丸藤シートパイル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸藤シートパイル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、鋼矢板やH形鋼などの建設基礎工事用重仮設資材の販売・賃貸および関連工事を主力事業としています。第77期は工事部門の伸長や賃貸・運送収入の増加が寄与し、売上高356億円、経常利益21億円といずれも前期を上回る増収増益を達成しました。


※本記事は、丸藤シートパイル株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丸藤シートパイルってどんな会社?


1926年創業の重仮設資材のパイオニアであり、建設基礎工事における資材の販売・賃貸・施工を一貫して提供しています。

(1) 会社概要


同社は1926年に個人営業の丸藤商店として創業し、1947年に株式会社として設立されました。1963年には現在の社名に変更するとともに株式を公開し、1973年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場しました。その後、1978年のサイガ建材リースとの合併や、地方支店の開設、子会社の設立などを経て事業基盤を拡大しています。

現在の従業員数は連結493名、単体391名です。筆頭株主は鉄鋼製品の販売を行う三井物産スチールで、第2位および第3位には生命保険会社が名を連ねています。日本製鉄製品を主力とし、エムエム建材等の商社を経由して仕入れるなど、鉄鋼・商社業界との結びつきが強い資本構成となっています。

氏名 持株比率
三井物産スチール 13.77%
住友生命保険相互会社 5.99%
明治安田生命保険相互会社 5.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は羽生成夫氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤七郎 取締役会長 1981年入社。技術工事部長や各支店長を歴任後、2018年に代表取締役社長に就任。2024年より代表取締役会長、2025年4月より現職。
羽生成夫 代表取締役社長 1991年入社。工事統括部長や営業管理部長を経て、2024年4月に代表取締役社長執行役員に就任。営業本部長を兼務し、2025年4月より現職。
矢部隆光 取締役 1985年三井物産入社。海外現地法人社長等を経て、同社常勤監査役、常務執行役員を歴任。現在は管理本部長として管理部門全体を管掌する。
宮下典久 取締役 1988年入社。財経部長として長年財務経理部門に従事。現在は執行役員として環境安全部、内部統制監査室、財経部を担当している。
坂本慎一 取締役 1991年入社。関西支店長、関東支店長などを歴任。現在は営業本部長として支店および各統括部を管掌し、業務部を担当する。


社外取締役は、吉永康樹(株式会社シーファス代表取締役社長)、関根修一(青木・関根・田中法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「重仮設事業」として建設基礎工事用鋼製重仮設資材の販売・賃貸、工事、加工、運送等を展開しています。

同社は鋼矢板、H形鋼、鋼製山留材などの建設資材を取り扱っており、主な顧客は鹿島建設、竹中工務店、大林組などの大手・中堅建設会社です。日本製鉄の製品を主とし、エムエム建材等の商社を経由して資材を購入しています。事業内容は単一セグメントですが、売上形態は販売、賃貸、工事、加工、運送に分類されます。

収益源は、建設会社等からの資材販売代金、賃貸料、工事請負代金、加工賃、運送料です。運営は主に丸藤シートパイルが担当し、資材の輸送を子会社のフジ運輸、工事施工の一部を子会社のディ・ケイ・コムが担う体制をとっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 327億円 319億円 351億円 345億円 356億円
経常利益 12億円 10億円 15億円 19億円 21億円
利益率(%) 3.6% 3.0% 4.4% 5.6% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 7億円 10億円 14億円 15億円


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台前半から半ばで推移しており、2025年3月期は356億円と過去5年で最高水準となりました。利益面では、経常利益率が3%台から5%台へと徐々に改善傾向にあり、2025年3月期には経常利益21億円、当期純利益15億円を達成するなど、収益性が向上しています。

