※本記事は、エイベックス株式会社の有価証券報告書(第39期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. エイベックスってどんな会社?
エイベックスは、音楽やアニメ・映像などのエンタテインメントコンテンツの企画・制作・販売を手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1988年の設立後、1990年に自社レーベルを創設しレコード制作を開始しました。1999年には東京証券取引所市場第一部に上場し、2004年に持株会社体制へ移行しています。2014年のシンガポールおよび台湾の子会社化を皮切りに海外展開を本格化させ、2017年に現在のエイベックスへ社名を変更しました。近年は米国子会社の設立などを通じて、グローバル市場での事業拡大を加速させています。
現在の従業員数は連結で1,372名、単体で85名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業会社のサイバーエージェントで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、第3位にはティーズ・キャピタルが名を連ねており、創業者の松浦勝人氏も第8位の株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サイバーエージェント | 12.94% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.44% |
| ティーズ・キャピタル | 8.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは黒岩克巳氏が務めています。社外取締役は3名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒岩克巳 | 代表取締役社長CEO | 2001年アクシヴ(現エイベックス・マネジメント)入社。エイベックス・エンタテインメント代表取締役社長等を経て、2018年代表取締役社長COO。2020年より現職。 |
| 松浦勝人 | 代表取締役会長 | 1988年設立とともに取締役就任。2004年代表取締役社長、2018年代表取締役会長CEOなどを歴任し、2020年より現職。 |
| 林真司 | 代表取締役CFO経営管理本部管掌取締役、人事総務本部管掌取締役、経理法務本部管掌取締役、コンプライアンス委員会委員、指名・報酬委員会委員、コンプライアンス担当、リスク管理担当 | 1990年入社、1993年取締役。2010年代表取締役CBO、2016年取締役COOなどを経て、2018年に代表取締役CFOに就任し現職。 |
| 見城徹 | 取締役(非常勤) | 1993年幻冬舎設立、代表取締役社長。2005年タッチダウン代表取締役社長。2010年より同社非常勤取締役に就任し現職。 |
社外取締役は、瀧口友里奈(テラスカイ社外取締役)、杉本佳英(弁護士・指名報酬委員長)、安田恵(安田恵公認会計士事務所所長・指名報酬委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「音楽事業」「アニメ・映像事業」「海外事業」および「その他」事業を展開しています。
■音楽事業
音楽コンテンツの企画・制作・販売、音楽配信、音楽出版、アーティストのマネジメント、ライヴ・イベントの企画・運営、ファンクラブ運営などを展開しています。多様なチャネルを通じてファンに直接エンタテインメント体験を提供しています。
収益源は、ライヴチケットやパッケージの販売、音楽配信の利用料、マーチャンダイジングによるグッズ売上など多岐にわたります。運営はエイベックス・エンタテインメント、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ、エイベックス・マネジメントなどが担っています。
■アニメ・映像事業
アニメや映像コンテンツの企画・制作・販売・宣伝をはじめ、アーティストのマネジメント、映画配給、ゲームソフト等の企画、映像配信サービスに対するアニメ作品の供給などを行っています。
主な収益は、映像パッケージの販売や配信サービスからのライセンス収入、関連グッズの販売などから得ています。運営はエイベックス・ピクチャーズやアニメタイムズ社などが中心となって行っています。
■海外事業
北米およびアジア地域において、エンタテインメントコンテンツの企画・制作・流通を展開しています。海外での所属アーティストの活動支援や、グローバルなIPの創出と展開を推進しています。
収益は、海外でのライヴ公演、楽曲配信、コンテンツのライセンス許諾などから得ています。運営はAvex Southeast Asia Pte.Ltd.やAvex USA Inc.などの海外子会社が担っています。
■その他
旅行業など、上記の報告セグメントに含まれない事業を展開しています。
各種サービスの提供による手数料などが主な収益源となっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5年間で成長傾向にあり、一時的な減益の期間を経て最新期では過去最高水準となる1,466億円の増収を記録しています。利益面でもマイナスから大きく改善し、安定した収益基盤の回復が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 984億円 | 1,216億円 | 1,334億円 | 1,317億円 | 1,466億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 41億円 | 11億円 | -17億円 | 43億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 3.3% | 0.9% | -1.3% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -19億円 | -9億円 | 6億円 | -38億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益が拡大しており、営業利益は前年度の赤字から当年度は41億円の大幅な黒字へと転換しています。コスト管理の見直しや業務効率化により、全体としての収益性が高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,317億円 | 1,466億円 |
