※本記事は、株式会社カプコンの有価証券報告書(第47期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カプコンってどんな会社?
カプコンは、世界で愛される家庭用ゲームソフトの開発やアミューズメント施設を運営する企業です。
■(1) 会社概要
1979年に電子応用のゲーム機器開発・販売を目的にアイ・アール・エムを設立したのが始まりです。1983年にカプコンを設立後、1989年に吸収合併して現在のカプコンに変更しました。1990年の店頭登録を経て、2000年に東証一部へ上場し、現在は自社IPを活用した多様な事業をグローバルに展開しています。
現在の従業員数は連結で3,976名、単体で3,593名体制です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第2位にはクロスロードが名を連ねており、第3位には外資系金融機関のジェーピーモルガンチェースバンクが名を連ねるなど、多様な投資家から支持を集めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.30% |
| クロスロード | 10.26% |
| ジェーピー モルガン チェース バンク 380752 | 8.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は辻本春弘氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 辻本憲三 | 代表取締役会長最高経営責任者(CEO) | 1983年カプコン代表取締役社長に就任。コンピュータソフトウェア著作権協会理事長などを歴任し、2001年最高経営責任者(CEO)に就任。2007年より現職。 |
| 辻本春弘 | 代表取締役社長社長執行役員最高執行責任者(COO) 兼エンターテインメントエクスペリエンス事業、PS事業管掌 | 1987年カプコン入社。1997年取締役、2004年取締役専務執行役員などを経て、2007年に代表取締役社長、社長執行役員兼最高執行責任者(COO)に就任。2026年より現職。 |
| 宮崎智史 | 代表取締役副社長執行役員最高人事責任者(CHO)、最高財務責任者(CFO) 兼コーポレート経営管掌 | 1983年日本興業銀行入行。みずほ銀行の取締役副頭取等を経て、2021年カプコン副社長執行役員に就任。2024年代表取締役となり、2025年より現職。 |
| 石田義則 | 取締役専務執行役員グローバル事業管掌 | 1992年カプコン入社。営業推進部長や日本・アジア事業統括などを経て、2022年に専務執行役員および取締役に就任。グローバル事業管掌などを務め、2026年より現職。 |
| 辻本良三 | 取締役専務執行役員最高製品責任者(CPO) 兼開発部門管掌 | 1996年カプコン入社。第三開発部長やCS第三開発統括などを経て、2022年に専務執行役員および取締役に就任。開発部門副管掌を務め、2025年より現職。 |
| 笹原芳信 | 取締役専務執行役員コーポレート経営副管掌 | 2008年カプコン入社。経理部長や経営企画部長、カプコン台湾代表取締役CEO等を経て、2022年常務執行役員に就任。2025年専務執行役員となり、同年より現職。 |
社外取締役は、水越豊(元ボストンコンサルティンググループ日本代表)、武藤敏郎(元大蔵事務次官)、廣瀬由美(廣瀬由美税理士事務所所長)、幸田真音(作家)、メットキャフ康子(元KPMG LLPパートナー)です。また監査等委員である社外取締役は、上良睦彦(元札幌国税局長)、小谷渉(元警視庁副総監)です。
2. 事業内容
同社グループは、デジタルコンテンツ事業、アミューズメント施設事業、アミューズメント機器事業およびその他事業を展開しています。
■デジタルコンテンツ事業
同事業では、家庭用ゲームやモバイルコンテンツの開発・販売を展開しています。「バイオハザード」や「モンスターハンター」、「ストリートファイター」などの人気シリーズを活用し、世界の幅広い顧客層へ向けた多彩なゲームタイトルを提供しています。
収益は、ゲームソフトのパッケージ販売やデジタルダウンロード販売、およびモバイルゲーム内の課金などから得ています。開発・販売の運営は同社のほか、ケーツーなどの開発子会社や、海外販売を担うCAPCOM U.S.A., INC.などの関係会社が行っています。
■アミューズメント施設事業
同事業では、ゲーム機を設置したアミューズメント施設や、キャラクターグッズ等の物販店舗を運営しています。国内だけでなく海外へも展開し、体験型施設やクレーンゲーム専門店、カプセルトイ専門店など、多様化する顧客ニーズに合わせた店舗づくりを行っています。
収益は、アミューズメント施設におけるゲーム機の利用料や、店舗内でのキャラクターグッズなどの商品販売代金として顧客から直接受け取るモデルです。本事業の運営は、主に同社が単独で行っています。
■アミューズメント機器事業
同事業では、店舗運営業者等に向けてパチスロなどの遊技機の開発・製造・販売を行っています。自社の人気ゲームIPを活用したスマートパチスロ機の継続的な投入により、市場での安定した需要に応える魅力的な機種を提供しています。
収益は、開発・製造した遊技機をパチンコホールなどの店舗運営業者や販売代理店に販売した際の製品売上から得ています。事業の運営は、同社のほか、エンターライズ、アデリオン、レオスターなどの関係子会社が担っています。
■その他事業
その他事業では、eスポーツビジネスや映像ビジネス、キャラクタービジネスなどのライセンス事業を展開しています。自社ゲームタイトルを活用したeスポーツの世界大会開催のほか、実写映画やアニメ化、各種コラボレーショングッズの企画などを行っています。
収益は、大会スポンサー料のほか、IPの映画化や商品化権の供与に伴い発生する契約金、および相手先の売上高に応じたロイヤリティ収入などから得ています。事業の運営は、同社のほか、CAPCOM PICTURES, INC.などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、デジタル販売の強化や人気シリーズのリピート販売増などにより、売上高は一貫して右肩上がりで拡大しています。利益面でも増益基調が続いており、経常利益率は約38%から40%という極めて高い水準を安定的に維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,101億円 | 1,259億円 | 1,524億円 | 1,696億円 | 1,954億円 |
| 経常利益 | 443億円 | 514億円 | 594億円 | 656億円 | 741億円 |
| 利益率(%) | 40.3% | 40.8% | 39.0% | 38.7% | 37.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 293億円 | 332億円 | 408億円 | 456億円 | 511億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益が順調に伸びています。売上総利益率は56%を超える高い水準を維持し、強力なIPによる高収益体質が伺えます。営業利益も二桁成長を達成しており、堅調な業績の拡大が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,696億円 | 1,954億円 |
