※本記事は、関西電力株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 関西電力ってどんな会社?
関西地方を中心に電力・ガスの供給を行うエネルギー事業を中核とし、情報通信や不動産など多角的に事業を展開する総合エネルギー企業です。
■(1) 会社概要
1951年5月、電気事業再編成令により設立され、同年8月に東京証券取引所へ上場しました。2001年には関電ガス・アンド・コージェネレーション(現・関電エネルギーソリューション)を設立し、ガス事業等の多角化を推進しています。2019年には情報通信事業の再編によりオプテージへ商号変更し、2020年4月には送配電事業を関西電力送配電へ分社化しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は31,428名、単体では8,258名です。大株主構成については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は地方自治体の大阪市、第3位は同じく資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.07% |
| 大阪市 | 6.12% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性20名、女性5名の計25名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表執行役社長は森望氏が務めています。社外取締役比率は約61.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森 望 | 取締役 代表執行役社長 |
1988年入社。エネルギー需給本部副本部長、再生可能エネルギー事業本部長などを経て2022年6月より現職。 |
| 水田 仁 | 代表執行役副社長 原子力事業本部長 |
1987年入社。原子力事業本部副事業本部長、原子燃料サイクル室長などを経て2023年6月より現職。 |
| 荒木 誠 | 代表執行役副社長 コーポレート業務全般組織風土改革室担当水素事業戦略室担当データセンター事業推進室担当IT戦略室担当CISO(最高情報セキュリティ責任者)経営監査室担当 |
1987年入社。IT戦略室長、オプテージ代表取締役社長などを経て2023年6月より取締役代表執行役副社長。 |
| 藤野 研一 | 代表執行役副社長 ソリューション本部長ガス事業本部指導 |
1989年入社。営業本部副本部長、関電不動産開発代表取締役社長を経て2024年6月より現職。 |
| 小川 博志 | 取締役 代表執行役副社長エネルギー事業全般中間貯蔵推進担当エネルギー・環境企画室担当原子燃料サイクル室担当(サイクル事業)立地室担当 |
1988年入社。エネルギー・環境企画室長、執行役常務を経て2024年6月より現職。 |
| 島本 恭次 | 取締役 監査委員会委員 |
1983年入社。火力事業本部副事業本部長、火力事業本部長などを経て2021年6月より現職。 |
| 西澤 伸浩 | 取締役 監査委員会委員 |
1982年入社。経理室長、調達本部長、取締役代表執行役副社長を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、榊原定征(元東レ代表取締役会長)、友野宏(元新日鐵住金代表取締役社長兼COO)、髙松和子(元ソニーVP環境推進センター長)、内藤文雄(神戸大学名誉教授)、真鍋精志(元西日本旅客鉄道代表取締役社長兼執行役員)、田中素子(元神戸地方検察庁検事正)、園潔(元三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役代表執行役会長)、矢萩典代(元丸紅市場業務部部長補佐)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エネルギー事業」「送配電事業」「情報通信事業」「生活・ビジネスソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) エネルギー事業
電気やガスの供給に加え、ユーティリティサービスなどの多様なソリューションを通じて新たな価値を提供する事業です。一般家庭から法人顧客まで幅広い層を対象としています。
収益は、顧客からの電気料金やガス料金、ソリューションサービスの対価から得ています。運営は主に同社や株式会社関電エネルギーソリューションなどが行っています。
■(2) 送配電事業
中立・公平な立場で電気の安全かつ安定的な供給を行う事業です。送電線や変電所などの電力ネットワークの維持・運用を担っています。
収益は、小売電気事業者等から受け取る託送収益などが主な源泉です。運営は主に関西電力送配電株式会社が行っています。
■(3) 情報通信事業
光ファイバ網を活用した個人向けのインターネット接続サービス「eo光」や、法人向けの通信サービス、データセンター事業などを提供しています。
収益は、個人および法人顧客からの通信サービス利用料や回線使用料などから得ています。運営は主に株式会社オプテージが行っています。
■(4) 生活・ビジネスソリューション事業
不動産の分譲・賃貸やビルメンテナンス、ホテル運営などの生活・ビジネス関連サービスを提供しています。
収益は、不動産の販売収入や賃貸収入、施設管理料などから得ています。運営は主に関電不動産開発株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、2023年3月期に一時的な赤字を計上しましたが、その後は回復し、高い利益水準を維持しています。当期は前期比で増収減益となりましたが、安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 30,924億円 | 28,519億円 | 39,519億円 | 40,594億円 | 43,371億円 |
| 経常利益 | 1,539億円 | 1,360億円 | -67億円 | 7,660億円 | 5,317億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 4.8% | -0.2% | 18.9% | 12.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 395億円 | 1,045億円 | 336億円 | 3,248億円 | 3,143億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、利益率は低下しています。これは、売上高の伸びに対して売上原価や販売費及び一般管理費などの費用が増加したことによるものです。ただし、依然として高い利益率を維持しており、事業の収益性は堅調です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 40,594億円 | 43,371億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 7,289億円 | 4,689億円 |
