北海道電力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北海道電力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北海道電力は東京証券取引所プライム市場および札幌証券取引所に上場し、北海道を基盤に発電・小売電気事業、一般送配電事業等を展開する電力会社です。直近の業績では、燃料価格の低下等に伴う燃料費等調整額の減少や労務費等の上昇により減収減益となりましたが、再生可能エネルギーや脱炭素化の推進に注力しています。


**※本記事は、北海道電力の有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. 北海道電力ってどんな会社?


北海道を地盤に発電・小売電気事業や送配電事業を展開し、地域のエネルギー安定供給を支える電力会社です。

(1) 会社概要


1951年5月、電気事業再編成令に基づき北海道電力が設立されました。同年8月に札幌証券取引所、1953年2月に東京証券取引所に上場しました。その後、1989年に北海道総合通信網を設立するなど事業を拡大し、2020年4月には一般送配電事業等を北海道電力ネットワークへ承継しています。

同社の連結従業員数は9,239名、単体では2,400名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は地域金融機関である北洋銀行、第3位も信託・カストディ業務等を行うTHE BANK OF NEW YORK MELLON 140044となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.90%
北洋銀行 4.96%
THE BANK OF NEW YORK MELLON 140044(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 3.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は齋藤晋氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
藤井 裕 代表取締役会長 1981年同社入社。流通本部長などを歴任後、2019年に代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
齋藤 晋 代表取締役社長執行役員 1983年同社入社。苫東厚真発電所長、火力部長などを経て、2023年6月より現職。
上野 昌裕 代表取締役副社長執行役員 1983年同社入社。企画部長、経営企画室長などを経て、2023年6月より現職。
小林 剛史 代表取締役副社長執行役員 1984年同社入社。経理部長などを経て、2024年6月より現職。
勝海 和彦 取締役常務執行役員 1987年同社入社。原子力部長、泊原子力事務所長などを経て、2023年6月より現職。
土田 拓 取締役常務執行役員 1985年同社入社。秘書室長などを経て、2024年6月より現職。
新沼 彰人 取締役常務執行役員 1985年同社入社。販売推進部長などを経て、2025年6月より現職。
大野 浩 取締役監査等委員(常勤) 1984年同社入社。北見支店長などを歴任。2020年に監査役に就任し、2022年6月より現職。
戸巻 雄一 取締役監査等委員(常勤) 1987年同社入社。企画部長、原子力監査室長などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、吉川武(弁護士)、成田教子(弁護士)、竹内巌(交洋不動産会長)、鵜飼光子(北海道教育大学名誉教授)、五十嵐敏文(北海道大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「北海道電力」「北海道電力ネットワーク」および「その他」事業を展開しています。

(1) 北海道電力


同社は、北海道エリアを中心とした一般顧客および法人顧客向けに、電力の発電および小売供給サービスを提供しています。火力、水力、再生可能エネルギーなど多様な電源を活用し、地域の電力需要を支えています。

主な収益源は、顧客に供給した使用電力量に応じた電灯・電力料です。運営は同社(北海道電力)が行っており、各種サービスを通じたエネルギー利用の最適化や脱炭素化のソリューションも展開しています。

(2) 北海道電力ネットワーク


同事業は、北海道エリアの送配電網を管理・運用し、発電所で作られた電気を顧客のもとへ送り届ける一般送配電事業や離島における発電事業を提供しています。電力の安定供給とインフラのレジリエンス強化を担っています。

主な収益源は、小売電気事業者などが送配電網を利用する際に支払う託送料金です。この事業の運営は、同社の100%子会社である北海道電力ネットワークが行っており、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた次世代型ネットワークの構築も進めています。

(3) その他


同セグメントでは、電気・電気通信工事、不動産の総合管理、土木・建築工事、発電所の保守・点検、情報通信事業など、電力供給を支える周辺事業や地域社会に向けた幅広いサービスを提供しています。

収益は、各事業の工事請負代金、保守・運用受託料、通信サービス利用料などから得ています。運営は、北海電工、北海道総合通信網、北海道パワーエンジニアリングなどの連結子会社群が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が8,000億円から9,500億円の規模で推移しています。経常利益は2023年3月期に燃料価格高騰等の影響で赤字となりましたが、その後は料金改定や期ずれ差益等の影響により黒字に回復し、安定的な利益を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,634億円 8,889億円 9,538億円 9,021億円 8,560億円
経常利益 138億円 -293億円 873億円 641億円 613億円
利益率(%) 2.1% -3.3% 9.2% 7.1% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 69億円 -222億円 662億円 642億円 440億円

