東京瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。主要事業は都市ガスの製造・販売、電力事業などを行うエネルギー・ソリューション。直近の業績は、売上高が前期比1.0%減、経常利益が49.0%減と減収減益。原料費調整による単価下落や電力販売量の減少等が影響しました。


※本記事は、株式会社東京ガスの有価証券報告書(第225期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京ガスってどんな会社?


首都圏を中心に都市ガスや電力を供給するエネルギーインフラ企業。脱炭素化に向けた変革を進めています。

(1) 会社概要


1885年に東京府から瓦斯局の払い下げを受け創立し、1949年に上場しました。1969年にはアラスカからLNG(液化天然ガス)の導入を開始し、日本のエネルギー事情に大きな変革をもたらしました。2016年の電力小売全面自由化に伴い低圧電力供給を開始し、2022年には持株会社型グループ体制へ移行しました。

連結従業員数は15,572人、単体では3,276人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本生命保険(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行)で、金融機関や機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.87%
日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行株式会社) 8.46%
日本カストディ銀行(信託口) 4.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表執行役社長は笹山晋一氏です。取締役9名のうち社外取締役は6名で、比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
内田 高史 取締役会長指名委員報酬委員 1979年同社入社。資源事業本部長、代表取締役副社長執行役員リビング本部長などを経て、2018年代表取締役社長、2022年取締役代表執行役社長CEOを務め、2023年6月より現職。
笹山 晋一 取締役報酬委員代表執行役社長 1986年同社入社。デジタルイノベーション本部長、専務執行役員エネルギー需給本部長などを歴任。2022年代表執行役副社長CSOを経て、2023年4月より現職。
糟谷 敏秀 代表執行役副社長 1984年通商産業省入省。経済産業政策局長、特許庁長官などを歴任。2021年同社入社、執行役専務海外事業カンパニー長を経て、2023年4月より現職。
木本 憲太郎 代表執行役副社長 1986年同社入社。原料・生産本部長、専務執行役員CTO・CDOなどを歴任。2023年4月より現職(CTO、グリーントランスフォーメーションカンパニー長)。
小川 慎介 代表執行役副社長 1989年同社入社。常務執行役員(人事部他担当)、専務執行役員CRO・CHROなどを歴任。2023年4月より現職(カスタマー&ビジネスソリューションカンパニー長)。
比護 隆 取締役監査委員 1986年同社入社。常務執行役員エネルギーソリューション本部長、専務執行役員(秘書部他担当)などを歴任し、2023年6月より現職。


社外取締役は、引頭麻実(元大和総研専務理事)、大野弘道(元味の素取締役常務執行役員)、関口博之(元NHK解説副委員長)、淡輪敏(三井化学取締役会長)、山村雅之(元東日本電信電話代表取締役社長)、吉高まり(慶應義塾大学特別招聘教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー・ソリューション」「ネットワーク」「海外」「都市ビジネス」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

エネルギー・ソリューション

都市ガスの製造・販売、LNG販売、トレーディング、電力事業、エンジニアリングソリューション等を提供しています。顧客は家庭、業務用、工業用など多岐にわたり、ガス機器の販売やリースも行っています。

収益は、顧客からのガス・電気料金、ガス機器販売代金、エネルギーサービス料金等が主な源泉です。運営は主に東京ガスが行うほか、東京ガスエンジニアリングソリューションズ等の子会社が事業を展開しています。

ネットワーク

都市ガスの託送供給を行っています。ガス小売事業者等の利用者に、導管網を利用したガスの輸送サービスを提供しています。

収益は、ガス小売事業者等から受け取る託送供給収益が主な源泉です。運営は主に東京ガスネットワークが行っています。

海外

海外における資源開発・投資、エネルギー供給事業を行っています。オーストラリアや北米での上流事業や、東南アジア等でのエネルギーインフラ事業を展開しています。

収益は、ガス田権益からの配当や販売収入、海外でのエネルギー供給による料金等が源泉です。運営はTOKYO GAS AUSTRALIA PTY LTDやTokyo Gas America Ltd.などの海外子会社が担っています。

都市ビジネス

不動産の開発および賃貸等を行っています。オフィスビルや賃貸住宅の開発・運営などを手掛けています。

収益は、テナントからの賃貸料や不動産販売収入が主な源泉です。運営は主に東京ガス不動産が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに変動しています。2023年3月期は売上高が3兆円を超えましたが、その後は資源価格の変動等により減収傾向です。利益面では、2023年3月期に過去最高益を記録した後、反動減が見られますが、一定の利益水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1兆7,651億円 2兆1,549億円 3兆2,896億円 2兆6,624億円 2兆6,368億円
経常利益 705億円 1,365億円 4,088億円 2,228億円 1,136億円
利益率(%) 4.0% 6.3% 12.4% 8.4% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 495億円 957億円 2,809億円 1,655億円 742億円

