※本記事は、丸藤シートパイル株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 丸藤シートパイルってどんな会社?
同社は、建設業界のニーズに応え、重仮設資材の提供と附帯する工事等を通じて社会資本の整備に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1926年に個人営業の商店として創業し、1954年にシートパイルの販売、賃貸及び修理加工業に専業化しました。1963年に現在の社名に変更し、東京店頭売買登録銘柄として株式を公開しました。2003年にはフジ運輸を完全子会社化し、2017年にはディ・ケイ・コムを子会社化して事業基盤を強化しています。
現在の従業員数は連結で506名、単体で393名です。筆頭株主は事業会社の三井物産スチールで、第2位および第3位には生命保険会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井物産スチール | 14.29% |
| 住友生命保険 | 6.22% |
| 明治安田生命保険 | 5.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は羽生成夫氏が務めており、取締役における社外取締役の割合は約33%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 羽生成夫 | 代表取締役社長 | 1991年入社。取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 矢部隆光 | 取締役 | 1985年三井物産入社。三井物産スティールトレード代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 宮下典久 | 取締役 | 1988年入社。執行役員財経部長、執行役員環境安全部・内部統制監査室・財経部担当などを経て、2026年4月より現職。 |
| 坂本慎一 | 取締役 | 1991年入社。関西支店長、関東支店長、営業本部長などを経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、吉永康樹(公認会計士吉永康樹事務所所長)、関根修一(青木・関根・田中法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、重仮設事業の単一セグメント内で、販売、賃貸、工事、加工料、運送などの事業を展開しています。
■販売・賃貸事業
主に鋼矢板やH形鋼、鋼製山留材などの建設基礎工事用鋼製重仮設資材の販売および賃貸を行っています。顧客は大手から中堅の建設会社が中心であり、日本製鉄の製品を主体に取り扱っています。
収益は、建設会社に対する資材の販売代金や、使用期間に応じた賃貸料として受け取ります。事業の運営は主に丸藤シートパイルが行っており、資材の保管や修理・整備業務も自社工場で担っています。
■工事・運送事業
資材の提供に附帯する建設基礎工事の請負や、各種補強土壁製品、建築用鉄骨加工品の提供、ならびに建設現場への資材運送を行っています。
収益は、建設会社からの工事請負代金や資材の運送料として受け取ります。工事施工の一部は子会社のディ・ケイ・コムが担当し、運送業務の一部は子会社のフジ運輸が担当するなど、グループ全体で連携して運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間を通じて、売上高は319億円から403億円へと順調に拡大しています。特に直近では工事収入の増加などにより売上高が大きく伸びており、経常利益も10億円から27億円へと大幅な増益を達成し、収益性の向上が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 319億円 | 351億円 | 345億円 | 356億円 | 403億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 15億円 | 19億円 | 21億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 4.4% | 5.6% | 5.8% | 6.6% |
| 当期利益 | 7億円 | 9億円 | 12億円 | 12億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近の業績を比較すると、売上高の増加に加えて売上総利益率が18.2%から19.4%へと改善しています。建設コストを反映した価格改善や採算性を重視した受注活動が奏功し、営業利益も16億円から21億円へと伸長しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 356億円 | 403億円 |
| 売上総利益 | 65億円 | 78億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.2% | 19.4% |
| 営業利益 | 16億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、その他(経費等)が24億円(構成比42%)、報酬及び給料手当が23億円(同39%)を占めています。売上原価においては、工事収入などの増加に伴い、外注費や減耗費などが計上されています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、売上形態別の収益推移を確認します。直近ではすべての区分で増収となっており、特に工事収入は受注の拡大に注力したことで大きく伸長しています。販売、賃貸、運送などの関連事業も安定して推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 販売 | 124億円 | 136億円 |
| 賃貸 | 47億円 | 53億円 |
| 工事 | 126億円 | 149億円 |
| 加工料 | 28億円 | 32億円 |
| 運送 | 32億円 | 33億円 |
| 連結(合計) | 356億円 | 403億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済や自己株式の取得を進めつつ、設備投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 23億円 |
| 投資CF | -8億円 | -16億円 |
| 財務CF | -4億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「建設業界のニーズに応えた資機材及び技術・工事・加工の提供を通じて社会資本の整備に貢献します」を経営理念に掲げています。安心・安全を守り、優れた技術力を追求することで、社会やステークホルダーの期待に応えることを使命としています。
■(2) 企業文化
経営理念を支える指針として、「人を大切にして人を育て、信用と信頼を基礎に、魅力ある企業を目指す」という考えを重視しています。また、「安全・安心を守る」ことを最重要課題と位置づけ、災害の撲滅を最優先に安全管理体制を徹底する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中長期ビジョン「2030Vision」の実現に向け、2026年度から新たな中期経営計画をスタートさせています。2031年3月期をゴールとして、以下の定量目標を掲げて持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:470億円
* 営業利益:30億円
* ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な企業価値向上のため、事業基盤の強化と収益構造の変革を進めています。重仮設資材の販売・賃貸を中核としつつ、現場の潜在需要を見定めた新工種の提案や加工案件の受注拡大に注力しています。
* 資産および事業の効率化
* 新たな収益機会の創出
* 設備能力の向上と安全対策のための設備投資
* 技術力強化に向けたIT関連投資
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な強い人材『個』が活躍できる企業」を目指し、人的資本への投資を強化しています。2026年4月には人事制度を刷新し、社員の能力とやりがいを引き出す評価・給与体系を導入しました。社内研修の拡充や多様な働き方の推奨により、従業員エンゲージメントの向上と優秀な人材の確保を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 18.1年 | 7,418,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.3% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性の割合(26.2%)、採用教育費(38.2百万円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の変動リスク
同社グループの業績は国内の建設業界を取り巻く環境に依存しています。建設コストの高騰や景気悪化によって民間設備投資や公共事業投資が急激に縮小した場合、受注高や収益性が影響を受ける可能性があります。
■(2) 建設コストの変動リスク
重仮設資材のリース市場は、鋼材仕入れ時の市況価格の影響を受けます。国際情勢や為替相場の変動による原材料価格の高騰や、人手不足に伴う労務費の上昇が発生した場合、採算性が悪化するリスクがあります。
■(3) 人材確保に関するリスク
少子高齢化や建設業界の慢性的な人手不足が進む中、専門知識を持つ社員や工場作業を担う人材を十分に確保できない場合、事業遂行や業績に影響が及ぶ可能性があります。多様な人材の採用や社内環境の整備によりリスク軽減を図っています。



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