※本記事は、東京瓦斯株式会社の有価証券報告書(第226期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京瓦斯ってどんな会社?
東京瓦斯は、都市ガスの製造・販売や電力事業を展開し、首都圏をはじめ広くエネルギーを供給する企業です。
■(1) 会社概要
1885年に東京府から瓦斯局の払い下げを受け創立されました。1949年に東京証券取引所等へ上場し、1969年には日本初となるLNG導入を開始しています。2022年にホールディングス型グループ体制へ移行し、ガス導管事業等を東京ガスネットワークへ承継するなど組織再編を進め事業領域を拡大しています。
同社の従業員数は連結で16001名、単体で3769名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本生命保険相互会社となっており、主に信託銀行や生命保険会社などの金融機関が上位株主を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.44% |
| 日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 6.64% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表執行役社長は笹山晋一氏が務めています。取締役9名のうち社外取締役が6名を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 笹山 晋一 | 取締役 代表執行役社長 | 1986年同社入社。総合企画部長やエネルギー需給本部長等を歴任し、2022年に代表執行役副社長CSOを経て、2023年6月より現職。 |
| 内田 高史 | 取締役会長 指名委員 報酬委員 | 1979年同社入社。総合企画部長等を歴任し、2018年に代表取締役社長を務め、2023年6月より現職。 |
| 糟谷 敏秀 | 代表執行役副社長 | 1984年通商産業省入省。経済産業政策局長や特許庁長官等を歴任。2021年に同社参事として入社し、2023年4月より現職。 |
| 小川 慎介 | 代表執行役副社長 | 1989年同社入社。総合企画部長等を歴任し、2022年に専務執行役員CRO、CHRO等を経て、2023年4月より現職。 |
| 比護 隆 | 取締役 監査委員 | 1986年同社入社。財務部長やエネルギーソリューション本部長等、主要子会社社長を歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、関口博之氏(元日本放送協会解説副委員長)、淡輪敏氏(三井化学取締役会長)、山村雅之氏(一般社団法人電気通信協会会長)、吉高まり氏(一般社団法人バーチュ・デザイン代表理事)、小松百合弥氏(元カドカワ執行役員)、深澤祐二氏(東日本旅客鉄道取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エネルギー・ソリューション」「ネットワーク」「海外」「都市ビジネス」の報告セグメントを展開しています。
■エネルギー・ソリューション
都市ガスの製造および販売、LNG販売、電力、エンジニアリングソリューション等を提供しており、一般家庭から業務・工業用まで幅広い顧客のエネルギー需要に応えています。
収益は、ガスや電力の販売代金、エネルギーサービスの利用料として顧客から受け取ります。運営は主に東京瓦斯のほか、東京ガスエンジニアリングソリューションズやTGオクトパスエナジーなどが担当しています。
■ネットワーク
都市ガスの導管網を通じた託送供給サービスを提供しており、都市ガス事業者や需要家に対して安全かつ安定的なガス供給インフラを提供しています。
収益は、ガス導管の利用に伴う託送料金として、ガス小売事業者などの利用顧客から受け取ります。この事業は、同社から分社化された東京ガスネットワークが事業の運営を担っています。
■海外
海外における資源の開発や投資、エネルギー供給事業を展開しており、北米や東南アジア、オーストラリアなどでエネルギーインフラの開発を進めています。
収益は、天然ガスの開発・生産による販売収入や、発電事業・エネルギー関連事業への投資収益として受け取ります。運営は、TG Natural Resources LLCや東京ガスアジアなどの海外子会社が行っています。
■都市ビジネス
同社グループが保有する不動産の開発、賃貸、管理、仲介などを手がけており、オフィスビルや商業施設などの開発を通じて都市空間の価値向上を図っています。
収益は、開発した不動産の売却益や、保有するオフィスビルや施設などの賃貸料としてテナント等の顧客から受け取ります。運営は主に東京ガス不動産が中心となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、エネルギー価格の変動や為替の影響を受けつつも、安定した売上規模を維持しています。直近では電力販売量の増加等により売上高と経常利益が回復傾向にあり、持続的な収益基盤の強化が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆1549億円 | 3兆2896億円 | 2兆6624億円 | 2兆6368億円 | 2兆8347億円 |
| 経常利益 | 1365億円 | 4088億円 | 2228億円 | 1136億円 | 1937億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 12.4% | 8.4% | 4.3% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 378億円 | 2052億円 | 1243億円 | 1782億円 | 1221億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は電力販売量の増加等により増収となり、売上総利益および営業利益も大きく改善しています。原料価格の変動が影響する事業構造の中で、適切にコストを管理し利益率の向上が図られています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆6368億円 | 2兆8347億円 |