(2) 損益計算書


前期と当期を比較すると、売上高は微減となりました。売上原価率は前期の82.3%から当期は84.6%へ上昇し、売上総利益を圧迫しました。これにより、営業利益および営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2兆6,624億円 2兆6,368億円
売上総利益 4,716億円 4,062億円
売上総利益率(%) 17.7% 15.4%
営業利益 2,171億円 1,331億円
営業利益率(%) 8.2% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、委託作業費が859億円(構成比31%)、給料が419億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


エネルギー・ソリューションはガス原料費調整による単価下落等で減収減益となりました。海外セグメントは北米事業の拡大で増収となりましたが、豪州権益売却の影響等で減益でした。都市ビジネスは不動産販売収益の減少で減収でしたが、利益率は改善し増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エネルギー・ソリューション 2兆3,880億円 2兆3,085億円 2,012億円 1,217億円 5.3%
ネットワーク 975億円 971億円 -40億円 -31億円 -3.2%
海外 1,122億円 1,806億円 273億円 229億円 12.7%
都市ビジネス 648億円 507億円 229億円 240億円 47.4%
調整額 - - -273億円 -268億円 -
連結(合計) 2兆6,624億円 2兆6,368億円 2,202億円 1,386億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東京瓦斯のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動により潤沢な資金を生み出しており、これは主に本業での利益計上や減価償却費の計上によるものです。一方で、設備投資や無形固定資産の取得といった将来に向けた投資も積極的に行っています。また、財務活動においては、自己株式の取得や借入金の返済、配当金の支払いなどにより資金が流出しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3,163億円 3,631億円
投資CF -3,620億円 -2,635億円
財務CF -583億円 -2,560億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を経営理念として掲げています。この理念のもと、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)に取り組み、社会的価値と経済的価値の両立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「存在意義」と「価値観」を定め、グループ員一人ひとりの行動変容を促しています。マテリアリティとして「脱炭素社会への責任あるトランジション」「ウェルビーイングなくらしとコミュニティへの貢献」「多様な人材が活躍できる組織の実現」などを掲げ、変革に挑戦する風土の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


2023-2025年度中期経営計画「Compass Transformation 23-25」において、以下の財務目標を掲げています。
* セグメント利益:1,500億円
* ROA:4%程度
* ROE:8%程度
* D/Eレシオ:0.9程度

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「エネルギー安定供給と脱炭素化の両立」「ソリューションの本格展開」「変化に強いしなやかな企業体質の実現」を主要戦略としています。LNGの高度利用と再エネ拡大を並行して進め、ソリューション事業ブランド「IGNITURE」による価値提供を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本経営の強化」を掲げ、人材シフトと事業変化への対応力強化、プロ人材としての成長・挑戦、知・経験のダイバーシティ推進に取り組んでいます。DXや脱炭素分野の高度専門人材の採用、リスキリング、社外兼業・社内公募の拡充を行い、自律的なキャリア形成を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.3歳 18.8年 7,646,369円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用) 79.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料調達支障

都市ガスの原料であるLNGの大半を海外から輸入しているため、地政学リスクや生産・輸送トラブルにより調達が困難になる可能性があります。これにより供給支障や事業収支への悪影響が生じるリスクがあります。

(2) 自然災害

地震や台風等の大規模災害が発生した場合、製造・供給設備が損害を受け、都市ガスの供給に支障を来す可能性があります。復旧費用の発生等が収支に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 都市ガスの事故・供給支障

ガス製造・供給に伴う大規模な事故や供給支障が発生した場合、社会的責任や損害賠償が生じ、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 再生可能エネルギー設備のトラブル

太陽光やバイオマス等の発電設備において、技術的課題や自然災害によるトラブル、出力制御等が発生した場合、対策費用の増加や売電量の減少により収支に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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都市ガスの提供で圧倒的なシェアを誇る東京瓦斯(東京ガス)への転職。電気事業や不動産事業にも参入しています。中途採用では、今までの仕事への取り組み方に加え、即戦力として活躍できそうか、会社の雰囲気に合いそうかなど、新卒のときとは違った視点も加え総合的な評価が下されます。事前対策を怠らないようにしましょう。