加賀電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

加賀電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する独立系エレクトロニクス総合商社です。電子部品や半導体の販売に加え、EMS(製造受託)事業をグローバルに展開しています。直近の業績は、売上高が過去最高を更新し増収となりましたが、利益面では人件費や物流コストの増加等が響き減益となりました。


※本記事は、加賀電子株式会社 の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 加賀電子ってどんな会社?


独立系エレクトロニクス商社として、部品販売から製造受託(EMS)、完成品販売まで幅広く展開しています。

(1) 会社概要


同社は1968年に創業し、1986年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1997年には同第一部へ指定替えしました。近年ではM&Aを積極的に推進しており、2019年に富士通エレクトロニクス(現・加賀FEI)、2020年にエクセル、旭東電気を子会社化するなど事業規模を拡大しています。

現在の従業員数は連結8,560名、単体560名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は信託銀行等の信託口で、第2位は株式会社OKOZE、第3位も信託銀行の信託口となっています。創業者の塚本勲氏も大株主として名を連ねており、安定的な株主基盤を有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.63%
OKOZE 7.00%
日本カストディ銀行(信託口) 6.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表者は代表取締役社長執行役員の門良一氏らが務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
塚本 勲 代表取締役会長執行役員 1968年加賀電子設立、代表取締役社長就任。2007年より代表取締役会長。2023年より現職。
門 良一 代表取締役社長執行役員 1980年同社入社。特機事業本部長などを経て2012年取締役副社長。2014年代表取締役社長就任。2023年より現職。
塚本 剛 取締役上席執行役員 1987年同社入社。香港法人社長、経営企画室長などを歴任。2023年加賀FEI代表取締役社長。2025年より現職。
石原 康広 取締役上席執行役員 1987年同社入社。管理本部経理部長、同副本部長などを歴任。2023年管理本部長。2025年より現職。
糀谷 仁志 取締役上席執行役員 1992年同社入社。特販事業部部長、経営企画室長などを歴任。2025年より現職。
川村 英治 取締役(常勤監査等委員) 1979年同社入社。加賀ソルネット代表取締役社長、管理本部長などを歴任。2023年常勤監査役。2025年より現職。


社外取締役は、三吉暹(元大阪トヨタ自動車社長)、橋本法知(元三菱電機顧問)、吉田守(元松下電器産業常任監査役)、橘内進(公認会計士)、佐藤陽一(弁護士)、大柳京子(社会保険労務士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子部品事業」「情報機器事業」「ソフトウェア事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電子部品事業


半導体や一般電子部品の販売に加え、顧客製品の開発・生産を受託するEMS(Electronics Manufacturing Service)事業を行っています。国内外の多様な顧客に対し、部材調達から製造までをワンストップで提供しています。

収益は、顧客への電子部品等の販売代金や、EMSにおける製造受託加工費などから得ています。運営は、加賀電子、加賀FEI、エクセル、旭東電気などの国内グループ会社や、香港、タイ、メキシコ、トルコなどに展開する海外現地法人が行っています。

(2) 情報機器事業


パソコンやPC周辺機器、各種家電製品、写真・映像関連商品などの完成品の販売を行っています。また、オリジナルブランド商品の企画・販売や、学校・教育機関向けのパソコン販売なども手がけています。

収益は、完成品の販売代金が主な柱となっています。運営は、主に加賀ソルネットや加賀テクノサービスが行っています。特定顧客向けの大口案件なども含め、商社機能を活かした販売活動を展開しています。