| 売上総利益 | 4062億円 | 5073億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.4% | 17.9% |
| 営業利益 | 1331億円 | 1977億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 7.0% |
販売費及び一般管理費のうち、委託作業費が1030億円(構成比33.3%)、給料が487億円(同15.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
売上構成を見ると、主力のエネルギー・ソリューション事業が全体の大半を牽引しています。また、海外事業は北米シェールガス事業の単価上昇等により大きく伸長しており、各事業分野で事業環境に応じた売上の変動が見られます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エネルギー・ソリューション | 2兆3085億円 | 2兆4445億円 |
| ネットワーク | 971億円 | 1031億円 |
| 海外ビジネス | 1806億円 | 2411億円 |
| 都市ビジネス | 507億円 | 460億円 |
| 連結(合計) | 2兆6368億円 | 2兆8347億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3631億円 | 4518億円 |
| 投資CF | -2635億円 | -2069億円 |
| 財務CF | -2560億円 | -2963億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.1%で非製造業の市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社会的価値創出と経済価値創出を両立し持続的成長を実現することを基本的な考え方とし、グループ経営理念を体現するマテリアリティを羅針盤としています。また、グループ経営ビジョン「Compass2030」を掲げ、「CO2ネット・ゼロをリード」などの挑戦を通じてエネルギー安定供給とカーボンニュートラル化の両立を目指しています。
■(2) 企業文化
一人ひとりの人材を単なる資本ではなく「心を持つ貴重な財産」と捉え、「挑戦による成長」と「多様性を力に」を促す企業文化の醸成を進めています。グループ員がやりがいの大きい業務で成果を出し、挑戦を奨励しながら人材の価値を高める風土を根付かせており、多様な人材の知識や経験を尊重するDE&Iを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2026-2028年度中期経営計画において、ROIC(投下資本利益率)とROE(自己資本利益率)を主要経営指標と位置づけ、稼ぐ力を考慮した投資により資本効率性の向上を目指しています。
・セグメント利益:2100億円
・ROIC:5%
・ROE:9%
・D/Eレシオ:0.9程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は強みである顧客基盤、エネルギーアセット、オペレーション能力を組み合わせ、「エネルギー」「ソリューション」「海外」の3事業の成長に注力します。既存事業の変革による収益基盤の強化を図るとともに、生成AIなどのデジタル技術を積極的に活用し、脱炭素領域への資源配分により事業ポートフォリオの変革を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略と連動したあるべき人材ポートフォリオを定義し、タレントマネジメントシステムによる現状とのギャップ特定を通じて人材獲得・育成・配置を推進しています。リスキリングや外部からの高度専門人材の獲得を進め、事業環境の変化に迅速に対応できる強靭な人材基盤を構築し、多様な働き方を促進しながら社員のWell-being向上を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 19.5年 | 7,840,953円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 80.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 64.0% |
また、同社はサステナビリティ等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高度専門性充足度(100%)、高エンゲージメント回答率(64.5%)、CO2削減貢献量(1300万t)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料の海外調達支障と地政学リスク
天然ガスなどの都市ガス原料の大半を海外から輸入しているため、カントリーリスクやLNG船の運航トラブル等により調達が長期間滞った場合、都市ガスの供給に支障を来し事業収支に影響が生じるリスクがあります。
■(2) 大規模な自然災害による供給設備損害
大規模な地震や台風、津波などの自然災害によりLNG基地等の製造設備や導管などの供給設備が損害を受けた場合、都市ガスの安定供給に支障を来し、その復旧対応等に伴う多額の費用が発生するリスクがあります。
■(3) 気候変動対策に伴う環境規制等の対応
猛暑や暖冬等の異常気象によるガス・電力販売量の変動リスクに加え、カーボンプライシング等の環境規制導入によりエネルギー消費が抑制されることで、都市ガス事業の収支に中長期的な影響を及ぼす可能性があります。



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