| 売上総利益 | 358億円 | 418億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.2% | 28.5% |
| 営業利益 | -18億円 | 41億円 |
| 営業利益率(%) | -1.4% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が82億円(構成比22%)、支払手数料が78億円(同21%)、広告宣伝費が63億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
音楽事業はライヴ関連売上高の増加により増収と大幅な黒字転換を果たしました。アニメ・映像事業も海外向け販売が好調で増収増益となっています。海外事業は増収ながら先行投資等により営業赤字が続いています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 音楽事業 | 1,103億円 | 1,214億円 | -12億円 | 35億円 | 2.9% |
| アニメ・映像事業 | 179億円 | 211億円 | 3億円 | 11億円 | 5.2% |
| 海外事業 | 34億円 | 40億円 | -9億円 | -5億円 | -12.5% |
| その他 | 0.4億円 | 1億円 | 0.0億円 | 0.3億円 | 30.0% |
| 連結(合計) | 1,317億円 | 1,466億円 | -18億円 | 41億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の財務状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.5%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -47億円 | 21億円 |
| 投資CF | 9億円 | -7億円 |
| 財務CF | -41億円 | -29億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
企業理念として「エンタテインメントの可能性に挑みつづける。人が持つ無限のクリエイティビティを信じ、多様な才能とともに世界に感動を届ける。そして、豊かな未来を創造する。」を掲げています。社会の持続可能性と事業活動のつながりを重視し、エンタテインメント企業としての存在意義を明確にしています。
■(2) 企業文化
タグラインとして「Really! Mad+Pure」を掲げており、常識にとらわれない発想で新たなチャレンジを続ける価値観を重視しています。また、多様な価値観を持ち一人ひとりが活躍できる環境やカルチャーの醸成を目指し、従業員のキャリア自律や主体性を尊重する組織風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「avex vision 2027」において、以下のような数値目標を掲げています。
* 2027年3月期:営業利益60億円
* 2028年3月期以降:営業利益150億円
* 2028年3月期以降:ROE15%
■(4) 成長戦略と重点施策
多様な地域・分野で愛されるIP(知的財産権)の発掘・育成を重点戦略とし、音楽やアニメ・映像領域での事業強化を図っています。また、国内外のM&Aによる権利獲得や、AIなどのテクノロジーを活用した業務効率化、組織体制の見直しといった構造改革を推進し、収益性の向上と企業価値の最大化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「専門性」「多様性」「人材競争力」「キャリア自律」の4つを人材戦略の軸としています。事業や職務ごとに異なる特性を考慮したジョブ型の報酬制度を導入するほか、時間や場所を選ばない柔軟な働き方(FFF制度)を推進し、多様なバックグラウンドを持つ人材が自律的にキャリアを築ける環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.5歳 | 12.8年 | 7,100,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 57.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員(日本採用)(36名)、海外赴任者(4名)、高エンゲージメント者割合(26.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要作品およびアーティスト・タレントの動向
同社グループは、自社保有または他社との協業による権利を事業に活用しています。そのため、ヒットコンテンツの有無や主要アーティスト・タレントの人気、新人アーティストの成長スピードが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) コンテンツに係る権利と技術革新への対応
AIなどテクノロジーの急速な進展により、既存技術の陳腐化や、同社が保有する知的財産権(IP)が侵害されるリスクがあります。また、技術革新による急激な事業環境の変化が、今後の収益確保や事業活動に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外市場への事業展開
アジアをはじめグローバルに事業を拡大していますが、進出先の諸外国において政治的・経済的要因、予期せぬ法的規制の変更や不利な租税要因などが発生した場合、海外市場での事業展開や全体業績に影響を及ぼす可能性があります。



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