| 営業利益率(%) | 18.0% | 10.8% |
販売費及び一般管理費の内訳については、データがないため詳細な分析は省略します。
■(3) セグメント収益
エネルギー事業と送配電事業は増収減益となりました。情報通信事業は増収ながらも利益は微減となりました。一方、生活・ビジネスソリューション事業は増収増益を達成し、好調に推移しています。全体としては増収減益の結果となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エネルギー事業 | 35,392億円 | 37,741億円 | 5,839億円 | 4,113億円 | 10.9% |
| 送配電事業 | 10,163億円 | 10,976億円 | 1,241億円 | 558億円 | 5.1% |
| 情報通信事業 | 3,014億円 | 3,126億円 | 475億円 | 469億円 | 15.0% |
| 生活・ビジネスソリューション事業 | 1,950億円 | 2,214億円 | 224億円 | 262億円 | 11.8% |
| 調整額 | -9,925億円 | -10,686億円 | -119億円 | -86億円 | - |
| 連結(合計) | 40,594億円 | 43,371億円 | 7,660億円 | 5,317億円 | 12.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金を元に、積極的な投資活動を行いつつ、財務活動による資金調達も行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11,550億円 | 5,753億円 |
| 投資CF | -4,280億円 | -3,424億円 |
| 財務CF | -4,889億円 | 1,377億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、『「あたりまえ」を守り、創る』という存在意義のもと、事業活動を通じて持続可能な社会を実現することを使命としています。かつては「安全最優先」と「社会的責任の全う」を基軸としてきましたが、新たな指針として「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」を策定し、グループの最上位概念と位置付けています。
■(2) 企業文化
同社グループは、『「公正」「誠実」「共感」「挑戦」』という4つの価値観を大切にして事業活動を行っています。これらの価値観に基づき、全ての役員および従業員が行動することで、社会からの信頼を獲得し、持続的な成長を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を策定し、2025年度を最終年度とする財務目標を設定しています。
* 2025年度 経常利益:3,600億円以上
* 2021-2025年度合計 FCF:3,000億円以上
* 2025年度 自己資本比率:28%以上
* 2025年度 ROA:4.4%以上
* 2025年度 ROIC:4.3%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」を掲げ、2050年までにCO2排出をゼロにすることを目指しています。その実現に向け、EX(エネルギートランスフォーメーション)、VX(バリュートランスフォーメーション)、BX(ビジネストランスフォーメーション)の3本柱で取り組みを推進しています。
* EX:ゼロカーボンロードマップに基づき、再生可能エネルギーの主力電源化や原子力の最大限活用、火力のゼロカーボン化を進め、脱炭素化を牽引します。
* VX:お客さまや社会の脱炭素ニーズに応えるため、電化や蓄電池などの多様なソリューションを提案し、新たな価値提供を加速させます。
* BX:DX推進やコスト構造改革等を通じて経営基盤を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念の実現に向け、従業員一人ひとりの「学びたい」「挑みたい」という意欲を引き出すため、DXリテラシー向上等の事業戦略と連動した育成施策を推進しています。また、多様な人材の採用や活躍推進(D&I)、ハラスメント防止、柔軟な働き方の実現を通じて、誰もが能力を最大限発揮できる社内環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.6歳 | 19.8年 | 9,732,263円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.3% |
| 男性育児休業取得率 | 106.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者比率(4.0%)、一人当たり所定外労働時間(255.7時間(年))、災害度数率(0.45)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動リスク
脱炭素化への移行に伴う政策変更や市場の変化、異常気象による設備被害などが業績に影響を与える可能性があります。同社は「ゼロカーボンビジョン2050」を掲げ、再生可能エネルギーの導入や原子力の活用、設備のレジリエンス強化に取り組んでいます。
■(2) 原子力関連リスク
原子力発電は重要な電源ですが、事故や規制変更、訴訟等により運転停止が長期化した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。安全確保を最優先とし、新規制基準への適合や安全対策の徹底、リスク管理の継続的な改善を進めています。
■(3) 広域停電等の供給リスク
自然災害や設備不備による広域停電は、社会経済に甚大な影響を与え、同社の信用を損なう恐れがあります。設備の適切な運用・保守、災害対策の強化、燃料在庫の確保等により、安定供給の維持に努めています。
■(4) 競争環境の変化
電力小売全面自由化や脱炭素化の潮流により、顧客ニーズの変化や他社との競争が激化しています。分散型エネルギーの活用や最適なエネルギーマネジメントシステムの提供など、顧客に選ばれるサービスの開発・提供を通じて競争力の維持・向上を図っています。



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