズメント店舗を運営しています。ゲーム機の設置に加え、カプセルトイ専門店やキャラクターグッズ販売店など、多様な顧客ニーズに対応した店舗展開を行っています。
収益は、店舗におけるゲームプレイ料金や物販、プライズゲームの利用料などが主な源泉です。運営は主に同社が行っています。各店舗でのイベント実施等により、リアル店舗の魅力を活かした集客と、他事業とのシナジー創出を図っています。
■(3) アミューズメント機器事業
パチスロ機等の遊技機を開発・製造し、店舗運営業者等へ販売しています。同社の人気IPを活用した機種開発に強みを持ち、スマートパチスロなどの市場動向に合わせた製品投入を行っています。
収益は、遊技機の販売代金が主な源泉です。運営は同社および株式会社エンターライズ、株式会社アデリオンなどの子会社が行っています。
■(4) その他事業
同社の豊富なIPを活用したキャラクターライセンス事業や、eスポーツ事業、映像作品への投資などを展開しています。「ワンコンテンツ・マルチユース」戦略に基づき、ゲーム以外の分野でもブランド価値の向上を図っています。
収益は、ライセンス許諾によるロイヤリティ収入やeスポーツ大会のスポンサー収入などが主な源泉です。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高、経常利益ともに一貫して右肩上がりの成長を続けています。特に当期は、主力タイトルのヒットやリピート販売の伸長により、売上高・利益ともに過去最高を更新しました。経常利益率は30%台後半から40%前後の高水準を維持しており、高い収益性を誇っています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 953億円 | 1,101億円 | 1,259億円 | 1,524億円 | 1,696億円 |
| 経常利益 | 348億円 | 443億円 | 514億円 | 594億円 | 656億円 |
| 利益率(%) | 36.6% | 40.3% | 40.8% | 39.0% | 38.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 229億円 | 293億円 | 332億円 | 408億円 | 456億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は50%台後半で推移しており、デジタル販売の比率が高いビジネスモデルの強みが表れています。営業利益率も30%台後半と非常に高い水準を維持しており、効率的な経営が行われていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,524億円 | 1,696億円 |
| 売上総利益 | 847億円 | 988億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.5% | 58.2% |
| 営業利益 | 571億円 | 658億円 |
| 営業利益率(%) | 37.5% | 38.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの役員報酬及び給料手当が81億円(構成比24.6%)、広告宣伝費が69億円(同21.1%)を占めています。売上原価では、製品ごとのロイヤリティ等の支払手数料や減価償却費などが含まれています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。特に主力のデジタルコンテンツ事業は大型新作やリピート販売が好調で、全社売上の約7割、利益の大部分を稼ぎ出しています。アミューズメント機器事業もスマートパチスロの新機種投入などで大幅な増収増益となりました。アミューズメント施設事業やその他事業も、堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルコンテンツ | 1,198億円 | 1,251億円 | 598億円 | 652億円 | 52.1% |
| アミューズメント施設 | 193億円 | 228億円 | 19億円 | 24億円 | 10.7% |
| アミューズメント機器 | 90億円 | 156億円 | 41億円 | 67億円 | 42.9% |
| その他 | 42億円 | 61億円 | 9億円 | 25億円 | 40.7% |
| 調整額 | - | - | -96億円 | -110億円 | - |
| 連結(合計) | 1,524億円 | 1,696億円 | 571億円 | 658億円 | 38.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で獲得した資金を元手に、投資や株主還元を行いつつ借入金返済も進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 369億円 | 676億円 |
| 投資CF | -60億円 | -73億円 |
| 財務CF | -160億円 | -187億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ゲームというエンターテインメントを通じて『遊文化』をクリエイトし、人々に感動を与える『感性開発企業』」を経営理念として掲げています。独自の技術と開発力を活かし、世界中で支持されるコンテンツを創出することで、中長期的な安定成長と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
「最高のコンテンツで世界中の人々を夢中にさせる企業」を目指すビジョンのもと、経営の透明性・公正性・迅速性を重視しています。また、独自の開発力による世界的なIPの創出と多面的な活用を強みとし、株主や顧客、従業員などのステークホルダーとの信頼関係構築と共存共栄に努める姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「毎期10%営業利益増益」を中期経営目標として掲げています。また、資本効率の観点からROE(自己資本利益率)の向上による企業価値増大を目指すとともに、キャッシュ・フロー経営を重視しています。株主還元については、連結配当性向30%を基本方針とし、安定配当の継続に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業のデジタルコンテンツ事業において、国・地域の特性に応じたマーケティング強化とユーザーニーズの把握に努め、長期的価格施策とグローバル販売強化により、年間1億本の販売を目指します。また、IPの認知向上と収益機会最大化のため、映像作品やeスポーツ等への展開も推進します。
* 人材投資戦略の推進、開発体制および開発環境への投資強化
* 新規IPの創出と主要IPの活用によるパイプラインの拡充
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
最高人事責任者(CHO)を設置し、企業価値創造の源泉である人的資本への投資を最優先課題としています。中核的競争力である開発体制拡充のため、毎年100名以上の開発人員増員や、報酬制度改定による処遇向上、若手社員の早期育成などを推進しています。また、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりにも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.0歳 | 11.2年 | 9,185,000円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.9% |
| 男性育児休業取得率 | 79.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.8%)、開発職人数(2,846名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外における事業展開について
同社グループは海外売上高比率が約60%と高く、各国の市場動向、政治・経済情勢、法規制などのカントリーリスクの影響を受ける可能性があります。また、多額の外貨建営業債権を保有しているため、為替レートの大幅な変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、現地情報の収集や為替予約取引の活用などでリスク軽減に努めています。
■(2) デジタルコンテンツ事業のリスク
家庭用ゲーム機等の高性能化に伴う開発費の高騰や、技術革新への対応遅れ、ゲームソフトの陳腐化などがリスク要因となります。また、一部の人気シリーズへの依存度が高いことや、季節要因による業績変動の可能性もあります。これらに対し、開発の効率化、グローバル販売の強化、マルチプラットフォーム展開などでリスク分散を図っています。
■(3) 情報セキュリティ
ゲームコンテンツを世界中で販売しており、個人情報や開発情報などの機密情報漏洩が発生した場合、損害賠償や企業イメージの低下、開発中止などを招く恐れがあります。これに対し、セキュリティ監督委員会の設置や常時監視体制の構築、社員教育の実施などにより、情報セキュリティ体制の強化に取り組んでいます。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。