| 売上総利益 | 988億円 | 1,102億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.2% | 56.4% |
| 営業利益 | 658億円 | 753億円 |
| 営業利益率(%) | 38.8% | 38.5% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が90億円(構成比26%)と最も大きく、次いで広告宣伝費が59億円(同17%)、販売促進費が35億円(同10%)を占めています。売上原価については、ゲームソフトの開発に伴う収益性の低下に伴う簿価切下額が102億円(構成比12%)含まれています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力タイトルやリピート販売が好調なデジタルコンテンツ事業が全体の大部分を占め、増収を牽引しています。アミューズメント施設や機器事業も堅調に成長し、全セグメントにおいて前年を上回る売上高を記録しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| デジタルコンテンツ事業 | 1,251億円 | 1,443億円 |
| アミューズメント施設事業 | 228億円 | 257億円 |
| アミューズメント機器事業 | 156億円 | 178億円 |
| その他事業 | 61億円 | 77億円 |
| 連結(合計) | 1,696億円 | 1,954億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFは定期預金の預入や固定資産の取得によりマイナス、財務CFは配当金の支払や借入金の返済によりマイナスです。営業活動で得た潤沢な資金で投資と負債の返済を行っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 676億円 | 314億円 |
| 投資CF | -73億円 | -559億円 |
| 財務CF | -187億円 | -261億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.8%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ゲームというエンターテインメントを通じて『遊文化』をクリエイトし、人々に感動を与える『感性開発企業』」を経営理念に掲げています。また、「最高のコンテンツで世界中の人々を夢中にさせる企業」をビジョンとし、事業活動を通じて中長期にわたる安定成長の実現と企業価値の向上に努めています。
■(2) 企業文化
同社は、開発人員の共有すべき価値観と行動基準を明文化した開発人材ポリシー「CAPCOM-SHIP」を制定し、人材育成や組織マネジメント、チームビルディングに活用しています。多様な感性やスキルを持つ人材からアイデアが創出される文化を醸成し、世界トップレベルのクリエイターが能力を最大限に発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業の継続的な拡大による企業価値の向上を経営目標に掲げています。
・毎期10%営業利益増益
・ROE(自己資本利益率)の向上による企業価値の増大
・連結配当性向30%を基本方針とする安定配当の継続
・現金動向を把握するキャッシュ・フロー経営の重視
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、独自の開発エンジン等の最先端技術の研究開発や開発環境構築への積極的な成長投資を継続し、IPの認知向上による新規ユーザーの創出を目指しています。
・デジタルコンテンツ事業での年間1億本販売
・240を超える国や地域での販売網の拡充
・IPを活用した映像作品やライセンス展開、eスポーツ等による収益機会の最大化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業価値創造の源泉である人的資本への取組みを最優先課題の一つに位置づけています。将来を支える人材の確保と育成に向け、毎期100名以上の開発人員増員や新卒初任給の引き上げを実施しています。また、国籍や性別に関係なく多様な人材が活躍できる環境整備を進め、従業員の離職防止とエンゲージメント向上に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.1歳 | 11.2年 | 9,852,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.8% |
| 男性育児休業取得率 | 79.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 65.3% |
※女性管理職比率、男女賃金差異は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づく値です。
また、同社は「サステナビリティへの取組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.6%)、従業員に占める女性比率(22.4%)、管理職に占める中途採用者比率(53.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 開発費の高騰化
家庭用ゲーム機などは新技術の登場や機器の性能向上に伴い高機能化・多機能化しており、開発費が高騰する傾向にあります。そのため、販売計画が未達となった一部のタイトルにおいては、開発資金を十分に回収できないリスクがあります。同社は自社開発エンジンの構築や開発の効率化により、費用抑制に努めています。
■(2) 人気シリーズへの依存
同社は多数のゲームソフトを市場に投入していますが、一部の人気シリーズに収益が集中する傾向があります。市場環境の変化や主力タイトルに不具合が生じた場合、ユーザー離れが起きる恐れがあります。同社は主力IPを活用した大型タイトルの安定的な投入に加え、新規IPの創出により収益の分散化と向上を図っています。
■(3) 家庭用ゲーム機の更新と普及動向
同社の家庭用ゲームソフトは各社のプラットフォームに供給されていますが、新たなハードへの移行期にはユーザーが新作の買い控えを行う傾向があります。そのため、端境期には販売が伸び悩むリスクがあります。同社は特定のハードに依存しないマルチプラットフォーム展開の強化により、収益リスクの分散に努めています。
■(4) 情報セキュリティおよびサイバー攻撃
同社は世界各国でデジタル販売を展開しており、個人情報や開発データ等の機密情報を保有しています。想定を超えた技術による不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合、情報漏洩や開発の中止を招く恐れがあります。同社はセキュリティ監督委員会を設置し、高度化する脅威に対する監視と防御体制の強化を継続的に進めています。



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