ニプロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニプロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニプロは東京証券取引所プライム市場に上場し、医療関連、医薬関連、ファーマパッケージングの3事業を展開するグローバル医療メーカーです。直近の業績は、医療機器や医薬品の需要増と適正価格での販売が進み、売上高は6605億円、純利益は135億円となり、増収増益を達成して順調な成長を続けています。


※本記事は、ニプロ株式会社の有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニプロってどんな会社?


医療機器、医薬品、医薬品包装材の3事業を展開し、グローバルに高品質な製品を供給する総合医療メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1954年に設立され、1965年に医療機器である輸液セットの販売を開始しました。1988年には菱山製薬(現ニプロファーマ)への資本参加により医薬品分野へ進出し、1996年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後も積極的なM&Aや海外展開を推進し、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で38,593名、単体で4,714名です。筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は事業会社である日本電気硝子です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.70%
日本カストディ銀行(信託口) 7.53%
日本電気硝子 5.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性19名、女性3名の計22名で構成され、女性役員比率は13.6%です。代表取締役社長は山崎剛司氏が務めています。社外取締役は6名です。

氏名 役職 主な経歴
佐野嘉彦 代表取締役会長 1968年日本硝子繊維入社。1975年同社入社。2000年取締役就任。2012年代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。
山崎剛司 代表取締役社長 1991年同社入社。2009年取締役就任。国際事業部長やファーマパッケージング事業部長を歴任し、2025年6月より現職。
余語岳仁 専務取締役最高財務責任者 1996年太田昭和監査法人入所。2004年グッドマン入社後、社長等を歴任。2015年同社取締役就任。2025年6月より現職。
箕浦公人 常務取締役バリューエンジニアリング統括兼グループDX企画室長 1995年同社入社。2009年取締役就任。再生医療事業部長や新規事業開発本部長等を歴任し、2026年5月より現職。
西田健一 常務取締役 1994年同社入社。2010年取締役就任。ニプロファーマ代表取締役社長や医薬事業部長等を歴任し、2026年4月より現職。
大山靖 常務取締役グローバルイノベーション統括本部長兼バスキュラー事業担当常務 2003年同社入社。2013年取締役就任。グッドマン代表取締役社長やバスキュラー事業部長を歴任し、2026年4月より現職。
中村秀人 取締役総務人事本部長 1980年同社入社。2009年取締役人事総務部長に就任。ガバナンス統括本部長等を歴任し、2025年6月より現職。
宮住悟一 取締役国際事業部長 1992年同社入社。ニプロメディカルコーポレーション代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。
貞廣衝 取締役国内・国際統括商品開発・技術営業本部長兼透析・血液浄化商品開発・技術営業部部長兼新規商品開発・技術営業部部長 1988年同社入社。2018年取締役就任。透析・血液浄化商品開発関連の要職を歴任し、2025年6月より現職。
二階堂拓 取締役国内事業部長 1990年同社入社。国内および国際の医療器械開発・技術営業関連の要職を歴任し、2025年6月より現職。
西迫英之 取締役ファーマパッケージング事業部長 2005年同社入社。中国の関連子会社における要職等を歴任し、2025年6月より現職。
米田淳 取締役生産技術センター所長 1990年同社入社。生産技術センター関連の要職を歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、田中良子(メディ・ホープ代表取締役社長・指名報酬委員長)、嶋森好子(元東京都看護協会会長)、服部利昭(元トーアミ常務取締役)、吉森俊和(元全国健康保険協会理事)、今泉泰彦(元日鉄興和不動産代表取締役社長)、串田ゆか(サクラクリニカルリサーチ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療関連」「医薬関連」「ファーマパッケージング」および「その他」事業を展開しています。

医療関連
国内外において注射・輸液、人工臓器、透析関連などの医療機器や、糖尿病関連、ジェネリックなどの医薬品を医療機関向けに提供しています。
医療機関や代理店からの製品販売代金が主な収益源です。運営は同社のほか、ニプロベトナムカンパニーリミテッドやニプロタイランドコーポレーションなどの子会社が行っています。

医薬関連
製薬会社からの受託製造を軸に、注射剤、各種経口剤、キット製剤などを製造・販売し、付加価値の高いジェネリック医薬品の開発に注力しています。
製薬会社からの受託製造費用や医薬品の販売代金が収益源となります。運営は同社やニプロファーマ、全星薬品工業などの子会社が行っています。