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は3.0%増、売上総利益は5.4%増となり、増収に伴い利益も拡大しています。営業利益率は4.1%から4.4%へ改善しました。建設コストを反映した価格改善の取り組みが浸透し、採算性を重視した受注活動が奏功した結果、増益基調を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 345億円 356億円
売上総利益 61億円 65億円
売上総利益率(%) 17.8% 18.2%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 4.1% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が22億円(構成比44%)、その他経費が18億円(同37%)を占めています。売上原価においては、工事や加工にかかる外注費や労務費、材料費等が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、売上形態別の内訳を見ると、工事収入が全体の約35%を占める主力事業となっており、前期比11.1%増と成長を牽引しています。賃貸収入、運送収入も増加した一方、販売収入は減少しました。全体として工事や賃貸などのストック・サービス型収益が拡大しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
販売 132億円 124億円
賃貸 44億円 47億円
工事 113億円 126億円
加工料 27億円 28億円
運送 29億円 32億円
連結(合計) 345億円 356億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 14億円
投資CF -3億円 -8億円
財務CF -14億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「建設業界のニーズに応えた資機材及び技術・工事・加工の提供を通じて社会資本の整備に貢献する」ことを経営理念として掲げています。安心・安全を守り、公正で誠実な活動を通じてステークホルダーの期待に応えるとともに、優れた技術力で価値ある商品・サービスを提供し、社会貢献を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「人を大切にして人を育て、信用と信頼を基礎に、魅力ある企業を目指す」という理念のもと、人材育成と信頼関係の構築を重視する文化を持っています。安全管理活動の強化や不安全行動の撲滅、心身の健康確保を目標に掲げ、社員・協力会社が一体となって労働災害撲滅に取り組むなど、安全と人を最優先する姿勢を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期ビジョン「2030Vision」のマイルストーンとして、中期経営計画(2024-2026年度)を推進しています。「コア事業の基盤強化と次の100年の創造」を掲げ、以下の数値目標を設定しています(2027年3月期連結ベース)。

* 売上高:400億円
* 経常利益:20億円
* 配当性向:30%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「事業構造の変革」「成長」「経営力」を軸に、コア事業である重仮設資材の提供に加え、現場ニーズを見据えた新工種の提案や加工案件の受注拡大を図っています。また、工場設備のオートメーション化やIT投資による生産性向上、人的資本への投資強化を重点施策としています。

* 工事部門:最適工法の提案による収益拡大、機械設備の入替・新規導入。
* 加工部門:特殊加工物件の拡大、橋梁分野での製品ラインアップ拡充。
* 工場部門:自動整備ラインの導入などオートメーション化の推進。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「多様な強い人材『個』が活躍できる企業」を目指し、人材の確保・育成を経営の重要課題としています。女性社員の活躍拡大、障がい者雇用の推進、海外人材の活用を3つの柱とし、研修制度の充実や働きやすい職場環境の整備を進めています。また、経営幹部との対話ミーティング等を通じ、社員の声を経営に反映させる取り組みを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.4歳 18.4年 7,346,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.1%
男性労働者の育児休業取得率 75.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 68.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 67.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 52.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性の割合(25.1%)、全社員の有給休暇取得率(64.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の変動リスク


同社グループの業績は国内建設市場への依存度が高いため、民間および公共の建設投資動向の影響を受けます。景気変動や政策変更により建設需要が減少した場合、受注高や収益性が低下する可能性があります。これに対し、顧客ニーズへの迅速な対応と採算重視の受注活動を行っています。

(2) 仕入価格および労務費の変動リスク


主力商品である鋼矢板やH形鋼などの仕入価格は市況変動の影響を受けます。また、建設業界全体の人手不足を背景とした労務費の高騰もコスト上昇要因となります。これらの建設コストの動向により、採算性が悪化する可能性がありますが、収益予測に基づいた対策を実施しています。

(3) 人材確保と少子高齢化リスク


建設業界における技術者・技能労働者の不足や高齢化は、工事の遅延や計画見直しにつながる恐れがあります。また、労働人口の減少により新規採用が停滞した場合、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。同社は新卒・中途採用の強化や、女性・外国人材の活用、研修による育成に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。