(3) ソフトウェア事業


CG映像の制作や、アミューズメント関連商品の企画・開発を行っています。ゲームソフトやマルチメディア関連の映像・音声データの制作なども手がけています。

収益は、CG映像制作の受託費や企画・開発費などから得ています。運営は、デジタル・メディア・ラボ、アクセスゲームズ、ドリームスなどが担当しています。

(4) その他事業


エレクトロニクス機器の修理・サポートサービス、アミューズメント機器の製造・販売、スポーツ用品の販売などを行っています。PC製品のリサイクル事業なども含まれます。

収益は、修理・サポート料、機器販売代金、リサイクル事業収益など多岐にわたります。運営は、加賀マイクロソリューション、加賀アミューズメント、加賀スポーツ、加賀エアロシステムなどがそれぞれの専門領域で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期に6,000億円台に達した後、5,400億円台で推移しています。経常利益は2023年3月期をピークに減少傾向にありますが、依然として200億円を超える水準を維持しています。当期利益も同様の傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,224億円 4,958億円 6,081億円 5,427億円 5,478億円
経常利益 112億円 215億円 327億円 260億円 226億円
利益率(%) 2.7% 4.3% 5.4% 4.8% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -6.2億円 72億円 126億円 155億円 127億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高はわずかに増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいです。一方、販売費及び一般管理費が増加した影響で、営業利益および営業利益率は低下しました。人件費や物流コストの上昇が利益を圧迫する要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,427億円 5,478億円
売上総利益 705億円 717億円
売上総利益率(%) 13.0% 13.1%
営業利益 258億円 236億円
営業利益率(%) 4.8% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が207億円(構成比43.1%)と最も大きな割合を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が大半を占めています。

(3) セグメント収益


主力である電子部品事業は横ばいで推移しましたが、利益面では減少しました。情報機器事業は減収となったものの、採算性の高い製品の販売が好調で増益となりました。ソフトウェア事業とその他事業は、いずれも大幅な増収増益を達成しており、特にその他事業の利益成長が顕著です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電子部品事業 4,726億円 4,729億円 209億円 169億円 3.6%
情報機器事業 443億円 427億円 29億円 33億円 7.8%
ソフトウェア事業 26億円 34億円 4億円 5億円 15.0%
その他事業 232億円 288億円 16億円 27億円 9.4%
調整額 - - 1億円 1億円 -
連結(合計) 5,427億円 5,478億円 258億円 236億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に回している「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 294億円 250億円
投資CF -30億円 -100億円
財務CF -170億円 -73億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業以来「すべてはお客様のために」という経営理念を掲げています。この理念のもと、独立系商社としての強みを活かしつつ、お客様の多様なニーズに応えることで事業領域を拡大し、我が国業界No.1企業およびグローバル競争に勝ち残る企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として、変化に柔軟かつ果敢に挑戦する「F.Y.T.(ファイト)」、あらゆるものをグローバルに総合力を活かす「3G(スリージー)」、そして経営・営業マインドと社会人としての心構えを説く「加賀イズム」を掲げています。これらを重視し、企業の持続的成長の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は創業60周年を迎える2029年3月期に「売上高1兆円企業」となる長期構想を掲げています。直近では「中期経営計画2027」を策定し、2028年3月期に以下の目標達成を目指しています。
* 売上高:8,000億円以上
* 営業利益:360億円以上
* ROE:12.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「収益性と資本効率を重視した経営により、企業価値を高める」ことを基本方針とし、中核事業の拡大に加え、M&Aへの挑戦と新規事業の創出に取り組んでいます。また、戦略的な資本政策として、創出したキャッシュを成長投資と株主還元に重点配分する方針を掲げ、ESG経営課題への対応も加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


性別や年齢、国籍等を問わず多様な人財が能力を発揮できる環境整備を進めています。「ダイバーシティ推進」をテーマに女性や外国人の管理職登用を進めるとともに、「ワークライフ・マネジメント」と「生産性向上」の両立を目指し、育児・介護支援やテレワーク制度の拡充に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 14.0年 8,523,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.7%
男女賃金差異(正規) 67.2%
男女賃金差異(非正規) 61.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒総合職比率(22.7%)、女性管理職比率(連結)(17.3%)、男性育児休業取得率(連結)(89.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カントリーリスク


海外取引や拠点を多く有しているため、現地の政治的・経済的要因による規制変更やインフレ、社会情勢の悪化、自然災害などの影響を受ける可能性があります。これらは業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 自社製品の取り扱いに伴うリスク


エレクトロニクス製品の開発・製造・販売において、製品の欠陥や供給責任、急速な技術革新への対応遅れなどのリスクがあります。市場の変化を予測できず魅力ある製品を開発できない場合、将来の成長と収益性が低下する可能性があります。

(3) 人財の確保、労務リスク


技術革新が速い業界において競争力を維持するためには、優秀な人財の確保と育成が不可欠です。人財獲得競争の激化や、法令違反等の労務問題が発生した場合、必要な人財を確保できず、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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