ファーマパッケージング
国内外の製薬会社向けに、医療用硝子製品(アンプル用硝子、管瓶用硝子等)や魔法瓶硝子、キット製剤用容器などを提供しています。
製薬会社などからの包装容器の販売代金が収益源です。運営は同社および国内外の専門子会社が行っています。

その他
報告セグメントに含まれない不動産賃貸業務や、その他のサービス業務などを展開しています。
テナントからの不動産賃貸収入やサービス提供料が収益源です。運営は同社および関連子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で継続的な増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。経常利益は一時的な変動が見られるものの、直近では利益率の改善が進み、増収増益の堅調な基調を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4948億円 5452億円 5868億円 6446億円 6605億円
経常利益 276億円 153億円 195億円 108億円 197億円
利益率(%) 5.6% 2.8% 3.3% 1.7% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 107億円 87億円 69億円 188億円 135億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて売上総利益率が改善し、営業利益も大幅に増加しています。これは生産効率の改善や適正価格での販売が進展したことなどが主な要因として挙げられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6446億円 6605億円
売上総利益 1909億円 2083億円
売上総利益率(%) 29.6% 31.5%
営業利益 266億円 376億円
営業利益率(%) 4.1% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が390億円(構成比23%)、研究開発費が218億円(同13%)、運送費が172億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


医療関連事業および医薬関連事業の売上が国内外で好調に推移し、全体の増収を牽引しました。一方、ファーマパッケージング事業は在庫過多の影響などで減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医療関連 5051億円 5236億円
医薬関連 791億円 811億円
ファーマパッケージング 593億円 547億円
その他 11億円 11億円
連結(合計) 6446億円 6605億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 685億円 547億円
投資CF -719億円 -553億円
財務CF 54億円 -81億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も22.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「未来に向かって、世界の人々の健康を支え、医療ニーズに応える商品、技術及び事業の創造革新を行い、社会に貢献し、自己実現を図る」という理念のもと、「和ごころをもった真のグローバル総合医療メーカー」として医療の発展に貢献することを掲げています。

(2) 企業文化


社是として「意欲(willingness)」を掲げ、すべての活動に意欲をもって取り組むことを行動の基本としています。また、「ユーザー目線」「三方よし」「地産地消」の考え方を基本とし、従業員の行動指針として「FISH哲学」を全社的に推進して活気ある職場環境の構築に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2027年度までの中期経営計画において、持続的な成長と資本効率の向上を実現するため、以下の目標を掲げています。

* 売上高成長率 年平均6%以上
* 営業利益率 7%以上
* 純有利子負債/EBITDA倍率 4倍未満
* ROE(自己資本利益率) 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


開発・製造・営業の一体運営を通じた「利益重視経営」を推進し、事業全体の収益基盤強化と利益率改善を目指しています。世界展開と地産地消による供給体制を強化するとともに、次世代医療領域への貢献を通じて新たな成長機会を創出し、選択と集中を軸に資本効率を意識した投資を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自ら学び、進化し続ける人材の育成」を目標に、主体的なキャリア形成の支援と登用、体系的な教育プログラムの提供、戦略的サクセッションプランの構築を推進しています。また、従業員のウェルビーイング向上や健康経営にも注力し、能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 13.3年 6,814,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 72.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.2%
男女賃金差異(正規雇用) 72.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 47.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員ワークエンゲージメント(49.3)、従業員喫煙率(22.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達に関するリスク


事業に使用する材料および部品の調達において、特定の供給者に依存するものがあります。需要の急増による供給不足や供給遅延、原材料価格の高騰が生じた場合、生産活動やコストに影響を及ぼし、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 販売価格の変動に関するリスク


国内における診療報酬や薬価の引下げの影響を受ける製品があります。また、世界的な医療費抑制策による企業間競争の激化により、販売価格が想定を超えて下落した場合、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 医療行政の変更に関するリスク


同社の属する業界は医療制度と密接に関連しており、各種法規制の適用を受けています。今後、予測困難な制度改革が実施され、その環境変化に適切に対応できない場合、業績や事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ニプロの転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

ニプロの2026年3月期2Q決算は、営業利益+14.0%の増収増益。ニプロESファーマの連結除外など大胆な構造改革を進めつつ、主力の人工腎臓事業は増産体制を強化しています。「なぜ今ニプロなのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。


【面接対策】ニプロの中途採用面接では何を聞かれるのか

人工腎臓をはじめ、人工透析分野に強みを持つ医療機器・医薬品メーカー、ニプロ。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。