エイベックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エイベックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。音楽事業、アニメ・映像事業を中核とする総合エンタテインメント企業です。直近の連結業績は、音楽パッケージ作品の販売数減少等により減収となり、営業損失および経常損失を計上して赤字転落しました。


※本記事は、エイベックス株式会社の有価証券報告書(第38期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エイベックスってどんな会社?


音楽、アニメ・映像などのエンタテインメントコンテンツの企画・制作・販売を展開。IPの創出・育成・マネタイズに注力する企業です。

(1) 会社概要


1988年4月にエイベックス・ディー・ディーとして設立され、輸入レコードの販売を開始しました。1999年12月に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2004年10月には持株会社体制へ移行しました。2014年にはシンガポール拠点を子会社化し海外展開を推進。2022年4月の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

同グループの従業員数は連結1,457名、単体91名です。筆頭株主は、動画配信や音楽配信事業等で協業関係にあるIT企業のサイバーエージェントです。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は資産管理会社とみられます。

氏名 持株比率
サイバーエージェント 12.98%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.90%
ティーズ・キャピタル 8.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名、計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは黒岩克巳氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
松浦 勝人 代表取締役会長 1988年4月同社設立取締役。同社専務、執行役員等を経て2004年代表取締役社長。2010年社長CEO、2020年6月より現職。
黒岩 克巳 代表取締役社長CEO 2001年アクシヴ(現エイベックス・マネジメント)入社。同社執行役員等を経て2018年社長COO。2020年6月より現職。
林 真司 代表取締役CFO 1990年同社入社。取締役、常務、執行役員等を歴任。2010年代表取締役CBO。2018年6月より現職。
見城 徹 取締役(非常勤) 1993年幻冬舎設立、代表取締役社長。2010年6月より現職。
小林 伸之 取締役監査等委員(常勤) 1998年エイベックス・ディストリビューション入社。同社常務等を経て2013年同社常勤監査役。2020年6月より現職。


社外取締役は、瀧口友里奈(グローブエイト代表取締役)、杉本佳英(弁護士)、安田恵(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「音楽事業」「アニメ・映像事業」「海外事業」および「その他」事業を展開しています。

音楽事業


音楽コンテンツの企画・制作・販売、音楽配信、音楽出版、アーティスト・タレント・クリエイターのマネジメント、マーチャンダイジング、コンサート・イベントの企画・運営・チケット販売、ファンクラブ運営等を行う中核事業です。

主な収益源は、CD・DVD等のパッケージ販売、音楽配信収入、ライブチケットやグッズ販売、ファンクラブ会費等です。運営は主にエイベックス・エンタテインメント、エイベックス・マネジメント、エイベックス・クラン等のグループ各社が行っています。

アニメ・映像事業


アニメ・映像コンテンツの企画・制作・販売・宣伝、アーティストのマネジメント、映画配給、ゲームソフト等の企画・制作及び映像配信サービスに対するアニメ作品の供給等を行っています。

主な収益源は、映像パッケージ販売、映画興行収入、配信事業者へのライセンス許諾料等です。運営は主にエイベックス・ピクチャーズ、エイベックス・アニメーションレーベルズ、エイベックス・フィルムレーベルズ等が行っています。

海外事業


北米、アジア、中東等の海外市場におけるエンタテインメントコンテンツの企画・制作・流通を行っています。グローバル展開を見据えたIP開発や流通網の構築を進めています。

主な収益源は、海外市場でのコンテンツ販売やライセンス収入等です。運営は主にAvex USA Inc.、Avex South East Asia Pte.Ltd.、Avex China Inc.等の海外現地法人が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、デジタルコンテンツ関連やその他の新規事業領域等の取り組みを行っています。

