ニプロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニプロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、医療機器、医薬品、医療用ガラスの製造販売を行う医療関連企業です。透析関連製品や注射・輸液関連製品を主力としています。2025年3月期の連結業績は、海外市場での販売拡大等により増収となりましたが、為替差損や支払利息の増加等により経常利益は減益となりました。


※本記事は、ニプロ株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニプロってどんな会社?


医療機器、医薬品、医療用ガラス(ファーマパッケージング)の3事業を展開する総合医療メーカーです。

(1) 会社概要


1954年に日本硝子商事として設立され、ガラス管の販売から開始しました。1974年に合併を経て、2001年に現在の商号に変更しました。2014年にはガラス事業のマザー工場としてびわこ工場を新設し、生産体制を強化しています。2022年の東証市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は39,168名、単体では4,563名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は原材料の取引先であるガラスメーカーです。第3位も信託銀行となっており、機関投資家や取引先が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.89%
日本電気硝子 7.07%
日本カストディ銀行(信託口) 5.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性18名、女性3名の計21名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は佐野嘉彦氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
佐野 嘉彦 代表取締役社長 1968年日本硝子繊維入社。1975年ニプロ入社。営業本部長、国内事業部長、材料事業部長などを歴任し、2012年より現職。
吉岡 清貴 専務取締役国内事業統括国内事業部長 1976年ニプロ入社。名古屋支店長、東京第二支店長、国内事業部営業本部長などを経て、2024年より現職。
山崎 剛司 専務取締役国際事業統括国際事業部長兼ファーマパッケージング事業部担当専務 1991年入社。国際事業部ニプロブランド営業部長、ファーマパッケージング事業部長などを経て、2023年より現職。
余語 岳仁 専務取締役管理統括経営企画本部長 公認会計士。グッドマン代表取締役社長を経て、2015年同社取締役就任。2023年より現職。
増田 利明 常務取締役企画開発技術統括本部長兼総合研究所長 1975年入社。国内事業部商品開発営業本部長、商品企画本部長などを歴任し、2023年より現職。
小林 京悦 常務取締役安定生産・危機管理本部長 1981年日本医工入社。大館工場長、生産事業部長などを経て、2023年より現職。
箕浦 公人 常務取締役再生医療事業部長兼事業推進本部長兼事業管理本部長兼新規事業開発本部長 1995年入社。経営企画本部長、セル商品事業部長などを経て、2024年より現職。
佐野 一彦 常務取締役施設本部長兼生産技術センター所長 1974年入社。総合研究所第一研究開発部長、生産事業部副事業部長などを経て、2023年より現職。
西田 健一 常務取締役医薬事業部長兼医薬生産統括本部長 1994年入社。医薬品研究所研究企画部長、ニプロファーマ代表取締役社長などを経て、2023年より現職。
大山 靖 常務取締役バスキュラー事業部長 2003年入社。バスキュラービジネスユニット部長、グッドマン代表取締役社長などを経て、2024年より現職。
中村 秀人 取締役総務人事本部長兼ガバナンス統括本部長 1980年入社。人事総務部長、人事部長などを経て、2021年より現職。
芳田 豊司 取締役信頼性保証本部長 1988年入社。品質統括部長、信頼性保証部長を経て、2019年より現職。


社外取締役は、田中良子(メディ・ホープ代表取締役社長)、嶋森好子(元東京都看護協会会長)、服部利昭(元トーアミ常務取締役)、吉森俊和(元全国健康保険協会理事)、今泉泰彦(元日鉄興和不動産社長)、串田ゆか(J.みらいメディカル代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療関連」、「医薬関連」、「ファーマパッケージング」および「その他」事業を展開しています。

医療関連事業


注射・輸液関連、人工臓器関連、透析関連の医療機器等を製造販売しています。国内外の医療機関が主な顧客です。特に透析市場ではダイアライザ(人工腎臓)や透析装置を展開し、グローバルに事業を行っています。

製品の販売対価が主な収益源です。運営は主にニプロが行い、海外ではニプロメディカルコーポレーション等の子会社が販売を担っています。また、製造面ではニプロ医工などの子会社も関与しています。

医薬関連事業


ジェネリック医薬品を中心に、注射剤、経口剤、キット製剤などを製造販売しています。医療機関や調剤薬局が主な顧客です。また、製薬会社からの受託製造も行っています。

医薬品の販売対価および受託製造料が収益源です。運営はニプロファーマや全星薬品工業などの子会社が中心となって行っています。

ファーマパッケージング事業


管瓶用ガラス、アンプル用ガラスなどの医療用ガラス製品や、キット製剤用容器などを製造販売しています。製薬会社などが主な顧客です。

製品の販売対価が収益源です。運営はニプロファーマパッケージングインディアPrivate LimitedやニプロファーマパッケージングフランスS.A.S.などの海外子会社を含め、グローバルに展開しています。