(2) 損益計算書


前期間から当期間にかけて、燃料価格などの低下に伴う燃料費等調整額の減少により売上高は減少しました。それに伴い営業費用も減少しましたが、労務費等の上昇もあり、営業利益も微減となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 9,021億円 8,560億円
営業利益 758億円 732億円
営業利益率(%) 8.4% 8.6%


電気事業営業費用のうち、販売費及び一般管理費としては委託費が205億円(構成比26%)、給料手当が166億円(同21%)を占めています。売上原価に相当するその他の電気事業営業費用としては、他社購入電力料が3,005億円(構成比32%)、接続供給託送料が1,679億円(同18%)、燃料費が1,485億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の北海道電力セグメントは、燃料価格低下による燃料費等調整額の減少により減収となりました。北海道電力ネットワークセグメントは、託送料金見直しの影響等により増収を確保し、その他セグメントも建設業の売上増などにより増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
北海道電力 7,302億円 6,776億円
北海道電力ネットワーク 1,311億円 1,405億円
その他 407億円 379億円
連結(合計) 9,021億円 8,560億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業で利益を出しつつ、借入等の資金調達によって事業転換や設備拡充のための投資を積極的に行う再建・転換型の局面です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,256億円 1,145億円
投資CF -907億円 -2,131億円
財務CF 107億円 1,268億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は18.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ともに輝く明日のために。」をPurpose(存在意義)として掲げています。地域とともに魅力ある北海道を創り、人々の暮らしを豊かにし続ける存在であることを目指しています。またMissionとして、「変革の力で、エネルギーの未来と新たな価値を創造する。」ことを掲げ、エネルギー供給の責任を果たしつつ、持続可能な社会の実現を支えています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を実現するための価値観(Values)として、「挑戦」「共創」「信頼」の3つを重視しています。さらなる成長を目指して情熱を持って「挑戦」し、地域社会や他企業との協働を通じて未来を「共創」すること、そして誠実・公正な行動と多様な価値観の尊重によりステークホルダーからの「信頼」に応える文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「ほくでんグループ経営ビジョン2035」を策定し、中長期的な事業成長と北海道の発展の両立を目指しています。2030年度の財務目標として以下の数値を設定し、強靭な経営基盤の構築を推進しています。また、2035年度には連結経常利益600億円以上の達成を目標としています。

* 連結経常利益:230億円以上
* ROIC:3.0%以上
* ROE:8%程度
* 自己資本比率:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「北海道の発展に向けたGX実現への挑戦」「新たな価値創造に向けた挑戦」「持続的な成長に向けた経営基盤の強化」の3つを経営テーマとしています。泊発電所の再稼働と安全性向上、再生可能エネルギー電源の導入拡大、火力発電の脱炭素化、新たなエネルギーサプライチェーンの構築に向けた投資を積極的に進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「ほくでんグループ人材戦略」を掲げ、「今ある価値」を高めながら「新たな価値」を生み出していく企業風土の創造を目指しています。必要なスキルを身に付け自律的に挑戦・変化していく人材を育成するとともに、多様な人材が互いに認め合い、働きがいと成長を感じながら活躍できる環境(ダイバーシティ&インクルージョンや柔軟な働き方の支援、健康経営)の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 18.2年 8,276,143円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 78.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 37.9%


また、同社は「サステナビリティ」に関するセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社DX人材育成カリキュラム受講完了率(94.59%)、経験者採用比率(27%)、自発的離職率(1.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原子力発電の状況


泊発電所の安全確保を最重要課題と位置づけ、新規制基準への適合や防潮堤設置などの安全対策工事を進めています。しかし、原子力規制委員会の審査状況や工事の進捗により再稼働がさらに長期化し、燃料費の増大が継続した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 燃料・卸電力市場価格の変動


燃料調達費用や電力購入費用は、中東情勢の緊迫化や為替レート、卸電力市場価格の変動による影響を受けます。燃料費等調整制度により影響は一定程度緩和されますが、調達価格が想定を超えて急激に上昇した場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 気候変動に関する影響


気候変動への対応として、2030年度までに温室効果ガス排出量を46%削減(2013年度比)する目標を掲げています。しかし、カーボンプライシング等の環境規制が想定以上に強化された場合や、脱炭素化への対応が遅れて競争力が低下した場合には、収益の悪化や費用の増加を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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