各種サービス提供に伴う対価を収益源としています。運営は同社グループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復基調にありましたが、直近で横ばいから微減となりました。利益面では黒字と赤字を繰り返しており、直近の2025年3月期は経常損失を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 815億円 984億円 1,216億円 1,334億円 1,317億円
経常利益 -65億円 24億円 41億円 11億円 -17億円
利益率 -8.0% 2.4% 3.3% 0.9% -1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 110億円 -19億円 -9億円 6億円 -38億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比微減となりました。売上原価率は増加し、営業損失を計上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,334億円 1,317億円
売上総利益 393億円 358億円
売上総利益率 29.5% 27.2%
営業利益 13億円 -18億円
営業利益率 0.9% -1.4%


販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が16億円(構成比4.1%)、従業員給与及び賞与が8億円(同2.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


音楽事業が売上の大半を占めますが、減収となりました。アニメ・映像事業は増収で好調です。海外事業は大幅な減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
音楽事業 1,123億円 1,103億円
アニメ・映像事業 154億円 179億円
海外事業 57億円 34億円
その他・調整額 1億円 0億円
連結(合計) 1,334億円 1,317億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、運転資金及び投資等の資金需要に対し、自己資金を基本とし、必要に応じて金融機関からの借入金で資金を確保しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や前受金により増加したものの、子会社株式売却益や法人税等の支払額、未収入金の増加により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産、投資有価証券の取得による支出があったものの、子会社株式の売却収入や貸付金の回収により増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、非支配株主からの払込みによる収入があったものの、自己株式の取得や配当金の支払いにより減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 37億円 -47億円
投資CF -24億円 9億円
財務CF -24億円 -41億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「エンタテインメントの可能性に挑みつづける。人が持つ無限のクリエイティビティを信じ、多様な才能とともに世界に感動を届ける。そして、豊かな未来を創造する。」を企業理念として掲げています。

(2) 企業文化


タグラインとして「Really! Mad+Pure」を掲げ、常識にとらわれない発想で新たなチャレンジを続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「avex vision 2027」において、以下の経営数値目標を掲げています。

* 2027年3月期:営業利益90億円・ROE10%
* 2028年3月期以降:営業利益150億円・ROE15%

(4) 成長戦略と重点施策


「多様な地域・多様な分野で“愛される”IP(知的財産権)の発掘・育成」を重点戦略としています。音楽、アニメ・映像を中心とした各事業領域での事業強化を図るとともに、IPの発掘・育成や多様な手段を用いたマネタイズに積極的に取り組むことで、事業拡大と企業価値向上を目指しています。

* ヒットコンテンツの創出
* マネタイズ機能の最適化
* コンテンツに係る権利の拡充
* 構造改革の推進
* ガバナンス体制の強化
* 人材の強化
* サステナビリティ経営の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業環境の変化と業容拡大に対応し更なる成長を実現するために、人材育成の強化が必要であると認識しています。「ジョブ型人事制度」や「公募制度」「FA制度」といった人事制度の導入によって、社員のキャリア自律とエンゲージメント向上を図るとともに、年齢・性別・国籍等に関係なく、活力ある人材を積極的に登用していく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 11.7年 7,562,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 33.9%
男女賃金差異(正規) 34.7%
男女賃金差異(非正規) 56.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、復職率(100%)、高エンゲージメント者割合(24.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要作品及びアーティスト・タレントの動向について


同社グループは、コンテンツホルダーとして保有する権利や協業により得られる権利を事業へ活用しています。そのため、ヒットアーティストやヒットコンテンツの有無、主要アーティスト・タレントの人気動向、新人アーティスト・タレントの成長が、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外市場への事業展開について


海外事業はアジアをはじめ世界中に展開しており、今後も市場成長が期待されています。そのため、諸外国における政治的・経済的要因、法律・規則要因、不利な租税要因及びテロ・戦争等による社会的混乱等、予期し得ない事由が発生した場合には、海外展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 技術革新への対応について


テクノロジーを活かした新たなビジネスの可能性を追求していますが、技術革新や競合の出現等による事業環境の急激な変化や、予測困難な問題等が発生する可能性は否定できません。これらの変化への対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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