その他事業


上記セグメントに含まれない不動産賃貸事業などを展開しています。

賃貸料収入などが収益源です。運営はニプロおよび一部の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 4,556億円 4,948億円 5,452億円 5,868億円 6,446億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 263億円 276億円 153億円 195億円 108億円
利益率(%) 5.8% 5.6% 2.8% 3.3% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 97億円 107億円 87億円 69億円 188億円


売上高は5期連続で増加しており、事業規模は順調に拡大しています。一方、利益面では、経常利益率が低下傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な減益となりました。為替変動やコスト増などが影響している可能性があります。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,868億円 6,446億円
売上総利益 1,713億円 1,909億円
売上総利益率(%) 29.2% 29.6%
営業利益 223億円 266億円
営業利益率(%) 3.8% 4.1%


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しました。売上総利益率は前年と同水準を維持しつつ、営業利益率は若干改善しています。増収効果が利益の押し上げに寄与した形です。

販売費及び一般管理費のうち、給与手当が360億円(構成比21.9%)、研究開発費が189億円(同11.5%)、運送費が161億円(同9.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


医療関連事業は海外販売が好調で増収となりました。医薬関連事業も生産数量の増加等により増収です。ファーマパッケージング事業は在庫調整の影響がありつつも微増収となりました。全体として全セグメントで売上を伸ばしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医療関連 4,536億円 5,051億円
医薬関連 743億円 791億円
ファーマパッケージング 580億円 593億円
その他 8億円 11億円
連結(合計) 5,868億円 6,446億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ニプロは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却などによる資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなどによる資金の変動を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 729億円 685億円
投資CF -871億円 -719億円
財務CF 221億円 54億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「技術革新」をコンセプトとし、事業活動を通じて社会に貢献することを経営理念としています。患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上や医療現場のニーズに応える製品開発を推進し、製品競争力と市場シェアで世界トップを目指しています。

(2) 企業文化


「意欲:willingness」を社是とし、全ての活動に意欲を持って取り組むことを行動の基本としています。また、「地産地消」のコンセプトのもと、グローバルな事業展開を行っています。働く人の行動指針として「FISH哲学」を推進し、活気ある職場環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年度に連結売上高1兆円の達成を目指しています。また、2027年度までの中期的な経営指標として以下を掲げています。

* 売上高成長率:年平均6%以上
* 営業利益率:7%以上
* ROE(自己資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「地産地消」を基本に、グローバル市場でのシェア拡大を目指しています。医療関連では新規販路開拓と医療DX推進、医薬関連では安定供給体制の強化と海外展開、ファーマパッケージングではバイオ医薬品対応製品の拡充に注力します。また、生産の自動化やDX化による効率化も進めます。

* ダイアライザを中心とした透析商品の安定供給
* バスキュラー商品の生産性向上とグローバル展開
* 赤字商品の黒字化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「意欲ある人材にチャンスを与える」社風のもと、年齢にかかわらない登用を行う人事制度を導入しています。グローバル市場に対応するため語学教育を強化し、エンゲージメント向上や心理的安全性の高い職場づくりを目指しています。また、健康経営を推進し、従業員の健康保持・増進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.8歳 13.3年 6,592,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 48.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.4%
男女賃金差異(正規) 74.0%
男女賃金差異(非正規) 48.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員ワークエンゲージメント(48.8)、従業員10年定着率(65.2%)、従業員喫煙率(21.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達に関するリスク


製品の製造に必要な材料や部品の一部は特定の供給者に依存しています。需要の急増や供給遅延、または石油化学製品等の原材料価格の高騰が発生した場合、生産活動に支障をきたしたり、調達コストが増加したりすることで、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 販売価格の変動に関するリスク


国内の診療報酬や薬価の引き下げ、および世界的な医療費抑制策の影響を受けます。これらにより市場競争が激化し、販売価格が想定以上に下落した場合、経営成績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。コスト削減等で対応していますが、影響を完全に回避できるとは限りません。

(3) 医療行政の変更に関するリスク


医療機器・医薬品業界は医療保険制度や法的規制の影響を強く受けます。予期せぬ医療行政の大改革が行われ、その環境変化に適切に対応できない場合、事業活動に支障が生じ、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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